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Chapter2.5:アップデートと遺跡攻略
30話:迷路を越えて
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『おぉ……』
長い地下への階段を、途中から螺旋階段のように変化した階段を降りている私たちの目の前に現れたのは、とんでもなく広い迷路だった。
遺跡の地上部分が可愛く思えてしまうほどに広大な地下遺跡の迷路は、新たな挑戦者を歓迎しているように見える。
『でも、こんなに広いのにインスタンスダンジョンなんですね……』
「まぁ、迷路に限らずダンジョンってのは人手があればあるほど攻略が楽だからな。迷路にレイド単位の人数で挑ませないようにしている……ってのが、一番信じられてる説だ」
「あ、ちなみにここから飛んでいこうなどと思わない方がいいですわよ。指定されたエリア以外に飛び出した瞬間に飛べなくなって、地面に真っ逆さまですから」
「ちなみにソースはリリスタリア本人な」
『ええっ、落ちたんですか?』
「はい……あの時は情け容赦なく死に戻りましたわ……高所落下ダメージで」
「ま、ズルすんなってことだな」
過去の出来事を思い出しているのか、若干落ち込むリリスタリアさん。カンナヅキさんはそんな様子を見て苦笑いしている。私もスラスターで飛ぼうと思えば飛べるから、気を付けないとね。
階段を一番下まで降りると、目の前には一直線に伸びる道が一つ。道幅はそこそこ大きく、上で戦ったガーディアン系のゴーレムが二、三体は並べそうだ。ここから、巨大な迷路攻略が始まる!
……まぁ、この迷路の地図を既に持っているのが我らが兄さんなわけですが。マッピングは大事。
「じゃあフォーメーション組んで進んでいこう。ナビゲーター兼タンク兼アタッカーとして俺が前衛、リリスタリアとカンナヅキが中衛、ビームで射撃ができるミオンちゃんが後衛だ。ミオンちゃんはサーベルも使えるから、殿にピッタリだな」
「はい」
「おう」
『了解』
ユージン兄さんの言葉に三者三様に答えて、私たちは迷路を進んでいく。
確か迷路の攻略法に、壁に手を当てて進むっていうのがあった気がするけど、あれって本当なのだろうか。今度調べてみようかな。
そんなことを考えつつ、私たちは進んでいった。兄さんの歩みに迷いはなく、複雑に道が入り交じる迷路をすいすいと進んで行った。
途中で敵として出てくるガーディアン系のゴーレムも、比較的楽に倒せている。兄さんが大盾を二枚持ちしてゴーレムの攻撃を全部受け持ってくれるから、後ろから攻撃しやすいっていうのはあるよね。
両手持ち装備を片手で持てるのは、やっぱりずるい。大盾を二枚持ちした時の兄さんの防御は、最前線のモンスターと言えどそう易々とは抜けないみたいだ。
「【パリィ】! スイッチ!」
「【大切断】! おらよっ!」
「【ブレイク・ランス】! はぁっ!」
兄さんがゴーレムの攻撃を受け止めて弾き、即座に下がって中衛のリリスタリアさんとカンナヅキさんが前に出る。そのまま槍と斧の一撃をくらい、ゴーレムは沈んでいく。
……いやぁ、私、やることないなぁ。
「ミオンちゃん後ろだ!」
『おっと!』
そんなことを考えてたら、後ろにゴーレムが現れた!
ミオンのマギアサーベルの攻撃! ゴーレムに大ダメージ! ゴーレムは倒れた!
