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「エピローグ ダメ!絶対!」
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「エピローグ ダメ!絶対!」
会場での飲食が落ち着いたところで、リング上の42インチの液晶テレビに「UCWW大会」での稀世のファイトがDVDで流された。
まりあの講談師風解説を聞きながら、圧勝だった1回戦、反則男性レスラー相手で苦戦に苦戦を重ねた準々決勝、薄氷を踏む思いで勝利をつかんだ準決勝、そして最終的に大会中断で勝負がつかなかった決勝戦から、拳銃を持ったルメイとパイプ椅子ひとつで戦う稀世とルメイの「プロレス対ピストル」の「異種格闘戦(?)」のバトルまで、西沢米穀特設リング会場は稀世への声援で現場にいるような臨場感で完勝した初戦から「三つのさいきょう」までのセリフが再生された。
ふと、ニコニコ商店街のメンバーの一人が稀世に尋ねた。
「決勝戦を戦った、粋華ちゃんはどないなったん?足を撃たれて大丈夫やったんか?」
その質問に稀世もまりあも直も誰も答えられなかった。
「あの日以降、粋華と全く連絡が取られへんようになってしもて…。」
稀世がありのままに話すと、
「マフィアに報復でなんかされてへんかったらええねんけど…。」
「やっぱり主催者に逆らったってことで、WWEもクビになってしもて行き場があれへんのかも知れへんな。」
「もしかして、ケガの状態が悪くて、万一の…。」
と良くないことばかり、予想を並べられるのを聞いて、不安感でいっぱいになった稀世に
「おいおい、おっちゃん達、私が居れへんところで「死んだ」ことにせんといてやー!稀世―!直師匠にまりあさん!2週間ぶりです!もうすっかり、完治して帰ってきたで!WWEのスーパーディーバ「サイキッカーSUIKA」様の完全復活やでー!」
と元気な声でHカップの大きな胸を揺らした粋華が会場に現れた。
粋華が言うには、WWEから「マフィア」の「イリノイ・アウトフィット」がどう動くかわからないのでとりあえず身を隠せとの連絡があり、WWEスタッフと共にアメリカにこっそり帰国後、病院に雲隠れしていたとのことだった。その間に太ももの銃創はキレイに整形され、傷跡は殆ど目立たないようになったとのことだった。「その手術費用に「大会賞金」の1000万を充てたわ!アメリカは健康保険制度が貧弱やから日本と違って金がかかるわ!」と笑いながら語った。
「もう、なんで連絡くれへんかったんよ!めちゃくちゃ心配してたんやで!ぷんぷん!」
と怒る稀世に
「いや、万一の場合にみんなを巻き込みたくなかったんや。すまんすまん!幸い、WWEも正直に事情を話したらクビにならんで済んだわ。いろいろと心配かけたな。」
素直に謝る粋華をそれ以上責めることもできず、稀世も素直に粋華の無事を喜び、互いに「ぎゅ」っとハグをかわした。
ハグが終わると、粋華はふと会場内を見渡し、稀世に尋ねた。
「そういえば、今日はあの騒がしい女子高生コンビのあほの夏子と陽菜の姿が見えへんけどあいつらどないしたんや?無料飯があるところには必ず顔を出しとったやないか?」
「うん、大会の後、私もなっちゃんと陽菜ちゃんの顔見てへんねん。あの二人こそどないしてるんやろな…。唯ちゃん、なっちゃんと陽菜ちゃんのことなんか聞いてへんの?」
稀世は近くにいた唯に質問をふった。
唯は少し困った顔して、直の顔を見た。直は黙って顎をしゃくった。
「あの…、夏子先輩と陽菜先輩は毎日アルバイトで忙しいんです…。」
とだけ話すと黙り込んでしまった。
「えっ、アルバイトって?なっちゃんと陽菜ちゃん、UCWWで120万円くらい稼いだんと違った?何故、アルバイトなんか…?」
と稀世が唯に尋ねると、直が思いっきり大声で笑った。
「あいつら、「欲の皮」を突っ張らせて、決勝の日も「賭け」を続けよったんや。例の「ジャンプアップ」の罠に引っかかって、120万を吐き出しただけやなく、熱くなりなりすぎて自分らの「虎の子貯金」どころかキャッシングにまで手を出して、二人とも20万円の借金持ちや!
