【完結】『ながらスマホで５６歳のおっさん霊を憑依させざるを得なくなった２３歳の女劇団員「音玄万沙《ねくろ・まんさ》」の物語』

第６話「知らないものはとことん「損」をする。それは味方であるはずの…。③」

第６話「知らないものはとことん「損」をする。それは味方であるはずの…。③」

　翌日、朝７時半に３人が応接室に揃った。まずは、森の運転する車で門真市を管轄する枚方にある「北大阪労働基準監督署」に向かうことになった。
　（おっちゃん、何で労基署なん？通勤災害はあかんかったんやろ？こんな早くに行って大丈夫なん？役所は９時からとちゃうの？）と万沙が副島に心の中で尋ねると自信満々に副島は万沙の疑問に答えた。
「まあ、「味方」と思ってた役所に「そない」言われたら普通の人は「そない」思ってしまうよな。まあ、そこは「ネット情報」も同じや。
けどな、いかなることにも「イレギュラー」は存在し、そこには「抜け道」があるもんや。まずは、当座の「治療費」負担をなくして、会社にはそれまでの残業代や休日出勤手当を払わせたらなあかん。
　弁護士入れて会社と示談させるのは時間も金もかかるやろ。電話での相談できちんと答えられへんかった労基署職員をつついたんのは可哀そうやから、きちんと「わかってる」担当者に繋げたったら、事はあっという間に解決することもあるってなもんや。ちなみに労基署は８時半から１７時１５分までや。役所の中では、警察消防を除けばなかなかのサービスやな。カラカラカラ。」

　労基署に着くと、万沙に憑依した副島が部辣区と森にむかって言った。
「これからは、おいちゃん…、いや「私」が前面に出させてもらうで。部辣区さんは聞かれたことに対して答えてくれたらええからな。森君は並行して会社宛ての書面を作成していってや。」
午前８時半ちょうどに、労基署の受付に行くと真っ先に言った。
「おはようございます。門真の金城司法書士事務所の補助者の音玄万沙と言います。通勤災害の労災申請に詳しい・・・担当者さんお願いします。」
　（えっ、だから「通勤災害」で労災はあかんのでしょ？ましてや「会社」が労災は使わせへんって言うてるんやから無駄やん。）万沙は思ったがどうしようもできず、事の成り行きを見守るしかなかった。

　ベテランの中年スタッフが奥の席から出てきて、相談窓口の席に座った。副島は開口一番、欣夢の社員証と病院の診察券を提示して話し出した。
「朝早うからすんません。こっちの部辣区欣夢さん、通勤中のバイク事故で見ての通り骨折してしもたんですけど、会社からは「労災は使われへんで」って言われてそれを信じてしもてたんですよ。「様式１６号の３」と「様式１６号の６」の申請書もらえますか？
　「通勤災害」は従業員からの「個人申請」で大丈夫ですよね。参考までに「様式１６号の６」の裏面は先に下書きしてきてますんで、先に目を通してもらえますか？自宅最寄駅からバイクで帰る前に仕事用の「カッターシャツ」買うためにディスカウントストアー寄って、その後の「自損事故」なんですけど「通勤災害の労災認定の基準」で「寄り道」の要件で「独身者・・・の日用品購入」に際しては「必要最低限の日常生活上必要な行為」として、仕事で着るシャツの購入は認めてもらえますよね。
　その際は、「その寄り道後に元の通勤経路に復した後の事故は労災認定される。」という事でよろしいですよね。この会社の労働保険番号も教えてくださいな。私はこの会社の社会保険労務士ではないんで書類は、部辣区さん本人が全部書きますから、よろしくお願いしますわ。」
　
　ベテラン担当者は欣夢に「独身者」であることと買い物内容が「カッターシャツ」だけであることを確認すると
「「独身者」の「日常品の購入」という事で「１６号の６」の「通勤要件」は満たしていると思われます。では、こちらの用紙に記入お願いします。」
と用紙と記載例を手渡した。
　続けて副島が病院での支払いを「労災扱い」にし、自己負担をなくすための「様式１６号の３」を要求した。
「すんません。そしたら１６号の３もよろしいですわな。健保扱いで手術受けたり、入院してたんで自己負担が大きなって「新卒君」にはしんどいみたいなんですよ。とりあえず、病院の支払いだけでも「労災」扱いになってくれたら、後のリハビリもしっかり通えますやん。」

