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Chapter.1:錆び朽ちた魔機人《マギナ》
2話:魔機人《マギナ》
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『FreedomFantasiaOnlineへようこそ。まずは、この世界であなたの名前となるプレイヤーネームを設定してください』
ゲームを起動させた私は、周囲を真っ白い空間に囲まれた不思議な場所にいた。目の前には半透明のホロウィンドウがホロキーボードと共に表示されている。
さて、音声案内の通りに進めていきますか。まずは名前ね。
ピッピッとキーボードをタッチし『MION』と入力する。琴宮紫音からミとオンをとってミオンだ。
シオンでもプレイヤーネームとしては通用するだろうけど、本名を使うのはちょっと抵抗がある。
『ミオン様ですね。お次は、種族をお選びください』
機械音声が喋るのと同時に七種族のホログラムが浮かび上がる。それぞれ、人間、獣人、エルフ、ドワーフ、翼人、魔人、魔機人だ。
私は当然魔機人を選択する。ちなみに、ホロウィンドウの種族説明欄にはこう書いてあった。
[魔機人]
機械の身体で魔力を動力源として動く人型ロボット。成長する肉体が無いため種族レベルは無い。
物理攻撃と魔法攻撃に耐性があるが、ステータスはパーツ依存。
雷属性の攻撃に弱い。魔法使用不可。
うん、公式サイトに書いてあったことと大差ないね。機械音声が本当にこの種族でいいですかと聞いてくるので、目の前のホロウィンドウに浮かぶはいをタッチ。
すると、白一色だった背景が色を変えていき、工場のような、整備場のような背景に変わる。選んだ種族で背景が変わるのは面白いね。
『では、この世界であなたの分身となるアバターを作成してください』
アバター作成キタ――――――ッ!
ソワソワする気持ちを抑えつつ、機械音声に促されるままホロウィンドウをタッチしていく。
どうやら、アバター作成には二通りのやり方があるみたい。
一つ目は、簡易エディット。これはある程度形の決まったモデルからそれぞれパーツを選んでいき、アバターを作るというもの。
主人公のアバターを作れるゲームでは一般的なキャラクリだね。魔機人以外の六種族だと、リアルの自分をスキャンしてベースにすることもできるみたい。
二つ目は、詳細エディット。これはそのままの意味で、本当に一からモデルを作っていくみたい。アバター作成に凝る人はこの詳細エディットで何時間も時間を消費するのだろうことが想像できる。私もその口です。
しかも、私が選んだ種族は魔機人。なんと、この詳細エディットでフレームからモデリングできるという。これは、凝るしかないっしょ!
そんなこんなで3Dモデルと格闘すること約四時間。ええ、四時間です。この設定を始めたのが大体十時半頃だったから、今は午後二時半くらいかな。
ちなみに正式サービス開始は正午です。つまりスタートダッシュ二時間半も遅れてしまったわけですね。これはまずい。
と、そんな私の心中を察したのか機械音声が話しかけてくる。
『伝え忘れておりましたが、ゲーム内での一時間は現実世界の二十分ほどです。ですので、そんなに焦る必要はないかと思います』
HAHAHA。Why? 今なんて?