……ふぅ。出てきたのが一体で助かったよ。
『ありがとう兄さん。三人の戦いに見惚れてて警戒を疎かにしちゃった』
「まぁ、次から気をつけてな」
『うん』
私はサーベルをしまって、再びマギアライフルを構える。
その後も何度かゴーレムが襲ってきたけど、その尽くを殲滅。
気付けば迷路も半分を越えていたようで、少し広めの部屋のような場所に出た。
ここに来るまで、およそ一時間と少し。延々と同じ景色が続くから、少し疲れてきたね。
「ここで休憩……と言いたいところだが、その前に一仕事しないとな」
『? この部屋に何かあるの?』
「まぁ、それは見てのお楽しみ、だな」
兄さんの言葉に首を傾げ、じっと部屋の中を見ていると、部屋の四隅に輝ける魔法陣が現れた。
魔法陣の形に見覚えはないけど、つい先日これに似たようなものを見た。
そう、これは――
『モンスター召喚魔法陣!』
「この場合、ゴーレム召喚魔法陣と言った方がいいでしょうか。イベントのものと違って、魔法陣自体は壊せないようになっているのですわ」
『つまり、出てくるゴーレムをひたすら倒さないとダメってことですか』
「その通り。さ、ちゃちゃっと片付けるぞ!」
『はい!』
「どうせなら、一方向一人で行こうじゃないか。誰が一番最初にゴーレムを殲滅できるか、競争だ!」
「おう、負けねぇぞ!」
「ふふ、よろしくてよ」
『やったるぞー!』
兄さんとカンナヅキさんはそれぞれ前方の魔法陣へ、リリスタリアさんは左後方の魔法陣へと駆けていく。私も負けじと右後方の魔法陣へと近付いて行った。
魔法陣から出てくるゴーレムは、道中と変わらずガーディアン・ロックゴーレムとガーディアン・マッドゴーレム。中には剣や盾などの武具を装備しているゴーレムもいた。
新しいゴーレムとして、剣と盾を装備しているガーディアン・ロックゴーレム・ナイトに、ハンマーを装備しているガーディアン・ロックゴーレム・ファイター、大剣を装備しているガーディアン・ロックゴーレム・ソードマンの三種類が追加されていた。
『まずは射撃で数を減らす!』
トリガーを引けば、当たった者に大きなダメージを与えるビームが発射される。ビームの着弾を確認する間もなく、次々とトリガーを引いていく。
通常のガーディアン・ロックゴーレムであれば倒すのに二発、ナイト・ファイター・ソードマンは三発必要だ。ナイトは盾も持っているから、下手したら四発必要になる。あ、ガーディアン・マッドゴーレムは一撃だよ。
ゴーレムたちに囲まれないように立ち位置を調整しながら、数を減らしていく。それでも魔法陣から出現する数と変わらないため、傍目には減っているようには見えない。
『ちぃっ!』
かなりの数のゴーレムに接近され、これ以上ライフルで数を減らすのは厳しいと判断した私は、マギアライフルを手放して肘側へと回転させる。
そうして両手を空けた私は二本のサーベルを抜き放ち、ENを込めて刀身を出現させた。
『サーベルなら、接近されても!』
ナイトが振り下ろしてきた剣をサーベルで切り裂き、返す刀で両腕を切断する。
戦闘力を奪ったナイトを無視して、背後から襲いかかってきたファイターの斧を腕ごと両断。
『邪魔!』
武器を失い立ち尽くすファイターの胴体を蹴り飛ばし、その勢いで薙ぎ払われたソードマンの大剣を回避。そのまま両手のサーベルを振り下ろして、ソードマンの身体をVの字に切り裂いた。
『ふっ――!』
身体を押さえつけようとしてくるガーディアン・ロックゴーレムとガーディアン・マッドゴーレムを文字通り一蹴し、スラスターを噴かせて飛び上がる。
見れば、既に魔法陣の輝きは失われており、新たにゴーレムが増えることはなくなっていた。よし、これなら!
サーベルをバックパックに戻した私は、左肩にジョイントされているマギアソードの柄を握り締め、抜き放つ!
そのままゴーレムたちの中心に降り立った私は、マギアソードにENを込めて《魔力収束》を発動。ヴン、という音と共に極太の光の刀身を出現させた。
『マギアソードで一掃するっ!』
マギアソードの刀身を他の三人の邪魔にならない程度に伸ばし、周囲にいるゴーレムたちを薙ぎ払った。