　用紙を受け取ると、森に渡した。副島は、「ここからが本題なんですけど、「労働基準監督官」さんお願いしますわ…。」と前振りをして、森がワープロでまとめたこの４月に欣夢が入社してからの勤務実態表と欣夢の「自認書」と「１か月前の日付」の退職願の写しを手渡すと、担当者が変わった。
「朝早くから面倒かけてすんません。うちの事務所の知り合いの会社なんですけど、「長時間労働」、「賃金未払い」に「会社の損失補填強要」、それに「パワハラ」と余りに「ブラック」なんでこってりと「お灸」据えたって欲しいなと思いましてね。ちなみにこんな会社でも就業規則は提出されてますでしょ。きちんとした「残業代」、「休日出勤代」を払うように指導したって下さいな。
　弁護士がちまちま交渉するより、みなさんに動いてもらう方が早いですからね。まあ、部辣区さんと同じ目に遭ってる「SEシステムエンジニア」が３０人ほどおるんで会社の「実体」は、ちょっと「証言」を集めてもろたらすぐわかりますやろ。他の若手従業員さんの為にも安生あんじょうよろしくお頼み申し上げまっさ。」

　労基署の職員は、ぺらぺらとオヤジ言葉で話す万沙と綿密に用意された書面のおかげもあり、「様式１６号の３」は受領してもらい、治療費の還付手続きに関する書類を受け取った。休業補償を求める「様式１６号の６」については、リハビリが終了したのちに提出することで欣夢も納得したため、「内払い」の手続きは保留した。
　退職願いを最初に提出してから、３１日以上経っているため、電話と内容証明で再度「退職願」を提出する意思表明を行う旨を担当官に伝えると、枚方郵便局から「退職願」と「未払い給与支払いの申し立て」の内容証明を送り、森が会社に「退職」の意向と労基署での申し立て内容を伝えると、人事部も抵抗することなく「離職票」の発行を約束してくれた。未払い給与支払いについては今後金城司法書士事務所が欣夢の代理人となることを宣告すると、後日、人事部長より連絡してくれることになった。
　就職から半年たっていないが、「休日出勤を入れると所定労働日の平均月２０日の６カ月分の１２０日を越えるので、１０日分の有休消化も請求してみますか？」との森の意見もあったが「そこまでは望みません。」と丁寧に断った。欣夢を悩ませた「数か月」はわずか「３時間」で解決した。

　「音玄さん、森先生ありがとうございました。まさに「お節介な幽霊に憑依された女の子の事件簿」の舞台そのものでしたね。音玄さんの背後にやり手のおじさんの「霊」が見えたような気がしましたよ！」
と丁寧に笑顔の欣夢が万沙に言うと、
「実はな、私、見た目は女の子やけどほんまは５６歳のおっさんやねん。カラカラカラ。さて、次は、おいちゃん…、いや、私からのお願いやねんけど、元気な「SE」を募集してる事業所があるねん。そんなに給料は高くないけど、アットホームな雰囲気でやってる事業者やねん。部辣区さんを紹介させてもらう訳には行けへんかな？」
と副島が返した。

　「えっ、ここまでしてもらって、仕事まで斡旋してくれちゃうんですか？もう、音玄さんのいうことだったら何でも聞いちゃいますよ！ほんと、僕の女神様です！」
　喜ぶ欣夢に副島が「ほんまに何でも聞いてくれるんやな？」と念を押した。（まさか、おっちゃん、「変」なこと言うたりせえへんやろな！「H」な事とか絶対にあかんで！）と焦る万沙を無視して、副島は欣夢を誘った。
「じゃあ、まだ昼前やけど、車を門真に戻したら、京橋の立ち飲み「まつい」行って、「解決祝い」と「就職祝い」でもしよか！「まつい」の超巨大な錫すずのお調子とグラスで飲む「熱燗」は最高！「おでんのスジ」を落とした「土手焼き」を食うのが旨いんや！じゃあ、今日はとことん「飲み」に付き合ってもらおうか！カラカラカラ。」



