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きうちゃん9 ご主人様とお兄さん (エロ未満)
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お兄さんはここのところ姿を見せないきうちゃんに、色々と言いたいことがある。
第一に、深夜バイト上がりの日はあまり長居をしないでほしい。こっちも疲れているのでそんなにきうちゃんの相手は出来ない。眠いし。
次に、思わせぶりに身体を触らせてくるのはやめてもらいたい。きうちゃんは色々とお子様なので、こっちが犯罪を犯しているような気分になる。おっぱいの成長だけは大人顔負けだが、そのせいで余計に犯罪感が際立つ。
それから、洋服の露出をちょっとずつ増やしていっているのは意図的なのかと問いたい。日に日に胸元の見せ具合が増えているのは気のせいじゃない。まだまだ暑さは厳しいとはいえ、暦の上では秋に近づいて来ている。夏から遠ざかって行ってるというのに、おっぱいはどんどん開放していくんじゃない。いやしてもいいんだけど。それならこっちだって色んなものを解き放って行きたいわけだが?
途中からおっぱいのことばかり考えはじめてしまっている。手元のスマホでぼんやりSNSの投稿を眺めていたが、いつのまにか乳揺れ投稿を追い始めていたせいかもしれない。
悶々と鬱屈した思いを抱え込んでいるお兄さんだったが、きうちゃんはこの数日姿を見せていない。最後に遊びに来たのは一週間以上前になるだろうか。
これまでだってそう連日やって来るわけでもなかったし、お決まりのタイミングもお約束さえ何もなかった。いつも気まぐれに訪れるきうちゃんに付き合ってあげていただけなのだ。
彼女の方は好きな時にこっちに遊びに来れるが、お兄さんの方からお城へ行く手段はない。今日だってバイトも入っていなかったというのに、もしかしたらそろそろあの子が来るかも、などと無意識に考えてしまったせいか、用もないのに明け方近くまでダラダラしている。
きうちゃんのことを考えているのかおっぱいのことを考えているのかは審議が必要であるが、お兄さんの心も生活リズムも乱されている。かわいそうね。
「今度来たらもう遠慮なくおっぱいさせてもらう……うおすげ」
とうとうアレなことを口走りはじめたお兄さん。画面では巨乳の女の子がこれみよがしに乳を揺らして強調するショート動画がいくつも続いている。きうちゃんの方がもうちょいデカいかな、などと考えながらスクロールさせていくあたり、もうかなりダメである。
そのうちはたと目を留めたその動画では、おそらく水着の一種であろう、胸元を大きく開いたフリル多めの可愛らしい格好をした少女がプリンを食べていた。抱えられたお皿の上でプルプルしているプリンと、連動してポヨポヨ上下する谷間にうっかり吸い寄せられてしまい指を止めた。
「プリンがプリン食べてる」とかいう頭のゆるいフレーズが視界の端に見えた。
「そうそうこれこれきうちゃんちょうどこんくらいだったわ。てかクッソぽいんぽいんしてんな……髪も同じくらいだしなんか顔も………似て…る………………いやこれ本人じゃね!?!? 何してんのこの子??????」
思わず居住いを正すように背筋を伸ばして、画面に突っ込むお兄さん。見れば見るほど動画のおっぱいちゃんはきうちゃんだった。
お兄さんが一人で焦っていると、いきなり窓の外からなにかがぶつかる音が聞こえてくる。
「き、きうちゃん?」
遊びに来るときはちゃんと玄関からインターホンを鳴らしてくれないとダメだよ、と念押ししていたものだが、今のお兄さんはそんなことお構いなしで窓に飛びついていた。開けた途端に案の定、一匹のコウモリが飛び込んでくる。しかしそのコウモリは特に姿を変えることもなく、パタパタ室内を飛び回るばかり。やがて窓に掛かるカーテンにその身を留めると、か細い声でキュルキュル鳴きはじめる。
「どしたのきうちゃん、なんでそんなコウモリみたいなこと………」
もしかしたら本当にただのコウモリなのかと思いはじめたお兄さん。
お兄さんの戸惑う様子に、コウモリはカーテンから飛び上がり、宙空でくるんとその身を回転させた。現れたのは、床にぽとりと落ちた見覚えのある黒い抱っこ紐。シュールすぎる。しかしこれでやっとお兄さんもその正体に気づくことができた。
「えっ君、モモちゃん? だよね? でもなんで……うわぁっ!?」
次の瞬間、それはまたひらりと舞い上がったかと思えば、再度くるん、と姿を変えてお兄さんにしがみついてきた。
