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Chapter.1 シスコン、異世界へ。
1-6:シスコン、依頼をこなす。
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さて、早速受けた依頼を終わらせるとしようか。
えっと、一件目は商店通りのハーストス商会か。詳しい場所までは分からないけど、それは周りの人にでも聞けばいいだろう。
俺は冒険者ギルドを出て商店通りまで歩き、そこで道行く人にハーストス商会の場所について尋ねる。
「ハーストス商会? ああ、あの店か。そこの商店通りをまっすぐ行って、左手に見える建物がそうだよ」
「ありがとうございます」
「いやいや、気にする事はないさ。人生は助け合いだよ」
俺はその人に礼を言って、教えてもらったハーストス商会の建物へと向かう。
そこには、瓶のようなものが描かれた看板に、ハーストス商会の文字が書いてあった。
俺は扉を開けて店の中へと入る。
店内は落ち着いた木製の雰囲気で、商品と思われる液体が瓶に入った状態で棚に置いてある。瓶の前には値札が貼ってあるようだ。それも、リカルドから聞いていた以上に安い。
「これは……ポーションか」
どうやらハーストス商会は、ポーションなどの魔法薬と呼ばれる薬を取り扱っている商会のようだ。
魔法薬の作り方は秘匿されていて、許可された錬金術師と薬師のみが作ることを許されているとかなんとか。
ここは、そんな錬金術師や薬師から薬を買い取って売っているのだろう。
地球には無かった物珍しさにちらちらと商品を見ていると、カウンターの方から人好きのするような笑顔を浮かべた、おばあさんが話しかけてきた。
「おや、ポーションにご興味が?」
「ええ。先ほど冒険者になったばかりで、こういったものも揃えておいた方がいいのかなと」
「そうですか。確かに、危険な討伐依頼に向かう時なんかは、持っていった方がいいかもしれませんね」
「失礼ですが、あなたは?」
「おっと、これはいけない。私、ハーストス商会の会頭、ジュリアンヌ・ハーストスと申します」
「商会のトップの方でしたか。俺、いえ、私は……」
「ふふ、楽にしてくださっていいのですよ。いつもの口調で」
「……助かります。俺はルト。ジュリアンヌ会頭の依頼を受けてこちらにやって来ました」
「依頼……というと、あの塩漬け依頼になってしまった依頼を受けて来てくださったのですか?」
「ええ、まあ」
「あらあら。助かります」
素敵な笑顔を浮かべるジュリアンヌ会頭が、深々と頭を下げる。
はて。確かに塩漬けの依頼ではあったが、そこまで礼を言われるような内容なのだろうか?
依頼書には、倉庫の整理としか書いていなかったのだが……。
「では早速、お願いしてもいいですか?」
「ええ。どちらの倉庫を整理すれば?」
「こちらです。どうぞ」
俺はジュリアンヌ会頭に連れられて、ハーストス商会のカウンターの奥の扉を開けて中へと入っていく。
どうやらこの店は奥行きのある構造になっているようで、カウンターの奥の部屋はポーションの在庫などで溢れていた。
だが、別に汚れているとか整理が出来ていないとか、そんな感じは見受けられない。
俺が疑問に思っているとジュリアンヌ会頭は、部屋の隅にひっそりと取り付けてある階段から二階へと向かった。
ギィ、ギィと、木製の踏板を踏む度に音が鳴る。どうやらこちらの階段の方はあまり手入れがされていないようだ。
ジュリアンヌ会頭について階段を登っていき、二階へ着いた俺を待っていたのは、見渡す限りの汚部屋だった。
ゴミなどが散乱しているわけではない。置いてあるのは、全て商品であろうポーションなどの魔法薬の数々。しかもそれらが、絶妙なバランスを保って四方八方に散っている。
足の踏み場もないほどに、薬が散乱しているようだ。それに、かなりの期間放置されていたのか、ホコリが積もっているようにも見える。
まさに惨状、と言っても差し支えないレベルには散らかっていると思った。
「これは、また」
「こんなに汚くて、さぞ驚かれたことでしょう」
「いえ、まぁ……」
