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Chapter.2:黄昏の戦乙女と第一回イベント
19話:【黄昏の戦乙女《トワイライト・ヴァルキュリア》】
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〈散華の森・最奥〉を歩くこと数分。
ここには何故かモンスターのモの字もなく、さわさわと枝葉が風に揺れる音と、私たちが草を踏む音だけが響いていた。
……一応警戒はしてるけど、この感じだとモンスターが湧かないフィールドなのかもしれないね。
この場所を塞ぐようにして守っていたゴーレム……本当に、ここには何かがあるのかもしれない。
マップを埋めつつ10分ほど歩いてみたが、本当にモンスターは出てこないようだ。
私たちは一度セーフティーエリアまで戻り、この後のことを相談していた。
『なぁ、どうする? モンスターが出てこないってんなら、手分けして探索するのもありじゃねぇか?』
『ん、賛成』
「ここまでモンスターと出会わないなら、警戒するだけ無駄、か。よし、みんなで手分けして探そう。何か見つけたら、チャットで共有して欲しい」
『おっけー!』
『おう!』
『ん!』
私はヴィーンたちと別れ、一人で森を散策する。短い草を踏む感触がどこか楽しい。
〈散華の森・最奥〉の木々はとても背が高く、枝葉はかなり上部に付いているようだ。その枝葉が陽の光のほとんどを遮ってしまっているため、背の高い草などが育たないのだろう。
そのまま景色を眺めながら移動すること、およそ20分。
私は、マップ上における最南端の場所までたどり着いていた。
そしてそこにあったものを見て、私は思わず固まってしまった。
『……何、これ』
そこにあったのは、残骸。いや、見た目はボロボロに見えるが、よく見ると表面の塗装がはげ落ちているだけで、残骸と呼ぶにはあまりにも大きい。
艦首だけで三階建て一軒家ほどの大きさ。そこから伸びる艦体はさらに巨大で、蔦や木の根などが絡みつき、苔むした外装がこの艦が長い時をここで過ごしたことを教えてくれている。
私はみんなにチャットを送ることを忘れ、恐る恐るそれに近付く。入口だったのであろう長方形の装甲板にはなにか文字のようなものが書かれており、侵食していた苔を払うと、そこにはこう書かれていた。
『機動戦艦、黄昏の戦乙女……?』
しばらく艦体を眺めていた私はハッ、と我に返り、PTチャットを送る。
『みんな。地図で言うところのこの地点に来て欲しいんだけど……』
『……ミオン? どうしたんだい? 何か見つけたのかな?』
『もしかして、ボスモンスターか!?』
『……なら、すぐ向かう』
『違う違う! モンスターじゃない! モンスターじゃないんだけど……!』
『なら、その場所に何があると言うんだい?』
私は、ヴィーンの問いに一つ深呼吸をして答える。
『……艦があったの』
『船? こんな森の中に?』
『なんだってそんなもんが森に?』
『……昔はここも海だった、とか?』
『その船じゃなくて……あー、その、ああもう! あったのは戦艦! それも、機動戦艦なの!』
『……』
『……』
『……』
場を包む沈黙。その沈黙を破ったのは、レンだった。
『なぁミオン。それは本当に戦艦なのか? 見間違いでなく?』
『外観はボロボロであまり判別はできないけど、乗降口らしきところに機動戦艦って書いてあったから、恐らく……』
『まぁ、戦艦なんていうバカでかいものを見間違えることはないだろう。分かった。すぐに行くよ』
『アタシも行くぜ!』
『ん!』
そこでPTチャットが切れる。私は大きく息を吐いて(中の人的に)近くの岩に腰をかけた。
みんなが来るまでの間、私は黄昏の戦乙女という名前の付いた廃戦艦を見つめる。
魔機人のスタート地点として選べる〈散華の森〉。その森にある魔機人専用ダンジョンに、魔機人の製作者と思われる者の研究所。そして、その森の一番奥にあった機動戦艦。
もしかしてこれは、偶然ではない?
確か、FFOに根幹となる物語はないって話だったっけ。少なくとも、ベータ時代にはなかったらしい。ソースは兄さん。
その代わり、種族ごとに個別のストーリーがいくつも用意されてるって話だったけど……ああ、兄さんは解放条件が分からないって嘆いてたっけ。
これが、そう始まりなのだろうか。
目の前にある、この朽ちてなおその存在感を誇る、この艦が。
『……なんて、ね』
さて、と。みんなが来る前にできることはしちゃおうか。とりあえず、《鑑定》から行ってみようか!