「今日のおまけ」

まずは、京橋最高の癒しの場！
「まーつーいー！」

昼から飲める「親父の味方」！

話に出て来た「錫ピューター」の巨大お銚子と重たいコップの写真がスマホにない(笑)。
きっと、「熱燗」飲みだすと写真なんか取れないんだよね(笑)。

店の雰囲気と「土手焼き」はこんな感じ！

（※空になることなく、無限に「追加」されていく！これにおでんのスジ（※この「スジ」がみんなのイメージする「スジ」と全然ちゃうんやけど「写真」が無い！(￣▽￣;)）

「私の神様は〇〇〇〇さん」で、紹介して食べに言ってくれた読者さんも多かったですね！
「まつい」万歳！ヽ(^。^)ノ


そして、「ブラック企業」をテーマにした「お勧め本」の紹介です！

最初の一冊は、「動物もの」(笑)！

「とりのささみ。」先生の

「テイコウペンギン」！

「皇帝ペンギン」じゃないですよ。
「テイコウ抵抗ペンギン」です。

ブラック企業でパワハラ上司に毎日残業、休日出勤を強要される社員のペンギンの
「愚痴」
と
「心情」
が延々とシュールに描かれてるマンガです。

作家さんは、この作品でデビューするまでに２０年の苦労人とのことです。
めちゃくちゃ面白かったので、「ブラック企業」にお勤めの方も、そうでない方もお読みください！
(* ´艸｀)ｸｽｸｽ


そして、３度目の紹介になる

でーす！

「S&V」で紹介させてもらって、「心亜ちゃん」で再登場！

「ゲンツキ」先生の

「社畜サキュバスの話」

何てダイレクトなタイトル！(￣▽￣;)


主人公のサキュバスの「リリちゃん」のサキュバス界もブラックなら、リリちゃんの訪問先の「黒木勤」さんの会社も超ブラック。
毎日、終電で帰ってきて、リリちゃんの見せる夢で癒されるんだけど、その希望の「夢」が実に「質素」！

一緒にゲームしてもらう「夢」とか、手作り料理食べさせてもらう「夢」など「淫夢」とかけ離れた「夢」を見せるリリちゃんが超かわいいです。
贅沢言わず、リリちゃんの上司に希望を聞かれ、「リリさんに休みをあげてください。」と願う黒木さんの優しさにも癒されます。
もう、何度読み返しても、また読めちゃう。
あぁ、自分自身、疲れてるんかなって思う時に、読むとちょっと元気が出る作品です。

赤井もこういう話をかけるようになりたいと思う一作です！
是非とも読んでみてくださいねー！
ヾ(o´∀｀o)ﾉﾜｧｰｨ♪


そして、イラストです。
予想外に人気が出た「欣夢君」(笑)！
今日は、「ノーネクタイ」で！

男性読者にはリクエストであった「温泉万沙ちゃん」(笑)！
でも、「裸」は出せないので「足湯」！

大阪市内でも足湯やってるところがあるんだけど
「ありがたい」
ねー！

最近、足が「むくみがち」なんで足湯は好き！
佐賀の「嬉野温泉」の足湯はよかったなー！
あー、また佐賀の「ドライブイン鳥」行きたいなー！

まあ、「足湯」だけでは納得してもらえないと思うんで

「ばーん！」(笑)


あと、お約束の「行儀の悪い万沙ちゃん」ですね！
はい、きちんと覚えてますよ！

(´-∀-｀；)
こんなところで許してください！

では、明日から「新章」でーす！
次のテーマは「債務整理」でーす。
次回もズドーンと暗いよー(笑)。
って書いてるけど、８月７日午後６時半の時点でまだ「校正原稿」が上がってきてない―！
ついに、毎日連載が「落ちる」のかー！
Σ(ﾟДﾟ；≡；ﾟдﾟ)

ちなみに、その次の最終話前の原稿は今日書きます！
うーん、体が２つ、いや３つ欲しい！
:(；ﾞﾟ''ωﾟ''):