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第四話:魔術の特訓
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小屋へ戻るとミリーが驚いていた。
俺は少し照れくさそうな顔をしながら、手を振った。
ミリーはエスナに事情を聞いて理解したようだった。
というか、弟子になるという事は私の方が先輩なんだから姉御!って呼ぶ事!なんて言ってるし。
もちろん断ったけどね。
ミリーはミリーだ。俺の事もユウでいいし。
しかし、エスナの事は先生と呼ぶ事にした。
さすがに俺だってそれくらいわきまえている。
早速修行を始めるのだというので、俺は先生とミリーの後についていく。
先ほど小屋の中で準備をしている途中に杖を渡されていた。
鑑定してみると≪魔導師の杖≫というらしい。なんでも杖は魔力を増幅してくれる媒体で、魔導師の必需品だそうだ。素手で放つ魔術の何倍も威力が違うのだとか。
俺達はしばらく歩き、木々の密集地帯を抜け、やがて荒野のようなところに辿り着いた。
自然と道中に敵の反応はなかった。ミリーいわく先生を恐れて近づいてこないのだとか。
「さぁ着いたぞ」
どうやら目的地はこの荒野らしい。
先生は、20mほど先にある岩を指差した。
「ミリー、あの岩を壊すのじゃ」
5mほどはありそうな大岩だった。
こんなか弱そうな少女に常識ならば不可能だろう。
ミリーは簡単簡単と言わんばかりに腕をフルフルとさせている。そして杖を構えた。
杖に魔力を込め始める。
ミリーの魔力に呼応して杖先が眩い光を輝き始めた。
「ファイアーボルトっ!」
その声とともに杖から火の玉が出現し大岩に向かって飛んでいく。サッカーボール台のサイズだろうか。
なかなかの速度だ。
火の玉は見事に大岩に命中し、大岩が崩れ落ちる。
その時だった。視界にスキル獲得の文字が現れた。
”火撃を獲得しました”
おいおい・・・見ただけで獲得してしまったよ・・。
すぐに獲得した火撃をMAXLvの5まで振った。
ミリーはというと、さっきからドヤ顔を俺に向けてくる。
俺は軽くスルーし、イメージトレーニングを始める。次は俺の番なのだ。
どうやら先生には俺がスキルを獲得した事が分かっているようだった。
「次はユウの番じゃ」
「え、ユウも魔法が使えるの?」
なぜかユイが目をキラキラ輝かせている。何を期待されてるのか。
俺は生まれてから23年今の今まで一度も魔術なんて使った事がないんだ。
いくらスキルを覚えたからってそんな簡単に・・・。
簡単だった。
ミリーの見よう見まねで杖をかざし魔力を注ぐ。そして別の位置にある、さっきミリーが砕いた2倍はあろうかという大岩めがけて放った。
「ファイアーボルト!」
恐らくLv5の影響だろう。直径1m程度の火の玉がものすごい速度で放たれた。
これはヤバイ・・。
大岩は砕けるのとはまた違う、蒸発したような感じになっていた。
それを見たミリーは口を大きく開き目を見開いて驚いていた。
先生はというと、表情は変わっていない。
「なにあれ・・・師匠並みの威力だよそれ!」
姉弟子としての威厳が!とかブツブツ言っている。
MPゲージがほんの少し減っていた。相変わらず数値が見えないので良く分からないが、すぐに魔力が全回復した事から、余程の事がない限りは連射しても魔力が枯渇なんて事にはならなそうだ。
ミリーの事は無視して、先生が俺のところに寄ってきた。
俺はスキルを獲得する過程の推測やスキルレベルはポイントが余っていれば自由に振れる事を先生に話した。