この25日が支払日やから、駅の向こうの新築マンションの工事現場で警備員のバイトしてるわ。
自業自得といえばそれまでやけど、「博打」の怖さを改めて知るいい機会にはなったな。普通の女子高生がたった4日で「破産」の目に遭うんやからなぁ…。まあ、今回は三朗の店に入った「空き巣狙い」みたいに「闇金」まで絡まへんかっただけましや。あの二人にはええ薬になったことやろ!
まあ、わしは稀世ちゃんと粋華のおかげでほくほくやけどな。元本は各々2万。わしは二人を全面的に信じてたから、100%全賭けや!稀世ちゃんは9倍、6倍、1.7倍で183万6千円。粋華は、WWEチャンピオンってことで厳しいオッズやったけど、2倍、1.8倍、2.6倍でコツコツ増やして18万7200円で合わせて200万強や!今度、一緒に有馬温泉行って、イケメンホストを集めて「男芸者」遊びでも派手にするか!カラカラカラ。」
大笑いする直の姿を見て、「博打」の怖さを再認識した稀世に三朗がこっそり耳打ちをした。
「稀世さん、実は僕も「稀世さん」にへそくりの1万円を元本に準決勝まで全部賭けてたんです。稀世さんの賞金やスクープと比べたら微々たるものですけど3試合で91万8千円になりましたので、今度、良かったら一緒にお食事でもいかがですか?ぜひとも「還元」させてください。「フレンチ」でも「イタリアン」でも何でもいいですよ。稀世さんは「何」がお好きですか?」
と囁く三朗の言葉に(きゃー、それってサブちゃんと「デート」?こども食堂にお金注ぎ込んで喫茶店すら行かれへんって聞いてたのにそれが「フレンチ」でも「イタリアン」でもって…。「博打」にもええとこあるやんか!)とひとりで三朗とのデートを想像して真っ赤になっているところに、警備員の制服姿の夏子と陽菜が飛び込んできた。
「まだ、「マグロ祭」やってんの?この2週間、陽菜ちゃんとパンの耳と白ご飯の塩おむすびしか食べてへんから、恵んでください…。」
「私もなっちゃんと一緒で炭水化物と水以外口にしてへんのです…。どうか、お寿司を食べさせたってください…。」
と明らかにこの2週間で痩せた二人を直がからかった。
「あー、来るのが遅かったなぁ。もう、寿司飯があれへんねや。ざーんーねーんー!でもダイエットできてよかったやないか。カラカラカラ。」
「えー、お寿司あれへんの?でも、今の言い方やとマグロはあるっていうことやんなぁ?」
「うん、三朗兄さん、マグロだけでもあるんやったら食べさせて!」
と粘る二人に、直も同情したのか
「三朗、江戸前の「忍び巻き」やったら、できるんとちゃうんか?赤身はまだ残ってたやろ?いっちょ、頑張ってる夏子と陽菜の為に「思いっきり「効かせた」やつ」巻いたってくれや!わしも三朗の巻く「忍び巻き」好きやから久しぶりに食べたいわ。」
と助け船を出してくれた。
「えっ、赤身も海苔もありますから「忍び巻き」はできますけど、直さんはともかく、なっちゃんと陽菜ちゃんも「効かせて」しもてええんですか?」
と三朗が少し困った顔をして、直に尋ね返したが「赤身」は残っているとの言葉に夏子と陽菜の「マグロ」への欲望リミッターは完全に解除され、暴走した。
「三朗兄さん、食べる食べる食べるー!思いっきり「効かせ」やつを借金だらけの哀れな女子高校生コンビに食べさせたって!」
「江戸前の「忍び巻き」って言う名前だけで美味しいの決定やん!直さんも「好き」っていう奴、作って作って作ってー!」
意地汚く、三朗に抱きついて「たかる」様子を見て止めに入ろうとした稀世をまりあが諫めた。
「サブちゃん、「忍び巻き」できるんや。私も「全日女子」で東京に居ったときによう食べたなぁ。私と稀世と粋華にも巻いたってよ。私らは「普通」でええしな。」
の言葉に何の興味も示さなかった夏子と陽菜は直が言う「効いたやつ」を熱望した。
6人の前に並べられたのは、長さ15センチほどの「シャリ」の無い、大きく四角くカットされたマグロの赤身に海苔が巻かれただけの巻きずしのようなものを5センチほどの長さに3本ずつにカットしたものだった。
