【完結】『ながらスマホで５６歳のおっさん霊を憑依させざるを得なくなった２３歳の女劇団員「音玄万沙《ねくろ・まんさ》」の物語』

M‐赤井翼

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第１話「ながらスマホで自転車運転をしたばっかりに…①」

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第１話「ながらスマホで自転車運転をしたばっかりに…①」

　ゴールデンウイーク明けの５月７日火曜日午後５時５０分。国道１６３号線を東から西に向けてママチャリで車道を猛スピードで走る女がいた。夕方の帰宅ラッシュが始まった国道の路肩を全力でペダルをこいでいる。
ニコニコ劇団新人団員の音玄万沙ねくろ・まんさは急いでいた。先輩団員に頼まれた「お遣い」に思いのほか時間を取られ、夕方からのスタジオでの全体練習に遅刻してしまいそうだったからだ。
　
（あかん、この間も「遅刻」したとこやのに、新人の立場で連続して今日も遅れるようなことがあったら「クビ」になってしまうかもしれへん！せめて「無断遅刻」扱いにならんように劇団のグループラインにメッセージだけ入れとこか。うん、その方がええよな。夢生明むうみん先輩に頼まれたビデオカメラ用の大容量メモリーカードを買いに行った大規模家電量販店で時間を取られてしもたって、言い訳を送っておくか！）万沙はデニムパンツの尻のポケットから右手でスマホを取り出した。
親指でラインを立ち上げると「ニコニコ劇団」のグループラインを開き、「片手打ち」で「現在、「試験場入口交差点」手前を西走中。あと１０分で到着です。追伸、夢生明先輩依頼のＳＤカードは購入済みです。」と路肩を走り抜けながら器用にメッセージを打ち、送信した。

ピロリーン。ラインの着信音が鳴った。夢生明からのメッセージだった。「面倒頼んで(｡-人-｡) ｺﾞﾒﾝﾈ。監督も５分遅れるみたいやから気をつけて帰ってきてな。ε≡≡ﾍ( ´Д`)ﾉ」と返事が来た。
（メッセージ見た以上は「既読スルー」って思われてもあかんから、とりあえず返信は入れておかんとな。さすがに新人の私から「了解」のスタンプっていうのも失礼やから…。）「お気遣いいただきありがとうございます。気をつけて帰り」まで入力した瞬間、万沙のママチャリは赤信号に代わった「試験場入口」の交差点に飛び込んでいた。激しくなるクラクションの音にスマホの画面から意識を現実に引き戻された。右からは南にある「門真運転試験場」方面に向かう軽自動車が急ブレーキをかけてつんのめるビジョンがスローモーションのように見えた。

（あっ、私完全に赤信号で交差点に進入してしもたんや。もう死ぬ！）と刹那に確信した。しかし、ドライバーの必死のブレーキ操作のおかげで万沙の右の自転車ペダルに軽自動車のバンパーが「フレンチ・キス」するだけで跳ね飛ばされることは無かった。
しかし、片手運転と無意識のうちに衝突を避ける行動を取りに入ったことでママチャリは大きく左に蛇行した。（助かった！死ぬかと思った。思わず「ちびる」とこやったわ。さすがに「ショーツ」を履き替える時間はあれへんもんな。）と意識が脱線した瞬間、視界の左端に南側から北の古川橋駅に向かう大型トラックの運転席のひきつった運転手の顔が入った。（あかん！これはもう逃げられへん！轢かれて、踏まれてぐじゃぐじゃ決定や！）と思うと同時に万沙のママチャリの前輪がトラックのバンパーの右端角にヒットし、万沙はママチャリごと斜めに交差点中央に放りだされた。万沙の視界に左にハンドルを切り、離れていくトラックの運転手が見えた。

　（正面衝突は回避できたんや。ミンチになるのは避けられたんやな…。きれいに「死ねた」だけ「まし」やったかな…。）と宙空を飛びながら思ったが、その意識は頭部と背中に激しい痛みを感じると同時に断ち切られた。