「お恥ずかしい話、私は薬作り以外はてんでダメみたいで……下の倉庫は、他の従業員が整理してくれているのでなんとかなっているのですが……」
「っ、あのポーションは会頭が?」
「ええ。これでも薬師の端くれですので」
ポーションを錬金術師や薬師から仕入れているのではなく、そもそも会頭自体がポーションを作れる薬師だったとは。通りで、置いてあるポーションの値段が思った以上に安いと思った。
「それで、この部屋……倉庫? を整理すれば?」
「ええ。出来ればポーションを種類ごとに棚に入れていただけると、ありがたいです。出来栄えに応じて報酬を追加させていただきますので」
「分かりました。ここの整理は任せてください。終わった後はどうすれば?」
「私は下で店番をしておりますので、そちらに来ていただけたら」
「分かりました。では早速取り掛からせていただきます」
「よろしくお願いしますね」
そう、申し訳なさそうに言ったジュリアンヌ会頭は、ギィギィ踏板を鳴らしながら一階へと戻っていった。
……さて、やるか。
「グラ」
『はいはーい!』
俺はグラを呼び出し、籠手で近くにあった棚に触れる。
「この部屋のもの全部を一旦収納して、ホコリを取り除いて、一つ一つ取り出すことは出来るか?」
『もち! 出来るよ!』
「ありがとう。じゃ、収納してくれ!」
『ほいほーい!』
瞬間、部屋にあった全てのものが一瞬にして消え去った。ホコリも全て消え去ったので、一瞬にして空気が綺麗になったな。
俺はまず、棚のホコリを落として元あった場所にセットしていく。そして、その棚一つ一つに、種類を合わせたポーションを置いていった。
グラの収納は本当にチートじみていて、フィルタをかけたりソートをかけたりすることも出来、なおかつリストをピックアップすることも出来る。
「さすがだな、グラ」
『えへへー! これくらいならお安い御用だよ!』
ポーションの種類をフィルタにかけて、同じ種類のポーションをランクごとに分けて整理していく。
よく分からない器具などは、テーブルの上に置いておくことにした。恐らくジュリアンヌ会頭が作業する時に使う器具なのだろう。こちらも綺麗にホコリを落としておいた。
気付けば一時間ほどの作業で、あの汚かった部屋から元の綺麗な部屋に戻っていた。まさに、劇的ビフォーアフターって感じだな。
俺はグラを紋章に戻すと、部屋の整理が終わったことを知らせるために一階へと降りていく。
音を鳴らして降りてきた俺に気付いたのか、ジュリアンヌ会頭がカウンターの方から歩いてきているのが見てた。
「あら、ルトさん。どうしたんですか? 何か分からないことでも?」
「いえ。部屋の整理が終わったので、報告しようかと」
「……今、何と?」
「ええ。部屋の整理が終わったので、報告しようかと思って降りてきました」
「……終わったのですか? この短時間で?」
「ええ、まあ。そこはちょちょいっと」
俺の言葉に信じられないという表情を浮かべたジュリアンヌ会頭を連れて、俺は再び二階の部屋と戻った。
一時間ほどで元の綺麗な状態を取り戻した部屋を見て、ジュリアンヌ会頭は目と口を大きく開いて驚いている。
「本当に一時間で……」
「これで、依頼は達成だと思うのですが……」
「ええ、ええ。ここまで綺麗に、種類を分けて整理してくださったのですから、本当に、ありがとうございます」
「それが、受けた仕事ですから」
「ふふふ。では、依頼書を出していただけますか?」
俺はジュリアンヌ会頭に言われた通りに依頼書を取り出して手渡す。
ジュリアンヌ会頭は依頼書の達成後の氏名記入欄に名前を書いて、俺に渡してきた。
「これで依頼は達成です。本当に、ありがとうございました」
「お礼を言われるようなことはしていませんよ。では、次の依頼がありますので」
「ああ、ちょっと待ってください。追加の報酬をお持ちしますので、一階までついてきて貰えませんか?」
そう言うとジュリアンヌ会頭は足早に一階へと降りていく。まぁ、くれると言うなら貰っておくかと、俺もその後ろをついて行った。
「冒険者になりたてということで、このポーションを贈らせていただきます。本当はこんなもの、使う機会がないといいのですが」
