『偽りのチャンピオン~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.3』

M‐赤井翼

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「3つの「さいきょう」」

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「3つの「さいきょう」」

3本目の勝負は一進一退で互いの出した技を全部受けては、次に出した技を相手に受けられる肉弾戦となった。互いに出す技は全て受けるストロングスタイルのファイトに会場は大いに湧いた。
開始55分で時間切れ引き分けの場合、3分の休憩を入れてサドンデスの1本勝負になると特別ルールが発表され会場は更に大きく盛り上がった。
結果的に類稀たぐいまれな猛女同士の熱戦は60分で勝負はつかず、それまでに勝負がつくとベットしていた掛け金は全て主催者に回収されたが、勝負に熱中した観衆は稀世と粋華の熱戦の行方に期待していた。

3分のインターバルが取られ、互いのコーナーでミネラルウォーターを口にし、休憩に入っていた稀世と粋華の視界にサムアップして笑顔で駆け込んでくる直の姿が入ってきた。
延長戦開始のゴングが鳴るとともに、稀世と粋華はリング中央で握手を交わすと稀世が粋華をいきなり正面ロープにふった。
ロープから戻ってきた粋華の大きなHカップの胸に強烈な稀世のウエスタンラリアットが決まり、吹っ飛ばされた粋華は勢い余ってトップロープを越えリング下正面に転げ落ちた。

稀世は反対側のロープに走り、反動をつけるとリング下でふらふらと立ち上がった粋華にトップロープ越しの横っ飛びブランチャーを繰り出した。
稀世の渾身の大技「フライングボディーアタック」を受けた粋華と一緒にリング下と客席を分ける鉄柵ごとリングサイド正面席最前列で観戦していたルメイの席の上に稀世と粋華は倒れ込んだ。
場外乱闘を期待した観客たちが次に目にしたのは、稀世と粋華の二人に両脇を抱えられ、リングに引き上げられるルメイの姿だった。

何が起こっているのかわからず混乱したルメイがリング上から逃げようとしたところを粋華の小手返しで投げられ、起き上がったところをルメイの正面から稀世が「バク宙」で相手の顎を蹴り上げるタイガーマスクの得意技の一つである「サマーソルトキック」で脳震盪を起こさせた。
稀世はルメイの背後に回り、チキンウイングフェイスロックをかけ、数秒後には意識を刈り取った。
レフリーはどうしていいのかわからずリング上で右往左往するだけだった。

 会場の観客も何が起きているのか理解できずに混乱し、大きな喧噪に包まれる中、リング上部の大型4面モニターに突然「いかつい・・・・」白人の男が映し出された。その男の背後に初代「タイガーマスク」レプリカのプロレスマスクを被った直が映り込んでいたのを稀世と粋華は確認した。
男は何やら英語で話しているが会場にいるものにはほとんど何を語っているのか理解できないでいる。

粋華が解説席に下りてきてマイクを取るとモニターに映し出された男の証言を日本語で通訳し始めた。
「我々は、この大会を利用して「不正ブックメイク活動」をしてきました。それはアメリカ、ヨーロッパ、中国他、世界中で行っています。
背景にはアメリカンマフィアの存在があります。「セオドア・ルメイ・エンタープライズ社」は表向きはアメリカ政府及び州政府の公認を受けたブックメーカーですが、その実質的な支配者は巨大アメリカンマフィアの一つの「イリノイ・アウトフィット」です。
その末端、及び連携先としては「シシリアンマフィア」や「メキシカンファミリー」、中国の「スネークヘッド」、日本の有力「反社」等の海外マフィアや犯罪集団まで「闇賭博」による資金獲得、「ロンダリング」等の資金洗浄に使われています。
数年後、オープンされる大阪カジノの利権を闇の社会にリンクさせるために「セオドア・ルメイ」と共にこの大会でも数多くの不正を働きました。
その真実をこれから述べさせてもらいます…。」
謎の男の告白は5分以上続いた。
会場の外からは複数のパトカーのサイレンが響いてきた。

サイレンの音が近づきルメイはリング上で意識を取り戻し、あらかじめ装着していたイヤホンマイクで現在何が起こっているのかを知った。通信は裏ブックメーカーの「おおもと」のマフィア幹部からのものだった。
ルメイは立ち上がると、リング下でマイクを持った粋華に向けジャケットの内ポケットに入れていた拳銃を構えた。
「ユー・ダーイ・マザーファカー!」
とアメリカでの禁句を叫ぶと拳銃の引き金を引いた。

