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きうちゃん3 ご主人様のお城 (エロ無)
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吸血鬼にとって吸血とは生きるために必要な生命力の補給であり、食事のようなものでもある。けれど、それは人間のように毎日摂取する必要は無い。吸血鬼として生きていくために必要な量さえあれば、数ヵ月、あるいは数年、数十年と生きていくことができる。
元々我慢のきく質であるご主人様は、きうちゃんの頑張る姿を見て、立派にお仕事をやり遂げるのを気長に待つつもりでいた。しかし今回の件ではその辛抱強さが仇となる。デッドラインを見誤ったのだ。
「あー腹減ったな……、トマトジュースまだあったかな……?」
ベッドから這い降りたご主人様は、きうちゃんが用意しておいたトマトジュースをごくごく飲み干した。
「ジュースを飲んでも空腹は消えないが……、気持ち的にいくらか誤魔化せるかな………?」
トマトジュースでひと心地ついたのか、ブツブツ独り言を言いながら空き缶を潰す。その様子を見て「トマトジュースでいいのか……」とお兄さんが呟いた。きうちゃんもトマトジュースで誤魔化されるご主人様の弱さを思って、ちょっとだけいたたまれなくなったりした。
お兄さんは吸血鬼の存在なんて信じていなかったけれど、羽の生えた女の子に森と崖に囲まれたお城まで連れて来られては、いやでも自分を納得させるしかなかった。
石造りの屋根と尖塔に挟まれたバルコニー部分にきうちゃんが降り立った時は、ひょっとして自分はもう生きて帰ることはできないのではという恐怖に苛まれたものだった。
しかし実際きうちゃんのご主人様を目の当たりにして、寝起きのボサついた銀髪とよれた寝巻き姿に若干拍子抜けしている。
「さて、それではきうちゃん、とうとう人間を連れて来ることが出来たな。ちょっと眷属にしたことを後悔しはじめていたが、ようやくらしくなれたじゃないか」
「はいっ、頑張りました」
「うむ」
頭を撫でられ満足げなきうちゃんは、お兄さんの手を引いてご主人様の方へついっと差し出す。
「さあ! お兄さんはとてもお元気で栄養状態もよさそうですし、思う存分頂いちゃってください」
「ふん、何も知らない乙女なら丁重に扱うところだが、まあいい。健康そうな人間だしな。少し多めに頂いても問題ないだろ」
「……えっ………あの、ちょっと!?」
お兄さんを引き寄せ、流れるようにかぶりつこうとするご主人様。しかし、その手がお兄さんの首筋に添えられたところでピタリと止まる。きうちゃんが慌ててご主人様の手を止めて、耳元に口を寄せていた。
「だめですよ、いきなり噛み付いたりしちゃびっくりされちゃいます。まず自己紹介をして、事情を説明してからじゃなくちゃ! 食事のときは感謝と敬意を忘れずに、ですよね」
きうちゃんがそう囁いて止めると、ご主人様は彼女の方をチラリと見て舌打ちした。そしてお兄さんの顔の前に自らの顔を持ってきて一瞬目を閉じ、ふうー、と息をついた。
「男相手だと思うと、魅了するにも気合が入らんな。どうせなら美少女がよかったんだが」
そういう問題なのかとツッコミを入れようとしたお兄さんは、そこで自分の置かれている立場の異様さに思い至ったようだ。
「ち、ちょっと待って、生き血? 吸血って、吸血鬼!? 本物!?!? 俺はただ人助け的な感じで来たんであって……なんでそんなやばいのに襲われなきゃなんないんだ!?」
「騒ぐな。生き血と言ってもそれ自体は大した量じゃない。健康体ならば50mlも飲もうものなら過分に十ニ分過ぎて鼻血が出るほどだ」
「ヤ、ヤクルトくらい……?」
「ヤクルトは65mlだな。だいたい俺は少食だからそんなには飲めん」
「はあ……詳しいですね、ヤクルト」
