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Chapter.1:錆び朽ちた魔機人《マギナ》
12話:マギアサーベル
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翌日。私は新たな武装を作るためにガレージに篭っていた。
《刀剣》スキルを派生させて《片手剣》スキルにしちゃったからね。錆び朽ちた刀が使えなくなっちゃったし、代わりの武装を早く作らないといけない。
ヴィーンは相変わらず〈散華の森・中層〉へ、レンとアイちゃんはいつも通り私のガレージでパーツや武装の作成をしている。
まぁずっと一人で黙々とっていうのも良いけど、せっかくのMMOだし、フレンドと生産活動ってのも楽しいからね。
さて、と。まずはビームサーベルから作ろうかな。
持ち手は《初級鍛冶》スキルで作るとして、とりあえずはオーソドックスな形のものから作っていこうか。
〈散華の森・上層〉に点在している洞窟の中の採掘ポイントから採った鉱石を、炉にかけて熱していく。
スキルの誘導に従うように手順をこなしていけば、あっという間にインゴット化された鉱石が姿を現した。
あとは、日々狩り続けてる〈アーティファクト・ソードマン〉の残骸もインゴットに混ぜていく。こうすることで、それなりに強度のあるアーティファクト合金インゴットになる。
作り上げたインゴットを再び炉に戻して、ある程度熱したところで取り出し、筒の形を作っていく。
形を作れたら、いつもの魔力コーティングを施して、《パーツクリエイト》の素材庫に入れる。
残りの必要な素材にも魔力コーティングを施して、同じように《パーツクリエイト》の素材庫に入れた。
さて。ここからが本番だ。
素材庫に突っ込んだ素材を使って、ビームサーベルを仕上げていく。少しでも気を抜くと直ぐに形が崩れるから、集中に集中を重ねて、慎重に組み上げる。
持ち手となる筒の部品に、エネルギー源となる研磨魔導石、更に合成蛇皮のケーブルを接続して形を定めていく。
ブラッドラインを作った時に、魔導石を使用して作ったアイテムには《属性変更》というスキルが付与されるのは確認済みだ。この《属性変更》スキルで光属性に変更すれば、アニメなんかで見覚えのあるビームサーベルになる……と、思う。
あとはビームサーベルの口になる部分に収束展開用のレンズもどきを取り付けて……完成、かな?
ゲーム内時間でおよそ8時間かかった大作がこれだ。
[武装・片手剣]マギアサーベル レア度:EX 品質:B- 魔力伝導率:A- 魔力保有量:2500
固定ダメージ:1800
武装スキル:《魔力自動吸収》《状態変化:片手剣》《光属性》
でき……ちゃったね。ステータスの書き方が他のアイテムと違うのが気になるかな。
とりあえず、一つ一つ確認してみよう。
まずは、この固定ダメージってところからだよね。
固定ダメージ:使用者の攻撃力や相手の防御力を無視して指定の値の魔法ダメージを与えられる。属性が付与されている場合は、属性耐性によってダメージが減衰する。
わぁ。とんでもない性能だぞっ!
……いやいや。とんでもなさすぎるでしょ。つまりこれはあれですか? 光属性の耐性を持ってないプレイヤーやモンスターは、このダメージを食らうと? それも一振で?
この魔力保有量でどれくらいの時間使えるのかが分からないけど、《自動魔力吸収》があるからたとえ魔力を使い切っても、ある程度の時間を置けば使えるってわけね。
うーん、バランスブレイカー。いや、これを作るのには魔導石が必要だから、本来今の状態では作れないはずなんだよね? 多分。
〈《パーツクリエイト》のレベルが上がりました〉
〈《初級鍛冶》のレベルが上がりました〉
やっぱり、高レアリティの素材を使うとスキルレベルの伸びがいいね。これからも魔導石はじゃんじゃん使っていこう。
まぁ、まだレアリティが高い上の二つは使えないんですけどね。《パーツクリエイト》のレベルが足りないのかもしれない。
おっと、一応《自動魔力吸収》以外の残りのスキルも確認しておこうか。
《状態変化:片手剣》:装備の形を片手剣の形へと変化させる。
《光属性》:武器の場合は光属性の属性攻撃に得て、防具の場合は光属性耐性を得る。
こんな感じかな。
でも、これを装備しても素のステータスは上がらないのかぁ。今の私のステータスってどんなものなのかな?
