【完結】『ながらスマホで５６歳のおっさん霊を憑依させざるを得なくなった２３歳の女劇団員「音玄万沙《ねくろ・まんさ》」の物語』

第８話「ぼったくりする奴とぼったくられる奴。②」

第８話「ぼったくりする奴とぼったくられる奴。②」

　結局のところ、エアコンの修理が入ったのは、８月２０日であり１０日間のビジネスホテル暮らしを余儀なくされたことが語られた。
「先輩、そりゃひどい目に遭いましたね。まあ、エアコンが壊れた時期に「運」が無かったとはいえ、１０日間も放ったらかしは無いですよね。うちの管理会社は２４時間対応で動いてくれるってパンフレットにはあったけど、一度見直しておいた方がいいかもしれないですね。」
と同情しながら、一緒にアイスクリームを食べた。

　アイスを食べ終わり、缶チューハイを飲み始めたところから、依弥のボルテージが上がってきた。２０日の留守中にエアコンの修理を依頼したのだが、新しいエアコンに入れ替えられたマンションに帰宅後、ポストに入っていたものは依弥の予想外のものだった。
依弥からスマホの写真で見せられた書類には「請求書」の文字と「事故状況報告書」の文字と室外機の写真が貼り付けられていた。

「事故状況報告書」には、エアコン室外機の上に置かれた２つの「鉢植え」の写真に「鉢植えの土が室外機内に侵入し、モーター軸受けのベアリングを損傷したことによる破損。メーカー修理対応期間終了機種につき、新品に入れ替え」の文章がついていた。
「請求書」には、「入居者様の重過失による設備破損につき、来月家賃支払い時に合わせてお支払い願います。」の注記の入った８万８千円の請求金額が記されていた。
「えっ？エアコンの修理代まで依弥先輩に来てるんですか？そんなの無茶苦茶じゃないですか！」
と憤慨する万沙に
「せやろ！私も次の日に文句の電話を入れたったんや。そしたら、契約書に「入居者の故意、重過失による設備損傷は原状回復の必要がある。」って杓子定規に言われてん。腹立つから、「そんなん認められへん！エアコン代は払わへんで！」って文句言うたら、３日後には、弁護士の名前で「支払い」に関する「内容証明」が来て、「カチン」と来て、「アホ言いなや！そんなんやったら家賃も払わへんぞ！」って文句言うたら「悪意を持って家賃支払いの拒否をなされるんですね。」ってしれっと言うから、「喧嘩売ってんのはそっちやろ！」って言って、月末に家賃も入れへんかってん。」
と言うと、急にテンションが下がった。

　依弥が言うには、月末に家賃を入れなかったことで、９月３日に再度「内容証明郵便」が届いた。そこには「解約予告書」の文字があった。９月１０日までに、９月家賃とエアコン交換費用を払わなければ、部屋の使用を差し止める。」という内容の文書だったという。
　そして、今日、帰宅すると部屋のドアに別付けの「ロック」がかけられており、部屋に入れなくなったという事だった。銀行通帳も印鑑もキャッシュカードの入ったかばんも部屋の中で、途方に暮れていた時に万沙の事を思い出して電話をかけて来たとのことだった。

　「ぎょへー、今の不動産屋ってえげつないですねぇ。部屋に入られへんではどうしようもないですから、お金の方は私が明日立て替えます。ちょっと、思うことあるんで、先輩は「サパッ」とシャワーでもしてきてください。絶対に着替えを済ませてから脱衣場は出てくださいね。絶対ですよ！」
と着替えのＴシャツとスウェットを手渡し、浴室に依弥を押し込むとひとりリビングに戻った。

　「おっちゃん、今の話ってどうなん？ロックするのって違法とちゃうの？」と万沙は難しい顔をしている副島に話しかけた。
「せやな、悪い管理会社にあたってしもてるみたいやな。向こうも弁護士が出て来てるんやったら、結構面倒やな。今回は、おいちゃんの知り合いの弁護士に頼むかな。いろいろ、上げ足取られる「言質げんち」も獲られてしもてるからな。
　管理会社も「東京本社」やし、森君と処理するにはちょっと面倒やな。まあ、万沙ちゃんは勉強やと思って、おいちゃんと一緒に東京まで行って交渉の経緯を見るのはええかもしれへんな。いや、万沙ちゃん出ないとできへん役割もあるわ！万沙ちゃんは先輩に「委任状」を書いといてもらっといてな。」

　副島は、その後、万沙の身体を借りて司法書士の森に電話を入れた。民法の条文がいくつも並べられ、書類作成を依頼していることはわかったが専門用語が多かったので、万沙にはその内容は半分も理解できなかった。管理会社の委任弁護士の名前を伝えると、
「先輩が居ったら先輩、居れへんかったら後輩な。うちに「義理」があって、明日にでも動ける人で探したって。」
と最後に弁護士に同行を依頼し電話を切ると、数分後、森から「同行ＯＫ」の折り返しの電話があった。