[戦艦・ホーム]黄昏の戦乙女 レア度:U
修復度:0/1000000
【収納不可】【譲渡不可】【移動不可】
〈魔機人による戦艦の鑑定が行われました。鑑定に情報を追加します〉
ん? 魔機人が鑑定することで情報が増えた? 追加情報を確認してみよう。
[追加情報]
かつてこの空を支配していた機動戦艦の内の一つ。魔機人の開発者である稀代の天才発明家、マギアーノ・クライスドーラ博士が提唱した「魔機人を効率よく戦場で運用する方法」に則り製造されたもの。
大昔に大戦で使用され、この浮遊大陸の大地に沈んだ。
再び、空を飛ぶ日は来るのだろうか。
マギアーノ……どこかで聞き覚えがあるような?
『……ああ! あの隠し部屋の!』
思い出した! 魔導石と魔力結晶炉を手に入れた時に、貼ってあったペラ紙に書いてあった名前だ!
こうしてまた出てきたってことは、魔機人の種族ストーリーに関わってくる人なのかな? うん、覚えておこう。
そしてあれだね。うん、これ、ユニークカテゴリーアイテムだ。
FFOに一つしか存在しないアイテム。それが今、目の前にある!
……でも、収納不可なんだよね。流石にガレージと同じようにはいかないか。
後は、この修復度っていうのが気になるね。もしかして、この戦艦を修理したら私たちのものになるとか?
ホーム扱いだし、この戦艦をクランハウスにできたら……うん、いいね!
「確かにこれは、船と呼ぶには機械的過ぎるね……まさに、艦だ」
『すっげぇ……』
『大きい』
『ヴィーン!』
「お待たせ。しかし、凄いものを見つけたね」
『うん。それでね――』
ヴィーンは感嘆と共に、レンとアイちゃんの二人は語彙力を失った状態でやってきた。
三人と合流できたので、早速鑑定結果を共有した。
「ふむ。それでミオン、どうするつもりだい?」
『もち、私たちで直す! せっかくのユニークアイテム……それも魔機人のために用意されたものを、他のプレイヤーに渡せますか!』
「……ま、そういうだろうと思ったよ。私も、少し興奮していてね。できることなら、私たちの手で直したい」
『ああ! こんなの燃えるじゃねぇか! やってやろうぜ! アタシたちの手で!』
『ん!』
『よぅし! クラン【自由の機翼】の一世一代の大仕事だよ!』
『『「おー!」』』
全員で拳を突き上げる。
とりあえず、ここをしばらく拠点にしよう。始まりの街からは遠くなるけど、私たちって特に用事がない限りは〈散華の森〉にいるからなぁ。
私のガレージを出して、簡易的な拠点とする。レンとアイちゃんも自分のガレージを持っているけど、毎回私のところに来るんだよね。
ヴィーンが《木工》スキルで作った簡易的な椅子に座る。
みんなが座ったのを確認したヴィーンが、口を開いた。
「とは言ったものの、私たち四人だけではこの戦艦を修理するのにどれくらいの時間がかかるか分からない」
『じゃあどうすんだ? 誰か人を増やすのか?』
「それが一番手っ取り早いね。数は正義とも言うし、募集をかければ玉石混交ではあるけど人は増えるだろう」
『んー、でも、誰彼構わず入れたいってわけじゃないんだよね。中には人を見下してくる嫌な人もいるかもしれないし』
「うん。でも、人を増やすというのはいいアイデアだ。数人だけでも入ってもらえれば、それだけで楽になるからね。人柄重視で少数だけ誘うのは、ありだと思うよ」
『つっても、アタシのフレンドはここにいるので全員だぜ?』
『ん』
『私も』
「……まぁ、ミオンは、というより三人ともガレージに篭もることが多かったからね。私のフレンドに心当たりがある。確か始まりの街で活動してるって言ってたから、後で会いに行ってみるよ」
『一人で大丈夫?』
「大丈夫だとは思うけど、そのフレンドを連れてきた時にボス戦が必要になった時は、来てくれると助かるね」
『おっけー! こっちはこっちで戦艦の修復を進めておくよ!』
「うん。任せたよ」
『おう! 任された!』
『ん』
「じゃあ、行ってくる」
ヴィーンは座っていた椅子をアイテムボックスにしまうと、装備を整えてガレージから出ていった。
……さて、と。私たちの方も頑張りますか!