その姿はコウモリでもましてや抱っこ紐のシュールな形状でもない。現れたのは白に程近い透けるような白金の髪をお尻が隠れる長さまで伸ばした小さな女の子。身長は2、30センチほどだろうか。手首や首元までぴっちり詰められた、皮膜の質感を思わせる柔らかく翻る黒のワンピースを纏う姿は、ミニチュアなサイズ感とは裏腹に大人びた印象を与える。精巧なお人形にしか見えない少女の背には、やはり紫がかったコウモリの羽が羽ばたいていた。
目の前で変化してみせたのに、お兄さんは信じられないという顔をして固まっている。モモちゃんは身振り手振りで一生懸命何かを伝えようとしているのだが、見た目が人間に近くなっても、その声はお兄さんには届かなかった。それでも表情や挙動から、彼女が切羽詰まっていることは伝わってくる。
「もしかして、きうちゃんどうかした? ってかそうだ、ちょっとこれ見てよ」
お兄さんが液晶画面をモモちゃんに見せると、彼女は黄色の瞳を見開いてそれに齧り付く。そしてお兄さんに向かって必死にスマホを指しながら、やはり何か訴えかけているようだった。
お兄さんとモモちゃんが困っているところに、今度は玄関からインターホンの音が聞こえてきた。いつもならきうちゃんの来訪かとなるところだが、今夜ばかりは身構えつつ用心深く外を確認してみることにした。と言ってもモニターが付いているわけでもないので、相手にバレないようドアスコープをそっと覗いて見るくらいしかできないが。
次の瞬間、お兄さんは反射的に思いっきり扉を開けていた。
「なんっであんたが来てんだよ!?」
お兄さんの剣幕にも怯むことなく、寧ろ想定通りの反応だとでも言うように若干面倒そうな顔で腕を組んでいるのは、人間の街では初めて見ることになるきうちゃんのご主人様だった。
「熱烈な歓迎どうも。しかし一般的に人間は熟睡している時間だ。もう少し静かに出迎えてもらおうか」
体型の貧弱さを開き直ったかのように、黒に程近いグレーの身体にピッタリ沿うダブルのジャケットと、同色の同じく細身なストレートパンツ。カジュアル目な黒革のチェルシーブーツと、大きめに襟を開いた若干色味の異なるグレーのシャツがいくらか見た目を和らげている。それでも暑苦しいけど。
油断している姿しか見たことがないせいか、いつも適当にボサついている印象だったシルバーの髪も、水分を含ませたように撫で付け整えら、明らかにカタギでない雰囲気が醸し出されていた。しかもよりによって肩には例のマントまで羽織られている。
「余計なお世話だっつの。あんたもこっちに合わせた格好すんならマントはやめろ。少しはおかしいと思えよ。どうせあれだろ着用モデルかなんかそのままの組み合わせとかなんだろ」
「ほーう、よく分かったな。間の抜けた顔をしている割に意外と洞察力はある方か」
「俺が間抜けならあんたはなんだよ不審者か? 黒服マントとか胡散臭いことこの上ねえよ」
「それこそTシャツジャージ男にファッションチェックなんぞされる謂れはなさ過ぎるが?」
玄関先で男二人が嫌味の応酬をしているところに、ご主人様の声を聞きつけたモモちゃんが文字通り飛んでやってくる。お兄さんのスマホを抱えて訴えかける様子に、ご主人様は芝居がかった動作で出迎えてみせた。
「ああモモちゃん、どうしてこんなところに。きうちゃんはここじゃないと最初に確認しただろう?」
「……変態ロリコン野郎」
「変態はどっちだ?」
ご主人様が指し示すのは、モモちゃんから受け取ったスマホの画面。流れるのはきうちゃんがプルプルでプリンプリンなロリ巨乳おっぱい動画。咄嗟に返す言葉も見つからず、お兄さんは返答に詰まってしまう。
「本人に隠れてコソコソとこんなものを……いつ撮ったんだ? 恥ずかしい男め」
「知らねーよ、こっちが聞きたいわ!」
「……ふん、この部屋に来ても意味はないと思っていたが、まさかこんなところでヒントが見つかるとはな」
ご主人様はきうちゃんの映る画面を辿々しい手つきで操作したかと思うと、端末をお兄さんに投げてよこす。そして心配そうに見上げるモモちゃんを抱き上げ、その髪を優しく撫でた。
「君のせいじゃない。そんな顔しないでくれよ。……ああ、それにこれはモモちゃんのお手柄だ」
少女人形を腕に抱え、優しく語りかけるマント姿の怪しい男。町で見かけようものなら職務質問待ったなしであろう。そう思うお兄さんだったが、イケメン効果で役者とかそういうパフォーマンス関係者かと思われて意外と通るのかもしれない、などとも考えてしまう。基本的にお兄さんは美形に弱い。男女問わず。