[STATUS]
HP:900(+800) EN:850(+800)
STR:74(+73)VIT:226(216)INT:0 MIND:366(336)AGI:171(155)DEX:21(+16)LUK:2
……うっわ。なんか数値がとんでもないことになってる。特にVITとMINDが圧倒的だ。AGIもしっかり150を超えている。
錆び朽ちた装備を換装しただけで、これだけの数値になるのか……。
しかもこれに固定ダメージのビームサーベルが加わると。流石魔機人だね。
このままの勢いでライフルも……って言いたいところだけど、素材が足りないな。残りの素材だと、マギアサーベルをもう一振り作るので精一杯だ。
先ほどよりも短い時間でもう一振りのマギアサーベルを作り、ブラッドラインの背部パーツを微改造する。
マギアサーベルを二本ジョイントして、引き抜けるように改造した。気分はエール○トライクかな?
とりあえずはこんなものでいいか。あと作りたいのは、ライフルと大型のマギアサーベル……マギアソードだね。こっちを作るための素材確保に行かないと。
レンとアイちゃんは……まだ作ってるね。ヴィーンもまだ戻ってきてないみたいだ。
んー、じゃあマギアサーベルの試し斬りでも行ってこようかな。まずは〈散華の森・上層〉で肩慣らしをして、その次に〈散華の森・中層〉のモンスターでテストって感じでいこう。
ダンジョンで試してみたい気もするけど、今の装備でどれだけ相手が強くなるか分からないからなぁ……中層に行った後で余裕があればにしよっか。
『二人ともー。ちょっと外に出てくるねー』
二人からの返事は無い。集中してるね。
私は書き置きを残して、ガレージの外へと出る。
まずは〈散華の森・上層〉のモンスターだね!
*
『もしかして……私の剣、強すぎ?』
場所は〈散華の森・中層〉。草陰から飛び出してきたアシッドスネークを、持っていたマギアサーベルで切り払うと、一撃でその身体が分断されて光の粒子へと変わっていく。
アシッドスネークは、ポイズンスネークの進化系だけど、決して弱いモンスターじゃない。
死角からの奇襲に加えて、強度の高い毒を用いた攻撃を得意としている、危険なモンスターだ。
そんなモンスターを、こんなにあっさり……バランスブレイカーにもほどがあるね。作れちゃったから仕方ないんだけど。
その後も中層に出てくるモンスターを一刀の下に切り捨てていく。残るは中層を徘徊しているフィールドボスだけだ。
マギアサーベルの持続時間についてもわかった。マギアサーベルの最大連続稼動時間はゲーム内時間でおよそ40分。そこから《自動魔力吸収》でフルチャージされるまで、ゲーム内時間でおよそ1時間20分ってところかな。
実際には刀身を40分間出しっぱなしにすることはないだろうから、時間的にはかなり余裕があると思う。二本あれば、大抵の相手には負けないんじゃないかな。
『じゃあ最後に、徘徊フィールドボスを倒せるか実験だね』
〈散華の森・中層〉はそれなりに広い。その中を徘徊する一体のモンスターを探すのは至難の業だ。
そんな時に役立つのが掲示板だ。〈散華の森・中層〉は攻略組の最前線にもなっているから、色んな情報が集まる。
徘徊フィールドボスは決められたルートを徘徊しているようで、薙ぎ倒された木々が目印らしい。分かりやすくて助かる。先客がいるかもしれないけど、そこは出たとこ勝負だね。
フリファンには異なるPT同士で起こる共闘ペナルティもあるみたいだから、無理に手を出すことはできないけど。
モンスターを切り捨てながらボスのいるであろう場所に行けば、そこには呑気に歩いている徘徊フィールドボスの姿があった。
〈散華の森・中層〉の徘徊フィールドボスは、森に生息するには似合わぬ巨大なワニの姿をしている。首元にはフサフサの毛と共に花びらが咲いていた。
その部分だけ爬虫類特有の鱗とのミスマッチ感が酷く、微妙な表情を浮かべてしまう。あの花、ワニに寄生してるわけじゃないよね?
『……よし、やるぞ!』
「GAAAAAA!!!!」
私は気を取り直し、マギアサーベルを両手に構えてボスワニ……フラワーアリゲーターへと駆け出した。
フラワーアリゲーターはそんな私に気付いたのか、その巨体に似合わぬ素早い動きで反転し、私に向かって咆哮を上げる。
モンスターの咆哮には確率で起こる行動阻害の効果が付いているらしいが、特に問題は無かった。うん、変わらずに動ける!