「さあ、「パリパリ」の海苔が「しっとり」する前に食べる方が「粋」ってなもんやぞ!」
と直が醤油をつけると大きな口を開けて「ひょい」、「ひょい」と2巻を口に放り込んで咀嚼すると、冷の日本酒でのどに流し込んで「旨い!」と叫んだ。
その様子を見て、稀世と粋華も直を真似て一口で食べると「きゃー、これ美味しいわ!」、「へー、マグロにこんな食べ方があったんや!こりゃ旨い!」と感嘆の声を上げた。
まりあも美味しそうにつまんでいるのを見て、夏子と陽菜も思いっきり口に放り込むと思い切り噛みしめ、味わった・
「!!!はひほへー!(※なにこれー)」
「ははい、ははい!ひふー!(※辛い、辛い、死ぬ―!)」
と二人が床に転がりもんどりうっていると、そこに現れた太田と坂井と載田が
「おっ、大将!「忍び巻き」やないの!なっちゃんと陽菜ちゃん、もんどりうってるから残りはもらうで。」
と3人は美味しそうに「忍び巻き」を口に放り込んだ。
「あー、新人の時に警視庁に出張したらいつも食ってた味やなぁ。切れ目を入れたマグロに思いっきり「わさび」をつめて、海苔が湿気る前に食べきるってか!大阪でこれが食えるとは思えへんかったわ!長井さん、美味しかったで。ごちそうさん!」
と坂井が三朗に「ご馳走様」のポーズをとった。
太田も一気に食べきると三朗に「礼」を言い、その横にいた稀世に載田の事を話した。
「ちなみに載田刑事は、大きい声では言われへんけど「5万円」元手で稀世ちゃんに賭けて450万円の「レクサスの最高級スポーツカーの中古車」を一括払いで買ったんやて!まあ、ここに居るほとんどのメンバーは多かれ少なかれ、3日目まで稀世ちゃんに儲けさせてもろたわな。
みんな直さんのライン連絡で決勝戦は賭けへんかったから「ロス」無しのはずや!まあ、「大人」の賭け方した奴はみんな美味しい思いをしたって訳やな。「博打」は欲を出し過ぎたら「負け」ってなもんやな。人の「格」が現れる「鏡」みたいなもんや。
今日、ここで「寄付」募ったらみんな気前良く「万券」を寄付してくれるんとちゃうか?カラカラカラ。」
えびす顔で話す、太田の足元を気まずそうに夏子と陽菜がこそこそと出ていくのを稀世たちは黙って見送った。三朗は追加の「忍び巻き」を巻いては、酒を片手に楽しんでいる商店会メンバーや高齢者参加者に振る舞った。
秋祭りは、佳境を迎え、皆のリクエストで稀世が「締め」の挨拶をすることになった。照れながらも、直、まりあに担ぎ上げられ、太田からは「ドキュメンタリーのエンディングで使うからきっちり「締め」てこい!」と言われ、リング上でマイクを握った。
「今日は、楽しいニコニコ商店街の秋祭りに参加させていただきありがとうございました。
こども食堂、市民サロンの人達が美味しいものをしっかりと食べていただけるようになって良かったです。配食にご協力していただいている飲食店様の自己負担が無くなってよかったです。
あと、皆さんのおかげで「UCWW」大会では決勝戦まで勝ち上がることができました。出場した私が言うのもおかしいかもしれませんが「博打」は「お小遣い」の範囲でしてくださいね。
「泡銭」はあくまで「泡銭」です。きちんと「汗」流して稼いだお金とは違います。「遊び」でする「博打」はいいと思いますけど、「博打」で「生活」はできないってことは忘れないでください。
「博打」に全てを賭けるのは「ダメ!絶対!」ですよ。
「「レスラー安稀世」は再び、リングシューズを脱ぎますが、ジャーナリストとしてこの「ニコニコ商店街」を応援し続けますので、今後ともお付き合いの程、よろしくお願いしまーす!」
とマイクのスイッチを切り、お辞儀をすると三朗がとび切りの笑顔で手拍子を打ち「稀世コール」を始めた。
西沢米穀特設リング会場の笑顔の参加者による「稀世コール」は数分、途切れることは無かった。
おしまい。
「おまけ」
はい、最後までお読みいただきました皆さん、本当にありがとうございました。
本作、これにて完結です!