『二人とも! まずはどうやって修復するのか確認しよう!』
『だな。あいつが帰ってくる前に、少しでも進めておかねぇと』
『頑張る』
ある程度の素材をアイテムボックスに入れて、ガレージから外へと出る。
この巨大な戦艦をどうやって修理すればいいのか……ん?
さっきは触れても何も表示されてなかったけど、今回は触れたらウィンドウが出てきたね。
[黄昏の戦乙女]
修復度:0/100000 [捧げる]
※修復度はアイテムを捧げることで増えていきます。捧げたアイテムによって、増える修復度が変わります。
関係ないアイテムを捧げても修復度は増えません。捧げられたアイテムは修復度の増加にかかわらず消滅します。
ふむ。アイテムを捧げていくだけでいいんだ。数は膨大だけど、結構楽じゃないかな?
これなら四人でも大丈夫かもね。
……うーん、とりあえず、インゴットでも捧げてみようかな? この、鉄のインゴットを捧げる!
[黄昏の戦乙女]
修復度:0.5/1000000 [捧げる]
ん、んん? えっと、待って?
鉄のインゴット一つで増えた修復度は……0.5!?
鉄のインゴットだけで修復しようとしたら、200万この鉄のインゴットが必要……何だかMMOって感じがするなぁ。
レンとアイちゃんの二人も、この増加量には苦笑いだ。
『こりゃ、さっさとヴィーンに人連れてきて貰わないとダメかもしれないな』
『……頑張る。けど、インゴットなんてそんなに作れない。素材もない』
『だよね。とりあえず、〈散華の森〉の上層と中層の採掘ポイント巡りしないとダメかな?』
『……よし、やるか!』
『ん』
私たちはヴィーンに修復度の増え方と、必要な鉱石を掘りに行くことを伝えて、〈散華の森・中層〉へと向かった。
……流石にイベントまでには、間に合いそうにないなぁ。
ここには何故かモンスターのモの字もなく、さわさわと枝葉が風に揺れる音と、私たちが草を踏む音だけが響いていた。
……一応警戒はしてるけど、この感じだとモンスターが湧かないフィールドなのかもしれないね。
この場所を塞ぐようにして守っていたゴーレム……本当に、ここには何かがあるのかもしれない。
マップを埋めつつ10分ほど歩いてみたが、本当にモンスターは出てこないようだ。
私たちは一度セーフティーエリアまで戻り、この後のことを相談していた。
『なぁ、どうする? モンスターが出てこないってんなら、手分けして探索するのもありじゃねぇか?』
『ん、賛成』
「ここまでモンスターと出会わないなら、警戒するだけ無駄、か。よし、みんなで手分けして探そう。何か見つけたら、チャットで共有して欲しい」
『おっけー!』
『おう!』
『ん!』
私はヴィーンたちと別れ、一人で森を散策する。短い草を踏む感触がどこか楽しい。
〈散華の森・最奥〉の木々はとても背が高く、枝葉はかなり上部に付いているようだ。その枝葉が陽の光のほとんどを遮ってしまっているため、背の高い草などが育たないのだろう。
そのまま景色を眺めながら移動すること、およそ20分。
私は、マップ上における最南端の場所までたどり着いていた。
そしてそこにあったものを見て、私は思わず固まってしまった。
『……何、これ』
そこにあったのは、残骸。いや、見た目はボロボロに見えるが、よく見ると表面の塗装がはげ落ちているだけで、残骸と呼ぶにはあまりにも大きい。
艦首だけで三階建て一軒家ほどの大きさ。そこから伸びる艦体はさらに巨大で、蔦や木の根などが絡みつき、苔むした外装がこの艦が長い時をここで過ごしたことを教えてくれている。
私はみんなにチャットを送ることを忘れ、恐る恐るそれに近付く。入口だったのであろう長方形の装甲板にはなにか文字のようなものが書かれており、侵食していた苔を払うと、そこにはこう書かれていた。