　ふと意識を取り戻すと見慣れた「試験場入口」交差点の南西角にある「ＫＦＣ古川橋店」の交差点に仰向けに倒れた自分の姿と自分の愛車のママチャリが目に入った。続いて南北に描かれた横断歩道に半分かかった「さっき目にした大型トラック」が斜めに止まり、そのフロントグリルの下に耳から出血し、横断歩道の「白」を大きく赤に染めた赤い作業用ブルゾンを着た太った薄毛の男の上半身が見えた。
　（あれ、なんで私の姿が見えんの？さっき私がはねられかけたトラックが横断歩道にいたおじさんをはねてしまったん？それにしてもこの「俯瞰ふかん」的視野は何？なんで上空から見下ろしてんの？それに私の身体から繋がってるこの紐みたいなものって何？）と意識が混乱した。

　「あーあ、陽菜ちゃん、こういう場合ってどないしたらええんやろか？「冥府あの世」に連れて行くべき「対象者」が生き残って、予定にない人が死んでしもた訳やろ？台帳にない人を代わりに連れて行くわけにいけへんやろうし、死神マニュアルにはなんて書いてあったっけ？」
とほぼ全裸に近いレオタード姿で背中に小さな羽を生やし、小さな角つのをつけたショートカットの女の子が万沙の横に現れた。
　（ん！何、この子？「サキュバス」のコスプレ？こんな場所になにゆえ？）と思った瞬間、タブレットを持った古代ヨーロッパの戦闘服のポニーテールの女の子が現れた。

　「なっちゃん、マニュアルでは「台帳の載らないものの「冥府移送連れ帰り」は厳禁」やて。まあ、「冥府」に行くか「天国」に行くか私らでは判断できへんもんな。せやから、トラックに轢かれたおっちゃんは私らの「管轄外死者」って訳や。
　問題はこの女の子やな。「死ぬ」予定が狂って「生き残って」しもたんやもんな。上級「死神」やったら、この子の「魂の緒」を鎌で刈り取って「冥府」に連れて行くんやろうけど、私らにそんな技術も道具もあれへんもんな。私ら新米「死神」はあくまで台帳に載った「死者」を「冥府」に引導するただの「水先案内人パイロット」やからなぁ…。」

　（えっ、こっちの子は「ワルキューレ」？この子ら自分で「死神」って言ってたけどいったいどないなってるんよ…。下に私の姿見えるけど、私は死んでないっていうこと？これって「幽体離脱」状態なん？）
　万沙の頭はますます混乱した。

今日のおまけ
いよいよ「なぜ万沙がネクロマンサー」になったのか回です。
赤井的には懐かしの「サキュバスなっちゃん」と「ワルキューレ陽菜ちゃん」を再登場させたり楽しませてもらった回です・

「S&V」はけっこう「きわどい」ほぼお尻丸出しのイラストや先端のぽっちしか隠してないビキニのイラストをじゃんじゃんアップしてアルファ公式さんにイラストを「バン」された思い出の作品です(笑)。
「S&V」まではイラストは「P」の職人さんの物を使わせてもらってたんで、「なっちゃん」も「陽菜ちゃん」もこの作品に関しては「巨乳(笑)」！
「旧読」の方は懐かしんでください！
今作は赤井生成のイラストですので「なっちゃん」は「８３のB」、「陽菜ちゃん」は「７８のA」のオリジナル「ペッたん娘」コンビです！

万沙ちゃんは「自転車」に乗せてみましたが「ヘルメット」が出ない！
無理やり出させると「ドカヘル」(笑)。
もしかして「ドカヘル」も今は禁語？
元々「職業名」なのにねぇ。
あー、言葉狩りってやだねぇ…。
「キューティーハニー」や「ゲゲゲの鬼太郎」も「ぴー音」だらけ(笑)。
文学作品ですら「伏字」や「言い換え」の憂き目に…。
おっと脱線！