ご主人様の適当すぎる対応に拍子抜けしたようにお兄さんは間抜けた返事をする。きうちゃんはその間ちょっとドキドキしながら成り行きを見守っていた。
「というわけで、俺はご覧の通りヴァンパイアだ。お前を呼び出した理由はひとつ。生き血を寄越せ。今すぐ、ここで」
「は、はあ………? ええ?」
お兄さんは何を言ってるか分からない、と言うか理解を拒否している風情で生返事をしている。ご主人様はそんな様子など意に介さず、再びお兄さんの体を抱き寄せ、首筋に唇を押し当てると唾液を塗り込めるように舌を這わせた。
「ひぃ、や、ちょ、心の準備とか………あ、んん……」
「ひゃわわわわ……」
なぜかお兄さんと一緒にきうちゃんも赤くなってはわはわしはじめる。そのうちに思考がふわふわしてきたお兄さんが皮膚が張り詰めるような感覚に襲われたかと思うと、プツンと鋭いものが突き立てられた。
突然襲われた痛みにお兄さんは思わず身を捩るが、ご主人様の腕が逃さない。しばらくそのままの体勢が続いて、やがてゆっくりと唇をお兄さんから離す。ご主人様が腕を解くとお兄さんはそのままへたり込んでしまった。
呼吸を整えようとしながら、どこか陶酔した表情で宙を見つめて動かない。きうちゃんは何かいけないものを見るように顔を赤くして、指の隙間からその光景を見ていた。
お兄さんは吸血鬼というよりも、なんかイケメンに襲われたという衝撃で混乱している。
「はあ、はあ、ああ、うあ……」
やがて我に返ると同時に、ご主人様の側から逃れようと立ち上がることもできないまま後ずさりする。しかしその顔には恐怖だけではなく、期待のようなものがあった。お兄さんはきゅんきゅんしてしまっていたのだ。自分の感情がわからなくなってしまったお兄さんは、若干パニックを起こしている。
「は、はやく家に帰りたい……もう俺を帰らせてくれ……こんなのって……」
「あ、あの、お兄さん待ってください、アフターケアも私の勤めですので、ひとまずはこちらにお座りになってください。わたしの胸をお貸ししますので!」
きうちゃんはお兄さんを落ち着かせるようにぎゅっと抱きしめてあげる。
「んむっふ」
「落ち着いたみたいですね」
「ふん、きうちゃんが好みなのか? いい趣味だな」
コウモリのモモちゃんが心配そうにお薬箱を運んで来てくれた。きうちゃんはそれを受け取ると、ぎこちない手つきでお兄さんの牙痕を手当てしてあげる。ちょんちょんとお薬を塗って、最後に大きな絆創膏をぺたんと貼った。
「はい、これでおしまいです」
「ああ……うん、ありがとう?」
お兄さんは首筋をそっとさすってみた。不思議と痛みは感じなかったし、体の変調もないようでとりあえずほっとする。
「しかし久しぶりに食事が摂れたおかげで元気になった。きうちゃん、次は美少女で頼むぞ」
ご主人様は機嫌良さそうに笑うとそのままくるりと背を向け、寝衣の上から無造作に羽織ったマントを翻して去っていくのだった。ご主人様を見送ったお兄さんときうちゃんが顔を見合わせる。
「えと、お兄さんのお知り合いに美少女の方はいらっしゃいますか?」
「い、いないけど……」
「そうですか………」
「……………もし、いたらその子も吸血されるんだよね?」
「もちろんです。ぜひご主人様にご紹介させていただきたいです」
お兄さんはごくりと唾を飲んでご主人様に吸血された事実を反芻する。吸血鬼の魅了の力があるせいか、単に美形に迫られることに耐性がないせいか、吸血される瞬間の背筋を駆け上がってくるようなゾクゾクする快感が忘れられなくなりそうだった。
「いや違うしそういう方向は目覚めてないし」
「ご主人様が吸血するところ久しぶりに見ましたけど、かっこよかったですよね!」
「えっ? いや、まあ……イケメンではあるけど………どうせなら俺はきうちゃんにしてもらいたかったというか………」
「わたしに? うーん、眷属でも吸血できるんでしょうか……。わかりました、ちょっと試してみますね!」