　「おっちゃん、何とかなりそうなん？今回は、なんで弁護士なん？森先生じゃあかんの？いつもの私が補助者って言っておっちゃんが交渉はできへんの？」
と矢継ぎ早に万沙が質問を投げかけた。
「うーん、全部説明すると、数時間かかってしまうから答えは明日にしよな。まあ、弁護士の中には「法律家」として「司法書士」を「下」に見るもんも多いからな。後は、「星」の貸し借りの話をするには、「同じ」肩書や「しがらみ」があった方がええ場合もあるってなことや。
　最善で最速で最安値で済ますのが「金城司法書士事務所」のやり方やからな。明日は、万沙ちゃんには「役者」として頑張ってもらわなあかんから、劇団の「名刺」も用意しといてや。
　もう、先輩も風呂からあがって来るやろ。今から書くメモの回答をわかる範囲でいいから先輩に書いてもらったら、森君に送っておいて。じゃあ、おいちゃんはここで「お暇いとまさせてもらうわな。」
と言い、数枚のメモを残すと部屋の壁から出て行った。



「今日のおまけ」

不動産トラブル編です。
不動産トラブルものだけで1冊書くくらいのネタがある業界です。
今回は、少し前にSNSで話題になっていた「ガス給湯器が壊れた」ことに対する投書を差し込んでみました。
民法６１１条！
度々出てくる条文です。

以前どこかで書き込みましたが、赤井は「不動産仲介業」のアドバイザーをしたり、今でいう「保証会社」の「連帯保証人斡旋サービス」とその「回収」業務をしていたことがあります。

今では当たり前の「ネットでの内覧」のシステムの「元祖モデル」を作りました。
ウインドウズ９８から、ウインドウズ２０００，MEに代わるころでまだISDNだったころでしたので、今みたいに動画配信は無理で「写真」で物件閲覧ができるようにした頃です。
それだけでもネットで、室内や物件外観だけでなく周辺施設の地図や写真を見られるようになり「家主」からは「府外の客や転勤がある法人からの競争力がある」と喜んでもらいました。

あと、原状回復義務をなくす、「全退去者のそのままの部屋（※スケルトン）」渡しのシステムを作ったり、壁紙や床材を自分で選んで分割払いにする「インテリアオーダーシステム」のビジネスモデル特許を取ったりもしました。
入居初期費用の無い人や事故物件で困ってる家主のため通常の「賃貸借契約」でなく、「ホテル」と同じように「一時使用貸借」契約で、現在の「ウイークリー」や「マンスリー契約」なんかも作ったのが懐かしいですね。

そして「もりかどネット（※守口門真個人事業・中小企業連絡協議会）」で、当時あった大手メーカー工場に勤める「外国人労働者」の為に「連帯保証人」を法人で引き受けるシステムは大家さんに安心を与え、仲介屋からは喜ばれましたねー！

そのどちらも、退去時の「原状回復費用」はよくトラブりましたねー！
ある意味、「素人」の入居者は「家主」からいいようにされてました。

フリーの相談屋(笑)になってからは、逆に「入居者側」の味方をすることが増え、「家主」、「賃借人」両方の苦労をよくわかっているつもりです。

まあ、そのウンチクを書くところではないので、困ったことが有ったら、法律屋に飛び込む前にみなさんはしかるべき相談窓口に相談するようにして下さいね。

余談ですが、昔、不動産業界の裏について書こうと思ってたことがあったんですけど、「正直不動産」に先を越されて、お蔵入りになりました。
あの作品が表に出て困っている不動産屋はたくさんあるはずです(笑)。

さて、明日で一応本編は最終回で残すは「エピローグ」と「あとがきのようなもの」だけです。
読者の皆さんからのメールでのエンディング予想では、副島のおっちゃんが成仏するかどうかは「半々」ですね。
明後日をお楽しみにしてください！

さて、イラストで締めましょう！

まずは「先輩」！

プロンプトとしては「さいわら」の「秋田ちゃん」の髪を茶髪にしただけなんで美人でしょ(笑)。


そして「余命半年～R」でよく遊びで作っていた「雑誌の表紙風」(笑)。

何となく面白いでしょ。
最後は「海外版PLAYBOY風」ってね(笑)。
いまや「バニーマーク」は「昭和の香り」でしかないですよね…。(´・ω・｀)ｼｮﾎﾞｰﾝ

では、明日の本編最終回までよーろーひーこー！
(⋈◍＞◡＜◍)。✧♡


追伸
１２日午後３時２５分。
何とか「あとがきのようまもの」までアルファさんの公開予約できました。
１６日午前６時まで休み無しで更新できる予定です。
ちょっと、うまくいかなかった「PixAi」のイラストは堪忍してくださいね。
先に謝っておきますね。
(｡-人-｡) ｺﾞﾒﾝﾈ