さすがの先生も察知はしていたらしいが、予想はしていなかったらしく
「相変わらずデタラメじゃな」
と言い放ち側を離れる。
去り際に、もし覚えた魔法を最大Lvで放てるならば、Lv3程度に留めておくように指摘された。
スキルを覚える為には二つの方法がある。
俺の推測はこうだ。
一つ目。俺自身がそのスキルもとい魔術をこの身に受ける。
二つ目。スキルもとい魔術を撃つ過程を観察し理解する事。
理解とは魔力の流れを感じる事なのだが、適当に見ているだけでは覚えられなかった。
何度か練習しているうちに威力のコツが掴めてきた。Lvを最大値まで振らなければいいのだが、何かあった時の為に威力コントロールを覚えておいて損はないしね。
その日一日は火撃の練習で終えた。
気が付けば、いつの間にか夕方になっている。
この世界も一日が24時間なのだそうだ。しかし時計はない。
どうやって時刻を把握するのだろうと思ったが、大体でしか把握できてないのだとか。
町や都市に行けば、1時間に1回鐘の音が鳴るのでそれで時間の把握をしているのだそうだ。
修行を終えた俺たちは小屋へと戻ってきた。
食事はミリーの役回りらしい。しかし居候の身であり、一応一番下っ端である負い目が俺にはあった。
俺も元いた世界で一人暮らしをするようになってからある程度料理は出来る・・・つもりだった。
俺も手伝おうとミリーの元へ向かったのだが、使い慣れていない道具のせいもあり、なんとか邪魔にはなっていない程度にしかならなかった。
それにしても相変わらず食材はキノコばっかしだ。。
まぁ美味しいからいいけどね。
お腹もふくれたところで、いつものミリーが入れてくれたチャルを三人で飲んでいた。
そういえばこの世界にはお風呂の概念がないらしい。ではどうするのかというと、魔術でキレイにするらしい。洗浄というその魔術は魔術師の初歩らしい。
ん、しかし二人ともステータスにそんなスキル表示はなかった。
なぜかは不明だが、二人ともそのスキルが使えている。
俺も二人が使っている過程を観察し取得する事ができた。
観察といっても風呂場を覗くとかそんないやらしい意味ではない。断じて違う。
まぁ、少しも期待していなかったかと言われれば嘘になるが・・。
洗浄は、着ている服ごと一緒に水洗い、脱水、乾燥を一挙に引き受けてくれる万能君なのだ。
お手軽だ。清潔にはなるのだが、日本人たる者、風呂に入りたいと思うのは普通な訳で、いつかこの世界に風呂作ってやると心のメモに書き記しておく。
そして、寝床へと向かい眠りへと落ちた。
そして次の日もその次の日も同じようにスキルを覚え、先生の説明を聞きながら状況に応じた威力、種類の使い分け方を学んでいく。
この世界に来てから1ヶ月程度が経ったある日。
「今日はモンスターを狩ってみるかの」
朝食を食べ終えたばかりの俺達に向かって先生が呟く。
ミリーが待ってましたと言わんばかりの表情をしていた。
ミリー自身もモンスターの討伐経験は少ないようだ。
俺は今一度覚えたスキル一覧を確認していた。
スキル:鑑定、魔力注入、範囲探索、投石Lv2、火撃Lv5、火嵐Lv5、水撃Lv5、吹雪Lv5、雷撃Lv5、雷嵐Lv5、風撃Lv5、衝撃波Lv5、重力Lv3、治癒Lv3、浮遊術Lv3、石壁Lv3、氷壁Lv3、範囲結界Lv3、速度強化Lv3、状態回復Lv3
先生やミリーに教えてもらった魔術は全て覚えていた。
これだけ覚えるのに本来ならば何十年という歳月が必要なのだろう。
小屋を出ていつものように俺とミリーは先生に着いて行く。いつもとはルートが違うようだ。
モンスターがいる所でも探しているのだろうか?