「それにしても、いつの間にやらモモちゃんまで誑かしていたとは。無害過ぎるのも一周回って持ち味にできるというわけか?」
ご主人様は横目でお兄さんを眺めながらぶつぶつ文句を言っている。ご主人様の好みは処女の美少女なので、お兄さんは対極にいるのだからしょうがない。
「さて、特に用もないので玄関先で失礼するつもりだったが——気が変わった」
ご主人様の瞳が火花のように一瞬赤く虹彩を放つ。
すでにご主人様に吸血された経験のあるお兄さんは、彼の視線が変わった瞬間に、ビクリと身を強張らせた。めざとくそれに気付いたご主人様は困ったものだとでも言うように眉根を寄せて苦笑する。
「やれやれ、憎まれ口は一丁前だが……なるほど、期待の裏返しだったか」
「は、はあ!? ふざけたこと言って……」
「おいで」
ご主人様に微笑まれた途端、お兄さんの思考はぐらりと揺れる。ついさっきまで悪態をついていたはずの相手なのに、彼の言葉に従う以外の選択肢が、泡のように弾けて消えていく。気付いた時には、まるで忠犬のように差し出された掌に自身の右手を載せていた。
「あ……えっ、違っ、なんで」
「いやはや、相変わらず正直な身体をしてるな。ちょっとは可愛げが出てきたじゃないか」
戸惑うお兄さんを前に、ご主人様はくつくつと含み笑う。
「非童貞で不摂生な成人男子の割に、お前の血は悪くない。大人しく身を委ねるなら、乙女のように扱ってやるが?」
「ば、バカじゃねえのふざけんな………んっ、はぁ……ッあぁん」
お兄さんの手を掴みそのまま引き寄せ、ご主人様はわざとらしく耳元で囁く。それだけでお兄さんは腰に力が入らなくなってしまった。ご主人様にもたれかかりながら、頭の中ではヤバイまずいこれいかんやつの大合唱である。
しかし触れられるだけで、条件反射のように従順になってしまう。いっそ身も心も魅了してくれればいいのに、中途半端に正気が残っているのは弄ばれているからとしか思えない。
「では選ばせてやろう。床の上とベッドの上どっちがいい?」
何やら笑顔でとんでもないことを聞かれているのだけはわかるのだが、頭がうまく働かないうえに、口先は知らないうちに勝手に動いてしまっていた。
気付いた時にはご主人様に抱きかかえられてベッドまで運ばれていたりする。
「ま、まてまてまて! あんた女の子のがいいんだろ!? 俺は違うだろ!?」
「確かに俺の好みは美少女だが……安心しろ、全ての食物に敬意を払って老若男女有り難く頂こう。そもそも人間だっていくら好みがあっても、仔羊の肉しか食わん様な奴なんかそういないだろ」
ご主人様はわかるようなそうでも無いような例えでお兄さんをいなすと、彼の顎を持ち上げ喉元を露わにさせる。ご主人様に間近で覗き込まれ、冷たい目と整った鼻梁に迫られたお兄さんはもう乙女になるしか無かった。
「あっちょっ、近っ♡ まって………あああぇぁあんっ!?」
狙いを定めたご主人様の舌が首筋に触れ、その感触にお兄さんは言葉にならない声をあげて身体を仰け反らせていた。
「いつもよりさらに反応がいいな。俺もちょっと驚いた。さてはお前、シチュエーションで酔うタイプか」
「な、何っ言って………あ…は、離せよ………」
ご主人様はお兄さんに両手首を顔の横で押さえつけ、わざと低い声で鼓膜を擽るように身も蓋もないことを言う。耳元で囁かれるとお兄さんは腰のあたりがぞわぞわして、抵抗のての字も出せないくらいだった。
「ふっ、冷酷な吸血鬼に襲われて押さえつけられ、抵抗するも力では敵わず無残に食い散らされる……とかいうか弱いヒロインになりきれる機会じゃないか。存分に堪能するがいい」
「そんな趣味ねえし!? ってちょ、まって……!」
皮膚の張り詰めていく感覚が、ある一点でブツン、と弾け、ご主人様の牙が首筋へと突き立てられる。それはほんの数ミリの侵入でしかないはずなのに、身体の奥まで一気に貫かれていくような気持ちになって、同時にお兄さんを繋いでいた最後の糸も焼き切られていた。あとはもう、一呼吸ごとに甘えた喘ぎを撒き散らかす勢いで、与えられる快感に蹂躙されていくだけ。
その後、時間にして5分も経っていないというのに、お兄さんは息も絶え絶でベッドにぐったり沈み込んでいた。起き上がる気力も無いようで、熱に浮かされたような涙目のまま視線で抗議の意を訴える。
「くそっ……、金輪際もう二度とあんたの城には行かねーからな…………!」
「その決意は俺じゃなくきうちゃんに言うんだな」
