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第1話 最悪
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日常は突然壊れる。
僕と綾佳は付き合って半年のカップルだ。
綾佳は少しキツイところもあるけれど、真面目な性格。
大学の帰り道、綾佳は神妙な面持ちで僕に話しかけてきた。
「翼。このあと時間ってある?」
「え?特に用はないけど・・・どうかした?」
「直接話したいことがあるの。ちょっとここだと話しづらくて・・・
私の家で話せない?」
綾佳はこちらを見ずにそう告げる。何か不味いことをしてしまったか?
別れ話?考えを巡らせるが、心当たりは皆目なかった。
「うん、良いけど・・・どうかしたの?
概要だけでも話せない?」
綾佳は「ムリ」とだけ言って、僕の手を引いて歩き出した。
=====
僕たちは沈黙のまま街中を歩き出した。
綾佳は大学から徒歩15分くらいの場所で、一人暮らしをしている。
無言のまま二人で歩くのはとても苦痛だった。
一体何があったのか。
僕は必死に自分の行動を思い出していた。
浮気のようなやましいことは一切していない。
3日前にデートした時は普通に楽しんでくれていた。
誕生日を忘れたとか?いや、綾佳の誕生日は3ヶ月後くらいなはず。
突如、耳に馴染んだ声が後ろから聞こえた。
=====
「え~!翼だあ!久しぶり~!!」
語尾を伸ばした、間の抜けた声。
僕は思わず、物凄い勢いで振り返った。
そこには、元カノがいた。
元カノ…彼女の名前は、めぐみ。
僕にとって、一生忘れられない女。
「め・・・ぐみ・・・」
僕が呆然として立ち止まっていると、綾佳も立ち止まって、めぐみの方を訝しげに見る。
「翼、その子と知り合いなの?」
「ああ、まあ...」
僕は小さな声で返答した。
「え?僕のこと翼からきいてないの~?」
僕、めぐみでーす!翼の元カノでーす!!」
それを聞いて、綾佳はさらに怪訝な顔をする。
そして僕の方を見て、ちょっと…何この子…と呟いた。
「ちょっと!めぐみ……余計なこと言わなくていいから」
「え~?なにいらついてんの?」
「俺たち用事があるんだよ。めぐみに付き合ってるヒマはないんだよ…」
「どこ行くの?僕ヒマだから一緒に行きたい!」
僕はめぐみを軽く睨みつけた。
「綾佳、行こう」
背を向けてその場から立ち去ろうとすると、
「ね~どこいくの!」
さらに大きな声でめぐみが問いかけてくる。
周囲の人も異様さを感じているのか、めぐみの方を見ている。
「綾佳、あの人のことは無視していいから。行こう」
「え…うん」
「どこいくんだよッ!!!!」
途端、めぐみが絶叫した。
道中の人がギョッとした表情でめぐみを見る。
綾佳も、あまりの声量に思わず振り向いた。
「ねえ。翼~質問にはぁ~答えて?」
立ち止まった僕と綾佳に対し、めぐみは急に優しい声色で話しかけてきた。
僕は全身から冷や汗が止まらなかった。
周囲の人が僕たちの方を見て、ヒソヒソと話をしている。
できることなら二度と関わらないでいたかったのに。
完全に縁を切ったつもりだったのに。
「ごめん、綾佳。話するの…今度でいいかな。」
「えっ!?」
「ごめん。でもあの女、本当にやばいんだよ。
今放置したらどうなるか…わかったもんじゃないんだよ。」
嘘でしょ、という表情をする綾佳を振り切って、僕はめぐみの側に寄った。
「めぐみ。ゆっくり2人で話しよう……
とりあえず、こんなとこで叫ぶのはやめてくれ」
「わかったあ!ねえ、僕お腹すいたよ~!
