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Chapter.2:黄昏の戦乙女と第一回イベント
17話:〈散華の森・下層〉
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と、言うわけでやって来ました。最前線のその先、〈散華の森・下層〉へ!
下層は中層までよりも多くの枝葉が茂っており、陽の光が満足に届かない暗いマップだ。
私たち魔機人の目には、自動的に明暗を調整してくれる地味に嬉しい機能があるらしく、上層や中層と同じように快適に見渡すことができる。
ヴィーンも《暗視》のスキルを事前に取り、それなりにレベルを上げているようで、私たちと同じくらいには見えているとのこと。さすがだね。
「……ねぇ、ミオン。私は今、どんな表情をしているかな?」
『えっと……虚無?』
だからだろう。ヴィーンの何とも言えない表情がくっきりと見えるのは。
ヴィーンの言いたいことは分かる。分かるけども、今の私たちにはどうすることもできない。
攻略組が頑張って攻略している下層への道を守るボスを、私たちが特に苦労もせずに倒せてしまったのは、決して私のせいじゃない! 私は悪くねぇ!
マギアライフルとマギアサーベル、それにレンとアイちゃんの新兵器が強かったのは認めるけど……!
「私も分かってはいるんだ。ただ、気持ちの整理がね……」
『その……すまねぇ、ヴィーン』
『ん、ごめん』
「別に君たちを責めてるわけじゃないから、安心してほしい。……うん、そうだね。もう大丈夫だ」
ヴィーンの表情が元の凛々しい表情に戻る。うんうん、やっぱりヴィーンはこうでなくっちゃ。これからも苦労をかけます。主に精神的な方向で。
「下層には、私たち以外誰も足を踏み入れていない。つまり、情報がないわけだ。ここからは、より一層気を付けて行くとしよう」
『うん』
『おう』
『ん』
ヴィーンの言葉に三者三様に頷き、それぞれ武器を構えて森を進んでいく。
私は右手にライフルを、左手にサーベルを構えている。遠近どちらも対応できる組み合わせだ。
レンはいつもの大剣を構えているが、彼女の装いはいつもとは違っていた。
動きやすさを重視したのか、ロボットよりもアンドロイドに近いパーツに全身が変わっており、関節部を守るようにして装甲が取り付けられている。
リアスカートには私が花鰐の皮で作った花鰐の腰布が取り付けられており、レンが動く度にひらひらとたなびいていた。銀の身体に赤い腰布がかっこいい。
レンの付けた名前は【銀帝剣機】。レンらしいシンプルな名前だね。
アイちゃんは使っていたバットをさらに凶悪に改造し、また自身の装いも新たなものになっていた。
こっちもロボットというよりアンドロイド……それもドール型と言った方がいい見た目をしており、その身長も相まって可愛いお人形さんのように見える。
アイちゃんの付けた名前は【ロイドール】。アンドロイドとドールを掛けたのかな? 見た目も相まって非常に可愛らしい雰囲気をまとっている。
……ただ、その手に持っている凶悪な武器が可愛らしい雰囲気をぶち壊してるけどね。
バット型のハンマーに取り付けられたいくつものスパイク。そう、釘バットならぬスパイクバットだ。
それも、スパイクの先端が割れてビームのスパイクが出現するビームスパイクバット。まぁ、こっちではマギアスパイクバットっていうらしいけど。
長い時間マギアスパイクを出現させていることはできないみたいだけど、強力な武装なのには変わりない。見た目はあれだけど。
こう、小さい女の子型のアンドロイドが、大きなスパイクバットを振ってモンスターをボコボコに叩いている図が、何とも言えない。
「っ、モンスターの気配! なにか来るよ!」
『っ!』
ヴィーンの声に、周囲を警戒する私たち。いつでも刀身を出現させられるようにしながら、サーベルを正面に構える。
しばらくすると、突如近くの木の影が膨れ上がり、そこから真っ黒な狼が現れた。
『黒い狼型モンスター!』
「ふむ。影から出てきたところを見ると、《闇魔法》の派生である《影魔法》スキル持ちかな。さすが下層、厄介だね」
名前を鑑定すると、シャドウウルフと出た。名前のまんまだけど、ヴィーンの言う通り《影魔法》を使うウルフなのだろう。
シャドウウルフはぐるる、と鳴くと一瞬の後にその姿がかき消える。
『《影魔法》の一つ、【シャドウダイブ】だ! 周囲の影から不意打ちをしてくるよ!』
『本当に厄介だね!』
『なら、ここはアタシに任せな!』
レンが一人で前に出ると、持っていた大剣を地面に突き刺し、無防備な体勢になった。一体何を!?