人間をご主人様の元に連れて行くのはきうちゃんのお仕事。しかもきうちゃんはお兄さん以外の人間を連れて帰れたことがない。必要とあらばお兄さんの都合などお構いなしであろうことは、手に取るようにわかる。
「なんで俺がこんな目に合わされてんだ……」
「ま、精々仲良くしてやってくれたまえ」
ご主人様はお兄さんの肩をポンと叩き、マントを翻して玄関から普通に歩いて去って行く。残されたお兄さんはご主人様の靴音が聞こえなくなった後でもしばらく動けず、ベッドの上で固まっていた。
首筋にそっと手を当てる。いつもはきうちゃんが絆創膏を貼ってくれるが、今日は傷口がそのままになってしまっている。恐る恐る牙痕をなぞってみるも、その傷跡は想像していたよりもずっと小さいことが分かった。鏡で見てみると、傷跡そのものよりも周囲の赤く染まった鬱血の方が目立っている。牙の刺し跡というよりもただのキスマークにしか見えない。
「ご主人様はお上手ですから」ときうちゃんがいつだったか言っていたのを思い出した。
そのお上手というのは傷跡の目立たなさのことなのか、吸血の際に人間を恍惚状態にさせる手練手管についてなのか。そんなことを考えはじめてしまったお兄さんは、ほぼ早朝と言える時間にも関わらずベッドに突っ伏して慟哭し、羞恥と屈辱に悶えるのだった。
かわいそうねほんと。
******
「ご主人様、きうちゃんがどこにいるかわかったの?」
「ああ。さっきの動画、背景に特徴的な壁紙が見えた。心当たりがあるというか、なぜ今まで思い当たらなかったのか」
「きうちゃん大丈夫かな」
「きうちゃんはどうやら、ヴァンパイアハンターに捕まっている」
その言葉を聞いて真っ青になるモモちゃん。ご主人様は安心させるように小さく笑って見せる。
「大丈夫、動画でも酷いことはされてなかったろ?」
画面の中のきうちゃんはどことなくへの字眉でしょんぼりしていたが、見たことのない可愛いお洋服を着てソースたっぷりのプリンなんか食べていた。
「……うん」
きうちゃんの姿について、モモちゃんが特に気に病んでいるのは首元の十字架の枷。でもそれもただのチョーカーだと言い張れるものでしかなく、きうちゃん本人も特に怖い思いはしていないように見えた。
吸血鬼の苦手なものという知識はあっても、着けられている本人にはいまいち実感がないのだろう。しかしご主人様がなかなかきうちゃんを見つけられなかったのも、その一見何でもないアクセサリーが原因である。不安がなくなる訳ではないが、ひと目見てきうちゃんの現状を理解したご主人様が大丈夫と言うなら、モモちゃんもそれを信じようと思った。
「それにしてもモモちゃん、あの男はかなり見境のない変態だから、気を許し過ぎないよう肝に銘じておくように」
「ご主人様怒ってる」
「まさか」
モモちゃんはちょっとだけ首を振って、人型をとっていたときと同じ、ガラス細工のような瞳でご主人様を見上げる。まるでなんでもお見通しと言うようなそれは、どこか嗜めるような色をしていた。
「さっきのだって、ほんとはただの八つ当たりでしょ?」
「はははは……なんのことやら」
笑って誤魔化すその仕草に、モモちゃんは自分の羽をご主人様の頭に載せて、慰めるようにパタパタさせた。ご主人様だってきうちゃんのことが心配なのだ。しかし吸血鬼であるからには、夏の短い夜間しか人間世界に居られない。居場所がわかってもすぐに向かえない苛立ちは、モモちゃんにもわかる。
ご主人様は人間世界に来ていた他のコウモリたちを呼び集めると、夜の空に飛び立つ。
もう夜明けはほど近い。ご主人様とコウモリの群れは、東の空の白んで行く様から逃れるように、太陽の届かない世界へと帰って行った。
第一に、深夜バイト上がりの日はあまり長居をしないでほしい。こっちも疲れているのでそんなにきうちゃんの相手は出来ない。眠いし。
次に、思わせぶりに身体を触らせてくるのはやめてもらいたい。きうちゃんは色々とお子様なので、こっちが犯罪を犯しているような気分になる。おっぱいの成長だけは大人顔負けだが、そのせいで余計に犯罪感が際立つ。
それから、洋服の露出をちょっとずつ増やしていっているのは意図的なのかと問いたい。日に日に胸元の見せ具合が増えているのは気のせいじゃない。まだまだ暑さは厳しいとはいえ、暦の上では秋に近づいて来ている。夏から遠ざかって行ってるというのに、おっぱいはどんどん開放していくんじゃない。いやしてもいいんだけど。それならこっちだって色んなものを解き放って行きたいわけだが?