フラワーアリゲーターの頭上にHPバーが確認できた。その数は一本。
さて。ボス相手にどこまでやれるのか、見せてもらおうか。マギアサーベルの性能とやらを!
『でぇぇぇぇいっ!』
「GAOOOOOO!?!?」
フラワーアリゲーターの素早い噛みつきをサイドステップで回避し、通り抜け様に左前足を撫でるように切りつけた。
瞬間、切り飛ばされる左前足。HPバーの3分の1ほどがゴッソリと削れ、フラワーアリゲーターが痛みに声を上げる。
切り口を見てみれば、切り飛ばされた左前足の付け根は溶断されたようなエフェクトが発生していた。
……最前線の徘徊フィールドボス相手に、この火力。んん~っ、たまんないね!
私はバーニアで制動をかけながら反転、スラスターを噴射して勢いをつける。
『もう一撃!』
左前足が切り飛ばされて体勢を崩したフラワーアリゲーターは、背後から突撃する私をしっぽの横薙ぎで迎撃しようとした。
『しっぽではなぁ!』
それを私はスラスターの噴射で上昇し回避し、そのままの勢いで両の手のマギアサーベルをフラワーアリゲーターの背中に突き立てる。
「GYAOOOOOOO…………」
フラワーアリゲーターは断末魔のごとき鳴き声を上げて、ズシンと地面に倒れ伏した。その身体はそのまま光の粒子へと変換され、消滅していく。
私はマギアサーベルを背部パーツに戻しながら、戦闘後のログを確認する。
『よしよし』
〈フィールドボス、【フラワーアリゲーター】を討伐しました〉
〈《片手剣》スキルのレベルが上がりました〉
流石はフィールドボス。一回の戦闘でスキルレベルが上がるのは嬉しい限りだ。
〈散華の森・中層〉の徘徊フィールドボス相手にこれなら、北の山のボスくらいなら何とかなりそうだね。帰ったらみんなと相談してみようか。
私はその後、ついでとばかりに徘徊しない方のフィールドボスと、中層の洞窟にある採掘ポイントから鉱石を掘り出して、ホクホク顔で上層の拠点へと帰るのだった。
《刀剣》スキルを派生させて《片手剣》スキルにしちゃったからね。錆び朽ちた刀が使えなくなっちゃったし、代わりの武装を早く作らないといけない。
ヴィーンは相変わらず〈散華の森・中層〉へ、レンとアイちゃんはいつも通り私のガレージでパーツや武装の作成をしている。
まぁずっと一人で黙々とっていうのも良いけど、せっかくのMMOだし、フレンドと生産活動ってのも楽しいからね。
さて、と。まずはビームサーベルから作ろうかな。
持ち手は《初級鍛冶》スキルで作るとして、とりあえずはオーソドックスな形のものから作っていこうか。
〈散華の森・上層〉に点在している洞窟の中の採掘ポイントから採った鉱石を、炉にかけて熱していく。
スキルの誘導に従うように手順をこなしていけば、あっという間にインゴット化された鉱石が姿を現した。
あとは、日々狩り続けてる〈アーティファクト・ソードマン〉の残骸もインゴットに混ぜていく。こうすることで、それなりに強度のあるアーティファクト合金インゴットになる。
作り上げたインゴットを再び炉に戻して、ある程度熱したところで取り出し、筒の形を作っていく。
形を作れたら、いつもの魔力コーティングを施して、《パーツクリエイト》の素材庫に入れる。
残りの必要な素材にも魔力コーティングを施して、同じように《パーツクリエイト》の素材庫に入れた。
さて。ここからが本番だ。
素材庫に突っ込んだ素材を使って、ビームサーベルを仕上げていく。少しでも気を抜くと直ぐに形が崩れるから、集中に集中を重ねて、慎重に組み上げる。
持ち手となる筒の部品に、エネルギー源となる研磨魔導石、更に合成蛇皮のケーブルを接続して形を定めていく。
ブラッドラインを作った時に、魔導石を使用して作ったアイテムには《属性変更》というスキルが付与されるのは確認済みだ。この《属性変更》スキルで光属性に変更すれば、アニメなんかで見覚えのあるビームサーベルになる……と、思う。
あとはビームサーベルの口になる部分に収束展開用のレンズもどきを取り付けて……完成、かな?
