上 下
40 / 40
Chapter3:第二の浮遊大陸《セカンド・ファンタジア》

33話:第二の浮遊大陸《セカンド・ファンタジア》

しおりを挟む
『うーん、思ったよりも暇だねぇ』
「確かにミオンの言う通り暇だけど、注意を怠るわけにはいかないからね。いつモンスターが襲ってくるか……っと、早速来たよ。出撃よろしく」
『おっけー。レン、アイちゃんも出撃よろしくー』
『おう!』
『ん』

 黄昏の戦乙女トワイライト・ヴァルキュリアを修理した私たちは、北の街ノースファスディア第二の浮遊大陸セカンド・ファンタジアまでの空路図を受け取り、空の旅を楽しんでいた。

 ただし定期便を使わない場合、途中でモンスターの群れに襲われる仕様になっているのだとか。既に何度か襲われており、今回もそのうちの一回だ。
 出てくるモンスターはどれも空を飛べるもので、第二の浮遊大陸にも出現するモンスターだ。対空戦のチュートリアルみたいな感じだと思えばいいらしい。

 勝利条件は敵モンスターの全滅、または撃退。敗北条件はプレイヤーの全滅、または乗艦している艦または船の破壊ってところかな。
 黄昏の戦乙女は他の艦や船と違いホーム扱いになっているため、耐久値がゼロになる事での損失ロストは起こりえない。

 だけどその代わりにダメージを受けると稼動効率が下がって、艦の動きが鈍くなる。そのまま稼動効率が下がり続けてゼロになると、他の船における損失判定になって、強制的に発進した港まで戻されることになるらしい。これらは、空路図を受け取る際に注意事項として聞かされたことだ。

 もちろん稼動効率がゼロになると艦を動かせないから、黄昏の戦乙女を起動させた時のように修理が必要になる。
 どれくらいの素材数を要求されるかは分からないけど……最悪の場合、黄昏の戦乙女を修復した時と同じくらいの素材がかかると思った方がいい。

 幸いと言うべきか、黄昏の戦乙女の装甲は厚く、この空域のモンスターの攻撃を受けても稼動効率の低下はほとんど起こらない。
 それでもモンスターを放置してると徐々に稼動効率が削られるので、私たち魔機人マギナが出撃するって感じかな。

 インベントリから対空戦補助用のブースターを取り出して、背部パーツに取り付ける。これは数回の対空戦を経験したことで、あった方が戦闘が楽になるということで作製した拡張用パーツだ。

 流線型の本体パーツに、方向転換用のバーニアを複数個取り付けて、最後に主翼を付けたものがこのマギア・ブースター。魔導石は使わずに、魔力を貯蔵可能なマギアコンデンサを採用している。

 背部パーツに取り付けることで、魔機人本体から供給される魔力を貯蔵することが可能になるってわけ。ちなみにこいつには既に魔力を貯蔵済みなので、本体わたしのENを使わずにマギア・ブースターの魔力のみで使用可能だ。

 マギアコンデンサの性能がそこまで高くないため魔力の貯蔵量自体は低いものの、このブースターは対空戦でかなりの力を発揮してくれている。

 [武装・補助]マギア・ブースター レア度:EXエクストラ 品質:B- 魔力伝導率:B+ 最大魔力貯蔵量:2500
 消費EN:100~

 まだ飛行と呼ぶレベルには達しておらず、滞空時間の短さとENの消費量が重いことがネックだけど、それでも画期的な装備に変わりはない。
 マギア・ブースターを装備した私は、格納庫にある艦上部へと繋がるカタパルトデッキに身体を固定して、レンたち二人を待つ。

『ごめんごめん、遅くなった』
『ん』
『いいよいいよ。さ、今回もちゃっちゃと片付けよう!』
『おう!』
『ん!』
『全員揃ったみたいだね。上部ハッチを開けるから、射出タイミングは任せるよ』
『了解!』

 ヴィーンからの艦内放送を聞き、グッと拳を握る。
 するとほどなくして、閉まっていた上部ハッチが開き始めた。
 ハッチが完全に開いた段階で、私はカタパルトを射出する。

『ミオン、ブラッドライン、出るよ!』

 上方向にカタパルトデッキが射出され、ほんの数秒で艦の上部に辿り着く。まぁ、いわゆるE〇A式出撃方法だね。
 すぐにレンとアイちゃんも艦上部にやってくる。すでに目の前には大きな角を持つ空飛ぶ魚スカイホーンフィッシュと、足の鉤爪が鋭い大きな翼の鳥ビッグクローバードがいた。

 それぞれ別の群れでお互いがお互いを牽制していたが、私たちの姿を認めると一斉に襲いかかってくる。こういう時だけは仲良いんだこいつら。

『スカイホーンフィッシュはレンが、ビッグクローバードはアイちゃんでよろしく! 私はマギアライフルで二人をカバーするよ!』
『おうよ!』
『ん』

 マギア・ブースターを起動させて、マギア・ライフルの照準をそれぞれの方向に合わせる。キィン、と甲高い音を立ててマギア・ブースターが起動し、魔力放出用のノズル部分に魔力を放出するための魔法陣が浮かび上がった。