きうちゃんはお兄さんの腕を両手で掴んだと思うと、あーんと大きくお口を開けて思いっきり噛みついてきた。
「ぎゃあああああああ! 待って待ってダメ! ストップ! 普通に超痛え!!」
「やっぱり噛みついてもよくわからないです~」
慌ててきうちゃんを振り解いたお兄さんは、涙目で赤く丸い歯形のついた腕をさすった。それを見たきうちゃんはいーっと口を指で広げて、歯をかちかち鳴らしてみせる。そこには鋭い牙なんてものは一本も見当たらない。
「あー、血は出てないけど………無茶苦茶跡になってるなこれ」
「ごめんなさい! やっぱりできませんでした」
「きうちゃんは、吸血鬼とは違うんだ?」
「わたしはご主人様の眷属です!」
嬉しそうにきうちゃんは胸を張る。その反動で彼女の大きな胸がふよふよと揺れて、お兄さんは一瞬視線を奪われた。しかし次の瞬間にはいかんいかんと頭を振って、これまでの軽率さを悔やむ。やっぱり罠だった。無償のおっぱいで釣られて血を抜かれるとか、B級ホラー映画の展開にありそうなやつだった。
お兄さんは大変深く後悔と反省を繰り返している。その様子をのんきに眺めているきうちゃんは、お兄さんが何を思っているのかなんてわからないしあんまり気にしていないのだった。
「お兄さん、血液のご提供本当にありがとうございました。ご主人様はお上手なので、跡は残らないですよ」
「なんかまだ信じられないけど、吸血鬼っているんだな……」
「はい!」
お兄さんの言葉にきうちゃんは満面の笑顔で返す。お兄さんは正直に言うと、きうちゃんに噛みつかれた時のほうがずっと痛かったのだが、それは胸にしまっておいた。
「それで、どうします? お城の見物とかしていきますか?」
「………できれば早く帰して欲しいんだけど……、明日も予定あるし……なんかドッと疲れたし…」
「かしこまりました! それではすぐにお送りしますね」
お兄さんは心の底から疲れていた。きうちゃんがマンションまで送ってあげると、そのままベッドに倒れるように眠ってしまう。
きうちゃんはありがとうございます、と深くお辞儀をして、お兄さんの邪魔をしないようにそっと窓から帰って行った。
そのあと玄関に靴を忘れていることを思い出して、慌てて引き返しお兄さんを叩き起こしたりした。
元々我慢のきく質であるご主人様は、きうちゃんの頑張る姿を見て、立派にお仕事をやり遂げるのを気長に待つつもりでいた。しかし今回の件ではその辛抱強さが仇となる。デッドラインを見誤ったのだ。
「あー腹減ったな……、トマトジュースまだあったかな……?」
ベッドから這い降りたご主人様は、きうちゃんが用意しておいたトマトジュースをごくごく飲み干した。
「ジュースを飲んでも空腹は消えないが……、気持ち的にいくらか誤魔化せるかな………?」
トマトジュースでひと心地ついたのか、ブツブツ独り言を言いながら空き缶を潰す。その様子を見て「トマトジュースでいいのか……」とお兄さんが呟いた。きうちゃんもトマトジュースで誤魔化されるご主人様の弱さを思って、ちょっとだけいたたまれなくなったりした。
お兄さんは吸血鬼の存在なんて信じていなかったけれど、羽の生えた女の子に森と崖に囲まれたお城まで連れて来られては、いやでも自分を納得させるしかなかった。
石造りの屋根と尖塔に挟まれたバルコニー部分にきうちゃんが降り立った時は、ひょっとして自分はもう生きて帰ることはできないのではという恐怖に苛まれたものだった。
しかし実際きうちゃんのご主人様を目の当たりにして、寝起きのボサついた銀髪とよれた寝巻き姿に若干拍子抜けしている。
「さて、それではきうちゃん、とうとう人間を連れて来ることが出来たな。ちょっと眷属にしたことを後悔しはじめていたが、ようやくらしくなれたじゃないか」
「はいっ、頑張りました」
「うむ」
頭を撫でられ満足げなきうちゃんは、お兄さんの手を引いてご主人様の方へついっと差し出す。
