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エピローグ「契約は「期間満了」か「業務終了」で終わるもの!」
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エピローグ「契約は「期間満了」か「業務終了」で終わるもの!」
2025年10月14日火曜日、万沙は人影がまばらになった、大阪万博会場の正門を見渡す正面の場所にいた。正門ゲートに向けて幾重もの折り返しが作られたロープポール越しに片手にビールのロング缶を持ち、工事関係者がバタバタと会場の内外に移動するのを見ている。
「昨日までの喧騒がウソみたいやな。昨日は入場できへんかった人が1万人は出たみたいやし、終電終わっても電車に乗られへんかった人が数千人は出てるんやろな…。結局は、おっちゃんの交通アクセスに対する「上申」は届けへんかったんやな。」
「「兵どもが夢の跡…」ってしんみりする事はあれへんけど、祭りの後の「寂しさ」っていうのはあるよな。ラストひと月の大混乱ぶりは大変やったよな。わかってたことやったんやけど、誰もそこには手をつけへんかった。責任の所在もあやふやなままや。まあ、「死者」が出んかっただけよかったかな…。」
万沙の身体を借りて、缶ビールを飲みほした副島は背中のリュックサックから次の缶ビールを取り出した。
「おっちゃん…、おっちゃんの「1億人の客の目玉」の「宇宙人のミイラ」来なかったね…。あと、ロズウェルのUFOの破片も…。」
「せやな…。まあ、「国」や「大阪府・市」が主催の体やから、やっぱりそこには「大人の事情」が絡んでたんやろな。まあ、「仲間の屍をさらし者にしたら地球を滅ぼすぞ!」ってイケメン知事を脅した宇宙人が居ったって「某ユーチューバー」は吠えてたけど、それはあれへんやろ…。」
ポケットから、「イカ姿フライ」を取り出すと、かじりながら缶ビールのタブを開けた。2本目のビールを喉に流し込み、空を見上げると伊丹空港に着陸するジェット機が高度を下げてくるのが視界に入った。
「おっちゃん、空飛ぶタクシーも結局は移動手段としては何の足しにもなれへんかったわな。」
「あぁ、航空法の改正ができへんかった時点で実現不可能な話や。今の法律では、「河川」の上空しか飛ばれへん。「時限立法」とか「特例措置」とか、「府」ではできへんわな。もしかしたら「都」やったらできたか、「与党」と仲良くやってたら認めてもらえたかもしれへんけど、「大阪万博」が、いや「大阪」がコケるのを望んでたもんがおって、足引っ張りまくったっていうのも事実やな。」
万沙は、スマホでググって次の万博のサウジアラビアのリヤドの開催予告ページを日本語に変換して開いた。
「おっちゃん、次のリヤド万博ってどうなんやろな?「変化の時代 共に先見性のある明日へ」ってテーマやねんて。あっ、2030年の万博は10月1日から年またぎの3月31日迄なんや。」
「あぁ、2030年万博は盛り上がるやろな。開催地は首都のリヤドやし、開催地候補のローマと釜山相手に3分の2以上の票を集めたってことは、「本気で誘致したい」オイルマネーが「実弾」として放り込まれたってことやろな。ドバイ万博の倍の4000万人来場を目標ってしてるから、今回みたいに「建築費が…」とか「人手が…」ってことはあれへんように、国を挙げて応援しよるやろうから「成功」間違いなしや。冬の開催っていうのもよう考えてるわ。ほんま、うらやましいよな。」
2缶目のビールが空き、リュックからワンカップを取り出した。いつもなら「おっちゃん、ちょっと飲みすぎやで!」と止める万沙も今日は何も言わない。
「プシッ」っとキャップを開けると、スルメを取り出しひと噛みすると、カップに口をつけた。
「おっちゃん、あっという間の1年半やったな。改めて、私のせいで副島のおっちゃんの命を奪ってしまってごめんな。私の身体では、おっちゃんのやりたかったこと、半分もできへんかったんとちゃう?ましてや私の周りの人がしょっちゅうおっちゃんや森先生の手を煩わせることしてしもたし…。ほんまにごめんなさい。」