 レンとアイちゃんも同じくマギア・ブースターを起動し、その手に持つ得物でそれぞれのモンスターに襲いかかった。

『うぉらぁ!』

 レンが手に持つ大剣、マシンブレイカーを振るう度に、スカイホーン・フィッシュが捌かれて粒子に変わる。ただしスカイホーン・フィッシュは次々にその角を突き出しながら突撃してくるため、次第にレンの装甲を掠めるようになった。

『そこっ!』

 私はレンの死角から襲いかかるスカイホーン・フィッシュに、マギア・ライフルの一撃を当てて倒していく。
 光で気付いたのか、私の方を振り向いたレンが小さく右手を挙げた。

『サンキュ!』
『レン、危なっかしいよ。もっと距離とって戦ったらどう?』
『アタシには突撃こうするのが一番性に合ってるから、ね!』
『さいですか』

 小さくため息をついた私は、チラリとアイちゃんの様子を見る。
 アイちゃんはレンとは違い、危なげなく距離をとってビッククローバードと戦っていた。

 え、でもアイちゃんって遠距離武装持ってたっけ……おや、インベントリから取り出したるは、そこそこの大きさの鉄球。その鉄球を放り投げ、バットを振り抜き、鉄球をモンスターの頭にぶち当てた!
 頭部に甚大な被害を受けた鳥は、受けたダメージ以上にフラフラと目を回し、他の鳥にぶつかってもつれ、大地のない空へと落ちていった。

『ぶい』

 ……なるほど。これなら、援護の手をレンに多めにしても大丈夫そうかな! でもね、鳥を落とす度にいちいちこっちに向けてVサインしなくてもいいんだよ。あーもう可愛いな。

 というわけで大した問題も殆どなくサクッとモンスターを殲滅。さらに何回か同じような戦いを繰り返し、一時間ほどでモンスターの襲撃ゾーンを抜けることができたようだった。

『一応襲撃ゾーンは抜けたけど、何が起こるか分からないから甲板……甲板? で、待機で』
『おう』
『ん』

 進む黄昏の戦乙女は、一際大きな雲に突っ込んだ。雲の中は視界が悪く、ギリギリ近くにいる二人が見えるかもといった具合だ。

 幸いそこまで深くはなかったのか、大きな雲を抜けた先には、果てが見えるような青空をバックに、新たな浮遊大陸ファンタジアが姿を現した。

『あれが、第二の浮遊大陸セカンド・ファンタジア……!』
『でけぇ……最初の浮遊大陸ファンタジアがなんだったんだってくらいでけぇな』
『ん。軽く三倍はある』

 大陸は簡単に言えばひし形のような形になっており、四方の部分がそれぞれ港になっているようだ。
 また、大陸の中央には巨大な山が鎮座しており、四方の街から山に、そしてそれぞれの街に向かって道が伸びているようだった。

 他にも北東の方に深い森があったり、南西の方には大きな湖があったりと、見て回りたいダンジョンらしき場所が多い。新素材も沢山ありそうで、今からワクワクが止まらない。
 さて。このまま空の眺めを楽しむのもいいけど、兎にも角にも、港に向かわないと始まらないね。

 確か、北の街ノースファスティアからの定期便は南の港に向かうって話だから、私たちは他の港に行こうかな?
 西か東か北か……北は遠いし、東は……うーん、しばらく森は見たくないなぁ。どっちかと言えば湖の方が見たい。よし、決めた。西に行こう!

 と、思ったところで、ヴィーンからチャットが届いた。

『それで、どこに行くか決めたかい?』
『うん。とりあえず西に向かおうかなって思ってるよ。南は一番人が多そうだからね。ここは、自前の艦を持ってるアドバンテージを活かそう!』
『オーケー。ちなみに北や東じゃない理由は?』
『北は遠いし、東に行くと南西の湖が見れないからかな。あと、森はしばらくいいかなって』
『分かった。そういう理由なら、素直に従うとしよう。上部ハッチを開くから、そこから戻っておいで』
『りょーかーい』

 ヴィーンとのチャットを終えて、レンとアイちゃんの三人で黄昏の戦乙女へと戻っていく。
 西にある港についたのは、それから10分後のことだった。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

響楽堂(ササラエユララ。改)

楽しく拝読しております♪
誤字、というかルビのトラブル報告です。

5話の、6 割くらい読み進めていったあたりで、テキストのルビ設定がちょっとおかしくなっていますよ〜。

ゆーしー
2023.02.18 ゆーしー

 感想ありがとうございます!

 確認してきました。何だかめちゃくちゃなことになってましたね……。
 すぐに修正させていただきました!

解除
る
2023.02.15

続きが楽しみ

ゆーしー
2023.02.16 ゆーしー

 感想ありがとうございます!

 楽しんでいただけるように、頑張ります!

解除
マイン
2023.02.15 マイン

私ならFFO(えふえふおー)と略すかな

ゆーしー
2023.02.16 ゆーしー

 感想ありがとうございます!

 自分もその略称は一回考えたんですけど、FFOだとFFのオンラインに読めちゃって、怒られるかもと「フリファン」に変えちゃいました。

 FFOで問題なさそうなら変更してみます!

解除

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ

黒陽 光
SF
 その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。  現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。  そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。  ――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。 表紙は頂き物です、ありがとうございます。 ※カクヨムさんでも重複掲載始めました。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。