《魔力収束》の一撃はゴーレムたちのHPを尽く全損させていき、刀身が一回転する頃には、周囲のゴーレムは全て光の粒子に変わっていた。
〈《魔機人》スキルのレベルが上がりました〉
〈《武装》スキルのレベルが上がりました〉
〈《片手剣》スキルのレベルが上がりました〉
私は直ぐにマギアソードへのEN供給を止め、定位置である左肩にジョイントさせる。
……ふぅ。なんとかなった。一体一体は大したことないけど、数で攻められると厄介だね。
んーと、今の戦いで消費したENは……総量の半分くらいかな。やっぱり、マギアソードを使わされたのが痛い。あれめちゃくちゃENを消費するからね。
『さて、他のみんなはっと』
見れば、三人とも既にゴーレムを倒し終わっており、私が終わるのを待っていてくれたようだ。三人とも、何時でも私の援護に入れるように武器を構えつつも、涼しい顔をしている。
「お、加勢は必要なかったか」
「流石は魔機人のトッププレイヤーと言ったところでしょうか」
「ミオンちゃんにダメージがなくて何よりだ」
『やっぱり、みなさんお強いですね。流石は三大クランのクランマスター』
「ま、それほどでもあるかな。ドロップの確認したら先に進むぜ」
カンナヅキさんの言葉に頷き、今の戦闘で得たドロップアイテムを確認していく。
えっと、岩の守護者の欠片に泥の守護者の欠片、これはガーディアン・ロックゴーレムとガーディアン・マッドゴーレムのドロップアイテムだね。
これは文字通りそれぞれのゴーレムの欠片だ。岩の方は特殊な紋様の入った岩で、泥の方はまんま泥。インベントリから取り出すと普通に泥で汚れるから、取り出すなら水の用意が必要だね。
他には騎士の守護者の岩剣に岩盾、戦士の守護者の岩斧、剣士の守護者の大岩剣がインベントリに入っていた。ガーディアン・ロックゴーレムの派生モンスターのドロップアイテムだ。
それぞれ普通に武器として使えるものの、性能は普通に鉄装備に負けるので、ここまでこれるプレイヤーには物足りない装備になるだろう。
「ちなみにゴーレム関連のドロップアイテムは《錬金》持ちの特定プレイヤーによく売れるから、金策としては結構アリだったりするぜ」
『えっ、これ売れるんですか?』
「ああ。詳しいことは教えて貰えなかったが、《錬金》を使ってゴーレムを作り出せるらしい。その素材になるって言うんで、一時期ゴーレム狩りが流行ったくらいだからな」
『ほへー』
全然知らなかった……なんというか、世界は広いな。
そういうことなら、ゴーレム系のドロップアイテムは一応取っておこう。もしかしたら、クランメンバーの中に《錬金》持ちがいるかもしれないし。親方たちの誰かが持ってても不思議じゃないよね。
それにゴーレムって、ちょっとロボットっぽい感じもする。新しく《錬金》スキルを取ってみるのも、悪くないかもしれないね。最近新しいスキルを取ってないから、SPが貯まり気味だし。
まぁSPに関しては、後で沢山使うかも……って思うと、そう易々とは使えないんだよね。肝心な時に足りないってなっても困るし。
さてと。ドロップの確認が終わったら、迷路の続きだ。とは言っても、そこから先にさっきのモンスターハウスみたいな部屋はないし、出てくるゴーレムの強さが変わることもなく。
「着いたぞ」
「もう最奥か。そろそろここも物足りなくなってきたな」
「レベルを上げすぎるのも考えものですね。大型アプデを待つしかありませんわ」
私たちはゴーレムを文字通り蹂躙しながら、地下遺跡の最奥まで辿り着いた。
周囲と同じく石で作られたその大きな扉は、熟練の職人が施したような精緻な紋様を浮かべている。あれって、何を表してるんだろうね。
「じゃあ、開けるぞ」
ユージン兄さんの言葉に全員で頷いた。
見た目にはとても重そうに見える扉だけど、兄さんが手を置けばズズズ、と音を立てながら勝手に開いていく。
完全に開ききった扉の先には、プレイヤーが何百人も入れそうな円形の広大な空間があった。その空間に一歩足を踏み入れると、入口から奥の壁にかけて松明の青い炎が燃え上がる。
そしてその空間の中央に、それはいた。
