『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.4』

M‐赤井翼

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「結論」

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「結論」

 稀世は一度、マイク代わりのビール瓶をテーブルに置いた。天井を仰ぎ次の言葉を探すが、発すべきセンテンスが頭の中でこんがらがり文字として構成されない。
「稀世ちゃん、どないしたんや?」
言葉が出ない稀世の様子を見て心配した直が声をかけた。
「稀世ちゃん、もう最後ラストやないか。今朝打ち合わせた「結論」で締めたら終わりやないか。」
と太田も稀世に近づき耳元で囁いた。
 稀世は、十数秒の沈黙の後、ゆっくりと呟いた。
「私…、世の中、根っからの「悪者」って居れへんって信じたいんよ。きっと、誰もが守りたいものがあって、その大事なものを守ることが、世間でいう「正義」に反する事もあるんやと知りました。
 今回の事件を追いかけて、私の中では「悪者」って居れへんのですよ…。でも、メディアとしてそれ・・を「結論」ってことにしてええんかなって思って…。」

 金将社長射殺の実行犯「中田由紀夫」は、傾いた「組」や亡き3代目の為に、逮捕されればまず生きては塀の外には出られない年齢にも関わらず「殺人」の実行役を買って出たのかもしれないと稀世の私情を交えた感想が語られた。。
 間接的とはいえ、中田に殺人を依頼した「百々美麗」は「蘇我信二」の言葉に乗り怒りを募らせ、自分の銃を使い人殺しを依頼した。もちろんそれは許されることではない。しかし、その背景には自らの事業と思い頑張ってきた「大連焼飯的金将餐飲有限公司」を潰されたという「私怨」よりも、応援してくれていた日本の政治家「竹本竜」の顔を潰してしまったという気持ちがあったのではという証言があったことを報告した。
 百々商事ビルの董事長室に置かれたツーショットの写真や最後の言葉から何かしらの「感謝」の気持ちなのか「恩」を感じる何かを持っていたのは間違いない。そこに「恋愛感情」が絡んでいたのかどうかはわからないが、百々の死に顔からは「悪人」とは思えないものを感じたと呟いた。

 蘇我信二は、竹本家から受けた「恩恵」がどのようなものかは情報が少なく、想像するだけしかできないが、半世紀以上にわたり竹本家の為に「汚れ役」を背負うも、息子家族にはその継続は求めず、自分一人ですべての責任を背負い最後まで竹本家を巻き込むことはなかった。
 竹本裕司の現在は「まっとうな業界」を望む建設・土木業の協会長を務め、いわゆる「きれいな会社」経営を行っているという。兄の竜も引退後も「日中友好」に尽力し、東日本大震災の時は「民主主義党」が政権を獲った一時的な「熱病」に侵され、自分の身の程を忘れていたことを反省しているとの言葉を残している。

 竹本圭一、竹本栄一郎、高杉雅樹、高杉佑一郎についても意見や評価は「賛否」ともにあるが、労働者の多くが彼らの活動で救われてきたことも事実であり、決してその活動は「私利私欲」によるものだけでなく「他利」を求めたものも多かったとの証言が多かったのも確かである。
 KFS経営陣においても「美味しいものを安く食べさせたい」という創業者の理念は開業から50余年の時を経た現在も継承され、多くの顧客に愛されていることを考えると、おかしくなりかけたことがあったのは事実であり、その中で不幸な事故があったことも真実である。
 しかし、多くの市民に今も愛され続けている「金将」を考えるとこの58年の歴史の中の「混乱」を乗り越えて現在に至った「金将イズム」は間違いではなかったと思っていると言葉を綴った。

 「ごめんなさい。本来であれば「悪さを働いた「黒幕」はこいつやー!」って景気良く終わらなあかんのでしょうけど、私の頭の中ではまだ未消化です…。今までのスクープと違って、しっかりと取材をして「真実」を探していく難しさを知ると同時に、その楽しさも知りました。
「なんだ?」と思われるかもしれませんが、今日の府警の記者会見を見てこれ以上「誰も傷つかない」結論に正直ほっとした自分がいます。
 今回の取材は、凛ちゃんとの出会いで始まって、太田さん、直さん、副島のおっちゃん、森先生、なっちゃんと陽菜ちゃん、そして多くの情報提供者さんによって助けられました。後は太田さんに任せようと思います。ご清聴ありがとうございました。」
稀世が皆に頭を下げると皆から大きな拍手が湧いた。三朗も大きな拍手を稀世に送っている。

 「ふーん、やさしい稀世ちゃんらしい結論やな。まあ、「ここだけの話」って事やからそれはそれでいい「結論」やないか?
 ちなみに稀世ちゃんと凛ちゃんが読んだ副島はんの「金将社長射殺事件始末記」のシナリオやけど、2人が読んだんは「修正版」でな、わしは修正前の「第1稿」を読ませてもらってたんや。
 稀世ちゃんがジャーナリストとして成長する為にあえて「実名」、「実社名」、実際の「地名」で書かれた「第1稿」は「百々商事」と「百々美麗」以外は、稀世ちゃんの描いた結論と同じやったんやで…。
 2016年に事件のほとんどを押さえてた副島はんも凄いけど、僅かひと月でそこまで調べ上げた稀世ちゃんたちも凄いって話やな。これは将来が期待できるな!カラカラカラ。」
と直が笑うと、稀世は怒ることなく直に礼を言った。
「えー、そんな「あんちょこ・・・・・」があったんですか!?事件発生から3年後には竹本や蘇我にまで副島のおっちゃんは到達してたんやな…。やっぱり凄いわ!
 でも、直さんがそれを安易に私に見せなかったことに感謝します。今回の取材は私自身、めちゃくちゃ「勉強」になったしね。直さん、お気遣いの程、ありがとうございました!」

 90度のお辞儀をする稀世の横で太田も笑顔で頷いていた。そんな太田に直が「獺祭」のボトルを突き出し、質問を投げかけた。
「ところで「ゲス」なことを聞かせてもらうけど、今回のこのスクープで太田はんのところはなんぼ儲かったんや?」
皆の視線が太田に向いた。
 太田は手帳を開くと大手マスメディアでの情報提供料や映像作成での売り上げを読み上げていった。
「…ということで、「金将社長殺害指示者発覚」までのスクープ売り上げトータルは「2615万円」になりましたー!1月ひとつき弱で稼いだと思えば「大儲け」の案件や!
 今一度、我が社に大きな利益をもたらせてくれた「スーパースクーパー」の稀世ちゃんと協力してくれたみんなに大きな拍手をー!」
の発声で再度向日葵寿司内は大きな拍手で埋め尽くされた。

 三朗が事前に太田から持ち込まれていたシャンパンとスパークリングワインを冷蔵庫から持ち出してきた。夏子と陽菜がシャンパングラスを配り太田が皆に「ご苦労さん」、「お疲れさん」と声をかけながらサーブすると、グラスを天井に向けて掲げ、今日一番の声で発声した。
「じゃあ、みんなで「乾杯」しょうか!我らが稀世ちゃんの生み出してくれた「2615万円」にかんぱーい!」







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