「いえいえ。とてもありがたいです。それでこのポーションはどんなポーションなのですか?」
「これは、私が一つだけ作れたポーション……蘇生薬です」
「……ッ、リザレクト、ですか」
「ええ。効果は、死後一分以内の人間に振りかければ、蘇生してくれるというものです。幻のポーションとも言われていますが、素材さえあれば私の手でも作ることが出来るくらいには、簡単なポーションなんですよ」
その素材が幻と呼ばれるくらいには貴重なのですが、とジュリアンヌ会頭は続けた。
蘇生薬。ゲームによっては、世〇樹の葉やフェ〇ックスの尾などと呼ばれている、ファンタジーゲーム御用達のアイテムだ。
だがそれが、現実の世界に存在しているなんて……。
「老衰にはききませんが、それ以外の死因であればたちまちその者を癒してくれます。これを、ルトさんに」
「……何でこんな貴重なものを、俺に?」
「何ででしょうね。私にもよく分からないんです。でも、これはあなたが持っているべきだと、そう思ったんですよ」
「……ありがとうございます。救える命が目の前にある時、使わせていただきます」
「そう言って貰えると、私も嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。次は、お客さんとして来てくださいね」
「分かりました。ポーションが必要になったらこちらに買いに来ることにします」
俺はジュリアンヌ会頭に軽く頭を下げて、店から外に出ていく。その際、周りに見られているか確認しながら、リザレクトポーションをグラの中へとしまった。
……とんでもないものを、貰ってしまった気がする。これはしばらく、封印だな。
ふぅ、と軽く息を吐いて、二枚目の依頼書を取り出す。
「さて次の依頼者は――」
こうして俺は一日にして、塩漬け依頼のいくつかを達成するのだった。
えっと、一件目は商店通りのハーストス商会か。詳しい場所までは分からないけど、それは周りの人にでも聞けばいいだろう。
俺は冒険者ギルドを出て商店通りまで歩き、そこで道行く人にハーストス商会の場所について尋ねる。
「ハーストス商会? ああ、あの店か。そこの商店通りをまっすぐ行って、左手に見える建物がそうだよ」
「ありがとうございます」
「いやいや、気にする事はないさ。人生は助け合いだよ」
俺はその人に礼を言って、教えてもらったハーストス商会の建物へと向かう。
そこには、瓶のようなものが描かれた看板に、ハーストス商会の文字が書いてあった。
俺は扉を開けて店の中へと入る。
店内は落ち着いた木製の雰囲気で、商品と思われる液体が瓶に入った状態で棚に置いてある。瓶の前には値札が貼ってあるようだ。それも、リカルドから聞いていた以上に安い。
「これは……ポーションか」
どうやらハーストス商会は、ポーションなどの魔法薬と呼ばれる薬を取り扱っている商会のようだ。
魔法薬の作り方は秘匿されていて、許可された錬金術師と薬師のみが作ることを許されているとかなんとか。
ここは、そんな錬金術師や薬師から薬を買い取って売っているのだろう。
地球には無かった物珍しさにちらちらと商品を見ていると、カウンターの方から人好きのするような笑顔を浮かべた、おばあさんが話しかけてきた。
「おや、ポーションにご興味が?」
「ええ。先ほど冒険者になったばかりで、こういったものも揃えておいた方がいいのかなと」
「そうですか。確かに、危険な討伐依頼に向かう時なんかは、持っていった方がいいかもしれませんね」
「失礼ですが、あなたは?」
「おっと、これはいけない。私、ハーストス商会の会頭、ジュリアンヌ・ハーストスと申します」
「商会のトップの方でしたか。俺、いえ、私は……」
「ふふ、楽にしてくださっていいのですよ。いつもの口調で」
「……助かります。俺はルト。ジュリアンヌ会頭の依頼を受けてこちらにやって来ました」
「依頼……というと、あの塩漬け依頼になってしまった依頼を受けて来てくださったのですか?」
「ええ、まあ」
「あらあら。助かります」
素敵な笑顔を浮かべるジュリアンヌ会頭が、深々と頭を下げる。
はて。確かに塩漬けの依頼ではあったが、そこまで礼を言われるような内容なのだろうか?