いろんなご意見や体験談いただき大変助かりました。
この場をお借りして、改めて「御礼」申し上げます。
さて、今日も「ひいちゃん」さんが作ってくれたイラストでラストを飾らせていただきましょう!
事前に最終話読んでもらってたので「警備員」の「なつ&陽菜」を描いてくれました(笑)。
頑張って借金返しましょう!
確かに警備会社風ですね。
「忍び巻き」も「余命半年~」以来、久しぶりにサブちゃんに巻いてもらいました。
私も「めっちゃきかせたやつ」が大好きです(笑)!
毎度の「なっちゃんオチ」に「陽菜ちゃん」も巻き込んでごめんねー!
(。-人-。) ゴメンネ
さて、ラストは「ひいちゃん」さんが、「NEW稀世ちゃん③」が始まってすぐに送ってきてくれた
「勝手にハッピーエンド!稀世ちゃん&サブちゃん、ハッピー・メリー・ウエディング!」
なイラストです。
「あとがきのようなもの」のあとの「ぐだぐだ」で紹介させてもらおうかと思いましたけど、一番閲覧が上がる最終回で公開させてもらう事にしました!
もちろん、「NEW稀世ちゃん」シリーズの最終回では「稀世ちゃん」と「サブちゃん」はゴールインさせるつもりなんですけど、まだまだ「最終回」を書く予定はないので、ここで発表です!
Σ(゚∀゚ノ)ノキャー&(〃▽〃)ポッ
さすが「ひいちゃん」さんです!
「ラブラブ感」がたまりません!
あと、バックショットのお尻のラインもね(笑)。
さて、あとは「あとがきのようなもの」書いて「さいわら2nd」までの間は「ぐだぐだ」を適当に書いていくことになります。
皆さんから希望が出てた「スポーツ賭博解説」と「ぽよぽよ」さんにプロットとセリフ入りチャプターの提供した「地方競馬必勝法」の短篇小説に手を入れたものを公開する予定です。
(※まあ、今の時点で「あとがきのようなもの」すら書いてないんですけどね(笑)。ぼちぼち時間見つけて書いていきますね!)
いずれにしましても、10月6日から4週間、応援ありがとうございました!
「稀世ちゃん」はまた来年応援してあげてください!
よーろーひーこー!
ばいばいー!
(@^^)/~~~
会場での飲食が落ち着いたところで、リング上の42インチの液晶テレビに「UCWW大会」での稀世のファイトがDVDで流された。
まりあの講談師風解説を聞きながら、圧勝だった1回戦、反則男性レスラー相手で苦戦に苦戦を重ねた準々決勝、薄氷を踏む思いで勝利をつかんだ準決勝、そして最終的に大会中断で勝負がつかなかった決勝戦から、拳銃を持ったルメイとパイプ椅子ひとつで戦う稀世とルメイの「プロレス対ピストル」の「異種格闘戦(?)」のバトルまで、西沢米穀特設リング会場は稀世への声援で現場にいるような臨場感で完勝した初戦から「三つのさいきょう」までのセリフが再生された。
ふと、ニコニコ商店街のメンバーの一人が稀世に尋ねた。
「決勝戦を戦った、粋華ちゃんはどないなったん?足を撃たれて大丈夫やったんか?」
その質問に稀世もまりあも直も誰も答えられなかった。
「あの日以降、粋華と全く連絡が取られへんようになってしもて…。」
稀世がありのままに話すと、
「マフィアに報復でなんかされてへんかったらええねんけど…。」
「やっぱり主催者に逆らったってことで、WWEもクビになってしもて行き場があれへんのかも知れへんな。」
「もしかして、ケガの状態が悪くて、万一の…。」
と良くないことばかり、予想を並べられるのを聞いて、不安感でいっぱいになった稀世に
「おいおい、おっちゃん達、私が居れへんところで「死んだ」ことにせんといてやー!稀世―!直師匠にまりあさん!2週間ぶりです!もうすっかり、完治して帰ってきたで!WWEのスーパーディーバ「サイキッカーSUIKA」様の完全復活やでー!」
と元気な声でHカップの大きな胸を揺らした粋華が会場に現れた。
粋華が言うには、WWEから「マフィア」の「イリノイ・アウトフィット」がどう動くかわからないのでとりあえず身を隠せとの連絡があり、WWEスタッフと共にアメリカにこっそり帰国後、病院に雲隠れしていたとのことだった。その間に太ももの銃創はキレイに整形され、傷跡は殆ど目立たないようになったとのことだった。「その手術費用に「大会賞金」の1000万を充てたわ!アメリカは健康保険制度が貧弱やから日本と違って金がかかるわ!」と笑いながら語った。
「もう、なんで連絡くれへんかったんよ!めちゃくちゃ心配してたんやで!ぷんぷん!」
と怒る稀世に
