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ティキの呪い(竹書房怪談マンスリーコンテスト一次選考通過作品)
しおりを挟む「占い婚って知ってますか?私、バツイチで今の主人とは婚活パーティーで知り合ったんですよ。どの占いでも物凄く相性が良くって」
そう前置きを置いて、身の上に起こった話をしてくれたのは志染麻衣子(しじみまいこ)さん、50代の女性である。志染さんのご主人はインテリアデザイナーで、自宅に事務所があるのだという。
志染さんには長年悩みの種があった。それは夫の女癖が悪い事である。やたら若いアシスタントを雇い、住み込みで働かせているのだ。ご主人も浮気を隠すわけでもなく、志染さんにアシスタントの洗濯や食事の用意までさせるのだと云う。
辛い思いをしながら何故別れないのかと尋ねると、袖を捲り腕に刻まれたタトゥーを見せてきた。数年前のハネムーンに、ご主人とタヒチに行った時に彫ったものだと云う。既婚者のトライバルタトゥーで、タコノキ、クジラ、イプ、トカゲ、サメの歯等多くのモチーフがティキを囲む様に描かれている。
「最近、ティキから血が滲むんです」
ティキとは人の顔のお面のようなシンボルマークだ。それが時折、歯をカチカチ鳴らしながら話しかけてくると言う。
「最初は気味が悪かったんですけど、この子、アドバイスをくれるんです」
それは、きまってご主人が浮気して志染さんの機嫌が悪い時。今日のスカーフは青より黄色の方が良いとか、スープには魚を入れた方が良いとかアドバイスをくれるのだと言う。
「ほら、早朝にテレビでやってる占いと同じですよ。最近はね、なんだかティキが私達の子供の様に感じて」
志染さんは、子種を宿しておけないと言っていた胎に目を落とすと『ご主人とタヒチに行った時の話』に、こんなエピソードを付け加えた。
「ねぇ…知ってるかしら?昔から呪術とタトゥーって関係が深いんですって。カナダの先住民族とか、日本だとアイヌとかね。海で事故に遭わないようにとか、病気や怪我をしないようにとか、悪っていうのかな?魔物からその人を守る為に彫るんですって。だからね、浮気をしたら呪い殺すように血を混ぜて彫ってもらったんですよ」
誰にとは言わなかったが、まるでその日が待ち遠しいと云うように彼女は微笑んだ。
その後、志染さんからアシスタントが辞めていってしまうと連絡があった。皆、口を揃えて「辞めた方が良いと占って貰った」と言うのだという。
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