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きうちゃん8 お姉さんとペット(エロ無)
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きうちゃんはお姉さんに捕獲され、眷属のお仕事ができなくなってしまった。
あてがわれたお屋敷の一室には分厚い遮光カーテンが二重に掛かっていて、最初から吸血鬼を隔離するために用意されていたとしか思えない。
お姉さんはきうちゃんの首輪に鎖を嵌めると、ベッドの支柱に繋いでしまう。
「ごめんね。ちょっとだけ不自由だけど、慣れたら外してあげるから我慢しようね」
きうちゃんは自分がまるで本当にペットになってしまったような気がして、涙がポロポロ溢れてくるのを止められなかった。
「お腹を空かせたご主人様がわたしを待っているんです。帰らせてください!」
「それじゃあ、今日からは私のことご主人様だと思っていいから」
「うわーんだめです~! このお姉さん聞く耳持ちませええええん!」
お姉さんはぴいぴい泣いているきうちゃんの頭をよしよしと撫でてくれるが、訴えには全く耳を貸す素振りもなかった。その手にはしっかり例の対吸血鬼用の手袋が装着されている。
「お姉さんは吸血鬼のこと、最初から知っていたのですか……?」
「吸血鬼に会ったのはきうちゃんがはじめてよ。ずっと、ずーっと夢だったの。ようやく会えた吸血鬼があなたみたいな娘だったなんて、本当に嬉しい」
そう言って無邪気に笑顔を見せるお姉さん。そこに悪意や害意があるとは到底思えず、ますます混乱に拍車がかかる。
吸血鬼を本気でペットにしようなんて考えているのなら、きうちゃんのことをかわいいかわいいと愛しむ言葉にも、嘘偽りはないのかもしれない。
「吸血鬼には美形が多いって話は聞くけど、それって吸血鬼が気に入って身内にしたがるのが元々綺麗な人間だから? それとも吸血鬼になると美人になれるの?」
「そんなの知らないですよ」
ぷいっと顔を背けるきうちゃんだったが、その仕草もお姉さんにはたまらないようだった。満面の笑みできうちゃんのほっぺをつんつんしながら、口元を緩ませている。
「対吸血鬼でいちばん気をつけなくちゃいけないのは、噛まれてしまうこと。それから魅了と……変身能力。それさえ封じてあげれば吸血鬼だってただの女の子と一緒ね」
「ただの女の子を捕まえていいと思ってるんですか?」
「うふふ、きうちゃんはただの女の子じゃないでしょ? ペットにできる可愛い女の子とか最高すぎって思わない?」
恨みがましく見上げてみてもまるで意に介さない。お姉さんはきうちゃんに対して優しく接してくるが、同時に勝手な態度を崩さないことも一貫している。
「今日からここがきうちゃんのおうちなんだから、早く慣れて仲良くなろうね?」
こうしてきうちゃんは、お姉さんのお家からご主人様のお城へ帰ることが出来なくなってしまった。
*******
きうちゃんがペットとなって一夜が明けた。お姉さんは朝から出掛けているので、きうちゃんは暗い部屋でひとりぽつんとベッドに腰掛けている。遮光カーテンのおかげで日光に晒されることはないし、エアコンも完備されているので空調も快適。繋がれた鎖は室内を歩き回る分には充分な長さがあるが、逆に言えば与えられた自由はこの部屋ひとつ分しかないということでもある。
「気分が滅入るので明かりをつけましょうね」
ひとりごとが増えてきたのも寂しさを紛らわせるためだろう。お部屋にはお姉さんが置いていった退屈凌ぎのおもちゃがあったが、きうちゃんにはよくわからないものばかりだった。
