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Chapter.2:黄昏の戦乙女と第一回イベント
22話:第一回イベント②
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「さて。これからの事を考えようか」
ヴィーンの言葉に、私たちは耳を傾ける。まだモンスターたちはやってこない。土煙が見えるだけだ。
ちなみに、再現されているのは街の周辺のみで、南門側は森までは再現されていない。流石に南門のすぐ近くに森があるわけじゃないからね。
ここからだと、森に通じる街道が途中で切れているのが見える。恐らく、あそこから先は平地みたいになってるんだろう。そして、そこからモンスターはやってくると。
さて、話をこっちに戻そうか。
『そうだね。これから私たちはどう動こうか?』
『どうつってもな……アタシたちは高所を取ってるわけだから、そこからモンスターを減らしていけばいいんじゃねぇか? まぁ、アタシには遠距離攻撃手段はねぇけどよ』
『まぁ、最初はそれくらいしかやることないよね』
「そうだな。下のヤツらとモンスターたちがぶつかって、抜けてきたヤツとか厄介そうなヤツを上から倒していくのが妥当なところだろう」
『あー。やっぱ、下の人たちは突っ込んでいきますかね?』
「行くだろ」
「行くと思うよ」
『行くんじゃねぇか?』
『ん』
足並みが揃うかは別として、下の人たちは敵がやって来たら、それを倒すために前に出るだろう。こっちも数がいれば正面から対抗できるわけで。
『分かった。とりあえず下の人たちが先頭を押さえている間に、私とヴィーンは上から数を減らしていくって方針で。指揮官クラスとかいたら、撃ち抜いていこう』
「そうだね。それがいい」
『他のみんなは……』
「俺たち整備班も新しいスキルを取っててな。《投擲》っつー、物を投げた時のダメージと、飛距離を伸ばせるスキルだ」
「これなら、僕たちでも貢献できますからね」
「弾は結構な数アイテムボックスに詰めてきたから、暫くは弾切れの心配はないと思う」
「だな」
『分かった。じゃあ親方たちは《投擲》でモンスターたちにダメージを与えて欲しい。特に、前線から抜けてきたモンスターを中心に。この高さからなら、結構なダメージを与えられるはずだしね』
『アイ、アタシらはどうする?』
『んぅ……突撃?』
『まぁ、アタシらだけなら降りた後、そのまま壁を登ってこれるだろうけど……』
『ローラーとスラスターで、無理やり壁を走行する』
『あー、できそうだなぁ。んじゃ、アタシらはヒットアンドアウェイで行くか』
『ん』
『まぁ、二人なら大丈夫だね。別に、正面から全部と戦うわけじゃないんでしょ?』
『当たり前だ。アタシをなんだと思ってるんだよ……』
『ん。レンには私が指示出す』
『アイちゃんなら安心……かな? 無理だけはしないでね?』
『あいよ!』
『ん!』
全員の方針が固まったところで、私たちはそれぞれの得物を取り出して構える。
私は両腕に接続されたマギアライフルを。ヴィーンは木と少量の鉱石で作られた特製の弓を。親方たちはアイテムボックスから殺傷力の高そうな鋭利な投げ物を。レンとアイちゃんはそれぞれ近接武器を。
モンスターたちは、姿が見えるくらいには近付いてきていた。ゴブリンが多いけど、〈散華の森・上層〉に出てくるモンスターがほとんどだ。
……数は視界を埋め尽くさんばかりに凄いけど、多分プレイヤー側からしたら物足りないくらいかな? せめて、中層クラスのモンスターを持ってこないと……。
そんなことを思っていたのがまずかったのか、上層のモンスターの後ろから中層に出てくるモンスターの大群が確認できた。
……状態異常をかけてくる蛇たちは厄介だね。乱戦状態ですれ違いざまに毒とか麻痺とか食らったら、とんでもないことになる。
それに、モンスターの中には見慣れないモンスターがいた。小さい角が生えていて、背中に翼が生えている黒いモンスターだ。なんというか、小さい悪魔みたい。
流石にこの距離では《鑑定》もできない。時々周りのモンスターに声をかけているところを見ると、あれが指揮官クラスなのかもしれないね。
モンスターを観察していると、門の方から大きな歓声が聞こえてきた。どうやら、倒すべき敵が見えたことでテンションが上がっているらしい。
門の外にバラバラにいたプレイヤーたちが、それぞれのパーティーごとに展開していく。その陣形は基本に忠実で、前衛がタンク、中衛が物理アタッカー、後衛が魔法アタッカーとヒーラー、バッファーだ。