依頼書には、倉庫の整理としか書いていなかったのだが……。
「では早速、お願いしてもいいですか?」
「ええ。どちらの倉庫を整理すれば?」
「こちらです。どうぞ」
俺はジュリアンヌ会頭に連れられて、ハーストス商会のカウンターの奥の扉を開けて中へと入っていく。
どうやらこの店は奥行きのある構造になっているようで、カウンターの奥の部屋はポーションの在庫などで溢れていた。
だが、別に汚れているとか整理が出来ていないとか、そんな感じは見受けられない。
俺が疑問に思っているとジュリアンヌ会頭は、部屋の隅にひっそりと取り付けてある階段から二階へと向かった。
ギィ、ギィと、木製の踏板を踏む度に音が鳴る。どうやらこちらの階段の方はあまり手入れがされていないようだ。
ジュリアンヌ会頭について階段を登っていき、二階へ着いた俺を待っていたのは、見渡す限りの汚部屋だった。
ゴミなどが散乱しているわけではない。置いてあるのは、全て商品であろうポーションなどの魔法薬の数々。しかもそれらが、絶妙なバランスを保って四方八方に散っている。
足の踏み場もないほどに、薬が散乱しているようだ。それに、かなりの期間放置されていたのか、ホコリが積もっているようにも見える。
まさに惨状、と言っても差し支えないレベルには散らかっていると思った。
「これは、また」
「こんなに汚くて、さぞ驚かれたことでしょう」
「いえ、まぁ……」
「お恥ずかしい話、私は薬作り以外はてんでダメみたいで……下の倉庫は、他の従業員が整理してくれているのでなんとかなっているのですが……」
「っ、あのポーションは会頭が?」
「ええ。これでも薬師の端くれですので」
ポーションを錬金術師や薬師から仕入れているのではなく、そもそも会頭自体がポーションを作れる薬師だったとは。通りで、置いてあるポーションの値段が思った以上に安いと思った。
「それで、この部屋……倉庫? を整理すれば?」
「ええ。出来ればポーションを種類ごとに棚に入れていただけると、ありがたいです。出来栄えに応じて報酬を追加させていただきますので」
「分かりました。ここの整理は任せてください。終わった後はどうすれば?」
「私は下で店番をしておりますので、そちらに来ていただけたら」
「分かりました。では早速取り掛からせていただきます」
「よろしくお願いしますね」
そう、申し訳なさそうに言ったジュリアンヌ会頭は、ギィギィ踏板を鳴らしながら一階へと戻っていった。
……さて、やるか。
「グラ」
『はいはーい!』
俺はグラを呼び出し、籠手で近くにあった棚に触れる。
「この部屋のもの全部を一旦収納して、ホコリを取り除いて、一つ一つ取り出すことは出来るか?」
『もち! 出来るよ!』
「ありがとう。じゃ、収納してくれ!」
『ほいほーい!』
瞬間、部屋にあった全てのものが一瞬にして消え去った。ホコリも全て消え去ったので、一瞬にして空気が綺麗になったな。
俺はまず、棚のホコリを落として元あった場所にセットしていく。そして、その棚一つ一つに、種類を合わせたポーションを置いていった。
グラの収納は本当にチートじみていて、フィルタをかけたりソートをかけたりすることも出来、なおかつリストをピックアップすることも出来る。
「さすがだな、グラ」
『えへへー! これくらいならお安い御用だよ!』
ポーションの種類をフィルタにかけて、同じ種類のポーションをランクごとに分けて整理していく。
よく分からない器具などは、テーブルの上に置いておくことにした。恐らくジュリアンヌ会頭が作業する時に使う器具なのだろう。こちらも綺麗にホコリを落としておいた。
気付けば一時間ほどの作業で、あの汚かった部屋から元の綺麗な部屋に戻っていた。まさに、劇的ビフォーアフターって感じだな。