『特殊な時間加速処理を施しておりますので、ユーザーの皆さんの脳や身体に負担はございません。ごゆるりと、ゲームをお楽しみください』
えーっと、つまり、ここで四時間アバターを弄ってたってことは……現実では一時間二十分しか経ってない、ってことか。
兄さん、どうしてこんな大事なことを妹に黙ってたの……くそぅ、ベータテスターめ。つまりは時間以上に楽しんでいたってことか。
ふふふ、まあこれからは私もその恩恵に与れるわけだからね、許してやろうじゃないか。
どうやら時間に関しては大丈夫っぽいので、改めて私が作成したアバターを見る。
頭部は、側頭部からツインテール状に伸びる二本のパーツが特徴的。開閉ギミックとかも仕込めるらしく、だいぶ凝った作りになっている。
顔は一般的な二つ目に口元はマスクパーツで保護している。口のあるロボットも嫌いじゃないけど、女の子だからね。
胴部は、特に凝ったところはない。女性らしいシルエットと両立するかっこよさを目指した感じ。あまり胸部装甲が大きいとミサイルになりそうだ。
おっぱいミサイル、見る分にはいいけど自分がやるのはちょっと……。
腕部には色々と武器を仕込めるようにした。やっぱ、装甲部が開閉して中から武器が出てくるとかロマンじゃない? ゲームでもできるかは分からないけどね。まあ、とりあえずはギミックだけ。
あと、肩の側面部分には姿勢制御に使えるかなと思ってバーニアを取り付けた。見た目が損なわれないように、バランスよく配置したけどね。
腰部から下は女性らしいシルエットと装甲、スラスター、バーニアをバランスよく配置している。脚部にも邪魔にならない位置にバーニアを配置し、女性的なシルエットを阻害しない程度に装甲を付け足した。
背部はまだ設定できないらしく、ゲーム内で新しく作成してくださいとのこと。ウィングとか、コンテナとか、設定出来るなら色々付けたいものがあったんだけどね。
そんなこんなでアバター作成が完了。色は、白と蒼、装飾として紫を入れている。かっこよさと美しさを両立させたような色合いになっていて、凄い私好みだ。
いやぁ、理想のロボットでファンタジーの世界を冒険できるとか最高か? 最高だね!
ま、私としては黒と紅、金の禍々しい感じの装飾も捨てがたかったんだけど……それは新しくパーツが作れたらだね。
『次に、種族スキル及び種族初期スキル、初期獲得可能スキルの確認をお願いします』
アバター作成が終われば次はスキル。公式サイトでは流し見だったからここでちゃんと見ることにしよう。
と思ったんだけど機械音声がそのままスキルそのものの説明を続けてしまった。
機械音声の言うことを要約するとこうだ。
前にも話した通り、最初に選べるスキルは10枠。そこから種族スキルを覗いた数が実質的なスキルを選択出来る数になること。
スキルの中にはステータスに影響を及ぼすスキルもあるとの事。詳しいカテゴリー分け何かは後ほどね。
さらに、初期スキルは10枠までだけど、それ以降のスキル取得にはSPが必要になってくる。
これは、取得したいスキルの強さや希少性で消費SPが変わってくるみたいだ。
例えば、初期スキルである《刀剣》スキルを取得するのに必要なSPが1で、その派生スキルである《片手剣》スキルや《両手剣》スキルを取得するためにはSPが3必要といった感じ。
レアなスキルはこれに当てはまらず、かなりのポイントを消費したりするらしい。実際の必要ポイント数は実物を見ないと分からない、と。
初期スキルに何を選んだかに拘わらず、初期SPは10固定。SPはスキルレベルが10上がるごとにで1SPを獲得出来るようだ。
スキルが自由に選べるこのゲームで、どのスキルを取るか、どうやって育てていくかでそれぞれのキャラの個性が立つ、と。
スキルビルド次第ではオンリーワンなキャラを作ることも可能なわけね。ゲーマー心をくすぐる話だ。
そして先ほども出たと思うけど、スキルにはカテゴリーというものが存在して、全部で七つのカテゴリーに分類される。それは以下の通り。
・武器カテゴリー
・防具カテゴリー
・魔法カテゴリー
・生産カテゴリー
・パッシブカテゴリー
・エクストラカテゴリー
・ユニークカテゴリー
武器から生産までは特に説明することはないかな。読んで字のごとくのカテゴリーだ。必要になったら適宜確認していこう。
パッシブカテゴリーは、直接的にステータスを上げることのできるスキルカテゴリーだ。
初期スキルとして選べるものの中には、《筋力強化》や、《敏捷強化》などのステータス強化系スキルがある。
ちなみにVRMMOラノベでお馴染みの鑑定もパッシブカテゴリーみたいだ。便利な鑑定は取っておきたいスキルだね。
で、この中でも更に特殊なのが、エクストラカテゴリーとユニークカテゴリーだ。
エクストラカテゴリーは、特定の条件で他のカテゴリーから派生するものや、希少性の高いもの、特定の種族でしか獲得出来ないものがほとんどだ。
その分強力なスキルが多いらしいけどね。
ユニークカテゴリーは、FFOにただ一つだけ存在するスキルのカテゴリーのこと。
エクストラカテゴリーよりも希少性が高く、条件も厳しいらしい。ゲーマーとしては、一つくらいユニークカテゴリーのスキルをゲットしたいところだ。燃えてくるね!