しばらく歩いていて何かを通り抜けたような妙な違和感を感じた。
俺が不思議そうな顔をしていると、
「何かを感じたのか?」
先生が俺に問いかけてくる。
「はい、何か魔力のカーテンのようなものをくぐった感覚があったので」
ミリーが口を挟む。
「えー、私は何も感じなかったよ?」
先生が呆れたような顔をしている。
「それはワシが張った結界じゃ。結界の中にはモンスターが入って来られない」
先生ぱねぇ・・。小屋からここまで1km位はあったぞ・・。
よほど高位のモンスターでなければ結界を破られる事はできないのだそうだ。
俺が小屋を出て行こうとしたその日モンスターが小屋の前まで近づいていた。本来は人除けの結界がモンスターにも作用し近くまでは寄ってこないらしいのだが、あの時はモンスター側の狙いがあきらかに俺にあった事と、明確な印である匂いを辿ってやってきていた為で近寄ってこれたのだ。
先生は万全を期してあの日以来物理的に入ってこれない結界を毎晩張っていたという。
結界の効力は丸一日だそうだ。
俺とミリーの安全を期してという事だが、ほんとに先生には頭が上がらない。
再び俺達三人は歩き出し、目的地の狩場へと到着した。
久々にレーダーに赤い点が現れた。
先生もミリーもモンスターの気配を感じ取ったようだ。
ゆっくりとモンスターの方向へ足を運ぶ。
しばらく歩くとその姿を視認する事ができた。俺は鑑定を使う。
名前「ビッグモール」
レベル15
種族:土竜
弱点属性:火
スキル:岩波Lv2
俺が答えるよりも先に先生の口が開く。
「モールじゃな。弱点は火じゃ。見た目にそぐわず、なかなかに素早いから油断するでないぞ」
さすが先生、博識でいらっしゃる。さすがに素早いまでの情報は出てこなかった。
「まずはミリー、好きなようにやってみるのじゃ」
「ラジャー!」
ミリーはおデコに手を当てて了解のポーズを取っている。
そしてゆっくりとビッグモールに近づいていく。
その距離が10m位になった時だろうか。
相手がミリーに気付いてしまった。ビッグモールはスキルを使おうと魔力を込め始める動作を取る。
「あわわ」
ミリーが驚いてたじろぐ。
マズい。気が付いたら俺は走り出していた。途端にビッグモールの岩波が発動した。
ビッグモールの正面から土煙が舞い上がり、地面が津波のように盛り上がり、ミリーを襲う。
間に合わない!そう思いとっさに発動させる。
「ロックウォール!」
俺がそう唱えると、ミリーの前に高さ3mはあろうかという石の壁が現れた。
その瞬間アースウェーブが石の壁に激突した。辺りにものすごい音が鳴り響いた。
「間に合った・・・」
ミリーは呆然と立ち尽くしていた。そして口を開く。
「あ、ありがとう」
ミリーが礼を言う。その時俺のすぐ後ろから先生の声がした。
「二人とも!戦闘はまだ終わっていないぞ、気を抜くでない!」
そうだった、ミリーが無事だったので俺もモンスターから注意を逸らしてしまった。
俺はすぐさま石壁を解除して相手の位置を確認した。その場から動いていない。スキルを放った影響からか、小刻みに手足をバタバタさせていた。
「ユウ、見てて!」
そう言い放ちミリーは杖を構えて魔力を込め始めた。いつもより込めるのに時間が掛かっているような気がした。
そして、ファイアーボルトを放つ。
正確に狙い定めた火の玉がビッグモールを襲った。火だるまになって暴れている。しかしHPゲージを見るとまだ半分近く残っていた。俺はまだ終わってない油断するなよ!と言おうとしたその時だった。
2発目の火の玉がビッグモール目掛けて飛んでいく。どうやら初めから2発分を想定し準備していたようだ。
ビッグモールは、2発目が着弾し、やがて動かなくなった。無事に倒せたようだ。
「やるじゃないか」
「えへへー」
先生が俺達二人の所に歩み寄り、頭にチョップを落としてきた。
「いでぇっ」
「あいたっ」
頭をおさえている二人の頭を今度はなでている。
ツンデレか?ツンデレなのか!
幼女にツンデレ要素が加われば、ロリコンなら黙っていないだろう。だがあいにく俺にはロリコン属性は備わっていない。今はまだ。。