レンの行動に驚いていると、地面に突き刺した剣の影からシャドウウルフが現れ、レンに噛み付こうと飛びかかる。
レンはその一撃を左腕で受け止めると、再び影に逃がさないようにその頭を右手で押さえつけた。
『これで逃げられねぇぞ!』
『全く、無茶して! 心臓に悪いよ!』
私は危ない真似をしたレンに憤慨しながらも、動けない状態のシャドウウルフにマギアライフルのレティクルを合わせる。そのままトリガーを引き、放たれた光がシャドウウルフの身体を貫いた。
シャドウウルフは一瞬ビクン、と跳ねた後、そのまま光の粒子に変わっていく。
『サンキュー!』
『サンキューじゃないよ! 何やってんの!』
お礼を言ってくるレンに調子を狂わされつつも、危ないことをしたレンを問いつめる。
私が怒ってることを察したレンは、私から視線を外してぼそぼそと話し始めた。
『いや、その、下層のモンスターのダメージがどのくらいかってのを知っておきたかったってのと、影に隠れるシャドウウルフを逃がしたくなくて……』
『それは分かるけども、もっと自分の身体を大切に! ここは誰も来たことがないマップで、いつどこで誰が事故るか分からないんだからね!』
『……はい。ごめんなさい』
『うん。よろしい』
レンの言うことにも一理あるけど、それはあんな真似をしなくても確認できることだ。まぁ、一番最初に出てくるモンスターで試すっていうのも、間違ってはないんだけどね。私たち、ヴィーン以外は状態異常が効かないし。
ヴィーンがぱんぱんと手を叩き、私たちの話を終わらせる。
「はい、そこまで。そろそろ先に進もうか。ここはまだ、下層の入口でしかないんだから」
『はい』
『うす』
ヴィーンが場の空気をリセットし、私たちを先へと促す。陣形は、耐久値が高く《直感》スキルを持ってる私が先頭で、ヴィーンが真ん中、残りの二人がヴィーンの斜め後ろに付いている。三人でヴィーンを挟む陣形だね。
その後も私たちは苦戦することなくモンスターを倒していく。どうやら下層に出てくるのはシャドウウルフを始め、ダークヴァイパー、ブラックゴブリンなどの闇系統のモンスターばかりのようだ。
つまり、私のマギアサーベルやライフルなどの、魔力兵器無双である。
出てくるモンスター全てが弱点ダメージを受けて一撃で死んでいくという、どうにも締まらない展開になった。
『確かに楽だけど、楽だけどぉっ!』
「まぁまぁ。属性の付いた素材は現時点では珍しいからね。生産プレイヤーに売ればかなりの金額になると思うよ」
『そうだぜ! じゃんじゃん狩ってじゃんじゃん儲けよう! ……ま、アタシは何もしてないんだけどな』
『ん』
そんな感じでみんなに慰められつつも、出てきたモンスターを屠っていく。時折三人にスキルレベル上げのために戦ってもらい、奥へ奥へと進んでいく。
基本的にマップを埋めるように進んでいるけど、特に目新しいものはないかな。
……まぁ、その、ヴィーンの《索敵》スキルの範囲が広くて、私の《感知》スキルがいらない子になってしまっている。一応スキルレベルは上がってるんだけどね。
上層や下層には鉱石の採れる洞窟がいくつかあったんだけど、下層にはないのだろうか。ヴィーンは《採取》スキルで、色んなアイテムを見つけてるみたいだけどね。あと《伐採》で色々な木材も見つけてるようだ。
「これなら《初級木工》のレベルをさらに上げられるね」
『あーん。鉱石が欲しい……新しい鉱石はどこじゃー』
