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三十一話
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エルフたちの誘拐を企てた黒幕。
それはエンデリデ島を支配統治する王族フリードマンだと判明した。
ゴロツキたちの処分を済ませた彼は、今日もまたジャングルに足を運ぶ。
ジャングル通い三日目。
この日はいつもとは様子が違った。
「君が出迎えてくれるなんて、初めてじゃないか?」
「待ってた……冒険者…………ギデ」
毎回、出会うエルフ少女が腕を後ろに組みながら身体をモジモジとさせていた。
多分、こういった事に不慣れなのだろう。
彼女なりの誠意、もてなしだとギデオンは解釈した。
「そいつが? 私たちをさらおうとした奴らの……?」
「ああ。あらかたは、捕らえたがコイツらのリーダー格は依然、姿を見せようとしない。今から、コイツをアルラウネのところに連れていく」
「分かった。こちらも村長の許可がでた……先に、果樹園で待っている」
「そうしてくれ。また、後でな」
ジャングルの倒木を渡りアルラウネの元へ向かうギデオン。
後続には蔓のロープでグルグル巻きにされ拘束された男がいた。
彼は土埋めにされなかった五人のうちの一人。
一番、お喋りで今まで口説けなかった女はいないと本人が豪語するのでギデオンは彼に決めた。
彼女と約束した男はコイツにしょうと……。
「へへっ、ギデさん。ジャングルの美少女に合わせてくれると言ってましたけど、さっきのエルフっ娘じゃねーんですか?」
「黙っていろ。目的地に着いたら好きなだけ喋らせてやる」
「へいへい。それより、俺をアンタの元で雇わないか? これでも、結構やくだっ――――」
「仲間を見捨てて鞍替えとは、いい度胸だな」
「って、すみませんね。なにぶん口が達者なもんで、ですから物騒なモンをしまって下さいよ」
胸元に銃口を当てがわれても、二ヘラ二ヘラと笑っている。
男の思考が度し難いと眉間に指を沿えながらギデオンはアルラウネがいる大木の下に到着した。
「アルラウネ! 約束どおり男を調達してきたぞ……いないのか? おかしいな……先日は、ここに居たはずだ、おい! アルラウネ」
「あの、ギデさん……アルラウネってあそこにいる魔……女性の事ですか?」
男が恐る恐る、頭上を指差していた。
大木の枝の陰に身を屈め、こちらの様子をうかがっているアルラウネを発見した。
「何をしているんだ? 恥ずかしがらずに出て来いよ!」
促す、ギデオンに彼女はプイとそっぽを向いてしまった。
仕方がないので彼は男だけをその場に残して去ろうとした。
「後は、自分で何とかしろ。僕は次の用事がある」
「ええっ? ギデさん……俺にどうしろと? って、待って下さいよぉ!!」
「そうですわ~の。まだ、一言も口をきいていないのにぃ、ギデ様のいけずぅ~」
二人っきりにしようとした矢先、ようやくアルラウネが地上に下りてきた。
出てくるなり、ご立腹の様子だ。
「僕がいると邪魔になると思ってな。それじゃな」
「ああ――!! お待ちを! 妾を独りにするつもりですか~え」
「いや、いるだろう。ご所望の男が」
「ああん、もう! ギデ様、まったく分かってませんわね。確かに、殿方が必要だと申しましたの。ですが妾にも好みという……ものが……渋専はチョット、ね?」
「なっ! 酷くねぇですか!? 俺にだって選ぶ権利ぐらいありますって! そうでしょう? ギデさん」
アルラウネの申し立てにギデオンは頭を抱えていた。
まさか、彼女が男の選り好みをするとは想定していなかった。
選んだ男は言うほど渋い顔をしていると思わない。
それでも彼女の基準では違うのだろう。
いがみ合う男女を前にして、このまま放置してもいいような気がしてきた。
その場を去りたい気持ちを抑え、彼はアルラウネに質問した。
「参考までに訊くが、どのような男が君の好みなんだ?」
「それは、もう~。キリリとした整った顔立ちに、シュっと引き締まった身体、身長は高すぎず……かと言って低いのも駄目です~わ。年齢は十五、六ぐらいが好ましいかと……あら? まぁまぁ! ちょうど、目の前にいるではではないですか!?」
ギデオンは静かに背後を振り向いた。
当然、そこには誰もいない。
「ハードル高っいな。また、今度それっぽいの連れてこよう」
「ぽい! ぽいって何ですの~!? というか、完全無視は止めて下さいましぃ! ああ、これでは欲求不満になってしまいます。ストレスは、お肌の天敵。こうなれば、その男には養分になってもらいます~の」
「殺さないように加減してくれよ」
「え? はぁ? 何を勝手に話を進め――――わあああぁっ!!」
「死にたくなければ、ボスについて知っていること全部、彼女に話せ。アルラウネ、コイツが自白したら解放してくれ、いいな?」
「はいな!」
アルラウネの茨の髪が伸び、男の全身を絡め取ってゆく。
棘が肌を突き刺し、男の精気を吸い取ってゆく。
かぐわしい花の香りに包まれるそれは、痛みさえも心地よくさせるという。
抵抗する事もなく、夢見心地になった男。