途中からおっぱいのことばかり考えはじめてしまっている。手元のスマホでぼんやりSNSの投稿を眺めていたが、いつのまにか乳揺れ投稿を追い始めていたせいかもしれない。
悶々と鬱屈した思いを抱え込んでいるお兄さんだったが、きうちゃんはこの数日姿を見せていない。最後に遊びに来たのは一週間以上前になるだろうか。
これまでだってそう連日やって来るわけでもなかったし、お決まりのタイミングもお約束さえ何もなかった。いつも気まぐれに訪れるきうちゃんに付き合ってあげていただけなのだ。
彼女の方は好きな時にこっちに遊びに来れるが、お兄さんの方からお城へ行く手段はない。今日だってバイトも入っていなかったというのに、もしかしたらそろそろあの子が来るかも、などと無意識に考えてしまったせいか、用もないのに明け方近くまでダラダラしている。
きうちゃんのことを考えているのかおっぱいのことを考えているのかは審議が必要であるが、お兄さんの心も生活リズムも乱されている。かわいそうね。
「今度来たらもう遠慮なくおっぱいさせてもらう……うおすげ」
とうとうアレなことを口走りはじめたお兄さん。画面では巨乳の女の子がこれみよがしに乳を揺らして強調するショート動画がいくつも続いている。きうちゃんの方がもうちょいデカいかな、などと考えながらスクロールさせていくあたり、もうかなりダメである。
そのうちはたと目を留めたその動画では、おそらく水着の一種であろう、胸元を大きく開いたフリル多めの可愛らしい格好をした少女がプリンを食べていた。抱えられたお皿の上でプルプルしているプリンと、連動してポヨポヨ上下する谷間にうっかり吸い寄せられてしまい指を止めた。
「プリンがプリン食べてる」とかいう頭のゆるいフレーズが視界の端に見えた。
「そうそうこれこれきうちゃんちょうどこんくらいだったわ。てかクッソぽいんぽいんしてんな……髪も同じくらいだしなんか顔も………似て…る………………いやこれ本人じゃね!?!? 何してんのこの子??????」
思わず居住いを正すように背筋を伸ばして、画面に突っ込むお兄さん。見れば見るほど動画のおっぱいちゃんはきうちゃんだった。
お兄さんが一人で焦っていると、いきなり窓の外からなにかがぶつかる音が聞こえてくる。
「き、きうちゃん?」
遊びに来るときはちゃんと玄関からインターホンを鳴らしてくれないとダメだよ、と念押ししていたものだが、今のお兄さんはそんなことお構いなしで窓に飛びついていた。開けた途端に案の定、一匹のコウモリが飛び込んでくる。しかしそのコウモリは特に姿を変えることもなく、パタパタ室内を飛び回るばかり。やがて窓に掛かるカーテンにその身を留めると、か細い声でキュルキュル鳴きはじめる。
「どしたのきうちゃん、なんでそんなコウモリみたいなこと………」
もしかしたら本当にただのコウモリなのかと思いはじめたお兄さん。
お兄さんの戸惑う様子に、コウモリはカーテンから飛び上がり、宙空でくるんとその身を回転させた。現れたのは、床にぽとりと落ちた見覚えのある黒い抱っこ紐。シュールすぎる。しかしこれでやっとお兄さんもその正体に気づくことができた。
「えっ君、モモちゃん? だよね? でもなんで……うわぁっ!?」
次の瞬間、それはまたひらりと舞い上がったかと思えば、再度くるん、と姿を変えてお兄さんにしがみついてきた。
その姿はコウモリでもましてや抱っこ紐のシュールな形状でもない。現れたのは白に程近い透けるような白金の髪をお尻が隠れる長さまで伸ばした小さな女の子。身長は2、30センチほどだろうか。手首や首元までぴっちり詰められた、皮膜の質感を思わせる柔らかく翻る黒のワンピースを纏う姿は、ミニチュアなサイズ感とは裏腹に大人びた印象を与える。精巧なお人形にしか見えない少女の背には、やはり紫がかったコウモリの羽が羽ばたいていた。
目の前で変化してみせたのに、お兄さんは信じられないという顔をして固まっている。モモちゃんは身振り手振りで一生懸命何かを伝えようとしているのだが、見た目が人間に近くなっても、その声はお兄さんには届かなかった。それでも表情や挙動から、彼女が切羽詰まっていることは伝わってくる。