さて、と。まずは魔機人の種族スキルを見ていこう。
《魔機人》
カテゴリー:エクストラ
MPの代わりにENという特殊ステータスを持つ。MPを消費する行動やスキルを使用する際、MPではなくENを消費する。
防具、装飾品を装備不可。代わりにパーツを装備可能。
一部スキルが取得不可。一部スキルが使用不可。一部スキルが適用されない。
雷属性と腐食属性以外の全属性に耐性。物理攻撃に耐性。
装備パーツとこのスキルの効果が矛盾した場合、装備パーツの効果が優先される。
《武装》
カテゴリー:エクストラ
武装を装備可能。
武装に武器カテゴリーのスキルが書かれている場合、その該当スキルが必要になる。
《パーツクリエイト》
カテゴリー:エクストラ
魔機人のパーツなど、特殊なアイテムを作成できるようになる。
《自動修復》
カテゴリー:エクストラ
魔力炉から供給される魔力で機体を修復する。
《自動供給》
カテゴリー:エクストラ
魔力炉から供給される魔力でエネルギーを充填する。
わあ、見事にエクストラカテゴリーばっか。これは多分、魔機人以外では取得できないスキルだからってことかな。希少性で見るなら確かにエクストラだね。
しかも魔機人スキルの説明文がこう……カードゲームのテキストみたいになってるね。分かりやすいけどさ。
で、最後の二つは多分HP自動回復とMP……もとい、EN自動回復かな。魔機人は回復魔法やポーションなんかは飲めないし、妥当なところだと思う。
このスキルでどれだけの数値が回復できるか……ってところかな。
さて、取得可能なスキルは残り五枠。私は時間の許す限り悩んでこの五つを選択した。
《刀剣》
カテゴリー:武器
武器〈剣〉〈刀〉を装備可能。該当武器種でダメージを与えられるようになる。
《鑑定》
カテゴリー:パッシブ
あらゆるものの詳細が分かるようになる。対応するスキルを持っていれば追加情報を得ることができる。
《感知》
カテゴリー:パッシブ
気配が分かるようになる。
《直感》
カテゴリー:パッシブ
危ないものに対する知覚が敏感になる。
《敏捷強化》
カテゴリー:パッシブ
AGIが上昇し、成長補正が入る。
成長しない魔機人の場合、補正の代わりに特定レベル時に固定値が追加される。
《刀剣》スキルは攻撃手段のため。《武装》を持っている状態で武器カテゴリーのスキルを取ると、そのスキルに対応する武装が貰えるみたい。いわゆる、初期装備ね。
《鑑定》《感知》《直感》の三スキルはゲーム内で取りにくいスキルだって言うのと、ベータテスターの兄さんが絶対に取得しておいた方が後々楽になると言っていたので取った。説明を見てもうっすらとしか分からないけどね。
《敏捷強化》スキルは数ある強化系のパッシブスキルの中からこれを選んだ。とにもかくにもスピードって大事だよね、って話。
極論、攻撃を食らうことがなければ死なないわけだし。いわゆる、『当たらなければ~』ってやつだね。
それに、成長補正がついているというのがちょっと気になる。スキルをステータス上昇系のパッシブばかりで埋めてレベル上げをしたらとんでもないステータスになりそうだけど、文面からは分からない罠がありそうだ。
例えば、ステータス上昇系スキルを多く取るとその分何かしらのデメリットがあるとかさ。
まぁ、魔機人の場合は固定値上昇になっちゃうけどね。補正値の分はパーツで補うよ!