「さあ! お兄さんはとてもお元気で栄養状態もよさそうですし、思う存分頂いちゃってください」
「ふん、何も知らない乙女なら丁重に扱うところだが、まあいい。健康そうな人間だしな。少し多めに頂いても問題ないだろ」
「……えっ………あの、ちょっと!?」
お兄さんを引き寄せ、流れるようにかぶりつこうとするご主人様。しかし、その手がお兄さんの首筋に添えられたところでピタリと止まる。きうちゃんが慌ててご主人様の手を止めて、耳元に口を寄せていた。
「だめですよ、いきなり噛み付いたりしちゃびっくりされちゃいます。まず自己紹介をして、事情を説明してからじゃなくちゃ! 食事のときは感謝と敬意を忘れずに、ですよね」
きうちゃんがそう囁いて止めると、ご主人様は彼女の方をチラリと見て舌打ちした。そしてお兄さんの顔の前に自らの顔を持ってきて一瞬目を閉じ、ふうー、と息をついた。
「男相手だと思うと、魅了するにも気合が入らんな。どうせなら美少女がよかったんだが」
そういう問題なのかとツッコミを入れようとしたお兄さんは、そこで自分の置かれている立場の異様さに思い至ったようだ。
「ち、ちょっと待って、生き血? 吸血って、吸血鬼!? 本物!?!? 俺はただ人助け的な感じで来たんであって……なんでそんなやばいのに襲われなきゃなんないんだ!?」
「騒ぐな。生き血と言ってもそれ自体は大した量じゃない。健康体ならば50mlも飲もうものなら過分に十ニ分過ぎて鼻血が出るほどだ」
「ヤ、ヤクルトくらい……?」
「ヤクルトは65mlだな。だいたい俺は少食だからそんなには飲めん」
「はあ……詳しいですね、ヤクルト」
ご主人様の適当すぎる対応に拍子抜けしたようにお兄さんは間抜けた返事をする。きうちゃんはその間ちょっとドキドキしながら成り行きを見守っていた。
「というわけで、俺はご覧の通りヴァンパイアだ。お前を呼び出した理由はひとつ。生き血を寄越せ。今すぐ、ここで」
「は、はあ………? ええ?」
お兄さんは何を言ってるか分からない、と言うか理解を拒否している風情で生返事をしている。ご主人様はそんな様子など意に介さず、再びお兄さんの体を抱き寄せ、首筋に唇を押し当てると唾液を塗り込めるように舌を這わせた。
「ひぃ、や、ちょ、心の準備とか………あ、んん……」
「ひゃわわわわ……」
なぜかお兄さんと一緒にきうちゃんも赤くなってはわはわしはじめる。そのうちに思考がふわふわしてきたお兄さんが皮膚が張り詰めるような感覚に襲われたかと思うと、プツンと鋭いものが突き立てられた。
突然襲われた痛みにお兄さんは思わず身を捩るが、ご主人様の腕が逃さない。しばらくそのままの体勢が続いて、やがてゆっくりと唇をお兄さんから離す。ご主人様が腕を解くとお兄さんはそのままへたり込んでしまった。
呼吸を整えようとしながら、どこか陶酔した表情で宙を見つめて動かない。きうちゃんは何かいけないものを見るように顔を赤くして、指の隙間からその光景を見ていた。
お兄さんは吸血鬼というよりも、なんかイケメンに襲われたという衝撃で混乱している。
「はあ、はあ、ああ、うあ……」
やがて我に返ると同時に、ご主人様の側から逃れようと立ち上がることもできないまま後ずさりする。しかしその顔には恐怖だけではなく、期待のようなものがあった。お兄さんはきゅんきゅんしてしまっていたのだ。自分の感情がわからなくなってしまったお兄さんは、若干パニックを起こしている。
「は、はやく家に帰りたい……もう俺を帰らせてくれ……こんなのって……」
「あ、あの、お兄さん待ってください、アフターケアも私の勤めですので、ひとまずはこちらにお座りになってください。わたしの胸をお貸ししますので!」
きうちゃんはお兄さんを落ち着かせるようにぎゅっと抱きしめてあげる。
「んむっふ」
「落ち着いたみたいですね」
「ふん、きうちゃんが好みなのか? いい趣味だな」