「いや、万一の場合にみんなを巻き込みたくなかったんや。すまんすまん!幸い、WWEも正直に事情を話したらクビにならんで済んだわ。いろいろと心配かけたな。」
素直に謝る粋華をそれ以上責めることもできず、稀世も素直に粋華の無事を喜び、互いに「ぎゅ」っとハグをかわした。
ハグが終わると、粋華はふと会場内を見渡し、稀世に尋ねた。
「そういえば、今日はあの騒がしい女子高生コンビのあほの夏子と陽菜の姿が見えへんけどあいつらどないしたんや?無料飯があるところには必ず顔を出しとったやないか?」
「うん、大会の後、私もなっちゃんと陽菜ちゃんの顔見てへんねん。あの二人こそどないしてるんやろな…。唯ちゃん、なっちゃんと陽菜ちゃんのことなんか聞いてへんの?」
稀世は近くにいた唯に質問をふった。
唯は少し困った顔して、直の顔を見た。直は黙って顎をしゃくった。
「あの…、夏子先輩と陽菜先輩は毎日アルバイトで忙しいんです…。」
とだけ話すと黙り込んでしまった。
「えっ、アルバイトって?なっちゃんと陽菜ちゃん、UCWWで120万円くらい稼いだんと違った?何故、アルバイトなんか…?」
と稀世が唯に尋ねると、直が思いっきり大声で笑った。
「あいつら、「欲の皮」を突っ張らせて、決勝の日も「賭け」を続けよったんや。例の「ジャンプアップ」の罠に引っかかって、120万を吐き出しただけやなく、熱くなりなりすぎて自分らの「虎の子貯金」どころかキャッシングにまで手を出して、二人とも20万円の借金持ちや!
この25日が支払日やから、駅の向こうの新築マンションの工事現場で警備員のバイトしてるわ。
自業自得といえばそれまでやけど、「博打」の怖さを改めて知るいい機会にはなったな。普通の女子高生がたった4日で「破産」の目に遭うんやからなぁ…。まあ、今回は三朗の店に入った「空き巣狙い」みたいに「闇金」まで絡まへんかっただけましや。あの二人にはええ薬になったことやろ!
まあ、わしは稀世ちゃんと粋華のおかげでほくほくやけどな。元本は各々2万。わしは二人を全面的に信じてたから、100%全賭けや!稀世ちゃんは9倍、6倍、1.7倍で183万6千円。粋華は、WWEチャンピオンってことで厳しいオッズやったけど、2倍、1.8倍、2.6倍でコツコツ増やして18万7200円で合わせて200万強や!今度、一緒に有馬温泉行って、イケメンホストを集めて「男芸者」遊びでも派手にするか!カラカラカラ。」
大笑いする直の姿を見て、「博打」の怖さを再認識した稀世に三朗がこっそり耳打ちをした。
「稀世さん、実は僕も「稀世さん」にへそくりの1万円を元本に準決勝まで全部賭けてたんです。稀世さんの賞金やスクープと比べたら微々たるものですけど3試合で91万8千円になりましたので、今度、良かったら一緒にお食事でもいかがですか?ぜひとも「還元」させてください。「フレンチ」でも「イタリアン」でも何でもいいですよ。稀世さんは「何」がお好きですか?」
と囁く三朗の言葉に(きゃー、それってサブちゃんと「デート」?こども食堂にお金注ぎ込んで喫茶店すら行かれへんって聞いてたのにそれが「フレンチ」でも「イタリアン」でもって…。「博打」にもええとこあるやんか!)とひとりで三朗とのデートを想像して真っ赤になっているところに、警備員の制服姿の夏子と陽菜が飛び込んできた。
「まだ、「マグロ祭」やってんの?この2週間、陽菜ちゃんとパンの耳と白ご飯の塩おむすびしか食べてへんから、恵んでください…。」
「私もなっちゃんと一緒で炭水化物と水以外口にしてへんのです…。どうか、お寿司を食べさせたってください…。」
と明らかにこの2週間で痩せた二人を直がからかった。
「あー、来るのが遅かったなぁ。もう、寿司飯があれへんねや。ざーんーねーんー!でもダイエットできてよかったやないか。カラカラカラ。」
「えー、お寿司あれへんの?でも、今の言い方やとマグロはあるっていうことやんなぁ?」
「うん、三朗兄さん、マグロだけでもあるんやったら食べさせて!」
と粘る二人に、直も同情したのか
「三朗、江戸前の「忍び巻き」やったら、できるんとちゃうんか?赤身はまだ残ってたやろ?いっちょ、頑張ってる夏子と陽菜の為に「思いっきり「効かせた」やつ」巻いたってくれや!わしも三朗の巻く「忍び巻き」好きやから久しぶりに食べたいわ。」
と助け船を出してくれた。
「えっ、赤身も海苔もありますから「忍び巻き」はできますけど、直さんはともかく、なっちゃんと陽菜ちゃんも「効かせて」しもてええんですか?」