『鉱石は〈ノースディア廃鉱山〉で集めるしかないんじゃねぇかなぁ? 中層までの鉱石はそこに行くための繋ぎだろうし……』
『モンスター素材でウハウハ』
『……まぁ、そうだね。加工次第では《パーツクリエイト》に使えそうな素材もチラホラあるし』
「あとは遺跡の方かな? 西の沼地は攻略があまり進んでなくて分からないのだけど……」
『沼地はねぇ……まともな道がないからキツそうだよね。モンスターもあまり近寄りたい類のものじゃないし』
『カエルとかナメクジとかだっけか。確かに近付きたくねぇ』
『それも巨大なやつ。虫系も何故か沼地にいるっぽい』
「私も、別に虫などが得意なわけではないからね。できることなら戦いたくはないかな……」
『木の上から蜘蛛に糸で吊るされて、沼の中からでてきた巨大ナメクジに食われるってギミックもあるみたいだよ』
『うっわ。絶対くらいたくねぇ……!』
『トラウマ続出』
「まぁ、私たちは西に行く必要がないからいいんじゃないかな。行く必要がなければ……」
『それフラグ』
雑談を交えつつも、着実にマップを埋めていく。宝箱は見つからないけどね。
スキルレベルが上がったからか、他の三人も特に苦労することなくモンスターを倒していった。スキル経験値的にはかなり美味しいね。最前線の先だから当たり前だろうけども。
途中、セーフティーエリアで休憩を挟みながらも歩みを進め、とうとう下層の奥地まで辿り着いていた。
そこに居たのは、全長5メートルほどの大きさのゴーレムだった。しかし、北の山にいたロックゴーレムなんてちゃちなものとは違う、明らかにメカメカしいゴーレムだ。
頭部は丸く、中心部から左右にかけてスリットが入っている。恐らくそこが目だろう。あの感じだとツインアイじゃなくてモノアイかな?
どうやら首や関節などはないようで、何かしらの力で宙に浮いているようだ。多分魔力的な何かだとは思うけど……素材が分からない。
形としては、頭、胴体、両腕、両足って感じだ。浮いているのにその両足はいるのだろうか? どうやら製作者は、足を飾りだと思っていない偉い人のようだ。
とりあえず鑑定……【アーティファクト・ゴーレム】って名前みたいだ。
【アーティファクト・ソードマン】と同じ作者が作ってるのかな? 向こうとは設計思想が違うように思えるけど……。
『ボスだけど、どうする?』
「ふむ」
ヴィーンが考え込む。無理もないね。ここで挑んで勝てる相手かどうか、何の情報もないから。
ここからでも見えるけど、あのゴーレムの向こう側に奥へと続く道がある。明らかに意図を持って配置されたゴーレムが守るもの、私、気になります!
『なぁヴィーン。やろうぜ? アタシたちならやれるさ』
『ヴィーンやミオンの指示に従う』
レンは最早やる気で、ブンブンと大剣を振り回している。全身からボスとやりたいオーラが滲み出しているみたいだ。
アイちゃんはどちらでもいいらしく、私たちに選択を委ねるようだ。
「ミオンは?」
そう聞いてくるヴィーンに、私は顎に手を当てて考える。
相手は今までで一番強いであろうボス。攻撃パターンも何も分かってない。手探りの状態で戦わないといけない。
光属性への耐性がなければ倒せそうではあるけど、メカメカしいゴーレムだしなぁ。属性耐性は持っていそうだ。
なら、帰る? ……とんでもない。
私はゲーマー! ゲーマーとは、先人の敷いた道を乗り越え、新たな未知を踏破する者也!