『スキルを決定しますか?』
この構成でいいのかと訊いてくる機械音声に「はい」のウィンドウをタッチして答える。
『プレイヤーネーム:ミオン
種族:魔機人
選択スキル:《刀剣》《鑑定》《感知》《直感》《敏捷強化》
…………確認致しました。プレイヤーネーム:ミオン様の初期開始地点は始まりの街、ファスディア近くの森となります。それでは、アクセス開始までのカウントダウンを開始致します。Ⅹ……Ⅸ……Ⅷ……』
本来、ゲーム開始地点はどの種族も始まりの街から始まるんだけど、魔機人だけは始まりの街の近郊にある森の中から始まるらしい。
それは、一般的に魔機人を選ぶ唯一のメリットって言われてる、〈ガレージ〉というアイテムがあるからなんだけどね。
そう。この言い方から分かる通り、魔機人はFFO唯一の不遇種族として認識されている。その不遇云々の話は、兄さんから聞いた話なんだけど。
どうして不遇種族として扱われてるかはあまり教えて貰えなかったんだけど……少なくともベータテスト段階ではNPCの魔機人以外はほとんど見かけなかったんだって。
兄さんが見せてくれたスクショに写ってた魔機人はNPCだったみたいね。魔機人で始めるって言った私を兄さんはとても心配そうに見てたのを覚えている。
でも、燃えてくるね。周囲が不遇種族と蔑む種族で、頑張るのってさ。ラノベの王道展開みたいでいいよね!
っと、そろそろカウントダウンが終わりそう。事前にご飯も食べたし、トイレも済ませてきた。とりあえずは夜までぶっ続けで遊ぶぞー!
……ちゃんとログイン制限時間内でね! 強制ログアウトは嫌だ!
『Ⅲ……Ⅱ……Ⅰ……アクセス開始、完了。私たちはプレイヤーネーム:ミオンを歓迎致します。ようこそ、自由なる浮遊大陸の世界へ』
そして私は、FFOの世界への第一歩を踏み出した――
『な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!』
――そんな私を待っていたのは、全身を錆び付かせた私の相棒でした……。ぐすん。
ゲームを起動させた私は、周囲を真っ白い空間に囲まれた不思議な場所にいた。目の前には半透明のホロウィンドウがホロキーボードと共に表示されている。
さて、音声案内の通りに進めていきますか。まずは名前ね。
ピッピッとキーボードをタッチし『MION』と入力する。琴宮紫音からミとオンをとってミオンだ。
シオンでもプレイヤーネームとしては通用するだろうけど、本名を使うのはちょっと抵抗がある。
『ミオン様ですね。お次は、種族をお選びください』
機械音声が喋るのと同時に七種族のホログラムが浮かび上がる。それぞれ、人間、獣人、エルフ、ドワーフ、翼人、魔人、魔機人だ。
私は当然魔機人を選択する。ちなみに、ホロウィンドウの種族説明欄にはこう書いてあった。
[魔機人]
機械の身体で魔力を動力源として動く人型ロボット。成長する肉体が無いため種族レベルは無い。
物理攻撃と魔法攻撃に耐性があるが、ステータスはパーツ依存。
雷属性の攻撃に弱い。魔法使用不可。
うん、公式サイトに書いてあったことと大差ないね。機械音声が本当にこの種族でいいですかと聞いてくるので、目の前のホロウィンドウに浮かぶはいをタッチ。
すると、白一色だった背景が色を変えていき、工場のような、整備場のような背景に変わる。選んだ種族で背景が変わるのは面白いね。
『では、この世界であなたの分身となるアバターを作成してください』
アバター作成キタ――――――ッ!