……まぁ、それがパーティー単位でなければよかったんだけどね。
パーティー単位、もしくはクラン単位で纏まっているからか、穴が目立つ。それを全体で行えればいいんだけど、こればっかりは仕方ないか。
「まぁ、パーティー単位で纏まった陣形を取れている分、マシな方だろうね。中には、まともな陣形を作れていないところもあるみたいだから」
『え……うわ、ホントだ』
「これが、大規模クランがいない弊害だろうね。みんなを纏められるプレイヤーがいない」
「なら、嬢ちゃんたちが指揮を取ってみるか?」
「ふふ。冗談はよしてくれ。自分たちよりも上位のプレイヤーの指揮に従いたくなくて、南門に来ている彼らだ。私たちが声をかけても鎧袖一触だろうさ。そもそも従わせるだけの実績もない」
『ですよねー』
私たち自身も、そんな人たちを従わせられるかって言われたら……うん、無理だね。こっちから下手に手を出して暴走されるよりも、各プレイヤーに臨機応変に対応してもらった方がよさそうだ。
「ま、私たちにできるのは、そんな彼らを後ろからサポートすることさ。少なくとも、外壁に登った他のプレイヤーはそう考えているみたいだよ?」
私たち以外にも外壁の上に登って来たプレイヤーは、杖や弓をいつでも構えられる状態にしているようだ。中には、ちょっと大きめの弓を構えている人もいる。多分あれは、《弓》スキルから派生する《大弓》スキルだろうか。
数はそこまで多いってわけじゃないけど……即席にしてはいい方かな。
「さて、そろそろ接敵だよ」
『うん』
もう、モンスターたちは近くまでやってきていた。数分もしないで下のプレイヤーたちとぶつかり合うことだろう。
「よっしゃ! 行くぜ!」
「MVPは俺のもんだ!」
「あんな雑魚どもに好き勝手させるかよ!」
「「「「うおおおおおお!!!!」」」」
敵の姿を認めたパーティーのいくつかが、モンスターに向かって突撃する。タンクとなる前衛が複数のモンスターの攻撃を受け持ち、中衛や後衛のアタッカーがそのHPを減らしていく。
突出したパーティー以外も、続々とモンスターたちと接敵していった。全体的な陣形は穴が多かったけど、前衛のヘイト集中スキルのおかげか、抜けてくるモンスターはいなかった。
流石に上層のモンスターにマギアライフルは使えない。ENが勿体なさすぎるからね。代わりに、ヴィーンの矢や親方たちの投擲で、下の人たちが接触できていない部分のモンスターを倒していく。
「はっはぁ! 雑魚すぎるぜ!」
「これくらいなら後1万匹増えても問題ねぇなぁ!」
大口を叩くだけあって、彼らのプレイヤースキルはそれなりに高い。種族レベルやスキルレベルも、頑張って上げているんだろう。
でも、彼らは正面の相手しか見えていなかった。つまり、上層のモンスターの後ろからやってくる中層のモンスターに気付いていなかったわけで。
「おらおらおら――は?」
「ビリーがやられた! おいおい! いつの間にか中層のモンスターが混じってるぞ!?」
「誰か! 麻痺消しポーションを持ってないか!?」
「足が石に! 動けねぇ!」
うん。中層のモンスターに不意打ちされたプレイヤーたちが、徐々に数を減らしていっている。中には、準備不足で状態異常を治せていないプレイヤーもいた。
……うーん、流石に準備不足は擁護しようがないかな。状態異常回復薬を準備してなかったあなたたちが悪いということで。
とは言っても、中核となっているプレイヤーたちは強い。きちんと状態異常に対するアイテムも持っているし、状況を正確に理解して、メンバーに的確な指示を出している。
後、小さい悪魔みたいなやつも近くに寄ってきたね。早速《鑑定》だ!
えっと、名前はミニゴブリンデビル……ゴブリン!? あれが!?
よくよく見てみたら、その顔にゴブリンの面影が見えなくもない。つまり、はっきりいって《鑑定》がなければゴブリンとは分からないくらい姿かたちが違っていた。
その能力も通常のゴブリンとは比べ物にならないらしく、小さい身体ながらもかなりの膂力を持っているみたいだ。少なくとも、重装備のプレイヤーを殴り飛ばせるくらいにはSTRが高いと。厄介だね。
それに、イイ性格をしている。複数のプレイヤーに囲まれながらも、彼らの攻撃を避けつつ高いSTRでダメージを与えていた。その際に、その顔を醜悪なものに歪めて笑い声を上げている。弱いものいじめを楽しんでるって感じだ。
まぁ、でも?