「もしかして、きうちゃんどうかした? ってかそうだ、ちょっとこれ見てよ」
お兄さんが液晶画面をモモちゃんに見せると、彼女は黄色の瞳を見開いてそれに齧り付く。そしてお兄さんに向かって必死にスマホを指しながら、やはり何か訴えかけているようだった。
お兄さんとモモちゃんが困っているところに、今度は玄関からインターホンの音が聞こえてきた。いつもならきうちゃんの来訪かとなるところだが、今夜ばかりは身構えつつ用心深く外を確認してみることにした。と言ってもモニターが付いているわけでもないので、相手にバレないようドアスコープをそっと覗いて見るくらいしかできないが。
次の瞬間、お兄さんは反射的に思いっきり扉を開けていた。
「なんっであんたが来てんだよ!?」
お兄さんの剣幕にも怯むことなく、寧ろ想定通りの反応だとでも言うように若干面倒そうな顔で腕を組んでいるのは、人間の街では初めて見ることになるきうちゃんのご主人様だった。
「熱烈な歓迎どうも。しかし一般的に人間は熟睡している時間だ。もう少し静かに出迎えてもらおうか」
体型の貧弱さを開き直ったかのように、黒に程近いグレーの身体にピッタリ沿うダブルのジャケットと、同色の同じく細身なストレートパンツ。カジュアル目な黒革のチェルシーブーツと、大きめに襟を開いた若干色味の異なるグレーのシャツがいくらか見た目を和らげている。それでも暑苦しいけど。
油断している姿しか見たことがないせいか、いつも適当にボサついている印象だったシルバーの髪も、水分を含ませたように撫で付け整えら、明らかにカタギでない雰囲気が醸し出されていた。しかもよりによって肩には例のマントまで羽織られている。
「余計なお世話だっつの。あんたもこっちに合わせた格好すんならマントはやめろ。少しはおかしいと思えよ。どうせあれだろ着用モデルかなんかそのままの組み合わせとかなんだろ」
「ほーう、よく分かったな。間の抜けた顔をしている割に意外と洞察力はある方か」
「俺が間抜けならあんたはなんだよ不審者か? 黒服マントとか胡散臭いことこの上ねえよ」
「それこそTシャツジャージ男にファッションチェックなんぞされる謂れはなさ過ぎるが?」
玄関先で男二人が嫌味の応酬をしているところに、ご主人様の声を聞きつけたモモちゃんが文字通り飛んでやってくる。お兄さんのスマホを抱えて訴えかける様子に、ご主人様は芝居がかった動作で出迎えてみせた。
「ああモモちゃん、どうしてこんなところに。きうちゃんはここじゃないと最初に確認しただろう?」
「……変態ロリコン野郎」
「変態はどっちだ?」
ご主人様が指し示すのは、モモちゃんから受け取ったスマホの画面。流れるのはきうちゃんがプルプルでプリンプリンなロリ巨乳おっぱい動画。咄嗟に返す言葉も見つからず、お兄さんは返答に詰まってしまう。
「本人に隠れてコソコソとこんなものを……いつ撮ったんだ? 恥ずかしい男め」
「知らねーよ、こっちが聞きたいわ!」
「……ふん、この部屋に来ても意味はないと思っていたが、まさかこんなところでヒントが見つかるとはな」
ご主人様はきうちゃんの映る画面を辿々しい手つきで操作したかと思うと、端末をお兄さんに投げてよこす。そして心配そうに見上げるモモちゃんを抱き上げ、その髪を優しく撫でた。
「君のせいじゃない。そんな顔しないでくれよ。……ああ、それにこれはモモちゃんのお手柄だ」
少女人形を腕に抱え、優しく語りかけるマント姿の怪しい男。町で見かけようものなら職務質問待ったなしであろう。そう思うお兄さんだったが、イケメン効果で役者とかそういうパフォーマンス関係者かと思われて意外と通るのかもしれない、などとも考えてしまう。基本的にお兄さんは美形に弱い。男女問わず。
「それにしても、いつの間にやらモモちゃんまで誑かしていたとは。無害過ぎるのも一周回って持ち味にできるというわけか?」