『やりたい。ううん、やるよ。まだ誰も見たことも、倒したことのないボス。そんなの、最初に倒したいに決まってるよね!』
「……ふふ。なら、いこうか。正式なタンク役が決まってないから、攻撃を受ける役はレンかアイに頼む。残りは攻撃に集中。私は後方から援護射撃しつつ、ボスの動きを探る。ミオンは遊撃だ。せいぜい派手に暴れてくれ!」
『うん!』
『おう!』
『ん!』
私たちはそれぞれ得物を持ってゴーレムへと突撃する。
そんな私たちを、ヴン、という音と共に光ったモノアイが睥睨していた。
下層は中層までよりも多くの枝葉が茂っており、陽の光が満足に届かない暗いマップだ。
私たち魔機人の目には、自動的に明暗を調整してくれる地味に嬉しい機能があるらしく、上層や中層と同じように快適に見渡すことができる。
ヴィーンも《暗視》のスキルを事前に取り、それなりにレベルを上げているようで、私たちと同じくらいには見えているとのこと。さすがだね。
「……ねぇ、ミオン。私は今、どんな表情をしているかな?」
『えっと……虚無?』
だからだろう。ヴィーンの何とも言えない表情がくっきりと見えるのは。
ヴィーンの言いたいことは分かる。分かるけども、今の私たちにはどうすることもできない。
攻略組が頑張って攻略している下層への道を守るボスを、私たちが特に苦労もせずに倒せてしまったのは、決して私のせいじゃない! 私は悪くねぇ!
マギアライフルとマギアサーベル、それにレンとアイちゃんの新兵器が強かったのは認めるけど……!
「私も分かってはいるんだ。ただ、気持ちの整理がね……」
『その……すまねぇ、ヴィーン』
『ん、ごめん』
「別に君たちを責めてるわけじゃないから、安心してほしい。……うん、そうだね。もう大丈夫だ」
ヴィーンの表情が元の凛々しい表情に戻る。うんうん、やっぱりヴィーンはこうでなくっちゃ。これからも苦労をかけます。主に精神的な方向で。
「下層には、私たち以外誰も足を踏み入れていない。つまり、情報がないわけだ。ここからは、より一層気を付けて行くとしよう」
『うん』
『おう』
『ん』
ヴィーンの言葉に三者三様に頷き、それぞれ武器を構えて森を進んでいく。
私は右手にライフルを、左手にサーベルを構えている。遠近どちらも対応できる組み合わせだ。
レンはいつもの大剣を構えているが、彼女の装いはいつもとは違っていた。
動きやすさを重視したのか、ロボットよりもアンドロイドに近いパーツに全身が変わっており、関節部を守るようにして装甲が取り付けられている。
リアスカートには私が花鰐の皮で作った花鰐の腰布が取り付けられており、レンが動く度にひらひらとたなびいていた。銀の身体に赤い腰布がかっこいい。
レンの付けた名前は【銀帝剣機】。レンらしいシンプルな名前だね。
アイちゃんは使っていたバットをさらに凶悪に改造し、また自身の装いも新たなものになっていた。
こっちもロボットというよりアンドロイド……それもドール型と言った方がいい見た目をしており、その身長も相まって可愛いお人形さんのように見える。
アイちゃんの付けた名前は【ロイドール】。アンドロイドとドールを掛けたのかな? 見た目も相まって非常に可愛らしい雰囲気をまとっている。
……ただ、その手に持っている凶悪な武器が可愛らしい雰囲気をぶち壊してるけどね。
バット型のハンマーに取り付けられたいくつものスパイク。そう、釘バットならぬスパイクバットだ。
それも、スパイクの先端が割れてビームのスパイクが出現するビームスパイクバット。まぁ、こっちではマギアスパイクバットっていうらしいけど。
長い時間マギアスパイクを出現させていることはできないみたいだけど、強力な武装なのには変わりない。見た目はあれだけど。
こう、小さい女の子型のアンドロイドが、大きなスパイクバットを振ってモンスターをボコボコに叩いている図が、何とも言えない。
「っ、モンスターの気配! なにか来るよ!」
『っ!』
ヴィーンの声に、周囲を警戒する私たち。いつでも刀身を出現させられるようにしながら、サーベルを正面に構える。
しばらくすると、突如近くの木の影が膨れ上がり、そこから真っ黒な狼が現れた。
『黒い狼型モンスター!』
「ふむ。影から出てきたところを見ると、《闇魔法》の派生である《影魔法》スキル持ちかな。さすが下層、厄介だね」
名前を鑑定すると、シャドウウルフと出た。名前のまんまだけど、ヴィーンの言う通り《影魔法》を使うウルフなのだろう。
シャドウウルフはぐるる、と鳴くと一瞬の後にその姿がかき消える。
『《影魔法》の一つ、【シャドウダイブ】だ! 周囲の影から不意打ちをしてくるよ!』
『本当に厄介だね!』
『なら、ここはアタシに任せな!』
レンが一人で前に出ると、持っていた大剣を地面に突き刺し、無防備な体勢になった。一体何を!?