万沙はひとり丁寧にお辞儀をして謝ると、工事関係者の通行人は怪訝な顔を向けて早足で去っていった。
「万沙ちゃん、頭上げや。周りの人から「変な人が居る」って警察に通報されてしまうで。パトカーに乗せられて永遠に「さようなら」じゃ、余りに寂しすぎるわなぁ。カラカラカラ。
でも、謝る必要なんか何もあれへんよ。おいちゃんはおいちゃんでこの1年半はめちゃくちゃ楽しんだで。「浮遊霊」ってええよな。時間を越えることはできへんかたけど、空間はどこでも瞬間移動可能やったし、なんといっても「ビザ」も「航空券」も必要あれへんからどこでも行きたい放題やったもんな。
全世界で50か所以上行かせてもろたもんな。さすがの「ロズウェル」は「浮遊霊」でも入られへんようになってたのは「凄い」の一言やけどな。」
と努めて明るく答える副島に万沙はこらえきれず、呟いた。
「おっちゃん、ほんまにこれでお別れなん…?」
副島は、少し困って言葉を選んだ。
「せやな。もともと、大阪万博を見届けたいっておいちゃんのわがままに万沙ちゃんを付き合わせてしもたから、万沙ちゃんにもいっぱい負担かけてしもたやろ。毎日の「酒代」も大変やったやろ。毎日5合。ざっくり1日1000円として、1年半で54万5千円や。高い「対人賠償」払わせてしもたな。どうも、ご馳走さん。
無事に「契約期間満了」や。今日からは「普通の女の子」に戻るんやで。」
副島が言葉を区切ると、死神の「サキュバス夏子」と「ワルキューレ陽菜」が現れた。
「音玄万沙さん、1年半の「使役」ご苦労様でした。よく頑張ってくれはりましたね。これで副島さんも「悔い」なく、「あの世」に連れて行くことができるわな。」
「ビールで副島さんに「お疲れ「生」でした。」をしてはったんですよね。音玄さんも「お疲れ「生」です」ね。」
と二人の死神が声をかけた。
万沙の頭の中をこの1年半の副島との共同生活が走馬灯のように駆け抜けた。「同人誌」で「BL小説」ばかり書いていた自分が、副島と司法書士の森のおかげで「法律」業務に触れ、今まで知らなかった「大人の世界」と「法律」が「使い方」によっては「盾」だけでなく「鉾」になることも知った。
(あぁ、「契約期間満了」による「契約終了」か…。民法の「契約自由の原則」に関わる案件もいっぱいこなしたよな…。「契約締結の自由」、「契約相手選択の自由」、「契約内容決定の自由」、「契約方式の自由」やったかな…。あと、民法709条の「不法行為」ってよう出てきたよな…。あっ、もしかして!)と思った瞬間、副島が自分の通夜に出かけているときに森から聞いた一つの会話を思い出した。
「死神さん、私まだ副島のおっちゃんに対して「契約終了」していません。「契約」は期間満了だけで終わるものでなく「業務終了」で終わるものですよね。私まだ、副島のおっちゃんとの「契約」を「不完全履行状態」なんです。」
と万沙が言い出すと、副島が驚いたように声を上げた。
「おいおい、万沙ちゃん何言うてんねん。おいちゃんはもう十分やって言うてるんやで。」
「いや、おっちゃんは、金城先生から「森先生」を頼むって言われてたんでしょ。私、おっちゃんのお通夜の日に森先生から一つ頼まれて「約束」したことがあるんです。おっちゃん、「ゴーストライター」もしてたって私に言いましたよね。
森先生から、おっちゃんの作品を見させてもらったんです。「余命半年を宣告された嫁が…」ってシリーズものでした。めちゃくちゃ面白かったです。
そして、おっちゃんが「いつか自分の本出したい。」って言ってたって聞いたんです。その時、私、就職1カ月の新米脚本家のくせして、「じゃあ、私がいつか有名になったら「副島大」の名前で本を出します。」って約束したんです。
それが実現してない以上、おっちゃんと私の「契約」はまだ、不完全履行で「契約完了」ではないはずです。ですから、おっちゃん、私がおっちゃんの名前で本を出すまで「あの世」には行かんと、「この世」に居ってや。
きっと、私だけやなくて、森先生も緒狩斗監督も周りの「しっかりとした相談先を持たない人」もそう思ってるはずやねん。おっちゃん、私を「契約不履行」者にせんといて!お願い…。」
泣きながら万沙は副島に訴えた。