スイッチを入れるとブルブル震える虫っぽいおもちゃや、先端に無数の羽根のついた箒のようなもの。どれも猫用のおもちゃにしか見えない。
お姉さんは誇張なくきうちゃんを猫可愛がりしてくるが、ほんとに猫か何かだと思っているんじゃないか。
きうちゃんはそれらを見つめてぽつりと鳴いた。
「にゃー」
するとその声に反応したかのように、部屋の隅でいきなりザアアアアッと何か細かいものが流れ落ちる音が聞こえて飛び上がる。
「にゃああああ!? び、びっくりしたぁ……なんなんですかぁ?」
きうちゃんは猫さながらに毛を逆立て距離をとったあとで、恐る恐るその何かを遠巻きに観察する。小さめのゴミ箱のような見た目をしていて、上部のまあるい形状からどことなくコミカルなロボット的可愛らしさがあった。
とりあえず怖いものではなさそうなのでホッと胸を撫で下ろす。同時にそのトレー部分に甘い香りのする何かがあることにも気付いた。
「これは……むぎチョコ!?」
さっきのザラザラしていた音はこれだ。そしてこの装置がペット用の自動給餌機であることを悟ったきうちゃんは、その場にくずおれるようにがくりと膝をついた。
「ほんとにペット扱いじゃないですかああああ!!」
じたばたと手足をばたつかせてひとしきり暴れたあとで、ぐすぐすしながら給餌皿のチョコを一粒ずつ摘んでは食べてしまう。甘いもののおかげで飲み物が欲しくなったので、ポットからお茶を淹れることにした。
あったかいお茶を飲んで、ちょっとだけ落ち着いたきうちゃんは閉め切ったカーテンを眺めてぼんやりとしている。
吸血鬼の特別な能力なんてきうちゃんは持っていないし、何かできたとしても昼間に逃げ出すことなんて出来っこない。
「可愛いきうちゃんは悪いお姉さんに捕まえられて、ペットにされてしまいました。なぜかというときうちゃんが可愛かったせいです」
きうちゃんはなかなかに厚かましかった。
とりあえずめそめそしているのにも飽きたので、お姉さんが置いて行ったタブレット端末で動画を眺めることにする。お兄さんのモバイル端末を触らせて貰ったことがあるので扱いは大丈夫なのである。
お気に入りのプイプイ鳴くぬいぐるみアニメーションをひたすら眺めることで気持ちを紛らわせていた。というのもこの端末からは子供向け動画や簡単なお絵かきアプリくらいしか使えなかったからで、お姉さんの用心深さが伺える。
きうちゃんも一応、猫ちゃんよりは人間寄りの知能があると見てもらえているらしい。多分。
*******
「ただいま~! きうちゃん、いい子にしてた?」
お姉さんは帰宅するなりきうちゃんの待つお部屋に飛び込んできた。両手いっぱいに大量の紙袋を抱えて興奮気味である。
「きうちゃんにお洋服用意して来たの! さっそく着替えよう?」
「ふぇえ……」
抵抗の意思もなくされるがままのきうちゃん。お姉さんは上機嫌でるんるんふふふん鼻歌を歌いながら、きうちゃんの服を躊躇なく剥いていく。
ブラジャーまではずされて、きうちゃんの大きなおっぱいがぽんよよよんとはじけるようにあらわれた。
「新しい下着も買ってきたんだよ。ねえサイズあわせてみよ?」
お姉さんはかわいらしい下着セットをきうちゃんの目の前でヒラヒラさせている。わたあめみたいに淡いコットンキャンディピンクの布地に、同色のシアー素材の布がふんわり重ねられた可愛らしいデザイン。カップ部分にはぐるりと小さなパールビーズが飾られて、真ん中のちょこんとしたリボンの下にはクリスタルガラスがキラキラ光っていた。
「かわいいですね……」
「でしょう? 着せてあげるね。さ、うしろむいて」