ゲーム内時間でおよそ8時間かかった大作がこれだ。
[武装・片手剣]マギアサーベル レア度:EX 品質:B- 魔力伝導率:A- 魔力保有量:2500
固定ダメージ:1800
武装スキル:《魔力自動吸収》《状態変化:片手剣》《光属性》
でき……ちゃったね。ステータスの書き方が他のアイテムと違うのが気になるかな。
とりあえず、一つ一つ確認してみよう。
まずは、この固定ダメージってところからだよね。
固定ダメージ:使用者の攻撃力や相手の防御力を無視して指定の値の魔法ダメージを与えられる。属性が付与されている場合は、属性耐性によってダメージが減衰する。
わぁ。とんでもない性能だぞっ!
……いやいや。とんでもなさすぎるでしょ。つまりこれはあれですか? 光属性の耐性を持ってないプレイヤーやモンスターは、このダメージを食らうと? それも一振で?
この魔力保有量でどれくらいの時間使えるのかが分からないけど、《自動魔力吸収》があるからたとえ魔力を使い切っても、ある程度の時間を置けば使えるってわけね。
うーん、バランスブレイカー。いや、これを作るのには魔導石が必要だから、本来今の状態では作れないはずなんだよね? 多分。
〈《パーツクリエイト》のレベルが上がりました〉
〈《初級鍛冶》のレベルが上がりました〉
やっぱり、高レアリティの素材を使うとスキルレベルの伸びがいいね。これからも魔導石はじゃんじゃん使っていこう。
まぁ、まだレアリティが高い上の二つは使えないんですけどね。《パーツクリエイト》のレベルが足りないのかもしれない。
おっと、一応《自動魔力吸収》以外の残りのスキルも確認しておこうか。
《状態変化:片手剣》:装備の形を片手剣の形へと変化させる。
《光属性》:武器の場合は光属性の属性攻撃に得て、防具の場合は光属性耐性を得る。
こんな感じかな。
でも、これを装備しても素のステータスは上がらないのかぁ。今の私のステータスってどんなものなのかな?
[STATUS]
HP:900(+800) EN:850(+800)
STR:74(+73)VIT:226(216)INT:0 MIND:366(336)AGI:171(155)DEX:21(+16)LUK:2
……うっわ。なんか数値がとんでもないことになってる。特にVITとMINDが圧倒的だ。AGIもしっかり150を超えている。
錆び朽ちた装備を換装しただけで、これだけの数値になるのか……。
しかもこれに固定ダメージのビームサーベルが加わると。流石魔機人だね。
このままの勢いでライフルも……って言いたいところだけど、素材が足りないな。残りの素材だと、マギアサーベルをもう一振り作るので精一杯だ。
先ほどよりも短い時間でもう一振りのマギアサーベルを作り、ブラッドラインの背部パーツを微改造する。
マギアサーベルを二本ジョイントして、引き抜けるように改造した。気分はエール○トライクかな?
とりあえずはこんなものでいいか。あと作りたいのは、ライフルと大型のマギアサーベル……マギアソードだね。こっちを作るための素材確保に行かないと。
レンとアイちゃんは……まだ作ってるね。ヴィーンもまだ戻ってきてないみたいだ。
んー、じゃあマギアサーベルの試し斬りでも行ってこようかな。まずは〈散華の森・上層〉で肩慣らしをして、その次に〈散華の森・中層〉のモンスターでテストって感じでいこう。
ダンジョンで試してみたい気もするけど、今の装備でどれだけ相手が強くなるか分からないからなぁ……中層に行った後で余裕があればにしよっか。
『二人ともー。ちょっと外に出てくるねー』
二人からの返事は無い。集中してるね。
私は書き置きを残して、ガレージの外へと出る。
まずは〈散華の森・上層〉のモンスターだね!