「あーあぁ、万沙ちゃんに「法律」でウンチク垂れられるようじゃ、おいちゃんもまだまだやな。死神のお姉ちゃん達、こういう場合はどないなるんや?」
と副島が二人の死神に問いかけると、二人の死神の女の子は耳打ちし合い
「まあ、被害者が「契約不履行」を訴え、加害者がそれを認めれば「使役」の延長は可能ですね。」
と答えた。
「じゃあ、決まりやん!私は「不完全履行」による「契約不履行」を認める!絶対に認めるで!おっちゃんの「隠れた名作」を「副島大」の名前で私が絶対に世に送り出して見せるから、おっちゃんはその間、自由にこの世で過ごしてくれたらええよ。だから、「あの世」に行かんといて!」
と万沙が泣きじゃくると、副島は諦めた顔をして
「じゃあ、そのお言葉に甘えて、万沙ちゃんに「完全履行迄の執行要望」を出させてもらおうかな。けど、万沙ちゃんのペンネームが「ひろし」じゃおかしいから、「大」と書いて「ひろ」って読むようにしよな。今日から万沙ちゃんの小説でのペンネームはひらがなで「ひろ」かアルファベットで「HIRO」。それを飲んでくれるんやったら、契約延長や。」
副島の一言で泣きながら喜ぶ万沙の姿を見て
「あーあ、またやってしもたな…。今回も「冥府」に連れて帰らへんかったって、上司に怒られるけど陽菜ちゃん、一緒に怒られてくれる?」
「うん、ええよ。なっちゃんも最初から二人は引き離されへんって予想してたんやろ。私はなっちゃんとやったらどんな処罰も受けるで。」
サキュバス夏子とワルキューレ陽菜は一言残して、「あの世」に帰っていった。
「じゃあ、これからもがんばってや!」
おしまい
「今日のおまけ」
赤井です。
最後までお付き合いいただきました読者さん、本当にありがとうございました。
お盆で副島のおっちゃんを無事「あの世」に送ることが…、「できませんでしたー!」
(´-∀-`;)
皆さんはどっちが良かったんでしょうかねぇ?
メールいただいた読者さんからは
「どうせ、残るんでしょ?」
「すんなり成仏はしないと思います。」
と多くの意見が多かったので
「逆サプライズ」
で「永遠のお別れ」バージョンも考えていたのですが、ほとんどの皆さんの予想通り
「この世に残る」
エンディングとさせていただきました。
当たり前すぎてすみません。
本当は、森先生、緒狩斗監督も含めての「お別れ会」を入れる予定だったんですけど、「15日終わり」を考えると、そのエピソードが入りませんでした。
バタバタ感満載のエンディングですみません。
あと、「なつ&陽菜」の女優さんをもう一回登場させて欲しいという「大人の事情」もありました。
まあ、この世界はいろいろあります(笑)。
まだ、明日の「あとがきのようおなもの」も残ってますので、今日は「載せ残し」のイラストで進めましょう!
まずは、「13万pt越え」と頑張ってっくれた「万沙ちゃん」と「副島のおっちゃん」に
赤井から
「お疲れ「生」です!」
そして、急遽「再登場」の「S&V」の二人です!
最終話の登場人物4人でひとまず締めましょう。
そして、ここからは「載せ残し」(笑)です。
アップしないと「イラスト」も成仏できないでしょうから可能な限りアップしましょう!
まずは、「普通の万沙ちゃん」(笑)。
本当はもっといっぱいあるけど、いつも「ぱかーん」させてたので、本当に「普通」のイラストを選びました。
忖度しての「ミニスカ」じゃない、赤井オリジナルイメージの万沙ちゃんです。
モデルは「あらお☆ひろ」先生です(笑)。
いつもTシャツにデニム!
こんな感じです。
そして「ジャンボ鶴田」編の万沙ちゃん(中身はおっちゃん!)です。
原案では、法律が通じず、乱闘になる回をもう一話考えてたのですが、
「派手な格闘アクションは無理!」
と後で聞き、ボツにしました(笑)。
まあ、よく作ったものですね(笑)。
稀世ちゃんで「怒った顔で暴れる女の子」をいろいろ作ったノウハウが活きてます(笑)。
アプリ変えると、このシチュエーションが生成できないんですよね…。
そして、いつもは「水彩画風」のアプリを使ってるんですけど
「アニメ風」で描いてみて。
と言われて作ったのがコレ!