などと変な事を考えていると、
「ミリーは、実践慣れしていないせいもあるがの、相手の動きをよく見て次にどう動くか、ある程度の想定はしておくのが重要じゃ。そうすれば、予期せぬ事が起こってもある程度は対応できるであろう。じゃが、奴を仕留めた時は見事じゃったぞ」
再度先生は、ミリーの頭をなでなでする。
ミリーは最初こそ泣きそうな顔をしていたが、今はえへへと嬉しそうだ。
次に先生は俺に対して、
「ユウは、間に合わないと判断し、とっさのロックウォールの判断は見事じゃったぞ。だが、それで油断しおって。戦闘が終わるまでは一瞬足りとも油断は禁物じゃ」
と俺の頭もなでなでしてくる。
弟子と師匠の愛というのはまさにこういう感じなんだろうなと一人心の中で納得していた。
その後、俺とミリーはに苦戦する事もなく何体かモンスターを狩っていった。
日が暮れてきたので、狩りを切り上げ三人は家路へと足を運んだ。いつの間にかレベルが1つ上がっていた。
今日も食卓にはキノコのフルコースが並んでいる。今日は疲れたな・・。食べ終わるとベッドに吸い込まれるように倒れこみ、そのまま眠ってしまった。
俺は少し照れくさそうな顔をしながら、手を振った。
ミリーはエスナに事情を聞いて理解したようだった。
というか、弟子になるという事は私の方が先輩なんだから姉御!って呼ぶ事!なんて言ってるし。
もちろん断ったけどね。
ミリーはミリーだ。俺の事もユウでいいし。
しかし、エスナの事は先生と呼ぶ事にした。
さすがに俺だってそれくらいわきまえている。
早速修行を始めるのだというので、俺は先生とミリーの後についていく。
先ほど小屋の中で準備をしている途中に杖を渡されていた。
鑑定してみると≪魔導師の杖≫というらしい。なんでも杖は魔力を増幅してくれる媒体で、魔導師の必需品だそうだ。素手で放つ魔術の何倍も威力が違うのだとか。
俺達はしばらく歩き、木々の密集地帯を抜け、やがて荒野のようなところに辿り着いた。
自然と道中に敵の反応はなかった。ミリーいわく先生を恐れて近づいてこないのだとか。
「さぁ着いたぞ」
どうやら目的地はこの荒野らしい。
先生は、20mほど先にある岩を指差した。
「ミリー、あの岩を壊すのじゃ」
5mほどはありそうな大岩だった。
こんなか弱そうな少女に常識ならば不可能だろう。
ミリーは簡単簡単と言わんばかりに腕をフルフルとさせている。そして杖を構えた。
杖に魔力を込め始める。
ミリーの魔力に呼応して杖先が眩い光を輝き始めた。
「ファイアーボルトっ!」
その声とともに杖から火の玉が出現し大岩に向かって飛んでいく。サッカーボール台のサイズだろうか。
なかなかの速度だ。
火の玉は見事に大岩に命中し、大岩が崩れ落ちる。
その時だった。視界にスキル獲得の文字が現れた。
”火撃を獲得しました”
おいおい・・・見ただけで獲得してしまったよ・・。
すぐに獲得した火撃をMAXLvの5まで振った。
ミリーはというと、さっきからドヤ顔を俺に向けてくる。
俺は軽くスルーし、イメージトレーニングを始める。次は俺の番なのだ。
どうやら先生には俺がスキルを獲得した事が分かっているようだった。
「次はユウの番じゃ」
「え、ユウも魔法が使えるの?」
なぜかユイが目をキラキラ輝かせている。何を期待されてるのか。
俺は生まれてから23年今の今まで一度も魔術なんて使った事がないんだ。
いくらスキルを覚えたからってそんな簡単に・・・。
簡単だった。
ミリーの見よう見まねで杖をかざし魔力を注ぐ。そして別の位置にある、さっきミリーが砕いた2倍はあろうかという大岩めがけて放った。
「ファイアーボルト!」
恐らくLv5の影響だろう。直径1m程度の火の玉がものすごい速度で放たれた。
これはヤバイ・・。
大岩は砕けるのとはまた違う、蒸発したような感じになっていた。
それを見たミリーは口を大きく開き目を見開いて驚いていた。
先生はというと、表情は変わっていない。
「なにあれ・・・師匠並みの威力だよそれ!」