コウモリのモモちゃんが心配そうにお薬箱を運んで来てくれた。きうちゃんはそれを受け取ると、ぎこちない手つきでお兄さんの牙痕を手当てしてあげる。ちょんちょんとお薬を塗って、最後に大きな絆創膏をぺたんと貼った。
「はい、これでおしまいです」
「ああ……うん、ありがとう?」
お兄さんは首筋をそっとさすってみた。不思議と痛みは感じなかったし、体の変調もないようでとりあえずほっとする。
「しかし久しぶりに食事が摂れたおかげで元気になった。きうちゃん、次は美少女で頼むぞ」
ご主人様は機嫌良さそうに笑うとそのままくるりと背を向け、寝衣の上から無造作に羽織ったマントを翻して去っていくのだった。ご主人様を見送ったお兄さんときうちゃんが顔を見合わせる。
「えと、お兄さんのお知り合いに美少女の方はいらっしゃいますか?」
「い、いないけど……」
「そうですか………」
「……………もし、いたらその子も吸血されるんだよね?」
「もちろんです。ぜひご主人様にご紹介させていただきたいです」
お兄さんはごくりと唾を飲んでご主人様に吸血された事実を反芻する。吸血鬼の魅了の力があるせいか、単に美形に迫られることに耐性がないせいか、吸血される瞬間の背筋を駆け上がってくるようなゾクゾクする快感が忘れられなくなりそうだった。
「いや違うしそういう方向は目覚めてないし」
「ご主人様が吸血するところ久しぶりに見ましたけど、かっこよかったですよね!」
「えっ? いや、まあ……イケメンではあるけど………どうせなら俺はきうちゃんにしてもらいたかったというか………」
「わたしに? うーん、眷属でも吸血できるんでしょうか……。わかりました、ちょっと試してみますね!」
きうちゃんはお兄さんの腕を両手で掴んだと思うと、あーんと大きくお口を開けて思いっきり噛みついてきた。
「ぎゃあああああああ! 待って待ってダメ! ストップ! 普通に超痛え!!」
「やっぱり噛みついてもよくわからないです~」
慌ててきうちゃんを振り解いたお兄さんは、涙目で赤く丸い歯形のついた腕をさすった。それを見たきうちゃんはいーっと口を指で広げて、歯をかちかち鳴らしてみせる。そこには鋭い牙なんてものは一本も見当たらない。
「あー、血は出てないけど………無茶苦茶跡になってるなこれ」
「ごめんなさい! やっぱりできませんでした」
「きうちゃんは、吸血鬼とは違うんだ?」
「わたしはご主人様の眷属です!」
嬉しそうにきうちゃんは胸を張る。その反動で彼女の大きな胸がふよふよと揺れて、お兄さんは一瞬視線を奪われた。しかし次の瞬間にはいかんいかんと頭を振って、これまでの軽率さを悔やむ。やっぱり罠だった。無償のおっぱいで釣られて血を抜かれるとか、B級ホラー映画の展開にありそうなやつだった。
お兄さんは大変深く後悔と反省を繰り返している。その様子をのんきに眺めているきうちゃんは、お兄さんが何を思っているのかなんてわからないしあんまり気にしていないのだった。
「お兄さん、血液のご提供本当にありがとうございました。ご主人様はお上手なので、跡は残らないですよ」
「なんかまだ信じられないけど、吸血鬼っているんだな……」
「はい!」
お兄さんの言葉にきうちゃんは満面の笑顔で返す。お兄さんは正直に言うと、きうちゃんに噛みつかれた時のほうがずっと痛かったのだが、それは胸にしまっておいた。
「それで、どうします? お城の見物とかしていきますか?」
「………できれば早く帰して欲しいんだけど……、明日も予定あるし……なんかドッと疲れたし…」
「かしこまりました! それではすぐにお送りしますね」
お兄さんは心の底から疲れていた。きうちゃんがマンションまで送ってあげると、そのままベッドに倒れるように眠ってしまう。
きうちゃんはありがとうございます、と深くお辞儀をして、お兄さんの邪魔をしないようにそっと窓から帰って行った。
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