上 下
15 / 58
第一部 聖女編

バチバチの口論を期待していたらすみません。

しおりを挟む

☆とわきら キャラ紹介☆
スルト・ナヴァール
深い赤の横分けの短髪に橙色の瞳。
炎の魔導師。王立騎士団団長。魔導師でありながら、武器を使った攻撃が得意。まれに出現する魔物の討伐に派遣される。成人済みだが、児童向けの冒険の物語が好きで、いつか偉業を成し遂げられたらと思っている。巻き込まれ体質で、ファンからは「貧乏くじ団長」とひそかに言われている。







彼女アリナが目に入った瞬間、ヨルドとの約束を思い出す。

◇◇◇

「いいですか、陛下。もしアリナ嬢と会うことがあっても、自分が女王陛下であることは隠してください」

「陛下は病に臥せっているということになっています。それが余計にアリナ嬢を助長させているのだと思うのですよ。ご自身の立場をよくわかっていないようなので、彼女にちょっとお灸を据えたいんです~」

「それに今陛下が出て、お話ししたとしても。彼女にはあまり効果がないと思うのですよ~
彼女、自分の力に自信がありますからね~言い方が悪いかもしれませんが、脅しに使うかもしれませんし」

「まあ、会わないことが一番なんですけどね~陛下の心の平穏のためにも…ね」





◇◇◇






「ちょっとアリナ様、図書館は走らないで下さ……」

彼女を追いかけてきた騎士団長が固まった。彼女がノルズに抱き着いたからだろうか、それともじょおうがここにいるからだろうか。

「この間、騎士団の皆様にご迷惑をおかけしたようで。そのおわびをしたくて…」

色々とツッコミどころが多すぎる。
まず彼女はTPOに応じた対応ができていない。いくらここが人がいないコーナーとはいえ、声の大きすぎる。私なんか最初っからいないもののように話している。
そして「ご迷惑をおかけした」ってなんだ。人づてに聞いたのだろうか。まるで他人事だ。それは保護者や周りの人が言う言葉で、当事者が言うべき言葉ではない。
唯一その後ろで騎士団長がアワアワしてたのが申し訳ないけど面白く感じてしまった。

「あーアリナ嬢、その気持ちはいいんだけど」
「でしたら、是非!早く出ましょう」

小姑みたいでこういう風に思うのは嫌なんだけど。
本があまり好きではない人からしたら、つまらない場所かもしれない。でも今の物言いはどうなのか。

(…いやいや。せっかく私のことを石ころのように思っているのだから、聞こえなかったことにしよう)
護衛でついていたはずのノルズは絡まれ、それをスルトが止めているけど。
そんなことにかまけている時間はないのだ。

「あー、それに僕は今仕事中なんだ。とある事象について調査しているんだよ。だから今はお付き合いできないんだ」
「そうなのですか…」
「そう、またの機会にお願いするよ」

ノルズ、困ってる。できるだけ誠実に断ろうとしているけど、それが勘違いしてしまう原因になってるの知らないんだろうな…
一瞬落ち込んだような表情を見せていた彼女だけど、すぐにぱあっと表情が明るくなった。

「そうですわ!その調査というの、こちらの司書へ頼んではいかがですか?」

アリナ嬢以外の皆が固まった。

(………)

名案なの?すごくいい笑顔で言ってるけど。
そして、私を見て言ってる。私、司書だっけ?

「図書館のことは司書が詳しいですし、調べ物はこちらの方に任せましょう!」

頭すっごいなこの子。
お詫びって相手の仕事中断させてまで行うことじゃないと思うんだけど。
それに騎士団や司書にも機密情報があるっていうの理解してないんだろうな。
それを受けるのなんてありえないんだけど。
でも、それを受けるだろうって思っているんだろう。

「私は構いませんよ。どうぞ行ってきてください、
「!」

(訂正するな)
彼らにそう、目くばせをした。彼女がなら、私は知らせていただろう。だが、目の前の彼女には知らせてはいけない。

(彼女に逆らうな)
断ってみてもよかったかもしれないが、これは施設へ迷惑がかかりそうだから退場してほしいという気持ちでだ。



「ありがとう、司書さん♪」
希望通り、退室していく彼女と二人を見送った。
両手にイケメンがいるからなのか、彼女はとても上機嫌だった。二人は何か言いたげだったが、怪しまれては困るので、さっさとご退場いただいた。


「…さて、続きを調べなくっちゃ」














一通り調べたが、本からはいい情報は得られなかった。
ノルズから聞いた召喚魔法が、一番の収穫だ。
だが現実的ではない。どうしたものか…

ふと外を見るともう空が橙色をしている。
時計を見ると終業時刻までのこり数十分だ。早く帰らなくてはロキに心配をかけてしまう。

「そろそろ、帰りましょうか」
席から立ちあがったその時。



「お送りしますよ。陛下」

ヒュっと、声にもならない音が出す。
背後からでもわかる大好きな声がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。 自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

処理中です...