*
『もしかして……私の剣、強すぎ?』
場所は〈散華の森・中層〉。草陰から飛び出してきたアシッドスネークを、持っていたマギアサーベルで切り払うと、一撃でその身体が分断されて光の粒子へと変わっていく。
アシッドスネークは、ポイズンスネークの進化系だけど、決して弱いモンスターじゃない。
死角からの奇襲に加えて、強度の高い毒を用いた攻撃を得意としている、危険なモンスターだ。
そんなモンスターを、こんなにあっさり……バランスブレイカーにもほどがあるね。作れちゃったから仕方ないんだけど。
その後も中層に出てくるモンスターを一刀の下に切り捨てていく。残るは中層を徘徊しているフィールドボスだけだ。
マギアサーベルの持続時間についてもわかった。マギアサーベルの最大連続稼動時間はゲーム内時間でおよそ40分。そこから《自動魔力吸収》でフルチャージされるまで、ゲーム内時間でおよそ1時間20分ってところかな。
実際には刀身を40分間出しっぱなしにすることはないだろうから、時間的にはかなり余裕があると思う。二本あれば、大抵の相手には負けないんじゃないかな。
『じゃあ最後に、徘徊フィールドボスを倒せるか実験だね』
〈散華の森・中層〉はそれなりに広い。その中を徘徊する一体のモンスターを探すのは至難の業だ。
そんな時に役立つのが掲示板だ。〈散華の森・中層〉は攻略組の最前線にもなっているから、色んな情報が集まる。
徘徊フィールドボスは決められたルートを徘徊しているようで、薙ぎ倒された木々が目印らしい。分かりやすくて助かる。先客がいるかもしれないけど、そこは出たとこ勝負だね。
フリファンには異なるPT同士で起こる共闘ペナルティもあるみたいだから、無理に手を出すことはできないけど。
モンスターを切り捨てながらボスのいるであろう場所に行けば、そこには呑気に歩いている徘徊フィールドボスの姿があった。
〈散華の森・中層〉の徘徊フィールドボスは、森に生息するには似合わぬ巨大なワニの姿をしている。首元にはフサフサの毛と共に花びらが咲いていた。
その部分だけ爬虫類特有の鱗とのミスマッチ感が酷く、微妙な表情を浮かべてしまう。あの花、ワニに寄生してるわけじゃないよね?
『……よし、やるぞ!』
「GAAAAAA!!!!」
私は気を取り直し、マギアサーベルを両手に構えてボスワニ……フラワーアリゲーターへと駆け出した。
フラワーアリゲーターはそんな私に気付いたのか、その巨体に似合わぬ素早い動きで反転し、私に向かって咆哮を上げる。
モンスターの咆哮には確率で起こる行動阻害の効果が付いているらしいが、特に問題は無かった。うん、変わらずに動ける!
フラワーアリゲーターの頭上にHPバーが確認できた。その数は一本。
さて。ボス相手にどこまでやれるのか、見せてもらおうか。マギアサーベルの性能とやらを!
『でぇぇぇぇいっ!』
「GAOOOOOO!?!?」
フラワーアリゲーターの素早い噛みつきをサイドステップで回避し、通り抜け様に左前足を撫でるように切りつけた。
瞬間、切り飛ばされる左前足。HPバーの3分の1ほどがゴッソリと削れ、フラワーアリゲーターが痛みに声を上げる。
切り口を見てみれば、切り飛ばされた左前足の付け根は溶断されたようなエフェクトが発生していた。
……最前線の徘徊フィールドボス相手に、この火力。んん~っ、たまんないね!
私はバーニアで制動をかけながら反転、スラスターを噴射して勢いをつける。
『もう一撃!』
左前足が切り飛ばされて体勢を崩したフラワーアリゲーターは、背後から突撃する私をしっぽの横薙ぎで迎撃しようとした。
『しっぽではなぁ!』
それを私はスラスターの噴射で上昇し回避し、そのままの勢いで両の手のマギアサーベルをフラワーアリゲーターの背中に突き立てる。
「GYAOOOOOOO…………」
フラワーアリゲーターは断末魔のごとき鳴き声を上げて、ズシンと地面に倒れ伏した。その身体はそのまま光の粒子へと変換され、消滅していく。
私はマギアサーベルを背部パーツに戻しながら、戦闘後のログを確認する。
『よしよし』
〈フィールドボス、【フラワーアリゲーター】を討伐しました〉
〈《片手剣》スキルのレベルが上がりました〉
流石はフィールドボス。一回の戦闘でスキルレベルが上がるのは嬉しい限りだ。
〈散華の森・中層〉の徘徊フィールドボス相手にこれなら、北の山のボスくらいなら何とかなりそうだね。帰ったらみんなと相談してみようか。
私はその後、ついでとばかりに徘徊しない方のフィールドボスと、中層の洞窟にある採掘ポイントから鉱石を掘り出して、ホクホク顔で上層の拠点へと帰るのだった。
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