一見すれば、全身が鉄でできたゴーレム。しかしその大きさは、通常のゴーレムのものよりも大きかった。
そのゴーレムは地面に突き刺さった直剣の柄を、両手で握っている。俗に言う、エレガントなポーズを取っていた。
左腕には少し小さめの盾――ゴーレム基準でだが――を装備しており、それ以外の武装が見えないことから、近接型のボスだということが見て取れる。一概にそうとは言い切れないけどね。
「あれがここのボス、【遺跡の最奥を護る鉄の巨人】ガーディアン・アイアンゴーレム・ゲートキーパーだ」
兄さんの言葉に呼応したのか、中世の騎士のヘルムのようになっているゴーレムの頭部に、ヴン、と赤い輝きが宿った。
赤いモノアイをぐりんと睨めつけるように動かし、私たちを視認したガーディアン・アイアンゴーレム・ゲートキーパーは、右手で直剣の柄を握ると、振り上げるように抜き放つ。
それと同時にゲートキーパーの頭上にHPバーが現れた。その数は四本。
「来るぞっ!」
盾の付いた左腕を前に、直剣を握る右腕を後ろに構えたゲートキーパーを前に、私たちはそれぞれの得物を構えた。
長い地下への階段を、途中から螺旋階段のように変化した階段を降りている私たちの目の前に現れたのは、とんでもなく広い迷路だった。
遺跡の地上部分が可愛く思えてしまうほどに広大な地下遺跡の迷路は、新たな挑戦者を歓迎しているように見える。
『でも、こんなに広いのにインスタンスダンジョンなんですね……』
「まぁ、迷路に限らずダンジョンってのは人手があればあるほど攻略が楽だからな。迷路にレイド単位の人数で挑ませないようにしている……ってのが、一番信じられてる説だ」
「あ、ちなみにここから飛んでいこうなどと思わない方がいいですわよ。指定されたエリア以外に飛び出した瞬間に飛べなくなって、地面に真っ逆さまですから」
「ちなみにソースはリリスタリア本人な」
『ええっ、落ちたんですか?』
「はい……あの時は情け容赦なく死に戻りましたわ……高所落下ダメージで」
「ま、ズルすんなってことだな」
過去の出来事を思い出しているのか、若干落ち込むリリスタリアさん。カンナヅキさんはそんな様子を見て苦笑いしている。私もスラスターで飛ぼうと思えば飛べるから、気を付けないとね。
階段を一番下まで降りると、目の前には一直線に伸びる道が一つ。道幅はそこそこ大きく、上で戦ったガーディアン系のゴーレムが二、三体は並べそうだ。ここから、巨大な迷路攻略が始まる!
……まぁ、この迷路の地図を既に持っているのが我らが兄さんなわけですが。マッピングは大事。
「じゃあフォーメーション組んで進んでいこう。ナビゲーター兼タンク兼アタッカーとして俺が前衛、リリスタリアとカンナヅキが中衛、ビームで射撃ができるミオンちゃんが後衛だ。ミオンちゃんはサーベルも使えるから、殿にピッタリだな」
「はい」
「おう」
『了解』
ユージン兄さんの言葉に三者三様に答えて、私たちは迷路を進んでいく。
確か迷路の攻略法に、壁に手を当てて進むっていうのがあった気がするけど、あれって本当なのだろうか。今度調べてみようかな。
そんなことを考えつつ、私たちは進んでいった。兄さんの歩みに迷いはなく、複雑に道が入り交じる迷路をすいすいと進んで行った。
途中で敵として出てくるガーディアン系のゴーレムも、比較的楽に倒せている。兄さんが大盾を二枚持ちしてゴーレムの攻撃を全部受け持ってくれるから、後ろから攻撃しやすいっていうのはあるよね。
両手持ち装備を片手で持てるのは、やっぱりずるい。大盾を二枚持ちした時の兄さんの防御は、最前線のモンスターと言えどそう易々とは抜けないみたいだ。
「【パリィ】! スイッチ!」
「【大切断】! おらよっ!」
「【ブレイク・ランス】! はぁっ!」
兄さんがゴーレムの攻撃を受け止めて弾き、即座に下がって中衛のリリスタリアさんとカンナヅキさんが前に出る。そのまま槍と斧の一撃をくらい、ゴーレムは沈んでいく。
……いやぁ、私、やることないなぁ。
「ミオンちゃん後ろだ!」
『おっと!』
そんなことを考えてたら、後ろにゴーレムが現れた!
ミオンのマギアサーベルの攻撃! ゴーレムに大ダメージ! ゴーレムは倒れた!