『機動戦艦、黄昏の戦乙女……?』
しばらく艦体を眺めていた私はハッ、と我に返り、PTチャットを送る。
『みんな。地図で言うところのこの地点に来て欲しいんだけど……』
『……ミオン? どうしたんだい? 何か見つけたのかな?』
『もしかして、ボスモンスターか!?』
『……なら、すぐ向かう』
『違う違う! モンスターじゃない! モンスターじゃないんだけど……!』
『なら、その場所に何があると言うんだい?』
私は、ヴィーンの問いに一つ深呼吸をして答える。
『……艦があったの』
『船? こんな森の中に?』
『なんだってそんなもんが森に?』
『……昔はここも海だった、とか?』
『その船じゃなくて……あー、その、ああもう! あったのは戦艦! それも、機動戦艦なの!』
『……』
『……』
『……』
場を包む沈黙。その沈黙を破ったのは、レンだった。
『なぁミオン。それは本当に戦艦なのか? 見間違いでなく?』
『外観はボロボロであまり判別はできないけど、乗降口らしきところに機動戦艦って書いてあったから、恐らく……』
『まぁ、戦艦なんていうバカでかいものを見間違えることはないだろう。分かった。すぐに行くよ』
『アタシも行くぜ!』
『ん!』
そこでPTチャットが切れる。私は大きく息を吐いて(中の人的に)近くの岩に腰をかけた。
みんなが来るまでの間、私は黄昏の戦乙女という名前の付いた廃戦艦を見つめる。
魔機人のスタート地点として選べる〈散華の森〉。その森にある魔機人専用ダンジョンに、魔機人の製作者と思われる者の研究所。そして、その森の一番奥にあった機動戦艦。
もしかしてこれは、偶然ではない?
確か、FFOに根幹となる物語はないって話だったっけ。少なくとも、ベータ時代にはなかったらしい。ソースは兄さん。
その代わり、種族ごとに個別のストーリーがいくつも用意されてるって話だったけど……ああ、兄さんは解放条件が分からないって嘆いてたっけ。
これが、そう始まりなのだろうか。
目の前にある、この朽ちてなおその存在感を誇る、この艦が。
『……なんて、ね』
さて、と。みんなが来る前にできることはしちゃおうか。とりあえず、《鑑定》から行ってみようか!
[戦艦・ホーム]黄昏の戦乙女 レア度:U
修復度:0/1000000
【収納不可】【譲渡不可】【移動不可】
〈魔機人による戦艦の鑑定が行われました。鑑定に情報を追加します〉
ん? 魔機人が鑑定することで情報が増えた? 追加情報を確認してみよう。
[追加情報]
かつてこの空を支配していた機動戦艦の内の一つ。魔機人の開発者である稀代の天才発明家、マギアーノ・クライスドーラ博士が提唱した「魔機人を効率よく戦場で運用する方法」に則り製造されたもの。
大昔に大戦で使用され、この浮遊大陸の大地に沈んだ。
再び、空を飛ぶ日は来るのだろうか。
マギアーノ……どこかで聞き覚えがあるような?
『……ああ! あの隠し部屋の!』
思い出した! 魔導石と魔力結晶炉を手に入れた時に、貼ってあったペラ紙に書いてあった名前だ!
こうしてまた出てきたってことは、魔機人の種族ストーリーに関わってくる人なのかな? うん、覚えておこう。
そしてあれだね。うん、これ、ユニークカテゴリーアイテムだ。
FFOに一つしか存在しないアイテム。それが今、目の前にある!
……でも、収納不可なんだよね。流石にガレージと同じようにはいかないか。
後は、この修復度っていうのが気になるね。もしかして、この戦艦を修理したら私たちのものになるとか?
ホーム扱いだし、この戦艦をクランハウスにできたら……うん、いいね!