『悪魔っていうくらいだから、光には弱いよね!』
両手に構えたそれぞれのマギアライフルのレティクルを一匹のミニゴブリンデビルに合わせて、トリガーを引く。
銃口から放たれた二筋の輝きは戦場の空を切り裂いていき、ミニゴブリンデビルの頭と胴体に突き刺さる。
「グギャッ、グギャッ、グギ――」
ミニゴブリンデビルは私の攻撃に気付くことなく、最後まで醜悪な笑い声を上げたまま消滅した。
……うーん、二丁分は流石にオーバーキルかな。弱点属性ダメージを考えたら、一丁で十分かもしれないね。
「なっ、今のはビームか!?」
「あの黒いのを一撃で!? ていうかどこから!?」
「がっ、外壁の上だ! あの魔機人がやってくれたぞ!」
「うおおお! ビームライフルだ! 存在してたのか!?」
「それよりも、何だあの威力!? 一瞬で消し飛んだぞ!?」
「お前ら! 後ろを見るのはいいが、敵にケツ向けたまま死にてぇのか!? 死にたくねぇやつは、さっさとモンスター共を倒しやがれ!」
「わ、わかってらぁ!」
おっと。私に注目が集まっちゃったみたいだね。そういえば、マギアライフルのことはクランメンバー以外には言ってなかったっけ。
さて。他にもミニゴブリンデビルがいるなら撃ち抜いていきたいんだけど……よっと。
上層のモンスターたちはほとんどが倒され、今はミニゴブリンデビルとそれに従う中層のモンスターとの戦いに移行していた。
とりあえず、序盤は乗り切れたってことかな。敵の強さは上がったけど、最初ほどの密度はない。たまに抜けてくるモンスターも外壁のプレイヤーが倒すし、このまま行けば街に被害が出ることなく終わらせられるね。
ま、だからといって気を抜く気はさらさらないけどね。さぁ、中盤戦と行こう。
ヴィーンの言葉に、私たちは耳を傾ける。まだモンスターたちはやってこない。土煙が見えるだけだ。
ちなみに、再現されているのは街の周辺のみで、南門側は森までは再現されていない。流石に南門のすぐ近くに森があるわけじゃないからね。
ここからだと、森に通じる街道が途中で切れているのが見える。恐らく、あそこから先は平地みたいになってるんだろう。そして、そこからモンスターはやってくると。
さて、話をこっちに戻そうか。
『そうだね。これから私たちはどう動こうか?』
『どうつってもな……アタシたちは高所を取ってるわけだから、そこからモンスターを減らしていけばいいんじゃねぇか? まぁ、アタシには遠距離攻撃手段はねぇけどよ』
『まぁ、最初はそれくらいしかやることないよね』
「そうだな。下のヤツらとモンスターたちがぶつかって、抜けてきたヤツとか厄介そうなヤツを上から倒していくのが妥当なところだろう」
『あー。やっぱ、下の人たちは突っ込んでいきますかね?』
「行くだろ」
「行くと思うよ」
『行くんじゃねぇか?』
『ん』
足並みが揃うかは別として、下の人たちは敵がやって来たら、それを倒すために前に出るだろう。こっちも数がいれば正面から対抗できるわけで。
『分かった。とりあえず下の人たちが先頭を押さえている間に、私とヴィーンは上から数を減らしていくって方針で。指揮官クラスとかいたら、撃ち抜いていこう』
「そうだね。それがいい」
『他のみんなは……』
「俺たち整備班も新しいスキルを取っててな。《投擲》っつー、物を投げた時のダメージと、飛距離を伸ばせるスキルだ」
「これなら、僕たちでも貢献できますからね」
「弾は結構な数アイテムボックスに詰めてきたから、暫くは弾切れの心配はないと思う」
「だな」
『分かった。じゃあ親方たちは《投擲》でモンスターたちにダメージを与えて欲しい。特に、前線から抜けてきたモンスターを中心に。この高さからなら、結構なダメージを与えられるはずだしね』
『アイ、アタシらはどうする?』
『んぅ……突撃?』
『まぁ、アタシらだけなら降りた後、そのまま壁を登ってこれるだろうけど……』
『ローラーとスラスターで、無理やり壁を走行する』
『あー、できそうだなぁ。んじゃ、アタシらはヒットアンドアウェイで行くか』
『ん』
