『まごころ除霊師JK心亜ちゃんと大きな霊蔵庫』

M‐赤井翼

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㉙「エピローグ 1年半後…。これからも「まごころ除霊」は大繁盛!」

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㉙「エピローグ 1年半後…。これからも「まごころ除霊」は大繁盛!」

 1年半後…。例年以上に早く開花した東京の桜はほぼ散り、緑の葉の桜の樹が街道沿いに並ぶ4月1日の午前8時40分、桜田門駅から西へ「国会前」交差点へ向かう東京都千代田区霞が関2丁目1番地の官庁街の歩道に新しいスーツ姿の女の子の姿があった。
あからさまに緊張した面持ちで周りを歩く、ダークカラースーツ姿の新人社会人のなかで、太い茶色の数珠を左の手首に巻き、肩掛けの黒いバッグにぶら下がる狐のミニマスコットが目立っている女の子だった。
  
「あぁ、今日から私も「特別国家公務員」やねんなぁ…。なんだかんだでお母さんが選んだ「この道」を選んでしもたんやな。」
独り言を呟きながら、女の子は中央合同庁舎第3館の門の前で大きく深呼吸をした。入り口前には立て看板に筆文字で「令和8年度 国土交通省入省式 午後12時10分より 10階共同大会議室」と張り出されている。
「おはようございまーす!」と入り口に立つ警備員に挨拶をするとネームタグを取り出し、2次元バーコードを読ませると同時に、カメラの前で顔認証を行うとグリーンの「OK」の文字と、「御祓井心亜おはらい・ここあ」の文字がモニターに表示された。

多くの新人が4大卒の国土交通省において、20歳の誕生日直前の心亜はひときわ幼く見える。ほとんどの新人の男女が入省オリエンテーション会場のある上階に向かうエレベーターに乗り込む中、心亜はスマホを開き自分のオリエンテーション会場を確認した。
「午前9時 地下2階「心霊事故防止課」に出勤の事」のメールを確認し、一人、下階行きのエレベーターに乗った。地下2階でエレベーターを降り、この階のフロア図を確認すると一番奥に目的の部署はあった。

 コンコンコン、「失礼します。本日入省の「御祓井心亜」です。」と声をかけ、ドアを開けると既に応接のソファーに若い男の子が座っていた。入り口に近い席の年配の男性が心亜に声をかけた。
「おっ、茉莉花ちゃんの娘さんの「心亜ちゃん」だね。ほほー、若いころの茉莉花ちゃんにそっくりだ。ようこそ、「国土交通省 心霊事故防止課」へ。今年は、2名の新人ってことで嬉しいねえぇ。うちはいわゆる「特別職」なんで、頭が良ければ入れるって部署じゃないからねぇ…。久しぶりの新スタッフだよ。もう少ししたら課長も出勤してくるから、もうしばらく2人で待っててね。」
と心亜を応接席に招き入れた。ソファーに座っていた細面でイケメンの男の子が立ち上がり心亜に挨拶をした。

 「初めまして、忌部護いんべ・まもる、22歳です。越前忌部系裏陰陽師で同じくこの部署に勤める父の元で修行をしてきました。これからデビューです。御祓井さんは、高校生の頃から多数の「除霊の実績」があると聞いています。いろいろと教えてくださいね。」
と心亜の手を取った。
 はたと、護が心亜の背後に視線を向けると、今や「背後霊」となった「遊穂則泰」と「槌鋸居代」と目が合った。居代は微笑んでいるが、則泰の眼は笑っていない。
 護は慌てて、心亜の両手を離すと
「すみません。初対面で馴れ馴れしすぎましたね。守護霊さん、あんまり睨まないでください。」
と謝った。

 「ふーん、忌部さんは後ろの二人が見えるんやね。二人とも、一昨年の「除霊」の後、私のサポートしてくれるようになったんよ。まだまだ私が半人前やから手伝ってもらってるねん。他にも、いろんな「霊」に助けてもらいつつの「除霊」しかできへんのですよ。忌部さんのようにきちんとした教育を受けて来てるわけやないから、こちらこそ「教えてください」ですよ。」
と心亜も丁寧に頭を下げた。
 すると「課長」と書かれたネームタグの「吉備椎譲史きびしい・じょうし」がやってきた。

 「おっ、早速仲良くやってるんやな。よろしいよろしい。うちの部署は少数精鋭で連携を大切にしていかないと回らないからな。2人とも「即戦力」として期待しているからこれからよろしく頼むよ。
 まあ、12時10分からの入省式と12時半からの「大臣の訓示」以外は、これといった仕事は無いから、東京で行ってみたいところがあれば、今日一日は「お客さん」扱いで案内してあげるよ。」
 吉備椎が優しく2人の新人に声をかけると護は遠慮なしに食いついた。
「本当ですか?それなら「千駄ヶ谷トンネル」と「将門の首塚」と噂の「三軒茶屋」の「芸能プロダクション」の入ってるビルに行ってみたいです。」
「そうか、忌部は今の東京の定番心霊スポットときたか。まあ、一度行ってみておくには良いところだな。御祓井はどうだ?」

