『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.4』

M‐赤井翼

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「新情報」

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「新情報」

 2022年10月31日付のY新聞のネット記事は、実行犯の「中田由紀夫」と所属する「江戸川会」について書かれていた。
「2022年4月に2018年から2020年まで府警と捜査にあたった大阪地検の元刑事部長が、上級庁にあたる大阪高検の刑事部長に移動した人が、2013年から2015年まで神奈川地検に在籍し、「江戸川会」を壊滅させる「頂上作戦」を指揮した人やったんや。その人が「横領」や「脅迫」でも何でも理由をつけて別件逮捕をしても「高杉」は「起訴できへん」って判断したわけやろ?」
「うん、私もなっちゃんの意見が気になるんよ。今まで、「高杉雅樹」ばっかりあたってきたけど、創業者社長が付き合いを始めたきっかけは雅樹の腹違いの兄貴の佑一郎とちゃうの?「金将」立ち上げ期の巨額融資を引っ張ってきたんは「兄貴」やって記事があるんやけど兄貴と「反社」が絡んでたとか…。そこも見てみる価値はあると思うんやけど。」
夏子と陽菜はスマホを見ながら次の記事に進んだ。

 「2022年10月29日付けの「S新聞」の記事「背景に200億の「代償」?事件つなぐキーマンX」によると直接接点を持たない「中田」と「小西社長」をつなぐ点と線に出てくる「キーマンX」の兄貴「佑一郎」が「大阪の同和団体のドン」であって、「雅樹」は亡くなった兄貴の実績と組織を継いだだけってことやないの?
同じ神奈川出身の創業者社長と雅樹が仕事上の付き合いが始まったころには、高杉佑一郎が、金将成長期における資金調達で全国展開の為の数百億という原資をメガバンクから地元金融機関を通じて迂回融資をさせたって高杉の身内が話していた。」
という記事を稀世の前に突きつけた。

 稀世は陽菜の見ていたサイトをパソコンで確認すると関連記事をプリントアウトした。
「高杉佑一郎」は、1919年4月16日生まれで1996年5月10日没。元「部落解放同盟中央執行委員長」の文字が紙面に印刷された。
「ふーん、被差別部落の貧農家庭で生まれて、尋常小学校高等科卒業後、当時の「国鉄」への就職に3度失敗し、家出生活に…。騙されて北海道のタコ部屋に売られて、その後、鉄道会社に入社した後、徴兵されて復員後、労働組合の役員になったんやな…。   
 そんで1940年4月に再度徴兵され中国に出征…。
 帰国後、1948年に部落解放同運動に参加、1956年部落解放同盟書記長になって、1963年に部落解放同盟中央執行委員、1968年に同書記長、1982年に中央執行委員長に就任し、1996年5月10日に肝不全で77歳で死去するまで役職を全うか…。こりゃ筋金入りの「左翼戦士」ってやつやな。そんで雅樹とは異母兄弟で死後、雅樹が後を継いだっていう感じやな。」
稀世はプリントを読み返し、パソコンでいくつか検索をかけた。後ろから直が「あれ調べて」、「これも調べて」と注文を付けた。

 「うーん、死んで30年経っても影響力を残す左翼界の「大魔王」っていうところやな…。ある意味、事件に関する知識ベースの無い夏子と陽菜の「自由な発想」での検索に新たなヒントが隠されてるんかも知れへんな。お前ら、晩飯、好きなもん奢ったるから今から2時間調べて見ろや。」
と直は言い残すと会議室を出て行った。

 検索サイトで記事を検索するだけでなく、SNSを駆使して「#金将社長殺人事件」、「#金将社長射殺事件」、「#金将社長殺害黒幕」等の投げかけや、未解決事件系サイトやユーチューバーのチャンネルを調べていった。チャットGPTでも「金将社長射殺事件の黒幕は誰?」と検索をかけた。
検索結果の9割は、とるに足らない内容であったり、すでにつかんでいる情報をそのままコピペしたようなものだったが何件かのサイトやチャンネルが稀世と凜の目に留まった。
 