ソワソワする気持ちを抑えつつ、機械音声に促されるままホロウィンドウをタッチしていく。
どうやら、アバター作成には二通りのやり方があるみたい。
一つ目は、簡易エディット。これはある程度形の決まったモデルからそれぞれパーツを選んでいき、アバターを作るというもの。
主人公のアバターを作れるゲームでは一般的なキャラクリだね。魔機人以外の六種族だと、リアルの自分をスキャンしてベースにすることもできるみたい。
二つ目は、詳細エディット。これはそのままの意味で、本当に一からモデルを作っていくみたい。アバター作成に凝る人はこの詳細エディットで何時間も時間を消費するのだろうことが想像できる。私もその口です。
しかも、私が選んだ種族は魔機人。なんと、この詳細エディットでフレームからモデリングできるという。これは、凝るしかないっしょ!
そんなこんなで3Dモデルと格闘すること約四時間。ええ、四時間です。この設定を始めたのが大体十時半頃だったから、今は午後二時半くらいかな。
ちなみに正式サービス開始は正午です。つまりスタートダッシュ二時間半も遅れてしまったわけですね。これはまずい。
と、そんな私の心中を察したのか機械音声が話しかけてくる。
『伝え忘れておりましたが、ゲーム内での一時間は現実世界の二十分ほどです。ですので、そんなに焦る必要はないかと思います』
HAHAHA。Why? 今なんて?
『特殊な時間加速処理を施しておりますので、ユーザーの皆さんの脳や身体に負担はございません。ごゆるりと、ゲームをお楽しみください』
えーっと、つまり、ここで四時間アバターを弄ってたってことは……現実では一時間二十分しか経ってない、ってことか。
兄さん、どうしてこんな大事なことを妹に黙ってたの……くそぅ、ベータテスターめ。つまりは時間以上に楽しんでいたってことか。
ふふふ、まあこれからは私もその恩恵に与れるわけだからね、許してやろうじゃないか。
どうやら時間に関しては大丈夫っぽいので、改めて私が作成したアバターを見る。
頭部は、側頭部からツインテール状に伸びる二本のパーツが特徴的。開閉ギミックとかも仕込めるらしく、だいぶ凝った作りになっている。
顔は一般的な二つ目に口元はマスクパーツで保護している。口のあるロボットも嫌いじゃないけど、女の子だからね。
胴部は、特に凝ったところはない。女性らしいシルエットと両立するかっこよさを目指した感じ。あまり胸部装甲が大きいとミサイルになりそうだ。
おっぱいミサイル、見る分にはいいけど自分がやるのはちょっと……。
腕部には色々と武器を仕込めるようにした。やっぱ、装甲部が開閉して中から武器が出てくるとかロマンじゃない? ゲームでもできるかは分からないけどね。まあ、とりあえずはギミックだけ。
あと、肩の側面部分には姿勢制御に使えるかなと思ってバーニアを取り付けた。見た目が損なわれないように、バランスよく配置したけどね。
腰部から下は女性らしいシルエットと装甲、スラスター、バーニアをバランスよく配置している。脚部にも邪魔にならない位置にバーニアを配置し、女性的なシルエットを阻害しない程度に装甲を付け足した。
背部はまだ設定できないらしく、ゲーム内で新しく作成してくださいとのこと。ウィングとか、コンテナとか、設定出来るなら色々付けたいものがあったんだけどね。
そんなこんなでアバター作成が完了。色は、白と蒼、装飾として紫を入れている。かっこよさと美しさを両立させたような色合いになっていて、凄い私好みだ。
いやぁ、理想のロボットでファンタジーの世界を冒険できるとか最高か? 最高だね!