 心亜は尋ねられて、少し考えた。
「私は、「靖国神社」と「東京都慰霊堂」です。どちらも多くの方々にお参りされて「霊」達も恵まれているとは思います。私の仲良しの「霊」で人探しのプロがいるんですけど、彼女が言うには「九段下の桜」で仲間と再会できてない「霊」や、「東京都慰霊堂」でも「関東大震災」や「東京大空襲」で別れたままになった家族や親子と再会できてない「霊」が残っているそうなんです。他にも「伝え残し」があって「思念」を送ってるだけなのに、それを「霊障」と勘違いされる場合も多いと聞いてます。ちょっと、それは可哀そうですよね。
 そんな「霊」に少しでも力になれればと思いますので、一度、訪れてみたいと思ってます。ダメでしょうか?」

 吉備椎は腕を組んで少し考えこんで、呟いた。
「御祓井が「まごころ除霊師」って呼ばれてる意味がよくわかったよ。「単なる除霊」でなく「霊」の「心の安寧」を伴っての「成仏」って考えなんだな。「成仏」させた「霊」達と「良い関係」を保っている旨も聞いている。そんな「除霊師」がいてもいいのかもしれないな。
 確かに、「霊」も何かをこの世の人間に伝えたくてメッセージを送ってると俺も思う。参拝者が「霊」が「参拝者」に送った「メッセージ」が「フラッシュバック」的に「恐怖」を与えてしまう場合もある。それを解決できれば、「霊」にとっても「参拝者」とってもいいことだもんな。よし、昼からは「現地研修」扱いで、各々の行きたいところをまわってみるか。じゃあ、今から2時間はここの仕事のオリエンテーションだ。」

 午後8時半、御祓井家に戻った心亜を「霊」達が出迎えた。今ではすっかり「良い霊」になり「恨みを引きずることは無意味だ」と悩める「霊」を説得してくれるようになった「浦見賀鋸留」も皆と一緒に微笑んでいる。
 茉莉花が、「ところで東京土産は何を買ってきたんや?みんな期待して待ってたんやで!」と心亜に問うと、大きな紙袋の中身をテーブルに広げて声をあげた。

「今回のおみやげは「お初物」ばっかりやで!「東京カンパネラ」の「ショコラ」に、「オードリー」の「グレイシア」、「グレープストーン」の「マウントバームしっかり芽」もあるで。「虎屋」の「羊羹夜の梅」、「船橋屋」の「くずもちプリン」と選り取り見取りやから「虎吉のおっちゃん」から「浦見賀」さんとこの赤ちゃんまでみんな楽しめるで。「菓子」ちゃんには「くずもちプリン」再現してもらいたいな。「中」ちゃんにはクロちゃんの大丈夫なもんもあるし食べさせたってや。
 ガイルさんも健逐さんもいっぱい食べていってや。みんなは「仕事仲間」って認めてもらえたから、「実体化」の「お札」もようさんもらってきてるからな。「虎吉」のおっちゃんには、もうちょっと待ってもろて私が20歳になったら「お酒」も買って来れるようになるしな。
 私の社会人1年目をみんなで応援したってね。基本スタッフ登録してる「則泰」くん、「居代」さん、「多世」ちゃんはもちろん、「お母さん」も「どん兵衛」もいろいろと助けてね。「迷える霊ゼロ」を目指してみんなで頑張ろうな!これからもよろしくお願いしまーす!」

 皆で「実体化のお札」を貼ると、おみやげを分け合った。今後の心亜の動きについてワイワイと話し合っていると、心亜のスマホが鳴った。「心霊事故防止課」からのメールだった。
「がおっ!早速明日から仕事やわ。なになに、雨が降ると阪奈道路上に現れて、他のバイク乗りをビビらせて転倒させる事故が続いてるねんて…。その元となるスリップ事故で死んだライダーの「霊」を「成仏」させて欲しいってさ。
 明日の大阪の夜の天気予報は「雨」やって。まあ、特別国家公務員になっての初仕事や。しっかり「成仏」してもらえるよう頑張ろか!」

おしまい
 

追申
最後までお読みいただきありがとうございました。(。-人-。) 
沢山のメールと感想が励みになりました。

毎度のことですが「あとがきのようなもの」までお付き合いください。
(※その後は「グダグダ」ですので、「読んでやってもいいよ!」という読者様はそのまま(笑)お願いします!

登場人物、皆からもお礼申し上げます(笑)。



























(@^^)/~~~
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