ご主人様は横目でお兄さんを眺めながらぶつぶつ文句を言っている。ご主人様の好みは処女の美少女なので、お兄さんは対極にいるのだからしょうがない。
「さて、特に用もないので玄関先で失礼するつもりだったが——気が変わった」
ご主人様の瞳が火花のように一瞬赤く虹彩を放つ。
すでにご主人様に吸血された経験のあるお兄さんは、彼の視線が変わった瞬間に、ビクリと身を強張らせた。めざとくそれに気付いたご主人様は困ったものだとでも言うように眉根を寄せて苦笑する。
「やれやれ、憎まれ口は一丁前だが……なるほど、期待の裏返しだったか」
「は、はあ!? ふざけたこと言って……」
「おいで」
ご主人様に微笑まれた途端、お兄さんの思考はぐらりと揺れる。ついさっきまで悪態をついていたはずの相手なのに、彼の言葉に従う以外の選択肢が、泡のように弾けて消えていく。気付いた時には、まるで忠犬のように差し出された掌に自身の右手を載せていた。
「あ……えっ、違っ、なんで」
「いやはや、相変わらず正直な身体をしてるな。ちょっとは可愛げが出てきたじゃないか」
戸惑うお兄さんを前に、ご主人様はくつくつと含み笑う。
「非童貞で不摂生な成人男子の割に、お前の血は悪くない。大人しく身を委ねるなら、乙女のように扱ってやるが?」
「ば、バカじゃねえのふざけんな………んっ、はぁ……ッあぁん」
お兄さんの手を掴みそのまま引き寄せ、ご主人様はわざとらしく耳元で囁く。それだけでお兄さんは腰に力が入らなくなってしまった。ご主人様にもたれかかりながら、頭の中ではヤバイまずいこれいかんやつの大合唱である。
しかし触れられるだけで、条件反射のように従順になってしまう。いっそ身も心も魅了してくれればいいのに、中途半端に正気が残っているのは弄ばれているからとしか思えない。
「では選ばせてやろう。床の上とベッドの上どっちがいい?」
何やら笑顔でとんでもないことを聞かれているのだけはわかるのだが、頭がうまく働かないうえに、口先は知らないうちに勝手に動いてしまっていた。
気付いた時にはご主人様に抱きかかえられてベッドまで運ばれていたりする。
「ま、まてまてまて! あんた女の子のがいいんだろ!? 俺は違うだろ!?」
「確かに俺の好みは美少女だが……安心しろ、全ての食物に敬意を払って老若男女有り難く頂こう。そもそも人間だっていくら好みがあっても、仔羊の肉しか食わん様な奴なんかそういないだろ」
ご主人様はわかるようなそうでも無いような例えでお兄さんをいなすと、彼の顎を持ち上げ喉元を露わにさせる。ご主人様に間近で覗き込まれ、冷たい目と整った鼻梁に迫られたお兄さんはもう乙女になるしか無かった。
「あっちょっ、近っ♡ まって………あああぇぁあんっ!?」
狙いを定めたご主人様の舌が首筋に触れ、その感触にお兄さんは言葉にならない声をあげて身体を仰け反らせていた。
「いつもよりさらに反応がいいな。俺もちょっと驚いた。さてはお前、シチュエーションで酔うタイプか」
「な、何っ言って………あ…は、離せよ………」
ご主人様はお兄さんに両手首を顔の横で押さえつけ、わざと低い声で鼓膜を擽るように身も蓋もないことを言う。耳元で囁かれるとお兄さんは腰のあたりがぞわぞわして、抵抗のての字も出せないくらいだった。
「ふっ、冷酷な吸血鬼に襲われて押さえつけられ、抵抗するも力では敵わず無残に食い散らされる……とかいうか弱いヒロインになりきれる機会じゃないか。存分に堪能するがいい」
「そんな趣味ねえし!? ってちょ、まって……!」
皮膚の張り詰めていく感覚が、ある一点でブツン、と弾け、ご主人様の牙が首筋へと突き立てられる。それはほんの数ミリの侵入でしかないはずなのに、身体の奥まで一気に貫かれていくような気持ちになって、同時にお兄さんを繋いでいた最後の糸も焼き切られていた。あとはもう、一呼吸ごとに甘えた喘ぎを撒き散らかす勢いで、与えられる快感に蹂躙されていくだけ。
その後、時間にして5分も経っていないというのに、お兄さんは息も絶え絶でベッドにぐったり沈み込んでいた。起き上がる気力も無いようで、熱に浮かされたような涙目のまま視線で抗議の意を訴える。