姉弟子としての威厳が!とかブツブツ言っている。
MPゲージがほんの少し減っていた。相変わらず数値が見えないので良く分からないが、すぐに魔力が全回復した事から、余程の事がない限りは連射しても魔力が枯渇なんて事にはならなそうだ。
ミリーの事は無視して、先生が俺のところに寄ってきた。
俺はスキルを獲得する過程の推測やスキルレベルはポイントが余っていれば自由に振れる事を先生に話した。
さすがの先生も察知はしていたらしいが、予想はしていなかったらしく
「相変わらずデタラメじゃな」
と言い放ち側を離れる。
去り際に、もし覚えた魔法を最大Lvで放てるならば、Lv3程度に留めておくように指摘された。
スキルを覚える為には二つの方法がある。
俺の推測はこうだ。
一つ目。俺自身がそのスキルもとい魔術をこの身に受ける。
二つ目。スキルもとい魔術を撃つ過程を観察し理解する事。
理解とは魔力の流れを感じる事なのだが、適当に見ているだけでは覚えられなかった。
何度か練習しているうちに威力のコツが掴めてきた。Lvを最大値まで振らなければいいのだが、何かあった時の為に威力コントロールを覚えておいて損はないしね。
その日一日は火撃の練習で終えた。
気が付けば、いつの間にか夕方になっている。
この世界も一日が24時間なのだそうだ。しかし時計はない。
どうやって時刻を把握するのだろうと思ったが、大体でしか把握できてないのだとか。
町や都市に行けば、1時間に1回鐘の音が鳴るのでそれで時間の把握をしているのだそうだ。
修行を終えた俺たちは小屋へと戻ってきた。
食事はミリーの役回りらしい。しかし居候の身であり、一応一番下っ端である負い目が俺にはあった。
俺も元いた世界で一人暮らしをするようになってからある程度料理は出来る・・・つもりだった。
俺も手伝おうとミリーの元へ向かったのだが、使い慣れていない道具のせいもあり、なんとか邪魔にはなっていない程度にしかならなかった。
それにしても相変わらず食材はキノコばっかしだ。。
まぁ美味しいからいいけどね。
お腹もふくれたところで、いつものミリーが入れてくれたチャルを三人で飲んでいた。
そういえばこの世界にはお風呂の概念がないらしい。ではどうするのかというと、魔術でキレイにするらしい。洗浄というその魔術は魔術師の初歩らしい。
ん、しかし二人ともステータスにそんなスキル表示はなかった。
なぜかは不明だが、二人ともそのスキルが使えている。
俺も二人が使っている過程を観察し取得する事ができた。
観察といっても風呂場を覗くとかそんないやらしい意味ではない。断じて違う。
まぁ、少しも期待していなかったかと言われれば嘘になるが・・。
洗浄は、着ている服ごと一緒に水洗い、脱水、乾燥を一挙に引き受けてくれる万能君なのだ。
お手軽だ。清潔にはなるのだが、日本人たる者、風呂に入りたいと思うのは普通な訳で、いつかこの世界に風呂作ってやると心のメモに書き記しておく。
そして、寝床へと向かい眠りへと落ちた。
そして次の日もその次の日も同じようにスキルを覚え、先生の説明を聞きながら状況に応じた威力、種類の使い分け方を学んでいく。
この世界に来てから1ヶ月程度が経ったある日。
「今日はモンスターを狩ってみるかの」
朝食を食べ終えたばかりの俺達に向かって先生が呟く。
ミリーが待ってましたと言わんばかりの表情をしていた。
ミリー自身もモンスターの討伐経験は少ないようだ。
俺は今一度覚えたスキル一覧を確認していた。
スキル:鑑定、魔力注入、範囲探索、投石Lv2、火撃Lv5、火嵐Lv5、水撃Lv5、吹雪Lv5、雷撃Lv5、雷嵐Lv5、風撃Lv5、衝撃波Lv5、重力Lv3、治癒Lv3、浮遊術Lv3、石壁Lv3、氷壁Lv3、範囲結界Lv3、速度強化Lv3、状態回復Lv3
先生やミリーに教えてもらった魔術は全て覚えていた。
これだけ覚えるのに本来ならば何十年という歳月が必要なのだろう。
小屋を出ていつものように俺とミリーは先生に着いて行く。いつもとはルートが違うようだ。
モンスターがいる所でも探しているのだろうか?