ま、私としては黒と紅、金の禍々しい感じの装飾も捨てがたかったんだけど……それは新しくパーツが作れたらだね。
『次に、種族スキル及び種族初期スキル、初期獲得可能スキルの確認をお願いします』
アバター作成が終われば次はスキル。公式サイトでは流し見だったからここでちゃんと見ることにしよう。
と思ったんだけど機械音声がそのままスキルそのものの説明を続けてしまった。
機械音声の言うことを要約するとこうだ。
前にも話した通り、最初に選べるスキルは10枠。そこから種族スキルを覗いた数が実質的なスキルを選択出来る数になること。
スキルの中にはステータスに影響を及ぼすスキルもあるとの事。詳しいカテゴリー分け何かは後ほどね。
さらに、初期スキルは10枠までだけど、それ以降のスキル取得にはSPが必要になってくる。
これは、取得したいスキルの強さや希少性で消費SPが変わってくるみたいだ。
例えば、初期スキルである《刀剣》スキルを取得するのに必要なSPが1で、その派生スキルである《片手剣》スキルや《両手剣》スキルを取得するためにはSPが3必要といった感じ。
レアなスキルはこれに当てはまらず、かなりのポイントを消費したりするらしい。実際の必要ポイント数は実物を見ないと分からない、と。
初期スキルに何を選んだかに拘わらず、初期SPは10固定。SPはスキルレベルが10上がるごとにで1SPを獲得出来るようだ。
スキルが自由に選べるこのゲームで、どのスキルを取るか、どうやって育てていくかでそれぞれのキャラの個性が立つ、と。
スキルビルド次第ではオンリーワンなキャラを作ることも可能なわけね。ゲーマー心をくすぐる話だ。
そして先ほども出たと思うけど、スキルにはカテゴリーというものが存在して、全部で七つのカテゴリーに分類される。それは以下の通り。
・武器カテゴリー
・防具カテゴリー
・魔法カテゴリー
・生産カテゴリー
・パッシブカテゴリー
・エクストラカテゴリー
・ユニークカテゴリー
武器から生産までは特に説明することはないかな。読んで字のごとくのカテゴリーだ。必要になったら適宜確認していこう。
パッシブカテゴリーは、直接的にステータスを上げることのできるスキルカテゴリーだ。
初期スキルとして選べるものの中には、《筋力強化》や、《敏捷強化》などのステータス強化系スキルがある。
ちなみにVRMMOラノベでお馴染みの鑑定もパッシブカテゴリーみたいだ。便利な鑑定は取っておきたいスキルだね。
で、この中でも更に特殊なのが、エクストラカテゴリーとユニークカテゴリーだ。
エクストラカテゴリーは、特定の条件で他のカテゴリーから派生するものや、希少性の高いもの、特定の種族でしか獲得出来ないものがほとんどだ。
その分強力なスキルが多いらしいけどね。
ユニークカテゴリーは、FFOにただ一つだけ存在するスキルのカテゴリーのこと。
エクストラカテゴリーよりも希少性が高く、条件も厳しいらしい。ゲーマーとしては、一つくらいユニークカテゴリーのスキルをゲットしたいところだ。燃えてくるね!
さて、と。まずは魔機人の種族スキルを見ていこう。
《魔機人》
カテゴリー:エクストラ
MPの代わりにENという特殊ステータスを持つ。MPを消費する行動やスキルを使用する際、MPではなくENを消費する。
防具、装飾品を装備不可。代わりにパーツを装備可能。
一部スキルが取得不可。一部スキルが使用不可。一部スキルが適用されない。
雷属性と腐食属性以外の全属性に耐性。物理攻撃に耐性。
装備パーツとこのスキルの効果が矛盾した場合、装備パーツの効果が優先される。
《武装》
カテゴリー:エクストラ
武装を装備可能。
武装に武器カテゴリーのスキルが書かれている場合、その該当スキルが必要になる。
《パーツクリエイト》
カテゴリー:エクストラ
魔機人のパーツなど、特殊なアイテムを作成できるようになる。
《自動修復》
カテゴリー:エクストラ
魔力炉から供給される魔力で機体を修復する。
《自動供給》
カテゴリー:エクストラ
魔力炉から供給される魔力でエネルギーを充填する。
わあ、見事にエクストラカテゴリーばっか。これは多分、魔機人以外では取得できないスキルだからってことかな。希少性で見るなら確かにエクストラだね。