レンの行動に驚いていると、地面に突き刺した剣の影からシャドウウルフが現れ、レンに噛み付こうと飛びかかる。
レンはその一撃を左腕で受け止めると、再び影に逃がさないようにその頭を右手で押さえつけた。
『これで逃げられねぇぞ!』
『全く、無茶して! 心臓に悪いよ!』
私は危ない真似をしたレンに憤慨しながらも、動けない状態のシャドウウルフにマギアライフルのレティクルを合わせる。そのままトリガーを引き、放たれた光がシャドウウルフの身体を貫いた。
シャドウウルフは一瞬ビクン、と跳ねた後、そのまま光の粒子に変わっていく。
『サンキュー!』
『サンキューじゃないよ! 何やってんの!』
お礼を言ってくるレンに調子を狂わされつつも、危ないことをしたレンを問いつめる。
私が怒ってることを察したレンは、私から視線を外してぼそぼそと話し始めた。
『いや、その、下層のモンスターのダメージがどのくらいかってのを知っておきたかったってのと、影に隠れるシャドウウルフを逃がしたくなくて……』
『それは分かるけども、もっと自分の身体を大切に! ここは誰も来たことがないマップで、いつどこで誰が事故るか分からないんだからね!』
『……はい。ごめんなさい』
『うん。よろしい』
レンの言うことにも一理あるけど、それはあんな真似をしなくても確認できることだ。まぁ、一番最初に出てくるモンスターで試すっていうのも、間違ってはないんだけどね。私たち、ヴィーン以外は状態異常が効かないし。
ヴィーンがぱんぱんと手を叩き、私たちの話を終わらせる。
「はい、そこまで。そろそろ先に進もうか。ここはまだ、下層の入口でしかないんだから」
『はい』
『うす』
ヴィーンが場の空気をリセットし、私たちを先へと促す。陣形は、耐久値が高く《直感》スキルを持ってる私が先頭で、ヴィーンが真ん中、残りの二人がヴィーンの斜め後ろに付いている。三人でヴィーンを挟む陣形だね。
その後も私たちは苦戦することなくモンスターを倒していく。どうやら下層に出てくるのはシャドウウルフを始め、ダークヴァイパー、ブラックゴブリンなどの闇系統のモンスターばかりのようだ。
つまり、私のマギアサーベルやライフルなどの、魔力兵器無双である。
出てくるモンスター全てが弱点ダメージを受けて一撃で死んでいくという、どうにも締まらない展開になった。
『確かに楽だけど、楽だけどぉっ!』
「まぁまぁ。属性の付いた素材は現時点では珍しいからね。生産プレイヤーに売ればかなりの金額になると思うよ」
『そうだぜ! じゃんじゃん狩ってじゃんじゃん儲けよう! ……ま、アタシは何もしてないんだけどな』
『ん』
そんな感じでみんなに慰められつつも、出てきたモンスターを屠っていく。時折三人にスキルレベル上げのために戦ってもらい、奥へ奥へと進んでいく。
基本的にマップを埋めるように進んでいるけど、特に目新しいものはないかな。
……まぁ、その、ヴィーンの《索敵》スキルの範囲が広くて、私の《感知》スキルがいらない子になってしまっている。一応スキルレベルは上がってるんだけどね。
上層や下層には鉱石の採れる洞窟がいくつかあったんだけど、下層にはないのだろうか。ヴィーンは《採取》スキルで、色んなアイテムを見つけてるみたいだけどね。あと《伐採》で色々な木材も見つけてるようだ。
「これなら《初級木工》のレベルをさらに上げられるね」
『あーん。鉱石が欲しい……新しい鉱石はどこじゃー』
『鉱石は〈ノースディア廃鉱山〉で集めるしかないんじゃねぇかなぁ? 中層までの鉱石はそこに行くための繋ぎだろうし……』
『モンスター素材でウハウハ』
『……まぁ、そうだね。加工次第では《パーツクリエイト》に使えそうな素材もチラホラあるし』
