『偽りのチャンピオン~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.3』

M‐赤井翼

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「決勝戦開始」

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「決勝戦開始」

 11月10日、ついに決勝の日を迎えた。UCWW運営の「セオドア・ルメイ・エンタープライズ」のCEO「セオドア・ルメイ」も会場に来ており、稀世の控室に来るとの連絡が秘書から入っていた。
 大きくとられた稀世の控室には、今までにないくらいの大きな花束、花カゴが数多く寄せられた。中には、送り主が外国人名のものも多数並んでいる。
「わー、稀世ちゃんの人気もなかなかのもんやな。これだけの花が送られてきてるんやったら、凄い「イケメン」で「金持ち」で「やさしいドM」の男も居るかもしれへんぞ!ケラケラケラ。」
直が大笑いしていると、ドアがノックされた。

 まりあがドアを開けると、ルメイが抱えるような大きさの真っ赤なバラの花を小さな紫の花をたくさんつけた「ブルーベル」で囲った花束を両腕で抱いて入ってきた。
「稀世のリングコスチュームのイメージカラーに合わせて、赤いバラを100本!それに「ヤマトナデシコ・・・・・・・」になった稀世に似合うよう「奥ゆかしさ」の花言葉を持つ「ブルーベル」の花束のプレゼントです。
 本来、ブルーベルは夏の花で日本では9月くらいまでの花なんですけど、稀世の為に「フロリダ」から急遽取り寄せました。今日の試合に間に合ってよかったです。
 どうぞ受け取ってください。これで、稀世の「これから」の人生はこの花束のように「バラ色」のものになるでしょう。
 あと、これ「日本語」で書いてますのであとで必ず「ひとり」で読んでくださいね。」
と紙封筒をブランド物のジャケットの内ポケットから取り出して、花束と一緒に稀世に渡し、ウインクして見せた。

 「はい、ルメイさんの期待に応えられるよう頑張ります。知っての通り、粋華とは古くからの付き合いですから大丈夫です。任せておいてください。」
と左腕で花束と封筒を持つと空いた右手で固く握手を交わした。
「今日の試合が稀世のスーパースターへの第1歩です。試合開始まであと1時間。しっかりとケガしないようウォーミングアップお願いしますね。ちゃお!」
とウインクしてルメイは控室を出ていった。

「ちょっと、私、トイレに行ってくるわ。」
稀世は花束をまりあに預けると、封筒をジャージのポケットに突っ込み、控室を出ていった。
 稀世の姿が見えなくなると直が苦虫を噛み潰したような顔をして吐き捨てた。
「なにが「ブルーベル」で「奥ゆかしさ」やねん。「ブルーベル」の日本での名称は「糸紗参いとしゃじん」で花言葉は「服従・・」とか「従順・・」っていう意味やないかい!」

 そこに夏子と陽菜が「おじゃましまーす!」と飛び込んできた。
「あれ、稀世姉さんは?主役が居れへん控室ってどうなん?」
と夏子が尋ねると、まりあがトイレに行ったことを伝えた。
「ぎょへー、差し入れ弁当食べたんとちゃうでしょうね!あー、思い出しただけでお腹が痛くなるわ…。」
 お腹を抱える陽菜に、直が悪ふざけして、差し入れできている高級寿司桶を二人に差し出した。
「今日は大間産「クロマグロづくし握り」の「特上」が来てるけど食っていくか?ミナミで食えば1万円は下らへん逸品やぞ!カラカラカラ。」

 そこに稀世が帰ってきた。
「あっ、なっちゃんに陽菜ちゃん。あんたらニコニコ商店街のグループラインに入ってないから伝えられてなかったんやけど、今日は一切「賭け」行為は禁止やで!訳は…。」
と語りかける稀世の言葉に耳を貸すことなく
「頑張ってくださいねー!3階席から応援してまーす!」
「今日も勝つと信じてますよー!ぱにゃにゃんだー!」
と二人は走って控室を出ていった。

 大会会場では、ブックメーカーの賭けの方法に新たな賭け方が加わったことが説明されていた。
 一番変わったのは、昨日の準決勝までは単純に「試合開始5分前」までの「勝ち負け」だけの「賭け」だったのが、より細かい「賭け方」ができるようになり、試合中にも次々と新たな賭け項目がアップされることが解説されていた。
 スマホから簡単に申し込みできるシステムアプリが紹介され、その操作方法のデモンストレーションがモニターで流されていた。
 3階の応援席で夏子と陽菜も周りの観客と同じように真剣な顔で説明モニターを目で追っていた。
「ふーん、「開始五分以内に稀世姉さんが勝つ」に「イエス」か「ノー」で申し込めたり、次の一本はどちらが「獲る」かとか、その「1本」が「フォール」なのか「リングアウト」なのか「反則」なのかとかいろんな賭けができるようになるんやな。陽菜ちゃん、理解できた?」
「うん、これやったら最後まで飽きることなく試合に集中できるし、応援にも力が入るよな!なっちゃん、200万円目標に頑張って行こな!」

 その様子を控室の液晶テレビで見ていた直が再度「ニコニコ商店街メンバー」に
「絶対、今日は「賭け」禁止!稀世ちゃんの応援に「全集中」するように!」とメッセージを送りなおした後、太田に向かって呟いた。
「こりゃえげつないな。このやり方やったら主催者側は回収し放題やな。まさに絶対的「親有利」の「親対客」や。「還元率」も何もあれへんから熱くなった奴はケツの毛までむしられるでなぁ!」
 頷く太田の横で事態をしっかりと理解できていない三朗は、ディレクターチェアでルメイから受け取ったレポート用紙を繰り返し読み返す稀世に
「大丈夫ですか?今日の相手は、粋華さんなんで一昨日みたいなことにはならないとは思いますけど、女子では珍しい60分3本勝負の長丁場ですよね。
 ケガだけはしないように頑張ってくださいね。僕は稀世さんの勝利を誰よりも祈ってますからね。」
と優しく囁くと稀世はレポート用紙をポケットに突っ込むと笑顔で返した。
「ありがとう。サブちゃんがそう言ってくれると「勇気」が湧いてくるわ。精一杯私にできるベストを尽くしてくるわな。」

 「あと15分で入場です。サイキッカーSUIKA選手、安稀世選手、準備の方はよろしいでしょうか。まもなく、入場です。準備をお急ぎください。」
館内放送に急かされるようにディレクターチェアから立ち上がった稀世は、その場でヒンズースクワットを繰り返し気合を入れた。
「よっしゃ、身体は軽い!今日は思いっきり暴れて来たんで!太田さん、しっかりと頼みますよ!」
「任せとけ!今日は「メディアクリエイトうち」のスタッフも総動員で来てるし、坂井と載田君もここに来てるからええとこ見せたってくれよ!」
 


「おまけ」
今日は「リンコス稀世ちゃん」!
本当は「粋華ちゃん」も一緒にアップしたかったんですけど、今回の作画では
「ちっぱい粋華ちゃん」しか生成されないΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)!

うーん、Aiくんも気まぐれです( ̄▽ ̄;)。

と言う事で、「稀世ちゃん」のみのアップになりまーす!







こんな感じで、残り7話もよーろーひーこー!
(@^^)/~~~
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