と三朗が少し困った顔をして、直に尋ね返したが「赤身」は残っているとの言葉に夏子と陽菜の「マグロ」への欲望リミッターは完全に解除され、暴走した。
「三朗兄さん、食べる食べる食べるー!思いっきり「効かせ」やつを借金だらけの哀れな女子高校生コンビに食べさせたって!」
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意地汚く、三朗に抱きついて「たかる」様子を見て止めに入ろうとした稀世をまりあが諫めた。
「サブちゃん、「忍び巻き」できるんや。私も「全日女子」で東京に居ったときによう食べたなぁ。私と稀世と粋華にも巻いたってよ。私らは「普通」でええしな。」
の言葉に何の興味も示さなかった夏子と陽菜は直が言う「効いたやつ」を熱望した。
6人の前に並べられたのは、長さ15センチほどの「シャリ」の無い、大きく四角くカットされたマグロの赤身に海苔が巻かれただけの巻きずしのようなものを5センチほどの長さに3本ずつにカットしたものだった。
「さあ、「パリパリ」の海苔が「しっとり」する前に食べる方が「粋」ってなもんやぞ!」
と直が醤油をつけると大きな口を開けて「ひょい」、「ひょい」と2巻を口に放り込んで咀嚼すると、冷の日本酒でのどに流し込んで「旨い!」と叫んだ。
その様子を見て、稀世と粋華も直を真似て一口で食べると「きゃー、これ美味しいわ!」、「へー、マグロにこんな食べ方があったんや!こりゃ旨い!」と感嘆の声を上げた。
まりあも美味しそうにつまんでいるのを見て、夏子と陽菜も思いっきり口に放り込むと思い切り噛みしめ、味わった・
「!!!はひほへー!(※なにこれー)」
「ははい、ははい!ひふー!(※辛い、辛い、死ぬ―!)」
と二人が床に転がりもんどりうっていると、そこに現れた太田と坂井と載田が
「おっ、大将!「忍び巻き」やないの!なっちゃんと陽菜ちゃん、もんどりうってるから残りはもらうで。」
と3人は美味しそうに「忍び巻き」を口に放り込んだ。
「あー、新人の時に警視庁に出張したらいつも食ってた味やなぁ。切れ目を入れたマグロに思いっきり「わさび」をつめて、海苔が湿気る前に食べきるってか!大阪でこれが食えるとは思えへんかったわ!長井さん、美味しかったで。ごちそうさん!」
と坂井が三朗に「ご馳走様」のポーズをとった。
太田も一気に食べきると三朗に「礼」を言い、その横にいた稀世に載田の事を話した。
「ちなみに載田刑事は、大きい声では言われへんけど「5万円」元手で稀世ちゃんに賭けて450万円の「レクサスの最高級スポーツカーの中古車」を一括払いで買ったんやて!まあ、ここに居るほとんどのメンバーは多かれ少なかれ、3日目まで稀世ちゃんに儲けさせてもろたわな。
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えびす顔で話す、太田の足元を気まずそうに夏子と陽菜がこそこそと出ていくのを稀世たちは黙って見送った。三朗は追加の「忍び巻き」を巻いては、酒を片手に楽しんでいる商店会メンバーや高齢者参加者に振る舞った。
秋祭りは、佳境を迎え、皆のリクエストで稀世が「締め」の挨拶をすることになった。照れながらも、直、まりあに担ぎ上げられ、太田からは「ドキュメンタリーのエンディングで使うからきっちり「締め」てこい!」と言われ、リング上でマイクを握った。
「今日は、楽しいニコニコ商店街の秋祭りに参加させていただきありがとうございました。
こども食堂、市民サロンの人達が美味しいものをしっかりと食べていただけるようになって良かったです。配食にご協力していただいている飲食店様の自己負担が無くなってよかったです。
あと、皆さんのおかげで「UCWW」大会では決勝戦まで勝ち上がることができました。出場した私が言うのもおかしいかもしれませんが「博打」は「お小遣い」の範囲でしてくださいね。
「泡銭」はあくまで「泡銭」です。きちんと「汗」流して稼いだお金とは違います。「遊び」でする「博打」はいいと思いますけど、「博打」で「生活」はできないってことは忘れないでください。
「博打」に全てを賭けるのは「ダメ!絶対!」ですよ。
「「レスラー安稀世」は再び、リングシューズを脱ぎますが、ジャーナリストとしてこの「ニコニコ商店街」を応援し続けますので、今後ともお付き合いの程、よろしくお願いしまーす!」