それを確認すると、ギデオンは黙って密林の奥へと向かった。
それはエンデリデ島を支配統治する王族フリードマンだと判明した。
ゴロツキたちの処分を済ませた彼は、今日もまたジャングルに足を運ぶ。
ジャングル通い三日目。
この日はいつもとは様子が違った。
「君が出迎えてくれるなんて、初めてじゃないか?」
「待ってた……冒険者…………ギデ」
毎回、出会うエルフ少女が腕を後ろに組みながら身体をモジモジとさせていた。
多分、こういった事に不慣れなのだろう。
彼女なりの誠意、もてなしだとギデオンは解釈した。
「そいつが? 私たちをさらおうとした奴らの……?」
「ああ。あらかたは、捕らえたがコイツらのリーダー格は依然、姿を見せようとしない。今から、コイツをアルラウネのところに連れていく」
「分かった。こちらも村長の許可がでた……先に、果樹園で待っている」
「そうしてくれ。また、後でな」
ジャングルの倒木を渡りアルラウネの元へ向かうギデオン。
後続には蔓のロープでグルグル巻きにされ拘束された男がいた。
彼は土埋めにされなかった五人のうちの一人。
一番、お喋りで今まで口説けなかった女はいないと本人が豪語するのでギデオンは彼に決めた。
彼女と約束した男はコイツにしょうと……。
「へへっ、ギデさん。ジャングルの美少女に合わせてくれると言ってましたけど、さっきのエルフっ娘じゃねーんですか?」
「黙っていろ。目的地に着いたら好きなだけ喋らせてやる」
「へいへい。それより、俺をアンタの元で雇わないか? これでも、結構やくだっ――――」
「仲間を見捨てて鞍替えとは、いい度胸だな」
「って、すみませんね。なにぶん口が達者なもんで、ですから物騒なモンをしまって下さいよ」
胸元に銃口を当てがわれても、二ヘラ二ヘラと笑っている。
男の思考が度し難いと眉間に指を沿えながらギデオンはアルラウネがいる大木の下に到着した。
「アルラウネ! 約束どおり男を調達してきたぞ……いないのか? おかしいな……先日は、ここに居たはずだ、おい! アルラウネ」
「あの、ギデさん……アルラウネってあそこにいる魔……女性の事ですか?」
男が恐る恐る、頭上を指差していた。
大木の枝の陰に身を屈め、こちらの様子をうかがっているアルラウネを発見した。
「何をしているんだ? 恥ずかしがらずに出て来いよ!」
促す、ギデオンに彼女はプイとそっぽを向いてしまった。
仕方がないので彼は男だけをその場に残して去ろうとした。
「後は、自分で何とかしろ。僕は次の用事がある」
「ええっ? ギデさん……俺にどうしろと? って、待って下さいよぉ!!」
「そうですわ~の。まだ、一言も口をきいていないのにぃ、ギデ様のいけずぅ~」
二人っきりにしようとした矢先、ようやくアルラウネが地上に下りてきた。
出てくるなり、ご立腹の様子だ。
「僕がいると邪魔になると思ってな。それじゃな」
「ああ――!! お待ちを! 妾を独りにするつもりですか~え」
「いや、いるだろう。ご所望の男が」
「ああん、もう! ギデ様、まったく分かってませんわね。確かに、殿方が必要だと申しましたの。ですが妾にも好みという……ものが……渋専はチョット、ね?」
「なっ! 酷くねぇですか!? 俺にだって選ぶ権利ぐらいありますって! そうでしょう? ギデさん」
アルラウネの申し立てにギデオンは頭を抱えていた。
まさか、彼女が男の選り好みをするとは想定していなかった。
選んだ男は言うほど渋い顔をしていると思わない。
それでも彼女の基準では違うのだろう。
いがみ合う男女を前にして、このまま放置してもいいような気がしてきた。
その場を去りたい気持ちを抑え、彼はアルラウネに質問した。
「参考までに訊くが、どのような男が君の好みなんだ?」
「それは、もう~。キリリとした整った顔立ちに、シュっと引き締まった身体、身長は高すぎず……かと言って低いのも駄目です~わ。年齢は十五、六ぐらいが好ましいかと……あら? まぁまぁ! ちょうど、目の前にいるではではないですか!?」
ギデオンは静かに背後を振り向いた。
当然、そこには誰もいない。
「ハードル高っいな。また、今度それっぽいの連れてこよう」
「ぽい! ぽいって何ですの~!? というか、完全無視は止めて下さいましぃ! ああ、これでは欲求不満になってしまいます。ストレスは、お肌の天敵。こうなれば、その男には養分になってもらいます~の」
「殺さないように加減してくれよ」
「え? はぁ? 何を勝手に話を進め――――わあああぁっ!!」
「死にたくなければ、ボスについて知っていること全部、彼女に話せ。アルラウネ、コイツが自白したら解放してくれ、いいな?」
「はいな!」
アルラウネの茨の髪が伸び、男の全身を絡め取ってゆく。
棘が肌を突き刺し、男の精気を吸い取ってゆく。
かぐわしい花の香りに包まれるそれは、痛みさえも心地よくさせるという。
抵抗する事もなく、夢見心地になった男。
それを確認すると、ギデオンは黙って密林の奥へと向かった。
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