お姉さんは背中からきうちゃんのおっぱいを掬い上げるようにしてブラを着けていく。きちんと周りのお肉もカップにつめられて、なんだかいつもより胸元がすっきりしたような気さえする。
「はい、できた。ああっ、かわいい! 可愛すぎるわきうちゃん!」
「そうですか? えへ」
きうちゃんはかわいい下着をもらって、自分の現状も忘れてちょっとだけはにかんだ。お揃いのブラとショーツに、レースのたくさんついた同系色のお肌透け見えベビードール。セクシーさよりも不思議とかわいいが先行している。
「それにねきうちゃん、やっぱりさっきまでのブラはサイズが合っていなかったみたいね」
「え?」
「きうちゃんのおっぱいはGカップじゃなくてHカップよ」
「えっ、わ、わたしはグレイテスト&グロリアスなGカップおっぱいでは………」
お姉さんはきうちゃんの戸惑うような顔にちょっと首を傾げると、悪戯っぽく笑みを見せる。
「きうちゃんのGカップおっぱいはHカップおっぱいに進化しました。おめでとう~パチパチ」
きうちゃんのおっぱい。おっぱい星人のご主人様に褒めてもらうためにいつもお手入れは欠かさなかった。ご主人様の大好きなゴージャスでグラマラスなGカップおっぱいはきうちゃんの自慢の逸品だった。
それなのに、ご主人様がいつもGではじまる単語を駆使して褒めてくれていたGカップは、本当のきうちゃんではなかったのだ。唐突に突きつけられたその事実に、きうちゃんは訳も分からず泣きじゃくりはじめた。
「いやですー! わたしはGカップがいいですー!」
「だめよ、ちゃんと合ったサイズにしないと、おっぱいつぶれちゃうよ?」
「うわーん!」
きうちゃんは泣いた。まるでご主人様との繋がりをひとつ、またひとつと絶たれて行くような気持ちになって、頭の中がぐるぐるするわ胸の奥がぎゅうっとなるわでめちゃくちゃになりそうだった。
お姉さんは仕方ないなあと、着せ替えを中断して今日のおやつのプリンを出してくれる。
「明日のおやつのつもりだったんだけど、これ食べて泣き止も?」
片手じゃ余るくらいの大きなカップにぎっしり詰まったプリンは、まるでパフェのようにたくさんのキラキラしたフルーツが載っていて、見ているだけで期待と背徳感が溢れてくる代物だ。
「たまにはこういう見た目のインパクトがあるプリンもいいよね。はい、あ~ん」
「ぐすん、あむっ」
差し出されたスプーンに勢いよく食いつくきうちゃん。お姉さんに頭を撫でられながらもぐもぐしている様子は、まごう事なきペットのそれである。
お姉さんはきうちゃんにスプーンを渡すと、徐にスマホを構えて動画撮影の態勢に入る。
「きうちゃんちっちゃいお口でモグモグしてるのかわちいね~」
大好きなはずのプリンなのに、なんだか味もよくわからないのは涙のせいだろうか。
夜中にお姉さんが眠ってしまうと、きうちゃんはひとり窓辺に立って分厚いカーテンをそっと捲った。
窓の向こうには黄色いお月さまが首を傾げるように浮かんでいて、それを見ているだけでまた鼻の奥がツンとしてくるのを感じた。
お城へ帰るときは、月の向こう側に行くような気持ちで、空へ空へと昇っていく。あとは背中の羽の導くままに羽ばたけば、ご主人様の元へ帰り着ける。
きうちゃんは窓からお月さまへと手を伸ばすが、その手は力なく虚空を掴むだけ。そうしてじゃらりと鳴る鎖に引き戻されながら座り込んでしまった。
「うう………お月様を見てなみだぐむわたしの姿は、まるで地上にとらわれたかぐやひめでしょう………」
意外と余裕がありそうにも見えるので大丈夫かもしれない。
窓の外に向かって助けを呼ぼうにも、お姉さんを起こしてしまっては何にもならない。それにここは町から離れた森の中にあるお屋敷。誰かに見つけてもらえる可能性は低いだろう。