「確かにこれは、船と呼ぶには機械的過ぎるね……まさに、艦だ」
『すっげぇ……』
『大きい』
『ヴィーン!』
「お待たせ。しかし、凄いものを見つけたね」
『うん。それでね――』
ヴィーンは感嘆と共に、レンとアイちゃんの二人は語彙力を失った状態でやってきた。
三人と合流できたので、早速鑑定結果を共有した。
「ふむ。それでミオン、どうするつもりだい?」
『もち、私たちで直す! せっかくのユニークアイテム……それも魔機人のために用意されたものを、他のプレイヤーに渡せますか!』
「……ま、そういうだろうと思ったよ。私も、少し興奮していてね。できることなら、私たちの手で直したい」
『ああ! こんなの燃えるじゃねぇか! やってやろうぜ! アタシたちの手で!』
『ん!』
『よぅし! クラン【自由の機翼】の一世一代の大仕事だよ!』
『『「おー!」』』
全員で拳を突き上げる。
とりあえず、ここをしばらく拠点にしよう。始まりの街からは遠くなるけど、私たちって特に用事がない限りは〈散華の森〉にいるからなぁ。
私のガレージを出して、簡易的な拠点とする。レンとアイちゃんも自分のガレージを持っているけど、毎回私のところに来るんだよね。
ヴィーンが《木工》スキルで作った簡易的な椅子に座る。
みんなが座ったのを確認したヴィーンが、口を開いた。
「とは言ったものの、私たち四人だけではこの戦艦を修理するのにどれくらいの時間がかかるか分からない」
『じゃあどうすんだ? 誰か人を増やすのか?』
「それが一番手っ取り早いね。数は正義とも言うし、募集をかければ玉石混交ではあるけど人は増えるだろう」
『んー、でも、誰彼構わず入れたいってわけじゃないんだよね。中には人を見下してくる嫌な人もいるかもしれないし』
「うん。でも、人を増やすというのはいいアイデアだ。数人だけでも入ってもらえれば、それだけで楽になるからね。人柄重視で少数だけ誘うのは、ありだと思うよ」
『つっても、アタシのフレンドはここにいるので全員だぜ?』
『ん』
『私も』
「……まぁ、ミオンは、というより三人ともガレージに篭もることが多かったからね。私のフレンドに心当たりがある。確か始まりの街で活動してるって言ってたから、後で会いに行ってみるよ」
『一人で大丈夫?』
「大丈夫だとは思うけど、そのフレンドを連れてきた時にボス戦が必要になった時は、来てくれると助かるね」
『おっけー! こっちはこっちで戦艦の修復を進めておくよ!』
「うん。任せたよ」
『おう! 任された!』
『ん』
「じゃあ、行ってくる」
ヴィーンは座っていた椅子をアイテムボックスにしまうと、装備を整えてガレージから出ていった。
……さて、と。私たちの方も頑張りますか!
『二人とも! まずはどうやって修復するのか確認しよう!』
『だな。あいつが帰ってくる前に、少しでも進めておかねぇと』
『頑張る』
ある程度の素材をアイテムボックスに入れて、ガレージから外へと出る。
この巨大な戦艦をどうやって修理すればいいのか……ん?
さっきは触れても何も表示されてなかったけど、今回は触れたらウィンドウが出てきたね。
[黄昏の戦乙女]
修復度:0/100000 [捧げる]
※修復度はアイテムを捧げることで増えていきます。捧げたアイテムによって、増える修復度が変わります。
関係ないアイテムを捧げても修復度は増えません。捧げられたアイテムは修復度の増加にかかわらず消滅します。
ふむ。アイテムを捧げていくだけでいいんだ。数は膨大だけど、結構楽じゃないかな?
これなら四人でも大丈夫かもね。
……うーん、とりあえず、インゴットでも捧げてみようかな? この、鉄のインゴットを捧げる!
[黄昏の戦乙女]
修復度:0.5/1000000 [捧げる]
ん、んん? えっと、待って?
鉄のインゴット一つで増えた修復度は……0.5!?
鉄のインゴットだけで修復しようとしたら、200万この鉄のインゴットが必要……何だかMMOって感じがするなぁ。
レンとアイちゃんの二人も、この増加量には苦笑いだ。
『こりゃ、さっさとヴィーンに人連れてきて貰わないとダメかもしれないな』
『……頑張る。けど、インゴットなんてそんなに作れない。素材もない』
『だよね。とりあえず、〈散華の森〉の上層と中層の採掘ポイント巡りしないとダメかな?』
『……よし、やるか!』
『ん』
私たちはヴィーンに修復度の増え方と、必要な鉱石を掘りに行くことを伝えて、〈散華の森・中層〉へと向かった。
……流石にイベントまでには、間に合いそうにないなぁ。
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