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Chapter.1:錆び朽ちた魔機人《マギナ》
幕間1話:運営と予想外
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FFOのゲーム内に作られた運営専用の作業スペース。
そこでは、幾人もの人間が交代を取りながらゲームの運営を行っていた。
「さて、我らがFreedomFantasiaOnlineが始まったわけだが、プレイヤーの方はどうだ?」
作業を行っている人の中でも、周りに指示を出していた男が聞く。
それに答えたのは、作業の手を止めて身体を伸ばしていた服を着崩した男と、逆にきちんと服を着こなす女性だった。
「受け入れは順調っすね。サーバーが落ちることもなし。ゲームに対する評価も上々っす」
「実際にモンスターと戦うことに慣れないプレイヤーも一定数いるみたいですが、大体のプレイヤーはもう狩りを始めてますね。動物型はもちろん、人型のゴブリンなどと戦っても忌避感はないです」
「んー、やっぱゲームのエフェクトをリアル寄りからゲームとか、アニメ寄りにしたことがよかったんすね。あとは、倒した後に死体が砕け散って光になるエフェクトと、ドロップアイテムに変換されるシステムもそれを助けてるっすね。僕も、リアルな血飛沫や死体はキツいっすもん」
「私も、実際に解体しろと言われたら厳しいものがありますね。リアルを求めすぎるのも問題があります」
二人の言葉を聞いた男が、ふむ、と頷く。
「なるほど。やはりそこら辺は簡略化した方が良かったか。ではエフェクト関連はこのままの路線で行こう。選ばれた種族については?」
二度目の問いに対しても、その二人が資料を見ながら答える。
「やはりと言っていいのか、人間が一番多いですね。次点で獣人。エルフやドワーフも一定数選ばれています。翼人や魔人は数は少ないですがそれでも総プレイヤー数からしたら多い方ですね。魔機人は……その……200名ほど、ですが」
「まー、正式サービスでそれだけ残ってたら上々じゃないっすかねぇ~。明らかに他の種族に比べて初動が大変っすもん」
「開発チームの悪ふざけで生まれた種族ですからね……その分、成長した時の強さも大概ですが」
などと報告していると、服を着崩した男がギョッと目を見開いて目の前のモニターを確認する。
「――ちょっと待って欲しいっす。散華の森の隠しダンジョンがクリアされたっす!」
「散華の森というと……」
「魔機人専用のダンジョンっす。入ってきた人数とパーツ、武装の強さによって難易度が変わるヤツっすね」
「ふむ。いくら強さが変動するボスとはいえ、あそこは初期装備でどうにかなるようなボスにはしていなかったはずだが……」
男の問いに、服を着崩した男はキーボードを弄りながら答えた。
「いや、見た感じ初期装備っす。スキルの方は始めたてにしては高いっすけど。しかもソロっすよ。初期装備の魔機人で、さらに一人であのボスに勝つのは、いくら相手が最弱状態って言っても無理っす。少なくとも僕にはできないっすね。開発の変態共ならあるいは……って感じっすかね」
「ふむ。しかもどうやら、魔機人の仕様について気づいたようだな。戦闘の最後の方、明らかに動きが変わっている」
「……この段階で、しかもベータテスターでもないのに?」
「その仕様を理解してるのは、ベータテスターでも限りなく一部のプレイヤーだけっすけどね。まったく、とんでもないプレイヤーもいたもんっす……」
「要注目プレイヤーだな。名前は……ミオン、か」
男はそう言うと、他の作業の進捗状況を確認する仕事に戻った。
服を着崩した男は自身の上司から視線を外して「あ」と声を上げる。
「どうした?」
「散華の森のダンジョンって、ソロでクリアすると"アレ"が手に入るんじゃ……」
「"アレ"って……あ」
「ちょ、ちょっと待って! それってつまり、三種の魔導石が持っていかれるってこと!? こんな序盤で!? 落ち着いてる場合じゃないじゃない!」
「ま、まぁ大丈夫だろう。今すぐ使えるのは一番レアリティの低いものだけだろうし……」
「いや、あの、それだけじゃないっす。多分、動力炉も持っていかれるんじゃないかと……」
「あーーーー!!!!!!」
「そうだよ! あそこソロクリアしたらそれがあった!」
「どうするんです!? 流石に素材が足りないから動力炉を今すぐどうこうはできませんが……」
「いや、しかし……ズルをしたわけでも、ましてやチートを使ったわけでもないわけだからなぁ……」
「正当な報酬っすよね……破格っすけど」