俺はグラを紋章に戻すと、部屋の整理が終わったことを知らせるために一階へと降りていく。
音を鳴らして降りてきた俺に気付いたのか、ジュリアンヌ会頭がカウンターの方から歩いてきているのが見てた。
「あら、ルトさん。どうしたんですか? 何か分からないことでも?」
「いえ。部屋の整理が終わったので、報告しようかと」
「……今、何と?」
「ええ。部屋の整理が終わったので、報告しようかと思って降りてきました」
「……終わったのですか? この短時間で?」
「ええ、まあ。そこはちょちょいっと」
俺の言葉に信じられないという表情を浮かべたジュリアンヌ会頭を連れて、俺は再び二階の部屋と戻った。
一時間ほどで元の綺麗な状態を取り戻した部屋を見て、ジュリアンヌ会頭は目と口を大きく開いて驚いている。
「本当に一時間で……」
「これで、依頼は達成だと思うのですが……」
「ええ、ええ。ここまで綺麗に、種類を分けて整理してくださったのですから、本当に、ありがとうございます」
「それが、受けた仕事ですから」
「ふふふ。では、依頼書を出していただけますか?」
俺はジュリアンヌ会頭に言われた通りに依頼書を取り出して手渡す。
ジュリアンヌ会頭は依頼書の達成後の氏名記入欄に名前を書いて、俺に渡してきた。
「これで依頼は達成です。本当に、ありがとうございました」
「お礼を言われるようなことはしていませんよ。では、次の依頼がありますので」
「ああ、ちょっと待ってください。追加の報酬をお持ちしますので、一階までついてきて貰えませんか?」
そう言うとジュリアンヌ会頭は足早に一階へと降りていく。まぁ、くれると言うなら貰っておくかと、俺もその後ろをついて行った。
「冒険者になりたてということで、このポーションを贈らせていただきます。本当はこんなもの、使う機会がないといいのですが」
「いえいえ。とてもありがたいです。それでこのポーションはどんなポーションなのですか?」
「これは、私が一つだけ作れたポーション……蘇生薬です」
「……ッ、リザレクト、ですか」
「ええ。効果は、死後一分以内の人間に振りかければ、蘇生してくれるというものです。幻のポーションとも言われていますが、素材さえあれば私の手でも作ることが出来るくらいには、簡単なポーションなんですよ」
その素材が幻と呼ばれるくらいには貴重なのですが、とジュリアンヌ会頭は続けた。
蘇生薬。ゲームによっては、世〇樹の葉やフェ〇ックスの尾などと呼ばれている、ファンタジーゲーム御用達のアイテムだ。
だがそれが、現実の世界に存在しているなんて……。
「老衰にはききませんが、それ以外の死因であればたちまちその者を癒してくれます。これを、ルトさんに」
「……何でこんな貴重なものを、俺に?」
「何ででしょうね。私にもよく分からないんです。でも、これはあなたが持っているべきだと、そう思ったんですよ」
「……ありがとうございます。救える命が目の前にある時、使わせていただきます」
「そう言って貰えると、私も嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。次は、お客さんとして来てくださいね」
「分かりました。ポーションが必要になったらこちらに買いに来ることにします」
俺はジュリアンヌ会頭に軽く頭を下げて、店から外に出ていく。その際、周りに見られているか確認しながら、リザレクトポーションをグラの中へとしまった。
……とんでもないものを、貰ってしまった気がする。これはしばらく、封印だな。
ふぅ、と軽く息を吐いて、二枚目の依頼書を取り出す。
「さて次の依頼者は――」
こうして俺は一日にして、塩漬け依頼のいくつかを達成するのだった。
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