『まぁ、二人なら大丈夫だね。別に、正面から全部と戦うわけじゃないんでしょ?』
『当たり前だ。アタシをなんだと思ってるんだよ……』
『ん。レンには私が指示出す』
『アイちゃんなら安心……かな? 無理だけはしないでね?』
『あいよ!』
『ん!』
全員の方針が固まったところで、私たちはそれぞれの得物を取り出して構える。
私は両腕に接続されたマギアライフルを。ヴィーンは木と少量の鉱石で作られた特製の弓を。親方たちはアイテムボックスから殺傷力の高そうな鋭利な投げ物を。レンとアイちゃんはそれぞれ近接武器を。
モンスターたちは、姿が見えるくらいには近付いてきていた。ゴブリンが多いけど、〈散華の森・上層〉に出てくるモンスターがほとんどだ。
……数は視界を埋め尽くさんばかりに凄いけど、多分プレイヤー側からしたら物足りないくらいかな? せめて、中層クラスのモンスターを持ってこないと……。
そんなことを思っていたのがまずかったのか、上層のモンスターの後ろから中層に出てくるモンスターの大群が確認できた。
……状態異常をかけてくる蛇たちは厄介だね。乱戦状態ですれ違いざまに毒とか麻痺とか食らったら、とんでもないことになる。
それに、モンスターの中には見慣れないモンスターがいた。小さい角が生えていて、背中に翼が生えている黒いモンスターだ。なんというか、小さい悪魔みたい。
流石にこの距離では《鑑定》もできない。時々周りのモンスターに声をかけているところを見ると、あれが指揮官クラスなのかもしれないね。
モンスターを観察していると、門の方から大きな歓声が聞こえてきた。どうやら、倒すべき敵が見えたことでテンションが上がっているらしい。
門の外にバラバラにいたプレイヤーたちが、それぞれのパーティーごとに展開していく。その陣形は基本に忠実で、前衛がタンク、中衛が物理アタッカー、後衛が魔法アタッカーとヒーラー、バッファーだ。
……まぁ、それがパーティー単位でなければよかったんだけどね。
パーティー単位、もしくはクラン単位で纏まっているからか、穴が目立つ。それを全体で行えればいいんだけど、こればっかりは仕方ないか。
「まぁ、パーティー単位で纏まった陣形を取れている分、マシな方だろうね。中には、まともな陣形を作れていないところもあるみたいだから」
『え……うわ、ホントだ』
「これが、大規模クランがいない弊害だろうね。みんなを纏められるプレイヤーがいない」
「なら、嬢ちゃんたちが指揮を取ってみるか?」
「ふふ。冗談はよしてくれ。自分たちよりも上位のプレイヤーの指揮に従いたくなくて、南門に来ている彼らだ。私たちが声をかけても鎧袖一触だろうさ。そもそも従わせるだけの実績もない」
『ですよねー』
私たち自身も、そんな人たちを従わせられるかって言われたら……うん、無理だね。こっちから下手に手を出して暴走されるよりも、各プレイヤーに臨機応変に対応してもらった方がよさそうだ。
「ま、私たちにできるのは、そんな彼らを後ろからサポートすることさ。少なくとも、外壁に登った他のプレイヤーはそう考えているみたいだよ?」
私たち以外にも外壁の上に登って来たプレイヤーは、杖や弓をいつでも構えられる状態にしているようだ。中には、ちょっと大きめの弓を構えている人もいる。多分あれは、《弓》スキルから派生する《大弓》スキルだろうか。
数はそこまで多いってわけじゃないけど……即席にしてはいい方かな。
「さて、そろそろ接敵だよ」
『うん』
もう、モンスターたちは近くまでやってきていた。数分もしないで下のプレイヤーたちとぶつかり合うことだろう。
「よっしゃ! 行くぜ!」
「MVPは俺のもんだ!」
「あんな雑魚どもに好き勝手させるかよ!」
「「「「うおおおおおお!!!!」」」」
敵の姿を認めたパーティーのいくつかが、モンスターに向かって突撃する。タンクとなる前衛が複数のモンスターの攻撃を受け持ち、中衛や後衛のアタッカーがそのHPを減らしていく。
突出したパーティー以外も、続々とモンスターたちと接敵していった。全体的な陣形は穴が多かったけど、前衛のヘイト集中スキルのおかげか、抜けてくるモンスターはいなかった。