しかも魔機人スキルの説明文がこう……カードゲームのテキストみたいになってるね。分かりやすいけどさ。
で、最後の二つは多分HP自動回復とMP……もとい、EN自動回復かな。魔機人は回復魔法やポーションなんかは飲めないし、妥当なところだと思う。
このスキルでどれだけの数値が回復できるか……ってところかな。
さて、取得可能なスキルは残り五枠。私は時間の許す限り悩んでこの五つを選択した。
《刀剣》
カテゴリー:武器
武器〈剣〉〈刀〉を装備可能。該当武器種でダメージを与えられるようになる。
《鑑定》
カテゴリー:パッシブ
あらゆるものの詳細が分かるようになる。対応するスキルを持っていれば追加情報を得ることができる。
《感知》
カテゴリー:パッシブ
気配が分かるようになる。
《直感》
カテゴリー:パッシブ
危ないものに対する知覚が敏感になる。
《敏捷強化》
カテゴリー:パッシブ
AGIが上昇し、成長補正が入る。
成長しない魔機人の場合、補正の代わりに特定レベル時に固定値が追加される。
《刀剣》スキルは攻撃手段のため。《武装》を持っている状態で武器カテゴリーのスキルを取ると、そのスキルに対応する武装が貰えるみたい。いわゆる、初期装備ね。
《鑑定》《感知》《直感》の三スキルはゲーム内で取りにくいスキルだって言うのと、ベータテスターの兄さんが絶対に取得しておいた方が後々楽になると言っていたので取った。説明を見てもうっすらとしか分からないけどね。
《敏捷強化》スキルは数ある強化系のパッシブスキルの中からこれを選んだ。とにもかくにもスピードって大事だよね、って話。
極論、攻撃を食らうことがなければ死なないわけだし。いわゆる、『当たらなければ~』ってやつだね。
それに、成長補正がついているというのがちょっと気になる。スキルをステータス上昇系のパッシブばかりで埋めてレベル上げをしたらとんでもないステータスになりそうだけど、文面からは分からない罠がありそうだ。
例えば、ステータス上昇系スキルを多く取るとその分何かしらのデメリットがあるとかさ。
まぁ、魔機人の場合は固定値上昇になっちゃうけどね。補正値の分はパーツで補うよ!
『スキルを決定しますか?』
この構成でいいのかと訊いてくる機械音声に「はい」のウィンドウをタッチして答える。
『プレイヤーネーム:ミオン
種族:魔機人
選択スキル:《刀剣》《鑑定》《感知》《直感》《敏捷強化》
…………確認致しました。プレイヤーネーム:ミオン様の初期開始地点は始まりの街、ファスディア近くの森となります。それでは、アクセス開始までのカウントダウンを開始致します。Ⅹ……Ⅸ……Ⅷ……』
本来、ゲーム開始地点はどの種族も始まりの街から始まるんだけど、魔機人だけは始まりの街の近郊にある森の中から始まるらしい。
それは、一般的に魔機人を選ぶ唯一のメリットって言われてる、〈ガレージ〉というアイテムがあるからなんだけどね。
そう。この言い方から分かる通り、魔機人はFFO唯一の不遇種族として認識されている。その不遇云々の話は、兄さんから聞いた話なんだけど。
どうして不遇種族として扱われてるかはあまり教えて貰えなかったんだけど……少なくともベータテスト段階ではNPCの魔機人以外はほとんど見かけなかったんだって。
兄さんが見せてくれたスクショに写ってた魔機人はNPCだったみたいね。魔機人で始めるって言った私を兄さんはとても心配そうに見てたのを覚えている。
でも、燃えてくるね。周囲が不遇種族と蔑む種族で、頑張るのってさ。ラノベの王道展開みたいでいいよね!
っと、そろそろカウントダウンが終わりそう。事前にご飯も食べたし、トイレも済ませてきた。とりあえずは夜までぶっ続けで遊ぶぞー!
……ちゃんとログイン制限時間内でね! 強制ログアウトは嫌だ!
『Ⅲ……Ⅱ……Ⅰ……アクセス開始、完了。私たちはプレイヤーネーム:ミオンを歓迎致します。ようこそ、自由なる浮遊大陸の世界へ』
そして私は、FFOの世界への第一歩を踏み出した――
『な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!』
――そんな私を待っていたのは、全身を錆び付かせた私の相棒でした……。ぐすん。
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