 稀世と凜は夏子と陽菜がチェックしたものの中で、引っかかるものがあるサイトをパソコンで熟読していった。
どれも2年前の実行犯逮捕後の動画だった。
「角田ポチョムキンの闇社会ニュース」ではゲスト出演のジャーナリスト「ヤマハキヨヒコ」が射殺の実行犯は「江戸川会」のヒットマンであることをズバリ的中させていたし、テレビでもよく見る「モヒカン刑事こと春山弘明」のユーチューブ番組では元刑事らしい口調で冷静に事件を分析していた。
 どちらも「黒幕」の名指しはしていなかったが、「高杉雅樹」の関連外の「大阪ではない・・・・・・」関係者を臭わせていた。
「うーん、「高杉雅樹」が「黒幕」や無かったら「誰」なんかまで言うて欲しいよな…。」
と稀世は唸った。

 そして、出て来た新たな記事の中には、副島のお勧めサイトの中に実行犯の所属する「江戸川会」のある地元経済誌の記事がいくつもあった。事件発生当初からの追跡記事が数年にわたって続いており、「高杉雅樹」自身は、「金将」から得たとされる金員の多くが手元には残っていないことを示す記事がいくつも見られた。その資金の流れも「関東」を想像させるものが多かった。
 夏子の流したSNSで情報提供呼びかけへのリツイートで挙げられたサイトの一つが稀世の目に留まった。
「反社会的勢力対応」や「第三者内部通報」などをメインに取り上げた「危機管理の実践と情報提供」をうたうサイトの2022年11月8日の「金将社長射殺事件~真相解明はまだこれからだ~」とのタイトルの記事だった。
10月28日から11月4日迄の大手5大誌の新聞記事と公営放送等の大手マスコミの実行犯逮捕後の取り扱い記事をまとめた後に、掲載媒体名は伏せられた状態で週刊誌の抜粋記事がアップされていた。

 その記事の中では、公開された調査報告書〔公開版〕では触れられていない「回収不能となった170億円」は「実は創業家関係役員の株投資や不動産取引にキックバックの形で流用されていた可能性や、報告書では「無い」とされた「反社との関与」があるとされ、高杉雅樹から「Y氏」に総額53億円の送金の事実をすっぱ抜いていた。
「あっ!副島のおっちゃんの脚本にも出て来た「Y氏」がこの記事の中にも出て来たで!」
と稀世は声を上げた。
「Y氏」は関東の反社で「江戸川会」とは別の「指定暴力団 橋任会」との関係が指摘されていた。
バブル破綻で経営が危うくなった高杉のゴルフ場を援助するという話っだったが、現在は「N氏」が代表の会社から箱根センチュリーゴルフクラブは乗っ取られ係争中である旨が書かれていた。
「N氏」は「江戸川会」と関係があり、その後トラブルになり「橋任会」を頼ることになったと綴られている。「Y氏」に約53億円の資金が高杉がオーナーの企業を通じて「Y氏」が関与する「S建設工業」に流れていただけでなく、高杉以上に「Y氏」が金将側と懇意だった可能性を指摘している。

 「ぎょへー、「S建設工業」まで出てきたで!副島のおっちゃんが脚本書いた後の記事やから、きっとここの記者もおっちゃんと同じ「ネタ」を持ってるんかも知れへん!これは、この「Y」や「S」ってイニシャルが「何者」なんかってところやな!
なんか一気に進むような気がしてきたでー!」
 稀世の頭の中に明かりが差し込んできた。

 あとの記事は創業者次男と高杉のずぶずぶの関係が綴られていた。「KFS」の100%子会社のキングダム社の不当不動産取引は高杉は否定するものの、バブル崩壊後「住専」絡みで住管機構から「50億円」の支払を求められお手上げ状態だった高杉が佐藤謹二に電話で愚痴をこぼすと「それぐらいだったら、うちで何とかします。」とポンと「50億」の融資を受けたことが記されていた。
 その返済のために高杉は本社ビルを担保に銀行から借り入れを行い、持っていた土地を売却し「40億円」を調達し「KFS」に返済し、「10億」の債務が残った。
 その後、運転資金として3億から5億を借りたり返済したりを繰り返すうちに、KFSが高杉の物件の担保を外してくれなくなり、謹二が高杉の留守中に高杉オーナーの本社に来て、「社長の了解は得ているから」と従業員に嘘をつき、怪しげな書類に高杉の社判をつかせるようなことが何度もあったと書かれていた。