きうちゃんは窓の向こうを見つめて、遠いお城のみんなに思いを馳せるのだった。
あてがわれたお屋敷の一室には分厚い遮光カーテンが二重に掛かっていて、最初から吸血鬼を隔離するために用意されていたとしか思えない。
お姉さんはきうちゃんの首輪に鎖を嵌めると、ベッドの支柱に繋いでしまう。
「ごめんね。ちょっとだけ不自由だけど、慣れたら外してあげるから我慢しようね」
きうちゃんは自分がまるで本当にペットになってしまったような気がして、涙がポロポロ溢れてくるのを止められなかった。
「お腹を空かせたご主人様がわたしを待っているんです。帰らせてください!」
「それじゃあ、今日からは私のことご主人様だと思っていいから」
「うわーんだめです~! このお姉さん聞く耳持ちませええええん!」
お姉さんはぴいぴい泣いているきうちゃんの頭をよしよしと撫でてくれるが、訴えには全く耳を貸す素振りもなかった。その手にはしっかり例の対吸血鬼用の手袋が装着されている。
「お姉さんは吸血鬼のこと、最初から知っていたのですか……?」
「吸血鬼に会ったのはきうちゃんがはじめてよ。ずっと、ずーっと夢だったの。ようやく会えた吸血鬼があなたみたいな娘だったなんて、本当に嬉しい」
そう言って無邪気に笑顔を見せるお姉さん。そこに悪意や害意があるとは到底思えず、ますます混乱に拍車がかかる。
吸血鬼を本気でペットにしようなんて考えているのなら、きうちゃんのことをかわいいかわいいと愛しむ言葉にも、嘘偽りはないのかもしれない。
「吸血鬼には美形が多いって話は聞くけど、それって吸血鬼が気に入って身内にしたがるのが元々綺麗な人間だから? それとも吸血鬼になると美人になれるの?」
「そんなの知らないですよ」
ぷいっと顔を背けるきうちゃんだったが、その仕草もお姉さんにはたまらないようだった。満面の笑みできうちゃんのほっぺをつんつんしながら、口元を緩ませている。
「対吸血鬼でいちばん気をつけなくちゃいけないのは、噛まれてしまうこと。それから魅了と……変身能力。それさえ封じてあげれば吸血鬼だってただの女の子と一緒ね」
「ただの女の子を捕まえていいと思ってるんですか?」
「うふふ、きうちゃんはただの女の子じゃないでしょ? ペットにできる可愛い女の子とか最高すぎって思わない?」
恨みがましく見上げてみてもまるで意に介さない。お姉さんはきうちゃんに対して優しく接してくるが、同時に勝手な態度を崩さないことも一貫している。
「今日からここがきうちゃんのおうちなんだから、早く慣れて仲良くなろうね?」
こうしてきうちゃんは、お姉さんのお家からご主人様のお城へ帰ることが出来なくなってしまった。
*******
きうちゃんがペットとなって一夜が明けた。お姉さんは朝から出掛けているので、きうちゃんは暗い部屋でひとりぽつんとベッドに腰掛けている。遮光カーテンのおかげで日光に晒されることはないし、エアコンも完備されているので空調も快適。繋がれた鎖は室内を歩き回る分には充分な長さがあるが、逆に言えば与えられた自由はこの部屋ひとつ分しかないということでもある。
「気分が滅入るので明かりをつけましょうね」
ひとりごとが増えてきたのも寂しさを紛らわせるためだろう。お部屋にはお姉さんが置いていった退屈凌ぎのおもちゃがあったが、きうちゃんにはよくわからないものばかりだった。
スイッチを入れるとブルブル震える虫っぽいおもちゃや、先端に無数の羽根のついた箒のようなもの。どれも猫用のおもちゃにしか見えない。
お姉さんは誇張なくきうちゃんを猫可愛がりしてくるが、ほんとに猫か何かだと思っているんじゃないか。