ちょっとイメージ変わるでしょ?
雑誌風は「ラーメン屋」回で作ったんですけど、
よもやの「ソフトクリーム」のトッピング
で「ぼーーーーつ!」(笑)。
結構かわいく描けてただけに「ざーんーねーん-!」
続いては「過去作イメージ」(笑)の万沙ちゃん!
「COSMO's」のアイドル風万沙ちゃん!
メガネ女子といえば、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」の主人公の「眼鏡の女の子」がかわいいですよねー!
もちろん、歳くって出て来た「元祖ゴーストバスターズ」の「ダン・エイクロウド」もかっこいい!
今の年で「ゴーストバスターズ」に出ちゃう(※出させちゃう)アメリカ映画が大好き!
(※あんまり関係ないけど、今、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」見てるからねー(笑)!アメリカの「幽霊もの」としては「ゴースト・ニューヨークの…」よりも「ゴーストバスターズ」シリーズの方が好き(笑)。「ゴーストバスターズ2016」も面白かったし、今年の「ゴーストバスターズ・フローズンサマー」も早く見たいねー!)
おっと脱線!
次の万沙ちゃんは「俺ゴー」の「礼ちゃん」風!
万沙ちゃんに「浮遊霊」になってもらいました!
この浮遊感を生成するのが難しいんですよー!
そして、次作の「突撃!東大阪産業大学ヒーロー部!」に併せて作った
「ヒーロー万沙ちゃん」!
(※ラストの新ペンネームの「HIRO(※「HERO」じゃないけどね(笑))」になぞらえてます。誰も気づいてくれそうにないので、自分で書きます(笑))
特捜戦隊ものをイメージして作りました。
あと「アイアンマン風」とかね(笑)。
そして、「さいわら」の「秋田ちゃん」風。
本当は「チャイナドレス」出したかったけど出なかったので「サリー」風で。
と、いろいろ遊ばせてもらいました。
最後は、読んでくれたみなさんを応援する万沙ちゃんです!
「今まで、応援ありがとうございましたー!みんなもぱにゃにゃんだー!」
by万沙
では、明日の「あとがきのようなもの」でお別れでーす!
(@^^)/~~~
2025年10月14日火曜日、万沙は人影がまばらになった、大阪万博会場の正門を見渡す正面の場所にいた。正門ゲートに向けて幾重もの折り返しが作られたロープポール越しに片手にビールのロング缶を持ち、工事関係者がバタバタと会場の内外に移動するのを見ている。
「昨日までの喧騒がウソみたいやな。昨日は入場できへんかった人が1万人は出たみたいやし、終電終わっても電車に乗られへんかった人が数千人は出てるんやろな…。結局は、おっちゃんの交通アクセスに対する「上申」は届けへんかったんやな。」
「「兵どもが夢の跡…」ってしんみりする事はあれへんけど、祭りの後の「寂しさ」っていうのはあるよな。ラストひと月の大混乱ぶりは大変やったよな。わかってたことやったんやけど、誰もそこには手をつけへんかった。責任の所在もあやふやなままや。まあ、「死者」が出んかっただけよかったかな…。」
万沙の身体を借りて、缶ビールを飲みほした副島は背中のリュックサックから次の缶ビールを取り出した。
「おっちゃん…、おっちゃんの「1億人の客の目玉」の「宇宙人のミイラ」来なかったね…。あと、ロズウェルのUFOの破片も…。」
「せやな…。まあ、「国」や「大阪府・市」が主催の体やから、やっぱりそこには「大人の事情」が絡んでたんやろな。まあ、「仲間の屍をさらし者にしたら地球を滅ぼすぞ!」ってイケメン知事を脅した宇宙人が居ったって「某ユーチューバー」は吠えてたけど、それはあれへんやろ…。」
ポケットから、「イカ姿フライ」を取り出すと、かじりながら缶ビールのタブを開けた。2本目のビールを喉に流し込み、空を見上げると伊丹空港に着陸するジェット機が高度を下げてくるのが視界に入った。
「おっちゃん、空飛ぶタクシーも結局は移動手段としては何の足しにもなれへんかったわな。」