「……とりあえず、調整始めますね」
「……頼む」
三人はため息をつきつつ、頭を抱えるのだった。
そこでは、幾人もの人間が交代を取りながらゲームの運営を行っていた。
「さて、我らがFreedomFantasiaOnlineが始まったわけだが、プレイヤーの方はどうだ?」
作業を行っている人の中でも、周りに指示を出していた男が聞く。
それに答えたのは、作業の手を止めて身体を伸ばしていた服を着崩した男と、逆にきちんと服を着こなす女性だった。
「受け入れは順調っすね。サーバーが落ちることもなし。ゲームに対する評価も上々っす」
「実際にモンスターと戦うことに慣れないプレイヤーも一定数いるみたいですが、大体のプレイヤーはもう狩りを始めてますね。動物型はもちろん、人型のゴブリンなどと戦っても忌避感はないです」
「んー、やっぱゲームのエフェクトをリアル寄りからゲームとか、アニメ寄りにしたことがよかったんすね。あとは、倒した後に死体が砕け散って光になるエフェクトと、ドロップアイテムに変換されるシステムもそれを助けてるっすね。僕も、リアルな血飛沫や死体はキツいっすもん」
「私も、実際に解体しろと言われたら厳しいものがありますね。リアルを求めすぎるのも問題があります」
二人の言葉を聞いた男が、ふむ、と頷く。
「なるほど。やはりそこら辺は簡略化した方が良かったか。ではエフェクト関連はこのままの路線で行こう。選ばれた種族については?」
二度目の問いに対しても、その二人が資料を見ながら答える。
「やはりと言っていいのか、人間が一番多いですね。次点で獣人。エルフやドワーフも一定数選ばれています。翼人や魔人は数は少ないですがそれでも総プレイヤー数からしたら多い方ですね。魔機人は……その……200名ほど、ですが」
「まー、正式サービスでそれだけ残ってたら上々じゃないっすかねぇ~。明らかに他の種族に比べて初動が大変っすもん」
「開発チームの悪ふざけで生まれた種族ですからね……その分、成長した時の強さも大概ですが」
などと報告していると、服を着崩した男がギョッと目を見開いて目の前のモニターを確認する。
「――ちょっと待って欲しいっす。散華の森の隠しダンジョンがクリアされたっす!」
「散華の森というと……」
「魔機人専用のダンジョンっす。入ってきた人数とパーツ、武装の強さによって難易度が変わるヤツっすね」
「ふむ。いくら強さが変動するボスとはいえ、あそこは初期装備でどうにかなるようなボスにはしていなかったはずだが……」
男の問いに、服を着崩した男はキーボードを弄りながら答えた。
「いや、見た感じ初期装備っす。スキルの方は始めたてにしては高いっすけど。しかもソロっすよ。初期装備の魔機人で、さらに一人であのボスに勝つのは、いくら相手が最弱状態って言っても無理っす。少なくとも僕にはできないっすね。開発の変態共ならあるいは……って感じっすかね」
「ふむ。しかもどうやら、魔機人の仕様について気づいたようだな。戦闘の最後の方、明らかに動きが変わっている」
「……この段階で、しかもベータテスターでもないのに?」
「その仕様を理解してるのは、ベータテスターでも限りなく一部のプレイヤーだけっすけどね。まったく、とんでもないプレイヤーもいたもんっす……」
「要注目プレイヤーだな。名前は……ミオン、か」
男はそう言うと、他の作業の進捗状況を確認する仕事に戻った。
服を着崩した男は自身の上司から視線を外して「あ」と声を上げる。
「どうした?」
「散華の森のダンジョンって、ソロでクリアすると"アレ"が手に入るんじゃ……」
「"アレ"って……あ」
「ちょ、ちょっと待って! それってつまり、三種の魔導石が持っていかれるってこと!? こんな序盤で!? 落ち着いてる場合じゃないじゃない!」
「ま、まぁ大丈夫だろう。今すぐ使えるのは一番レアリティの低いものだけだろうし……」
「いや、あの、それだけじゃないっす。多分、動力炉も持っていかれるんじゃないかと……」
「あーーーー!!!!!!」
「そうだよ! あそこソロクリアしたらそれがあった!」
「どうするんです!? 流石に素材が足りないから動力炉を今すぐどうこうはできませんが……」
「いや、しかし……ズルをしたわけでも、ましてやチートを使ったわけでもないわけだからなぁ……」
「正当な報酬っすよね……破格っすけど」
「……とりあえず、調整始めますね」
「……頼む」
三人はため息をつきつつ、頭を抱えるのだった。
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