 「パン!パン!」と乾いた銃声が「エディオンアリーナ大阪」の会場に響き、一瞬の静寂が襲った。
粋華の白い右太ももから血が噴き出し、その様子がリング上の大型モニターに映し出されると、観客から悲鳴が上がり、会場はパニックになった。
リングサイドの特設アリーナのパイプ椅子席の客は我先にと椅子をなぎ倒し、会場後方へと逃げだした。人々は倒れたパイプ椅子に足を取られ転倒し、各所で将棋倒しが起き、阿鼻叫喚の悲鳴が上がった。

パニックを無視してルメイは視線をリング上でロープ越しに足から流血する粋華に「大丈夫か!」と声をかける稀世に向けると、銃口を向けた。それに気づいた粋華が
「稀世!これ使え!」
と叫び、リング下から粋華がパイプ椅子を稀世に投げ入れ、稀世はしっかりと両腕で受け取った。
 ルメイの髪は逆立ち、怒りに紅潮した顔を稀世に向けると叫んだ。
「貴様も地獄に道連れにしてやる。おとなしくいうことを聞いていれば儲けさせてやったものを!
お前らプロレスラーは「八百長」無しには何もできない「ペテン師」じゃないか!れっきとした「殺人凶器」の拳銃を前にそんなパイプ椅子ひとつで何ができるって言うんだ!今からお前が死ぬ以外のシナリオは無いぞ!」

その一言で稀世に「怒りの電流」が流れた。
「なにっ、「八百長」やと!プロレスを舐めんなよ!相手がどんなもんを持っていようが挑まれたらプロレスラーは逃げたらあかんねや。
それに、世界最強の凶器はそんなちゃちな銃やあれへん!今から私が、ほんまの「最強」で「最凶」で「最恐」の「凶器」っていうのが何なのかを教えたるわ!」
ルメイと正対して右手のパイプ椅子を振り上げた稀世が言い放った。

 ルメイはパイプ椅子を手にした稀世の言葉に噴き出し、大笑いした。
「ぎゃははは!強がるのもいい加減にしろ。本当は拳銃にビビって小便漏らしそうになってるんだろ!「八百長」というシナリオのないこの状況でお前に何ができるって言うんだ!俺はどこに逃げてもマフィアに消されるだけだ。この際、お前も道連れだ!死ね!」
 稀世に向けた拳銃の引き金を絞ろうとした瞬間、電光一閃、ルメイの視野にパイプ椅子を持つ稀世の残像だけを残し、「ガコッ!」っという音と共に稀世の持つパイプ椅子が拳銃を跳ね上げ宙に舞った。
 ルメイが瞬きするかしないかの刹那に稀世はルメイに向けて踏み込んだ。
「プロレスを汚すやつは許さへーん!でりゃぁぁぁぁ!」

 「どかっ!」、「ばきっ!」、「ぼきっ!」、「ごきゅっ!」四度の鈍い音がコンマ数秒の間に響き、四肢を砕かれルメイの手足は良からぬ方向を向きタコのようにリングに仰向けに倒れ込んだ。
「あの世で天国の「プロレスの神様「カール・ゴッチ」先生」にプロレスを馬鹿にしたことを詫びてこい!」
と稀世はパイプ椅子をルメイの頭に振り下ろした。
「稀世さんダメですー!」
三朗の叫び声がリング上に響いたと同時に坂井と載田がリング上に飛び込んできた。



「おまけ」
3度目の「3つのさいきょう」いかがでしたか?
沢山の「旧ドク」の方からストーリー予想をいただいてたのですが、「ルメイがやられる」までは多くの方が予想されてましたけど、「ドンピシャ」っていうものは無く、「ほっ」っとしています(笑)。

さて、「赤井基調のリングコスチュームの黒髪ショートカットのパイプ椅子を振り上げた怒りの表情の女子プロレスラー」みたいなプロンプトでチャレンジしたんですけど

「パイプ椅子」

は出てきませんでした(´・ω・`)ショボーン。

以前の「閑話」でアップした「ホラー風」の「怒った稀世ちゃん」からいくらか落ち着いた「怒りの表情の稀世ちゃん」が描けましたので見てやってください!









まあ、こんなところでしょうね!

前回はコレ





でしたんでねー(笑)。

「稀世ちゃんに謝れ」レベルのイラストでした(笑)。

では、UCWW大会はお終い!
後は「謎解き回」をお楽しみください!
最後までお付き合いいただけると嬉しいです!

ばいばーい!


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