……ふぅ。出てきたのが一体で助かったよ。
『ありがとう兄さん。三人の戦いに見惚れてて警戒を疎かにしちゃった』
「まぁ、次から気をつけてな」
『うん』
私はサーベルをしまって、再びマギアライフルを構える。
その後も何度かゴーレムが襲ってきたけど、その尽くを殲滅。
気付けば迷路も半分を越えていたようで、少し広めの部屋のような場所に出た。
ここに来るまで、およそ一時間と少し。延々と同じ景色が続くから、少し疲れてきたね。
「ここで休憩……と言いたいところだが、その前に一仕事しないとな」
『? この部屋に何かあるの?』
「まぁ、それは見てのお楽しみ、だな」
兄さんの言葉に首を傾げ、じっと部屋の中を見ていると、部屋の四隅に輝ける魔法陣が現れた。
魔法陣の形に見覚えはないけど、つい先日これに似たようなものを見た。
そう、これは――
『モンスター召喚魔法陣!』
「この場合、ゴーレム召喚魔法陣と言った方がいいでしょうか。イベントのものと違って、魔法陣自体は壊せないようになっているのですわ」
『つまり、出てくるゴーレムをひたすら倒さないとダメってことですか』
「その通り。さ、ちゃちゃっと片付けるぞ!」
『はい!』
「どうせなら、一方向一人で行こうじゃないか。誰が一番最初にゴーレムを殲滅できるか、競争だ!」
「おう、負けねぇぞ!」
「ふふ、よろしくてよ」
『やったるぞー!』
兄さんとカンナヅキさんはそれぞれ前方の魔法陣へ、リリスタリアさんは左後方の魔法陣へと駆けていく。私も負けじと右後方の魔法陣へと近付いて行った。
魔法陣から出てくるゴーレムは、道中と変わらずガーディアン・ロックゴーレムとガーディアン・マッドゴーレム。中には剣や盾などの武具を装備しているゴーレムもいた。
新しいゴーレムとして、剣と盾を装備しているガーディアン・ロックゴーレム・ナイトに、ハンマーを装備しているガーディアン・ロックゴーレム・ファイター、大剣を装備しているガーディアン・ロックゴーレム・ソードマンの三種類が追加されていた。
『まずは射撃で数を減らす!』
トリガーを引けば、当たった者に大きなダメージを与えるビームが発射される。ビームの着弾を確認する間もなく、次々とトリガーを引いていく。
通常のガーディアン・ロックゴーレムであれば倒すのに二発、ナイト・ファイター・ソードマンは三発必要だ。ナイトは盾も持っているから、下手したら四発必要になる。あ、ガーディアン・マッドゴーレムは一撃だよ。
ゴーレムたちに囲まれないように立ち位置を調整しながら、数を減らしていく。それでも魔法陣から出現する数と変わらないため、傍目には減っているようには見えない。
『ちぃっ!』
かなりの数のゴーレムに接近され、これ以上ライフルで数を減らすのは厳しいと判断した私は、マギアライフルを手放して肘側へと回転させる。
そうして両手を空けた私は二本のサーベルを抜き放ち、ENを込めて刀身を出現させた。
『サーベルなら、接近されても!』
ナイトが振り下ろしてきた剣をサーベルで切り裂き、返す刀で両腕を切断する。
戦闘力を奪ったナイトを無視して、背後から襲いかかってきたファイターの斧を腕ごと両断。
『邪魔!』
武器を失い立ち尽くすファイターの胴体を蹴り飛ばし、その勢いで薙ぎ払われたソードマンの大剣を回避。そのまま両手のサーベルを振り下ろして、ソードマンの身体をVの字に切り裂いた。
『ふっ――!』
身体を押さえつけようとしてくるガーディアン・ロックゴーレムとガーディアン・マッドゴーレムを文字通り一蹴し、スラスターを噴かせて飛び上がる。
見れば、既に魔法陣の輝きは失われており、新たにゴーレムが増えることはなくなっていた。よし、これなら!
サーベルをバックパックに戻した私は、左肩にジョイントされているマギアソードの柄を握り締め、抜き放つ!
そのままゴーレムたちの中心に降り立った私は、マギアソードにENを込めて《魔力収束》を発動。ヴン、という音と共に極太の光の刀身を出現させた。
『マギアソードで一掃するっ!』
マギアソードの刀身を他の三人の邪魔にならない程度に伸ばし、周囲にいるゴーレムたちを薙ぎ払った。
《魔力収束》の一撃はゴーレムたちのHPを尽く全損させていき、刀身が一回転する頃には、周囲のゴーレムは全て光の粒子に変わっていた。
〈《魔機人》スキルのレベルが上がりました〉
〈《武装》スキルのレベルが上がりました〉
〈《片手剣》スキルのレベルが上がりました〉
私は直ぐにマギアソードへのEN供給を止め、定位置である左肩にジョイントさせる。
……ふぅ。なんとかなった。一体一体は大したことないけど、数で攻められると厄介だね。
んーと、今の戦いで消費したENは……総量の半分くらいかな。やっぱり、マギアソードを使わされたのが痛い。あれめちゃくちゃENを消費するからね。
『さて、他のみんなはっと』
見れば、三人とも既にゴーレムを倒し終わっており、私が終わるのを待っていてくれたようだ。三人とも、何時でも私の援護に入れるように武器を構えつつも、涼しい顔をしている。