「あぁ、航空法の改正ができへんかった時点で実現不可能な話や。今の法律では、「河川」の上空しか飛ばれへん。「時限立法」とか「特例措置」とか、「府」ではできへんわな。もしかしたら「都」やったらできたか、「与党」と仲良くやってたら認めてもらえたかもしれへんけど、「大阪万博」が、いや「大阪」がコケるのを望んでたもんがおって、足引っ張りまくったっていうのも事実やな。」
万沙は、スマホでググって次の万博のサウジアラビアのリヤドの開催予告ページを日本語に変換して開いた。
「おっちゃん、次のリヤド万博ってどうなんやろな?「変化の時代 共に先見性のある明日へ」ってテーマやねんて。あっ、2030年の万博は10月1日から年またぎの3月31日迄なんや。」
「あぁ、2030年万博は盛り上がるやろな。開催地は首都のリヤドやし、開催地候補のローマと釜山相手に3分の2以上の票を集めたってことは、「本気で誘致したい」オイルマネーが「実弾」として放り込まれたってことやろな。ドバイ万博の倍の4000万人来場を目標ってしてるから、今回みたいに「建築費が…」とか「人手が…」ってことはあれへんように、国を挙げて応援しよるやろうから「成功」間違いなしや。冬の開催っていうのもよう考えてるわ。ほんま、うらやましいよな。」
2缶目のビールが空き、リュックからワンカップを取り出した。いつもなら「おっちゃん、ちょっと飲みすぎやで!」と止める万沙も今日は何も言わない。
「プシッ」っとキャップを開けると、スルメを取り出しひと噛みすると、カップに口をつけた。
「おっちゃん、あっという間の1年半やったな。改めて、私のせいで副島のおっちゃんの命を奪ってしまってごめんな。私の身体では、おっちゃんのやりたかったこと、半分もできへんかったんとちゃう?ましてや私の周りの人がしょっちゅうおっちゃんや森先生の手を煩わせることしてしもたし…。ほんまにごめんなさい。」
万沙はひとり丁寧にお辞儀をして謝ると、工事関係者の通行人は怪訝な顔を向けて早足で去っていった。
「万沙ちゃん、頭上げや。周りの人から「変な人が居る」って警察に通報されてしまうで。パトカーに乗せられて永遠に「さようなら」じゃ、余りに寂しすぎるわなぁ。カラカラカラ。
でも、謝る必要なんか何もあれへんよ。おいちゃんはおいちゃんでこの1年半はめちゃくちゃ楽しんだで。「浮遊霊」ってええよな。時間を越えることはできへんかたけど、空間はどこでも瞬間移動可能やったし、なんといっても「ビザ」も「航空券」も必要あれへんからどこでも行きたい放題やったもんな。
全世界で50か所以上行かせてもろたもんな。さすがの「ロズウェル」は「浮遊霊」でも入られへんようになってたのは「凄い」の一言やけどな。」
と努めて明るく答える副島に万沙はこらえきれず、呟いた。
「おっちゃん、ほんまにこれでお別れなん…?」
副島は、少し困って言葉を選んだ。
「せやな。もともと、大阪万博を見届けたいっておいちゃんのわがままに万沙ちゃんを付き合わせてしもたから、万沙ちゃんにもいっぱい負担かけてしもたやろ。毎日の「酒代」も大変やったやろ。毎日5合。ざっくり1日1000円として、1年半で54万5千円や。高い「対人賠償」払わせてしもたな。どうも、ご馳走さん。
無事に「契約期間満了」や。今日からは「普通の女の子」に戻るんやで。」
副島が言葉を区切ると、死神の「サキュバス夏子」と「ワルキューレ陽菜」が現れた。
「音玄万沙さん、1年半の「使役」ご苦労様でした。よく頑張ってくれはりましたね。これで副島さんも「悔い」なく、「あの世」に連れて行くことができるわな。」
「ビールで副島さんに「お疲れ「生」でした。」をしてはったんですよね。音玄さんも「お疲れ「生」です」ね。」
と二人の死神が声をかけた。
万沙の頭の中をこの1年半の副島との共同生活が走馬灯のように駆け抜けた。「同人誌」で「BL小説」ばかり書いていた自分が、副島と司法書士の森のおかげで「法律」業務に触れ、今まで知らなかった「大人の世界」と「法律」が「使い方」によっては「盾」だけでなく「鉾」になることも知った。
