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三十三話
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アマゾネスエルフの集落に辿りつく鍵。
それを求めるギデオンは、密林から戻るとすぐに街中で聞き込みを開始した。
自分が見た景色を地図として速写するスキル、マッパー。
そのスキルを所持する者は滅多に現れないという。
いわゆる、レアスキル。
マッパーを探すのに、手間取っている暇はないと焦るギデオン。
結末は、思いもよらぬカタチで彼の元に訪れた。
このままではラチが明かない。
そう、踏んだ彼は歩帝斗に連絡を取った。
ステータス開示のベースアビリティはマタギの天職を授かって以降、自身の能力値が表示できなくなってしまった。
歩帝斗の話によれば、女神ミルティナスの天啓ではないマタギの天職がギデオンが元から所持していた能力を阻害してしまっているという。
再度、まともに使用できるよう彼は、歩帝斗にステータスオープンの画面である手鏡を改良してもらった。
その際に追加された機能が遠距離通信機能である。
その日の夜に連絡がつくとギデオンは現状報告をかねて、マッパーを探す手掛かりを訊いた。
すると彼は……
「おっ? 言ってなかったっけ。最高にCOOL~な機能、これまで出会った人物のスキルが検索できる機能があるってぇ!」
「壊滅的なネーミングだな……」
早速、試しにマッパーで検索をかけると一件だけかかった。
それこそがギルドの受付け嬢、メリッサ・ハウゼンだった。
灯台下暗しとはこの事だ。
自分と近しい人物がマッパーだったのは彼にとって僥倖だった。
あとは、どう彼女を密林まで連れてゆけばいいのか? 考えに考えを重ね、ついに一つの案が浮かんだ。
「二ッ星への昇級試験ですか?」
レストランでの食事中、ギデオンはメリッサに尋ねてみた。
フォークに刺した自身のカルパッチョを皿に戻し、彼女は答えた。
「うーん。ギデさんなら申請は通ると思いますが、というか! 今のシングルである方が問題なんですよね。密林エリアが希望とのことですが……二ッ星では厳しいかと。せめて三ッ星、アングラーでないと難しいですね」
「そこをギルマスに掛け合ってもらいたいんだ。お願いできないかな?」
「申請するのはともかく、試験を受けるには三人パーティーを組まないと受理されても試験失格になりますよ。うち一枠は頼まれたとおり私が埋めるとして、もう一つの方はどうするんですか?」
「そこなんだけど、ギルドで誰か手配できないか?」
「駄目もとで構わないのでしたら、一応は聞いてみます」
あまり気乗りしないといった感じで彼女は答えた。
そうなるのも無理はない。
ギデオンは昇級試験の手伝いと称して、メリッサを誘ったのだ。
すでに、二ッ星である彼女にとってウマい話でもないし、ギデオンが要求した条件は性急すぎる上に容易に済む話でもない。
クラスアップ試験は、冒険者のみならずギルド職員も参加可能とされている。
それは、ギルド職員の大半が元冒険者だったり、冒険者と職員の掛け持ちをしているからだ。
場合によってはパーティーメンバーを揃えられない冒険者もいる。
そんな時、代理として職員が参加する事があるが、それとはわけが違う。
ギルドからの仕事依頼ではなく、個人として参加する以上、彼女に賃金は発生しない。
メリッサからすれば、報われない仕事をしなければならないのは苦痛なのだろう。
「急ですまない。でも、君にしか頼めないんだ」
「ギデさん……何か、私に隠していませんか?」
「いや、どうした急に?」
「まさか、私が貴方の頼み事を面倒だと思って不機嫌になっているとでも? そりゃ、私だって損得勘定をする事もありますけど……と、とにかく、見くびらないで下さい! 私が嫌なのは貴方に信用して貰えていないことなんです!」
彼女の勘は的を射ていた。
ギデオンが感じていた事、すべてをメリッサは見抜いてしまった。
それほどまでに彼のわずかな仕草や表情の変化を常に観察している。
観察能力の高さはマッパースキルの影響なのかどうか、定かではない。
……がギデオンはその胸の内を見透かされて、彼女をぞんざいに扱おうとした自分を酷く恥じた。
同時に自分が何をしようとしているのか、彼女には明かそうと思った。
「言い訳でしかないが、僕は君を巻き込まないようにと遠ざけていた。僕が抱えている問題は複雑だ、すべてを一度に話す事はできない。認識が甘かったようだ、君は思っていた以上に強い女性だ。現状、話せることは全て語ろう。けれど、一度聞けば引き返せない……メリッサ、君には僕と共犯者になる覚悟はあるか?」
「覚悟とか大それたモノはありません。けれど、何故かな? 貴方を見ていると時々、辛そうにしているように感じるんです。私はそれが嫌で仕方ないんです。こんな私でも、貴方の苦しみを少しでも和らげることができるのなら、そうしてあげたい。それが私の気持ちなんです」
「君の気持ちは確かに受け取った。ならば、僕も話さなければならない。君の父親、クロイツ・ハウゼンの最期を!