きうちゃんはそれらを見つめてぽつりと鳴いた。
「にゃー」
するとその声に反応したかのように、部屋の隅でいきなりザアアアアッと何か細かいものが流れ落ちる音が聞こえて飛び上がる。
「にゃああああ!? び、びっくりしたぁ……なんなんですかぁ?」
きうちゃんは猫さながらに毛を逆立て距離をとったあとで、恐る恐るその何かを遠巻きに観察する。小さめのゴミ箱のような見た目をしていて、上部のまあるい形状からどことなくコミカルなロボット的可愛らしさがあった。
とりあえず怖いものではなさそうなのでホッと胸を撫で下ろす。同時にそのトレー部分に甘い香りのする何かがあることにも気付いた。
「これは……むぎチョコ!?」
さっきのザラザラしていた音はこれだ。そしてこの装置がペット用の自動給餌機であることを悟ったきうちゃんは、その場にくずおれるようにがくりと膝をついた。
「ほんとにペット扱いじゃないですかああああ!!」
じたばたと手足をばたつかせてひとしきり暴れたあとで、ぐすぐすしながら給餌皿のチョコを一粒ずつ摘んでは食べてしまう。甘いもののおかげで飲み物が欲しくなったので、ポットからお茶を淹れることにした。
あったかいお茶を飲んで、ちょっとだけ落ち着いたきうちゃんは閉め切ったカーテンを眺めてぼんやりとしている。
吸血鬼の特別な能力なんてきうちゃんは持っていないし、何かできたとしても昼間に逃げ出すことなんて出来っこない。
「可愛いきうちゃんは悪いお姉さんに捕まえられて、ペットにされてしまいました。なぜかというときうちゃんが可愛かったせいです」
きうちゃんはなかなかに厚かましかった。
とりあえずめそめそしているのにも飽きたので、お姉さんが置いて行ったタブレット端末で動画を眺めることにする。お兄さんのモバイル端末を触らせて貰ったことがあるので扱いは大丈夫なのである。
お気に入りのプイプイ鳴くぬいぐるみアニメーションをひたすら眺めることで気持ちを紛らわせていた。というのもこの端末からは子供向け動画や簡単なお絵かきアプリくらいしか使えなかったからで、お姉さんの用心深さが伺える。
きうちゃんも一応、猫ちゃんよりは人間寄りの知能があると見てもらえているらしい。多分。
*******
「ただいま~! きうちゃん、いい子にしてた?」
お姉さんは帰宅するなりきうちゃんの待つお部屋に飛び込んできた。両手いっぱいに大量の紙袋を抱えて興奮気味である。
「きうちゃんにお洋服用意して来たの! さっそく着替えよう?」
「ふぇえ……」
抵抗の意思もなくされるがままのきうちゃん。お姉さんは上機嫌でるんるんふふふん鼻歌を歌いながら、きうちゃんの服を躊躇なく剥いていく。
ブラジャーまではずされて、きうちゃんの大きなおっぱいがぽんよよよんとはじけるようにあらわれた。
「新しい下着も買ってきたんだよ。ねえサイズあわせてみよ?」
お姉さんはかわいらしい下着セットをきうちゃんの目の前でヒラヒラさせている。わたあめみたいに淡いコットンキャンディピンクの布地に、同色のシアー素材の布がふんわり重ねられた可愛らしいデザイン。カップ部分にはぐるりと小さなパールビーズが飾られて、真ん中のちょこんとしたリボンの下にはクリスタルガラスがキラキラ光っていた。
「かわいいですね……」
「でしょう? 着せてあげるね。さ、うしろむいて」
お姉さんは背中からきうちゃんのおっぱいを掬い上げるようにしてブラを着けていく。きちんと周りのお肉もカップにつめられて、なんだかいつもより胸元がすっきりしたような気さえする。
「はい、できた。ああっ、かわいい! 可愛すぎるわきうちゃん!」
「そうですか? えへ」