(あぁ、「契約期間満了」による「契約終了」か…。民法の「契約自由の原則」に関わる案件もいっぱいこなしたよな…。「契約締結の自由」、「契約相手選択の自由」、「契約内容決定の自由」、「契約方式の自由」やったかな…。あと、民法709条の「不法行為」ってよう出てきたよな…。あっ、もしかして!)と思った瞬間、副島が自分の通夜に出かけているときに森から聞いた一つの会話を思い出した。
「死神さん、私まだ副島のおっちゃんに対して「契約終了」していません。「契約」は期間満了だけで終わるものでなく「業務終了」で終わるものですよね。私まだ、副島のおっちゃんとの「契約」を「不完全履行状態」なんです。」
と万沙が言い出すと、副島が驚いたように声を上げた。
「おいおい、万沙ちゃん何言うてんねん。おいちゃんはもう十分やって言うてるんやで。」
「いや、おっちゃんは、金城先生から「森先生」を頼むって言われてたんでしょ。私、おっちゃんのお通夜の日に森先生から一つ頼まれて「約束」したことがあるんです。おっちゃん、「ゴーストライター」もしてたって私に言いましたよね。
森先生から、おっちゃんの作品を見させてもらったんです。「余命半年を宣告された嫁が…」ってシリーズものでした。めちゃくちゃ面白かったです。
そして、おっちゃんが「いつか自分の本出したい。」って言ってたって聞いたんです。その時、私、就職1カ月の新米脚本家のくせして、「じゃあ、私がいつか有名になったら「副島大」の名前で本を出します。」って約束したんです。
それが実現してない以上、おっちゃんと私の「契約」はまだ、不完全履行で「契約完了」ではないはずです。ですから、おっちゃん、私がおっちゃんの名前で本を出すまで「あの世」には行かんと、「この世」に居ってや。
きっと、私だけやなくて、森先生も緒狩斗監督も周りの「しっかりとした相談先を持たない人」もそう思ってるはずやねん。おっちゃん、私を「契約不履行」者にせんといて!お願い…。」
泣きながら万沙は副島に訴えた。
「あーあぁ、万沙ちゃんに「法律」でウンチク垂れられるようじゃ、おいちゃんもまだまだやな。死神のお姉ちゃん達、こういう場合はどないなるんや?」
と副島が二人の死神に問いかけると、二人の死神の女の子は耳打ちし合い
「まあ、被害者が「契約不履行」を訴え、加害者がそれを認めれば「使役」の延長は可能ですね。」
と答えた。
「じゃあ、決まりやん!私は「不完全履行」による「契約不履行」を認める!絶対に認めるで!おっちゃんの「隠れた名作」を「副島大」の名前で私が絶対に世に送り出して見せるから、おっちゃんはその間、自由にこの世で過ごしてくれたらええよ。だから、「あの世」に行かんといて!」
と万沙が泣きじゃくると、副島は諦めた顔をして
「じゃあ、そのお言葉に甘えて、万沙ちゃんに「完全履行迄の執行要望」を出させてもらおうかな。けど、万沙ちゃんのペンネームが「ひろし」じゃおかしいから、「大」と書いて「ひろ」って読むようにしよな。今日から万沙ちゃんの小説でのペンネームはひらがなで「ひろ」かアルファベットで「HIRO」。それを飲んでくれるんやったら、契約延長や。」
副島の一言で泣きながら喜ぶ万沙の姿を見て
「あーあ、またやってしもたな…。今回も「冥府」に連れて帰らへんかったって、上司に怒られるけど陽菜ちゃん、一緒に怒られてくれる?」
「うん、ええよ。なっちゃんも最初から二人は引き離されへんって予想してたんやろ。私はなっちゃんとやったらどんな処罰も受けるで。」
サキュバス夏子とワルキューレ陽菜は一言残して、「あの世」に帰っていった。
「じゃあ、これからもがんばってや!」
おしまい
「今日のおまけ」
赤井です。
最後までお付き合いいただきました読者さん、本当にありがとうございました。
お盆で副島のおっちゃんを無事「あの世」に送ることが…、「できませんでしたー!」
(´-∀-`;)
皆さんはどっちが良かったんでしょうかねぇ?