」
「えっ? あの人のですか……」
「僕たちの関係は、そこに起因している」
それを求めるギデオンは、密林から戻るとすぐに街中で聞き込みを開始した。
自分が見た景色を地図として速写するスキル、マッパー。
そのスキルを所持する者は滅多に現れないという。
いわゆる、レアスキル。
マッパーを探すのに、手間取っている暇はないと焦るギデオン。
結末は、思いもよらぬカタチで彼の元に訪れた。
このままではラチが明かない。
そう、踏んだ彼は歩帝斗に連絡を取った。
ステータス開示のベースアビリティはマタギの天職を授かって以降、自身の能力値が表示できなくなってしまった。
歩帝斗の話によれば、女神ミルティナスの天啓ではないマタギの天職がギデオンが元から所持していた能力を阻害してしまっているという。
再度、まともに使用できるよう彼は、歩帝斗にステータスオープンの画面である手鏡を改良してもらった。
その際に追加された機能が遠距離通信機能である。
その日の夜に連絡がつくとギデオンは現状報告をかねて、マッパーを探す手掛かりを訊いた。
すると彼は……
「おっ? 言ってなかったっけ。最高にCOOL~な機能、これまで出会った人物のスキルが検索できる機能があるってぇ!」
「壊滅的なネーミングだな……」
早速、試しにマッパーで検索をかけると一件だけかかった。
それこそがギルドの受付け嬢、メリッサ・ハウゼンだった。
灯台下暗しとはこの事だ。
自分と近しい人物がマッパーだったのは彼にとって僥倖だった。
あとは、どう彼女を密林まで連れてゆけばいいのか? 考えに考えを重ね、ついに一つの案が浮かんだ。
「二ッ星への昇級試験ですか?」
レストランでの食事中、ギデオンはメリッサに尋ねてみた。
フォークに刺した自身のカルパッチョを皿に戻し、彼女は答えた。
「うーん。ギデさんなら申請は通ると思いますが、というか! 今のシングルである方が問題なんですよね。密林エリアが希望とのことですが……二ッ星では厳しいかと。せめて三ッ星、アングラーでないと難しいですね」
「そこをギルマスに掛け合ってもらいたいんだ。お願いできないかな?」
「申請するのはともかく、試験を受けるには三人パーティーを組まないと受理されても試験失格になりますよ。うち一枠は頼まれたとおり私が埋めるとして、もう一つの方はどうするんですか?」
「そこなんだけど、ギルドで誰か手配できないか?」
「駄目もとで構わないのでしたら、一応は聞いてみます」
あまり気乗りしないといった感じで彼女は答えた。
そうなるのも無理はない。
ギデオンは昇級試験の手伝いと称して、メリッサを誘ったのだ。
すでに、二ッ星である彼女にとってウマい話でもないし、ギデオンが要求した条件は性急すぎる上に容易に済む話でもない。
クラスアップ試験は、冒険者のみならずギルド職員も参加可能とされている。
それは、ギルド職員の大半が元冒険者だったり、冒険者と職員の掛け持ちをしているからだ。
場合によってはパーティーメンバーを揃えられない冒険者もいる。
そんな時、代理として職員が参加する事があるが、それとはわけが違う。
ギルドからの仕事依頼ではなく、個人として参加する以上、彼女に賃金は発生しない。
メリッサからすれば、報われない仕事をしなければならないのは苦痛なのだろう。
「急ですまない。でも、君にしか頼めないんだ」
「ギデさん……何か、私に隠していませんか?」
「いや、どうした急に?」
「まさか、私が貴方の頼み事を面倒だと思って不機嫌になっているとでも? そりゃ、私だって損得勘定をする事もありますけど……と、とにかく、見くびらないで下さい! 私が嫌なのは貴方に信用して貰えていないことなんです!」
彼女の勘は的を射ていた。
ギデオンが感じていた事、すべてをメリッサは見抜いてしまった。
それほどまでに彼のわずかな仕草や表情の変化を常に観察している。
観察能力の高さはマッパースキルの影響なのかどうか、定かではない。
……がギデオンはその胸の内を見透かされて、彼女をぞんざいに扱おうとした自分を酷く恥じた。
同時に自分が何をしようとしているのか、彼女には明かそうと思った。
「言い訳でしかないが、僕は君を巻き込まないようにと遠ざけていた。僕が抱えている問題は複雑だ、すべてを一度に話す事はできない。認識が甘かったようだ、君は思っていた以上に強い女性だ。現状、話せることは全て語ろう。けれど、一度聞けば引き返せない……メリッサ、君には僕と共犯者になる覚悟はあるか?」
「覚悟とか大それたモノはありません。けれど、何故かな? 貴方を見ていると時々、辛そうにしているように感じるんです。私はそれが嫌で仕方ないんです。こんな私でも、貴方の苦しみを少しでも和らげることができるのなら、そうしてあげたい。それが私の気持ちなんです」
「君の気持ちは確かに受け取った。ならば、僕も話さなければならない。君の父親、クロイツ・ハウゼンの最期を!
」
「えっ? あの人のですか……」
「僕たちの関係は、そこに起因している」
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