パスタが食べたいなあ~!ねえ翼、いい感じのお店探して!」
とにかく、今はこの場から離れた方が良い。
この女が綾佳に暴力なんか振るいだしたら、それこそ最悪だ。
僕は喋り続けるめぐみの肩を掴んで、無理やり歩き出した。
僕と綾佳は付き合って半年のカップルだ。
綾佳は少しキツイところもあるけれど、真面目な性格。
大学の帰り道、綾佳は神妙な面持ちで僕に話しかけてきた。
「翼。このあと時間ってある?」
「え?特に用はないけど・・・どうかした?」
「直接話したいことがあるの。ちょっとここだと話しづらくて・・・
私の家で話せない?」
綾佳はこちらを見ずにそう告げる。何か不味いことをしてしまったか?
別れ話?考えを巡らせるが、心当たりは皆目なかった。
「うん、良いけど・・・どうかしたの?
概要だけでも話せない?」
綾佳は「ムリ」とだけ言って、僕の手を引いて歩き出した。
=====
僕たちは沈黙のまま街中を歩き出した。
綾佳は大学から徒歩15分くらいの場所で、一人暮らしをしている。
無言のまま二人で歩くのはとても苦痛だった。
一体何があったのか。
僕は必死に自分の行動を思い出していた。
浮気のようなやましいことは一切していない。
3日前にデートした時は普通に楽しんでくれていた。
誕生日を忘れたとか?いや、綾佳の誕生日は3ヶ月後くらいなはず。
突如、耳に馴染んだ声が後ろから聞こえた。
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「え~!翼だあ!久しぶり~!!」
語尾を伸ばした、間の抜けた声。
僕は思わず、物凄い勢いで振り返った。
そこには、元カノがいた。
元カノ…彼女の名前は、めぐみ。
僕にとって、一生忘れられない女。
「め・・・ぐみ・・・」
僕が呆然として立ち止まっていると、綾佳も立ち止まって、めぐみの方を訝しげに見る。
「翼、その子と知り合いなの?」
「ああ、まあ...」
僕は小さな声で返答した。
「え?僕のこと翼からきいてないの~?」
僕、めぐみでーす!翼の元カノでーす!!」
それを聞いて、綾佳はさらに怪訝な顔をする。
そして僕の方を見て、ちょっと…何この子…と呟いた。
「ちょっと!めぐみ……余計なこと言わなくていいから」
「え~?なにいらついてんの?」
「俺たち用事があるんだよ。めぐみに付き合ってるヒマはないんだよ…」
「どこ行くの?僕ヒマだから一緒に行きたい!」
僕はめぐみを軽く睨みつけた。
「綾佳、行こう」
背を向けてその場から立ち去ろうとすると、
「ね~どこいくの!」
さらに大きな声でめぐみが問いかけてくる。
周囲の人も異様さを感じているのか、めぐみの方を見ている。
「綾佳、あの人のことは無視していいから。行こう」
「え…うん」
「どこいくんだよッ!!!!」
途端、めぐみが絶叫した。
道中の人がギョッとした表情でめぐみを見る。
綾佳も、あまりの声量に思わず振り向いた。
「ねえ。翼~質問にはぁ~答えて?」
立ち止まった僕と綾佳に対し、めぐみは急に優しい声色で話しかけてきた。
僕は全身から冷や汗が止まらなかった。
周囲の人が僕たちの方を見て、ヒソヒソと話をしている。
できることなら二度と関わらないでいたかったのに。
完全に縁を切ったつもりだったのに。
「ごめん、綾佳。話するの…今度でいいかな。」
「えっ!?」
「ごめん。でもあの女、本当にやばいんだよ。
今放置したらどうなるか…わかったもんじゃないんだよ。」
嘘でしょ、という表情をする綾佳を振り切って、僕はめぐみの側に寄った。
「めぐみ。ゆっくり2人で話しよう……
とりあえず、こんなとこで叫ぶのはやめてくれ」
「わかったあ!ねえ、僕お腹すいたよ~!
パスタが食べたいなあ~!ねえ翼、いい感じのお店探して!」
とにかく、今はこの場から離れた方が良い。
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