メールいただいた読者さんからは
「どうせ、残るんでしょ?」
「すんなり成仏はしないと思います。」
と多くの意見が多かったので
「逆サプライズ」
で「永遠のお別れ」バージョンも考えていたのですが、ほとんどの皆さんの予想通り
「この世に残る」
エンディングとさせていただきました。
当たり前すぎてすみません。
本当は、森先生、緒狩斗監督も含めての「お別れ会」を入れる予定だったんですけど、「15日終わり」を考えると、そのエピソードが入りませんでした。
バタバタ感満載のエンディングですみません。
あと、「なつ&陽菜」の女優さんをもう一回登場させて欲しいという「大人の事情」もありました。
まあ、この世界はいろいろあります(笑)。
まだ、明日の「あとがきのようおなもの」も残ってますので、今日は「載せ残し」のイラストで進めましょう!
まずは、「13万pt越え」と頑張ってっくれた「万沙ちゃん」と「副島のおっちゃん」に
赤井から
「お疲れ「生」です!」
そして、急遽「再登場」の「S&V」の二人です!
最終話の登場人物4人でひとまず締めましょう。
そして、ここからは「載せ残し」(笑)です。
アップしないと「イラスト」も成仏できないでしょうから可能な限りアップしましょう!
まずは、「普通の万沙ちゃん」(笑)。
本当はもっといっぱいあるけど、いつも「ぱかーん」させてたので、本当に「普通」のイラストを選びました。
忖度しての「ミニスカ」じゃない、赤井オリジナルイメージの万沙ちゃんです。
モデルは「あらお☆ひろ」先生です(笑)。
いつもTシャツにデニム!
こんな感じです。
そして「ジャンボ鶴田」編の万沙ちゃん(中身はおっちゃん!)です。
原案では、法律が通じず、乱闘になる回をもう一話考えてたのですが、
「派手な格闘アクションは無理!」
と後で聞き、ボツにしました(笑)。
まあ、よく作ったものですね(笑)。
稀世ちゃんで「怒った顔で暴れる女の子」をいろいろ作ったノウハウが活きてます(笑)。
アプリ変えると、このシチュエーションが生成できないんですよね…。
そして、いつもは「水彩画風」のアプリを使ってるんですけど
「アニメ風」で描いてみて。
と言われて作ったのがコレ!
ちょっとイメージ変わるでしょ?
雑誌風は「ラーメン屋」回で作ったんですけど、
よもやの「ソフトクリーム」のトッピング
で「ぼーーーーつ!」(笑)。
結構かわいく描けてただけに「ざーんーねーん-!」
続いては「過去作イメージ」(笑)の万沙ちゃん!
「COSMO's」のアイドル風万沙ちゃん!
メガネ女子といえば、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」の主人公の「眼鏡の女の子」がかわいいですよねー!
もちろん、歳くって出て来た「元祖ゴーストバスターズ」の「ダン・エイクロウド」もかっこいい!
今の年で「ゴーストバスターズ」に出ちゃう(※出させちゃう)アメリカ映画が大好き!
(※あんまり関係ないけど、今、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」見てるからねー(笑)!アメリカの「幽霊もの」としては「ゴースト・ニューヨークの…」よりも「ゴーストバスターズ」シリーズの方が好き(笑)。「ゴーストバスターズ2016」も面白かったし、今年の「ゴーストバスターズ・フローズンサマー」も早く見たいねー!)
おっと脱線!
次の万沙ちゃんは「俺ゴー」の「礼ちゃん」風!
万沙ちゃんに「浮遊霊」になってもらいました!
この浮遊感を生成するのが難しいんですよー!
そして、次作の「突撃!東大阪産業大学ヒーロー部!」に併せて作った
「ヒーロー万沙ちゃん」!
(※ラストの新ペンネームの「HIRO(※「HERO」じゃないけどね(笑))」になぞらえてます。誰も気づいてくれそうにないので、自分で書きます(笑))
特捜戦隊ものをイメージして作りました。
あと「アイアンマン風」とかね(笑)。
そして、「さいわら」の「秋田ちゃん」風。
本当は「チャイナドレス」出したかったけど出なかったので「サリー」風で。
と、いろいろ遊ばせてもらいました。
最後は、読んでくれたみなさんを応援する万沙ちゃんです!
「今まで、応援ありがとうございましたー!みんなもぱにゃにゃんだー!」
by万沙
では、明日の「あとがきのようなもの」でお別れでーす!
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※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
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久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
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