きうちゃんはかわいい下着をもらって、自分の現状も忘れてちょっとだけはにかんだ。お揃いのブラとショーツに、レースのたくさんついた同系色のお肌透け見えベビードール。セクシーさよりも不思議とかわいいが先行している。
「それにねきうちゃん、やっぱりさっきまでのブラはサイズが合っていなかったみたいね」
「え?」
「きうちゃんのおっぱいはGカップじゃなくてHカップよ」
「えっ、わ、わたしはグレイテスト&グロリアスなGカップおっぱいでは………」
お姉さんはきうちゃんの戸惑うような顔にちょっと首を傾げると、悪戯っぽく笑みを見せる。
「きうちゃんのGカップおっぱいはHカップおっぱいに進化しました。おめでとう~パチパチ」
きうちゃんのおっぱい。おっぱい星人のご主人様に褒めてもらうためにいつもお手入れは欠かさなかった。ご主人様の大好きなゴージャスでグラマラスなGカップおっぱいはきうちゃんの自慢の逸品だった。
それなのに、ご主人様がいつもGではじまる単語を駆使して褒めてくれていたGカップは、本当のきうちゃんではなかったのだ。唐突に突きつけられたその事実に、きうちゃんは訳も分からず泣きじゃくりはじめた。
「いやですー! わたしはGカップがいいですー!」
「だめよ、ちゃんと合ったサイズにしないと、おっぱいつぶれちゃうよ?」
「うわーん!」
きうちゃんは泣いた。まるでご主人様との繋がりをひとつ、またひとつと絶たれて行くような気持ちになって、頭の中がぐるぐるするわ胸の奥がぎゅうっとなるわでめちゃくちゃになりそうだった。
お姉さんは仕方ないなあと、着せ替えを中断して今日のおやつのプリンを出してくれる。
「明日のおやつのつもりだったんだけど、これ食べて泣き止も?」
片手じゃ余るくらいの大きなカップにぎっしり詰まったプリンは、まるでパフェのようにたくさんのキラキラしたフルーツが載っていて、見ているだけで期待と背徳感が溢れてくる代物だ。
「たまにはこういう見た目のインパクトがあるプリンもいいよね。はい、あ~ん」
「ぐすん、あむっ」
差し出されたスプーンに勢いよく食いつくきうちゃん。お姉さんに頭を撫でられながらもぐもぐしている様子は、まごう事なきペットのそれである。
お姉さんはきうちゃんにスプーンを渡すと、徐にスマホを構えて動画撮影の態勢に入る。
「きうちゃんちっちゃいお口でモグモグしてるのかわちいね~」
大好きなはずのプリンなのに、なんだか味もよくわからないのは涙のせいだろうか。
夜中にお姉さんが眠ってしまうと、きうちゃんはひとり窓辺に立って分厚いカーテンをそっと捲った。
窓の向こうには黄色いお月さまが首を傾げるように浮かんでいて、それを見ているだけでまた鼻の奥がツンとしてくるのを感じた。
お城へ帰るときは、月の向こう側に行くような気持ちで、空へ空へと昇っていく。あとは背中の羽の導くままに羽ばたけば、ご主人様の元へ帰り着ける。
きうちゃんは窓からお月さまへと手を伸ばすが、その手は力なく虚空を掴むだけ。そうしてじゃらりと鳴る鎖に引き戻されながら座り込んでしまった。
「うう………お月様を見てなみだぐむわたしの姿は、まるで地上にとらわれたかぐやひめでしょう………」
意外と余裕がありそうにも見えるので大丈夫かもしれない。
窓の外に向かって助けを呼ぼうにも、お姉さんを起こしてしまっては何にもならない。それにここは町から離れた森の中にあるお屋敷。誰かに見つけてもらえる可能性は低いだろう。
きうちゃんは窓の向こうを見つめて、遠いお城のみんなに思いを馳せるのだった。
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