とマイクのスイッチを切り、お辞儀をすると三朗がとび切りの笑顔で手拍子を打ち「稀世コール」を始めた。
西沢米穀特設リング会場の笑顔の参加者による「稀世コール」は数分、途切れることは無かった。
おしまい。
「おまけ」
はい、最後までお読みいただきました皆さん、本当にありがとうございました。
本作、これにて完結です!
いろんなご意見や体験談いただき大変助かりました。
この場をお借りして、改めて「御礼」申し上げます。
さて、今日も「ひいちゃん」さんが作ってくれたイラストでラストを飾らせていただきましょう!
事前に最終話読んでもらってたので「警備員」の「なつ&陽菜」を描いてくれました(笑)。
頑張って借金返しましょう!
確かに警備会社風ですね。
「忍び巻き」も「余命半年~」以来、久しぶりにサブちゃんに巻いてもらいました。
私も「めっちゃきかせたやつ」が大好きです(笑)!
毎度の「なっちゃんオチ」に「陽菜ちゃん」も巻き込んでごめんねー!
(。-人-。) ゴメンネ
さて、ラストは「ひいちゃん」さんが、「NEW稀世ちゃん③」が始まってすぐに送ってきてくれた
「勝手にハッピーエンド!稀世ちゃん&サブちゃん、ハッピー・メリー・ウエディング!」
なイラストです。
「あとがきのようなもの」のあとの「ぐだぐだ」で紹介させてもらおうかと思いましたけど、一番閲覧が上がる最終回で公開させてもらう事にしました!
もちろん、「NEW稀世ちゃん」シリーズの最終回では「稀世ちゃん」と「サブちゃん」はゴールインさせるつもりなんですけど、まだまだ「最終回」を書く予定はないので、ここで発表です!
Σ(゚∀゚ノ)ノキャー&(〃▽〃)ポッ
さすが「ひいちゃん」さんです!
「ラブラブ感」がたまりません!
あと、バックショットのお尻のラインもね(笑)。
さて、あとは「あとがきのようなもの」書いて「さいわら2nd」までの間は「ぐだぐだ」を適当に書いていくことになります。
皆さんから希望が出てた「スポーツ賭博解説」と「ぽよぽよ」さんにプロットとセリフ入りチャプターの提供した「地方競馬必勝法」の短篇小説に手を入れたものを公開する予定です。
(※まあ、今の時点で「あとがきのようなもの」すら書いてないんですけどね(笑)。ぼちぼち時間見つけて書いていきますね!)
いずれにしましても、10月6日から4週間、応援ありがとうございました!
「稀世ちゃん」はまた来年応援してあげてください!
よーろーひーこー!
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今作は「48チャプター」、「400ぺージ」を超える長編になりますので、ゆるーくお付き合いください!
公開後は一応、いつも通り毎朝6時の毎日更新の予定です!
それでは、月またぎになりますが、稀世ちゃんたちと一緒に謎解きの取材ツアーにご一緒ください!
よ~ろ~ひ~こ~!
(⋈◍>◡<◍)。✧💖

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
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私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
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慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
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翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
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優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
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「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

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