しばらく歩いていて何かを通り抜けたような妙な違和感を感じた。
俺が不思議そうな顔をしていると、
「何かを感じたのか?」
先生が俺に問いかけてくる。
「はい、何か魔力のカーテンのようなものをくぐった感覚があったので」
ミリーが口を挟む。
「えー、私は何も感じなかったよ?」
先生が呆れたような顔をしている。
「それはワシが張った結界じゃ。結界の中にはモンスターが入って来られない」
先生ぱねぇ・・。小屋からここまで1km位はあったぞ・・。
よほど高位のモンスターでなければ結界を破られる事はできないのだそうだ。
俺が小屋を出て行こうとしたその日モンスターが小屋の前まで近づいていた。本来は人除けの結界がモンスターにも作用し近くまでは寄ってこないらしいのだが、あの時はモンスター側の狙いがあきらかに俺にあった事と、明確な印である匂いを辿ってやってきていた為で近寄ってこれたのだ。
先生は万全を期してあの日以来物理的に入ってこれない結界を毎晩張っていたという。
結界の効力は丸一日だそうだ。
俺とミリーの安全を期してという事だが、ほんとに先生には頭が上がらない。
再び俺達三人は歩き出し、目的地の狩場へと到着した。
久々にレーダーに赤い点が現れた。
先生もミリーもモンスターの気配を感じ取ったようだ。
ゆっくりとモンスターの方向へ足を運ぶ。
しばらく歩くとその姿を視認する事ができた。俺は鑑定を使う。
名前「ビッグモール」
レベル15
種族:土竜
弱点属性:火
スキル:岩波Lv2
俺が答えるよりも先に先生の口が開く。
「モールじゃな。弱点は火じゃ。見た目にそぐわず、なかなかに素早いから油断するでないぞ」
さすが先生、博識でいらっしゃる。さすがに素早いまでの情報は出てこなかった。
「まずはミリー、好きなようにやってみるのじゃ」
「ラジャー!」
ミリーはおデコに手を当てて了解のポーズを取っている。
そしてゆっくりとビッグモールに近づいていく。
その距離が10m位になった時だろうか。
相手がミリーに気付いてしまった。ビッグモールはスキルを使おうと魔力を込め始める動作を取る。
「あわわ」
ミリーが驚いてたじろぐ。
マズい。気が付いたら俺は走り出していた。途端にビッグモールの岩波が発動した。
ビッグモールの正面から土煙が舞い上がり、地面が津波のように盛り上がり、ミリーを襲う。
間に合わない!そう思いとっさに発動させる。
「ロックウォール!」
俺がそう唱えると、ミリーの前に高さ3mはあろうかという石の壁が現れた。
その瞬間アースウェーブが石の壁に激突した。辺りにものすごい音が鳴り響いた。
「間に合った・・・」
ミリーは呆然と立ち尽くしていた。そして口を開く。
「あ、ありがとう」
ミリーが礼を言う。その時俺のすぐ後ろから先生の声がした。
「二人とも!戦闘はまだ終わっていないぞ、気を抜くでない!」
そうだった、ミリーが無事だったので俺もモンスターから注意を逸らしてしまった。
俺はすぐさま石壁を解除して相手の位置を確認した。その場から動いていない。スキルを放った影響からか、小刻みに手足をバタバタさせていた。
「ユウ、見てて!」
そう言い放ちミリーは杖を構えて魔力を込め始めた。いつもより込めるのに時間が掛かっているような気がした。
そして、ファイアーボルトを放つ。
正確に狙い定めた火の玉がビッグモールを襲った。火だるまになって暴れている。しかしHPゲージを見るとまだ半分近く残っていた。俺はまだ終わってない油断するなよ!と言おうとしたその時だった。
2発目の火の玉がビッグモール目掛けて飛んでいく。どうやら初めから2発分を想定し準備していたようだ。
ビッグモールは、2発目が着弾し、やがて動かなくなった。無事に倒せたようだ。
「やるじゃないか」
「えへへー」
先生が俺達二人の所に歩み寄り、頭にチョップを落としてきた。
「いでぇっ」
「あいたっ」
頭をおさえている二人の頭を今度はなでている。
ツンデレか?ツンデレなのか!
幼女にツンデレ要素が加われば、ロリコンなら黙っていないだろう。だがあいにく俺にはロリコン属性は備わっていない。今はまだ。。
などと変な事を考えていると、
「ミリーは、実践慣れしていないせいもあるがの、相手の動きをよく見て次にどう動くか、ある程度の想定はしておくのが重要じゃ。そうすれば、予期せぬ事が起こってもある程度は対応できるであろう。じゃが、奴を仕留めた時は見事じゃったぞ」
再度先生は、ミリーの頭をなでなでする。
ミリーは最初こそ泣きそうな顔をしていたが、今はえへへと嬉しそうだ。
次に先生は俺に対して、
「ユウは、間に合わないと判断し、とっさのロックウォールの判断は見事じゃったぞ。だが、それで油断しおって。戦闘が終わるまでは一瞬足りとも油断は禁物じゃ」
と俺の頭もなでなでしてくる。
弟子と師匠の愛というのはまさにこういう感じなんだろうなと一人心の中で納得していた。
その後、俺とミリーはに苦戦する事もなく何体かモンスターを狩っていった。
日が暮れてきたので、狩りを切り上げ三人は家路へと足を運んだ。いつの間にかレベルが1つ上がっていた。
今日も食卓にはキノコのフルコースが並んでいる。今日は疲れたな・・。食べ終わるとベッドに吸い込まれるように倒れこみ、そのまま眠ってしまった。
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