 そして、最終的に互いの主張する債務額に大きな隔たりが出て来た。2005年の時点で「KFS」側は「90億円以上」の貸し付けがあり、返済額は40数億円に過ぎないと主張してきた。
経営状況悪化の責任をとり長男「靖」、次男「謹二」はすでに役員を辞任していた為、高杉は小西社長と5億払えば残り40億は放棄するという、凜が発見した「債務放棄書」内容と同じことが記載されており、合意に至った経緯が語られた。
 それにもかかわらず、「約260億円」と言う桁違いの金額が高杉に押し付けられた理由として、高杉は次男が代表取締役専務だった時代に、商工ローン大手の「日栄」の株を大量購入したり、不動産投資の失敗も続き、ロンドン市場で50億円もの外債を発行したものの、デフォルト寸前の状態になっていたKFS経営陣は損失の穴埋めの為に経理上、不当取引による損失赤字を高杉に押し付け責任逃れをしたのだろうと高杉は語ったと記事にはある。
「私が「高杉佑一郎」の弟だから「アンタッチャブル」だという誤った偶像化を行い、東証一部上場のために作成された2013年の社内調査報告書を叩き台に第三者委員会は焼きなおしただけに過ぎないのでしょう。そのせいで、私は白い目で見られることになったのです。」と高杉の言葉でその抜粋記事は締めくくっている。

 それらの新規情報に副島からもらった資料と重なる「キーワード」がいくつか浮かんできた。
「うーん、副島のおっちゃんのメモにもあった「Y氏」とか「S建設工業」がこの記事にも出て来てた。この記事は2年3カ月前の物でおっちゃんのメモは5年前の物やから、きっとおっちゃんは何か掴んでたんや!
ここで出て来た「Y氏」っていうのはすでに1996年に「高杉祐一郎」は死んでるから違うよな。「S」っていうイニシャルも今のところ出てけえへんし、どうせやったら「ズバッ」っと書いておいてくれたらええのになぁ…。」
稀世はケーキを一気に口の中に放り込むと、紅茶で一気に流し込んだ。
「この2時間ちょっとで情報が増えた分、混乱も増えましたね。」
と凜もケーキをさらえた。

 さらに夏子と陽菜のSNSを通じて「ローカルの話題ですが…」との断りの上で、多数の情報の中で初めて知るものがいくつもあった。
高杉が所有していたとされる「箱根センチュリーゴルフクラブ」が所有権裁判を起こされていたり、その裁判相手が他県の「産廃業者」であることが分かった。
「あれ?高杉っていろいろもめてますね。ゴルフ場は所有権で裁判してるし…、本当に100億はもらえてないんじゃないですか?なっちゃんはどない思う?」
「せやな、陽菜ちゃんの意見に私も近いかな?地方の産廃業者と訴訟になってたりするところを見ると、少なくとも「左翼のドン」て感じではあれへんよな。100ぺージの調査時報告書も次男は調査に参加してへんし、高杉も電話で対応しただけや。
2013年の調査報告書のほぼそのままの焼き直しやとするならば、そこになにがしらの忖度があるんかも知れへん。もしかすると陽菜ちゃんが言ったように2013年の報告書がすり替えられてることもあり得るんとちゃうか?」
「高杉雅樹はマスコミが言うように決してアンタッチャブルな「左翼活動家のトップ」じゃないんじゃない?高杉が週刊誌の記事の中で言うように「兄貴の祐一郎」の名前を利用されただけなんかも…。」
夏子と陽菜の議論もヒートアップして来た。その時、夏子のお腹が「ぐーっ」っと鳴った。時計を見ると午後8時になっていた。
 そこに三朗から稀世に電話が入り稀世の顔が一気に青ざめていった。
「稀世姉さん、どうしたんですか?」
凜が心配して声をかけると、稀世が震える声で呟いた。
「な、直さんが車にはねられた!」


「おまけ」
今日はリクエストもらってた「なつ&陽菜」コンビです!




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