「あとは遺跡の方かな? 西の沼地は攻略があまり進んでなくて分からないのだけど……」
『沼地はねぇ……まともな道がないからキツそうだよね。モンスターもあまり近寄りたい類のものじゃないし』
『カエルとかナメクジとかだっけか。確かに近付きたくねぇ』
『それも巨大なやつ。虫系も何故か沼地にいるっぽい』
「私も、別に虫などが得意なわけではないからね。できることなら戦いたくはないかな……」
『木の上から蜘蛛に糸で吊るされて、沼の中からでてきた巨大ナメクジに食われるってギミックもあるみたいだよ』
『うっわ。絶対くらいたくねぇ……!』
『トラウマ続出』
「まぁ、私たちは西に行く必要がないからいいんじゃないかな。行く必要がなければ……」
『それフラグ』
雑談を交えつつも、着実にマップを埋めていく。宝箱は見つからないけどね。
スキルレベルが上がったからか、他の三人も特に苦労することなくモンスターを倒していった。スキル経験値的にはかなり美味しいね。最前線の先だから当たり前だろうけども。
途中、セーフティーエリアで休憩を挟みながらも歩みを進め、とうとう下層の奥地まで辿り着いていた。
そこに居たのは、全長5メートルほどの大きさのゴーレムだった。しかし、北の山にいたロックゴーレムなんてちゃちなものとは違う、明らかにメカメカしいゴーレムだ。
頭部は丸く、中心部から左右にかけてスリットが入っている。恐らくそこが目だろう。あの感じだとツインアイじゃなくてモノアイかな?
どうやら首や関節などはないようで、何かしらの力で宙に浮いているようだ。多分魔力的な何かだとは思うけど……素材が分からない。
形としては、頭、胴体、両腕、両足って感じだ。浮いているのにその両足はいるのだろうか? どうやら製作者は、足を飾りだと思っていない偉い人のようだ。
とりあえず鑑定……【アーティファクト・ゴーレム】って名前みたいだ。
【アーティファクト・ソードマン】と同じ作者が作ってるのかな? 向こうとは設計思想が違うように思えるけど……。
『ボスだけど、どうする?』
「ふむ」
ヴィーンが考え込む。無理もないね。ここで挑んで勝てる相手かどうか、何の情報もないから。
ここからでも見えるけど、あのゴーレムの向こう側に奥へと続く道がある。明らかに意図を持って配置されたゴーレムが守るもの、私、気になります!
『なぁヴィーン。やろうぜ? アタシたちならやれるさ』
『ヴィーンやミオンの指示に従う』
レンは最早やる気で、ブンブンと大剣を振り回している。全身からボスとやりたいオーラが滲み出しているみたいだ。
アイちゃんはどちらでもいいらしく、私たちに選択を委ねるようだ。
「ミオンは?」
そう聞いてくるヴィーンに、私は顎に手を当てて考える。
相手は今までで一番強いであろうボス。攻撃パターンも何も分かってない。手探りの状態で戦わないといけない。
光属性への耐性がなければ倒せそうではあるけど、メカメカしいゴーレムだしなぁ。属性耐性は持っていそうだ。
なら、帰る? ……とんでもない。
私はゲーマー! ゲーマーとは、先人の敷いた道を乗り越え、新たな未知を踏破する者也!
『やりたい。ううん、やるよ。まだ誰も見たことも、倒したことのないボス。そんなの、最初に倒したいに決まってるよね!』
「……ふふ。なら、いこうか。正式なタンク役が決まってないから、攻撃を受ける役はレンかアイに頼む。残りは攻撃に集中。私は後方から援護射撃しつつ、ボスの動きを探る。ミオンは遊撃だ。せいぜい派手に暴れてくれ!」
『うん!』
『おう!』
『ん!』
私たちはそれぞれ得物を持ってゴーレムへと突撃する。
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