「くそっ……、金輪際もう二度とあんたの城には行かねーからな…………!」
「その決意は俺じゃなくきうちゃんに言うんだな」
人間をご主人様の元に連れて行くのはきうちゃんのお仕事。しかもきうちゃんはお兄さん以外の人間を連れて帰れたことがない。必要とあらばお兄さんの都合などお構いなしであろうことは、手に取るようにわかる。
「なんで俺がこんな目に合わされてんだ……」
「ま、精々仲良くしてやってくれたまえ」
ご主人様はお兄さんの肩をポンと叩き、マントを翻して玄関から普通に歩いて去って行く。残されたお兄さんはご主人様の靴音が聞こえなくなった後でもしばらく動けず、ベッドの上で固まっていた。
首筋にそっと手を当てる。いつもはきうちゃんが絆創膏を貼ってくれるが、今日は傷口がそのままになってしまっている。恐る恐る牙痕をなぞってみるも、その傷跡は想像していたよりもずっと小さいことが分かった。鏡で見てみると、傷跡そのものよりも周囲の赤く染まった鬱血の方が目立っている。牙の刺し跡というよりもただのキスマークにしか見えない。
「ご主人様はお上手ですから」ときうちゃんがいつだったか言っていたのを思い出した。
そのお上手というのは傷跡の目立たなさのことなのか、吸血の際に人間を恍惚状態にさせる手練手管についてなのか。そんなことを考えはじめてしまったお兄さんは、ほぼ早朝と言える時間にも関わらずベッドに突っ伏して慟哭し、羞恥と屈辱に悶えるのだった。
かわいそうねほんと。
******
「ご主人様、きうちゃんがどこにいるかわかったの?」
「ああ。さっきの動画、背景に特徴的な壁紙が見えた。心当たりがあるというか、なぜ今まで思い当たらなかったのか」
「きうちゃん大丈夫かな」
「きうちゃんはどうやら、ヴァンパイアハンターに捕まっている」
その言葉を聞いて真っ青になるモモちゃん。ご主人様は安心させるように小さく笑って見せる。
「大丈夫、動画でも酷いことはされてなかったろ?」
画面の中のきうちゃんはどことなくへの字眉でしょんぼりしていたが、見たことのない可愛いお洋服を着てソースたっぷりのプリンなんか食べていた。
「……うん」
きうちゃんの姿について、モモちゃんが特に気に病んでいるのは首元の十字架の枷。でもそれもただのチョーカーだと言い張れるものでしかなく、きうちゃん本人も特に怖い思いはしていないように見えた。
吸血鬼の苦手なものという知識はあっても、着けられている本人にはいまいち実感がないのだろう。しかしご主人様がなかなかきうちゃんを見つけられなかったのも、その一見何でもないアクセサリーが原因である。不安がなくなる訳ではないが、ひと目見てきうちゃんの現状を理解したご主人様が大丈夫と言うなら、モモちゃんもそれを信じようと思った。
「それにしてもモモちゃん、あの男はかなり見境のない変態だから、気を許し過ぎないよう肝に銘じておくように」
「ご主人様怒ってる」
「まさか」
モモちゃんはちょっとだけ首を振って、人型をとっていたときと同じ、ガラス細工のような瞳でご主人様を見上げる。まるでなんでもお見通しと言うようなそれは、どこか嗜めるような色をしていた。
「さっきのだって、ほんとはただの八つ当たりでしょ?」
「はははは……なんのことやら」
笑って誤魔化すその仕草に、モモちゃんは自分の羽をご主人様の頭に載せて、慰めるようにパタパタさせた。ご主人様だってきうちゃんのことが心配なのだ。しかし吸血鬼であるからには、夏の短い夜間しか人間世界に居られない。居場所がわかってもすぐに向かえない苛立ちは、モモちゃんにもわかる。
ご主人様は人間世界に来ていた他のコウモリたちを呼び集めると、夜の空に飛び立つ。
もう夜明けはほど近い。ご主人様とコウモリの群れは、東の空の白んで行く様から逃れるように、太陽の届かない世界へと帰って行った。
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