流石に上層のモンスターにマギアライフルは使えない。ENが勿体なさすぎるからね。代わりに、ヴィーンの矢や親方たちの投擲で、下の人たちが接触できていない部分のモンスターを倒していく。
「はっはぁ! 雑魚すぎるぜ!」
「これくらいなら後1万匹増えても問題ねぇなぁ!」
大口を叩くだけあって、彼らのプレイヤースキルはそれなりに高い。種族レベルやスキルレベルも、頑張って上げているんだろう。
でも、彼らは正面の相手しか見えていなかった。つまり、上層のモンスターの後ろからやってくる中層のモンスターに気付いていなかったわけで。
「おらおらおら――は?」
「ビリーがやられた! おいおい! いつの間にか中層のモンスターが混じってるぞ!?」
「誰か! 麻痺消しポーションを持ってないか!?」
「足が石に! 動けねぇ!」
うん。中層のモンスターに不意打ちされたプレイヤーたちが、徐々に数を減らしていっている。中には、準備不足で状態異常を治せていないプレイヤーもいた。
……うーん、流石に準備不足は擁護しようがないかな。状態異常回復薬を準備してなかったあなたたちが悪いということで。
とは言っても、中核となっているプレイヤーたちは強い。きちんと状態異常に対するアイテムも持っているし、状況を正確に理解して、メンバーに的確な指示を出している。
後、小さい悪魔みたいなやつも近くに寄ってきたね。早速《鑑定》だ!
えっと、名前はミニゴブリンデビル……ゴブリン!? あれが!?
よくよく見てみたら、その顔にゴブリンの面影が見えなくもない。つまり、はっきりいって《鑑定》がなければゴブリンとは分からないくらい姿かたちが違っていた。
その能力も通常のゴブリンとは比べ物にならないらしく、小さい身体ながらもかなりの膂力を持っているみたいだ。少なくとも、重装備のプレイヤーを殴り飛ばせるくらいにはSTRが高いと。厄介だね。
それに、イイ性格をしている。複数のプレイヤーに囲まれながらも、彼らの攻撃を避けつつ高いSTRでダメージを与えていた。その際に、その顔を醜悪なものに歪めて笑い声を上げている。弱いものいじめを楽しんでるって感じだ。
まぁ、でも?
『悪魔っていうくらいだから、光には弱いよね!』
両手に構えたそれぞれのマギアライフルのレティクルを一匹のミニゴブリンデビルに合わせて、トリガーを引く。
銃口から放たれた二筋の輝きは戦場の空を切り裂いていき、ミニゴブリンデビルの頭と胴体に突き刺さる。
「グギャッ、グギャッ、グギ――」
ミニゴブリンデビルは私の攻撃に気付くことなく、最後まで醜悪な笑い声を上げたまま消滅した。
……うーん、二丁分は流石にオーバーキルかな。弱点属性ダメージを考えたら、一丁で十分かもしれないね。
「なっ、今のはビームか!?」
「あの黒いのを一撃で!? ていうかどこから!?」
「がっ、外壁の上だ! あの魔機人がやってくれたぞ!」
「うおおお! ビームライフルだ! 存在してたのか!?」
「それよりも、何だあの威力!? 一瞬で消し飛んだぞ!?」
「お前ら! 後ろを見るのはいいが、敵にケツ向けたまま死にてぇのか!? 死にたくねぇやつは、さっさとモンスター共を倒しやがれ!」
「わ、わかってらぁ!」
おっと。私に注目が集まっちゃったみたいだね。そういえば、マギアライフルのことはクランメンバー以外には言ってなかったっけ。
さて。他にもミニゴブリンデビルがいるなら撃ち抜いていきたいんだけど……よっと。
上層のモンスターたちはほとんどが倒され、今はミニゴブリンデビルとそれに従う中層のモンスターとの戦いに移行していた。
とりあえず、序盤は乗り切れたってことかな。敵の強さは上がったけど、最初ほどの密度はない。たまに抜けてくるモンスターも外壁のプレイヤーが倒すし、このまま行けば街に被害が出ることなく終わらせられるね。
ま、だからといって気を抜く気はさらさらないけどね。さぁ、中盤戦と行こう。
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