「お、加勢は必要なかったか」
「流石は魔機人のトッププレイヤーと言ったところでしょうか」
「ミオンちゃんにダメージがなくて何よりだ」
『やっぱり、みなさんお強いですね。流石は三大クランのクランマスター』
「ま、それほどでもあるかな。ドロップの確認したら先に進むぜ」
カンナヅキさんの言葉に頷き、今の戦闘で得たドロップアイテムを確認していく。
えっと、岩の守護者の欠片に泥の守護者の欠片、これはガーディアン・ロックゴーレムとガーディアン・マッドゴーレムのドロップアイテムだね。
これは文字通りそれぞれのゴーレムの欠片だ。岩の方は特殊な紋様の入った岩で、泥の方はまんま泥。インベントリから取り出すと普通に泥で汚れるから、取り出すなら水の用意が必要だね。
他には騎士の守護者の岩剣に岩盾、戦士の守護者の岩斧、剣士の守護者の大岩剣がインベントリに入っていた。ガーディアン・ロックゴーレムの派生モンスターのドロップアイテムだ。
それぞれ普通に武器として使えるものの、性能は普通に鉄装備に負けるので、ここまでこれるプレイヤーには物足りない装備になるだろう。
「ちなみにゴーレム関連のドロップアイテムは《錬金》持ちの特定プレイヤーによく売れるから、金策としては結構アリだったりするぜ」
『えっ、これ売れるんですか?』
「ああ。詳しいことは教えて貰えなかったが、《錬金》を使ってゴーレムを作り出せるらしい。その素材になるって言うんで、一時期ゴーレム狩りが流行ったくらいだからな」
『ほへー』
全然知らなかった……なんというか、世界は広いな。
そういうことなら、ゴーレム系のドロップアイテムは一応取っておこう。もしかしたら、クランメンバーの中に《錬金》持ちがいるかもしれないし。親方たちの誰かが持ってても不思議じゃないよね。
それにゴーレムって、ちょっとロボットっぽい感じもする。新しく《錬金》スキルを取ってみるのも、悪くないかもしれないね。最近新しいスキルを取ってないから、SPが貯まり気味だし。
まぁSPに関しては、後で沢山使うかも……って思うと、そう易々とは使えないんだよね。肝心な時に足りないってなっても困るし。
さてと。ドロップの確認が終わったら、迷路の続きだ。とは言っても、そこから先にさっきのモンスターハウスみたいな部屋はないし、出てくるゴーレムの強さが変わることもなく。
「着いたぞ」
「もう最奥か。そろそろここも物足りなくなってきたな」
「レベルを上げすぎるのも考えものですね。大型アプデを待つしかありませんわ」
私たちはゴーレムを文字通り蹂躙しながら、地下遺跡の最奥まで辿り着いた。
周囲と同じく石で作られたその大きな扉は、熟練の職人が施したような精緻な紋様を浮かべている。あれって、何を表してるんだろうね。
「じゃあ、開けるぞ」
ユージン兄さんの言葉に全員で頷いた。
見た目にはとても重そうに見える扉だけど、兄さんが手を置けばズズズ、と音を立てながら勝手に開いていく。
完全に開ききった扉の先には、プレイヤーが何百人も入れそうな円形の広大な空間があった。その空間に一歩足を踏み入れると、入口から奥の壁にかけて松明の青い炎が燃え上がる。
そしてその空間の中央に、それはいた。
一見すれば、全身が鉄でできたゴーレム。しかしその大きさは、通常のゴーレムのものよりも大きかった。
そのゴーレムは地面に突き刺さった直剣の柄を、両手で握っている。俗に言う、エレガントなポーズを取っていた。
左腕には少し小さめの盾――ゴーレム基準でだが――を装備しており、それ以外の武装が見えないことから、近接型のボスだということが見て取れる。一概にそうとは言い切れないけどね。
「あれがここのボス、【遺跡の最奥を護る鉄の巨人】ガーディアン・アイアンゴーレム・ゲートキーパーだ」
兄さんの言葉に呼応したのか、中世の騎士のヘルムのようになっているゴーレムの頭部に、ヴン、と赤い輝きが宿った。
赤いモノアイをぐりんと睨めつけるように動かし、私たちを視認したガーディアン・アイアンゴーレム・ゲートキーパーは、右手で直剣の柄を握ると、振り上げるように抜き放つ。
それと同時にゲートキーパーの頭上にHPバーが現れた。その数は四本。
「来るぞっ!」
盾の付いた左腕を前に、直剣を握る右腕を後ろに構えたゲートキーパーを前に、私たちはそれぞれの得物を構えた。
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欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
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小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
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