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㉘「カルテ⑩ 「100体目」の「霊」の場合」
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㉘「カルテ⑩ 「100体目」の「霊」の場合」
門真総合病院から御祓井家に全員帰ってきた。時刻は午後3時を過ぎていた。心亜は体に強い疲れを感じていたが、「命」をかけて自分を守ってくれた「霊」達をもてなしてあげたかったので「疲れた」とは言えなかった。
コーヒーと紅茶を入れ直し、浦見賀との闘いに協力してくれた「8体」の「霊」に菓子の店のケーキを振舞った。虎吉も冷たいビールは諦め、コーヒーでケーキを味わっている。
病院から家までの帰り道、則泰と手を繋いで、則泰が「成仏」した際に乗ったUFOの中の様子、岩木山神社に纏わる「玉垣狛犬」の言い伝え、「嶽きみ」の味の感想や本村氏の「嶽きみ」開発に関わる秘話などのおしゃべりをしながら帰るのは楽しかった。
岩木山神社での一方的な則泰から心亜への「告白」に対して、その返答を求められることは無かった。もちろん「人」と「霊」である以上、「普通の男女」のような交際はあり得ないのだが、今日の心亜に対する則泰の献身的な態度と優しい言葉は心亜の胸を揺さぶった。
家に帰ってケーキを分け合った後、「実体化」の「お札」を貼った則泰の横の席で、華奢ではあるが「頼りがい」のある肩に、頭を預けているうちに深い眠りに落ちてしまった。
夢の中で、いろんなことが思い出された。7月頭に茉莉花が突然亡くなり、翌日、この奥の部屋で初めて「除霊師」として具体的に活動しだしたことが走馬灯のように流れていった。
最初の「虎吉一生」の除霊に始まり、今日の「浦見賀鋸留」まで、「霊台帳」に記された99体の「霊」の入った「絶つ波亜」の詰まった「霊蔵庫」が今日「空」になった。これで「JK除霊師」もやり終えたと心亜は思ったが、記憶に引っかかりを感じた。
「あれ?最初に見たお母さんのメッセージの入ったDVDはなんて言ってたっけ…?
確かお母さんは
「まだ、高校生の心亜にお母ちゃんの「やり残し」を託すのは辛いんやけど、これも「御払井家」の使命やからなぁ…。心亜には「100の霊魂」をあの世に送ってやって欲しいねや。
いきなり「無理」はきけへんやろうから、しっかりと「どん兵衛」のいう事聞いて頑張るんやで。詳しくはこの後のメッセージに残してるからな。
あとは頼むで…。ぼちぼち頑張ってや。」
って言うてたよな。うん、確かに「「100の霊魂」をあの世に送って」って言うてたやん。
でも「霊台帳」と「霊蔵庫」にあったのは「99」…。残り一個は、もしかして「私」?実は、今日の闘いで私は死んでて、「霊魂」だけがこの世に残ってたりするんやろか?いままで除霊した「霊」の中にも「死んだこと」に気が付かんと「浮遊霊」になった事例も多かったもんな。
実は私も既に死んでるってか…。もしかしたら、虎吉のおっちゃんのタイガースのDVD買うための炎天下のポスティングで家に帰って速攻で倒れた時に死んでたりしてな…。まあ、それは無いか?
いずれにしても私がすでに死んでるんやとしたら、私もあの世に行くんかな?18年っていう短い人生やったけど、結構、充実してたもんな…。この約80日間、「JK除霊師」ってまず普通のJKでは体験できへんことをさせてもらったし、地上での「悔い」はないかな…。
このまま、あの世に行って「則泰君」の「お嫁さん」になるんも悪くないよな…。その時は、きちんとファーストキスせなあかんよな…。女の子からキスをせがむのは節操がないかな?でも、則泰君から「私」より「UFO」が好きって言われたら落ち込むけどな…くすっ。」
「心亜…、心亜…。」
と茉莉花の声がする。
「あっ、お母さんの声がするってことはお母さんからお迎えが来たんかな?お母さんには「49日」をひと月も「オーバーステイ」させてしもたから、しっかりと謝らんとな…。いきなり、「則泰君と一緒になります!」って言うたらどんな顔するかな…?」
「心亜、あんた何寝ぼけて恥ずかしい寝言言い続けてんねん。もう、夕方5時でみんな帰らはるからきちんと挨拶しいや!」
の声で現実に呼び戻された。
照れて真っ赤になっている則泰以外は、みんな「いやらしい」笑みを浮かべて心亜の顔を覗き込んでいた。復活したどん兵衛も笑いをこらえるのに四苦八苦している。
恥ずかしさで顔から火を噴きそうになりながら、「中」、「菓子」、「健逐」、「多世」、「ガイル」の5人の「霊」を見送った。
奥の部屋で再び「タイガース優勝DVD」鑑賞に籠った「虎吉」を除いて、「則泰」と「要代」とどん兵衛と茉莉花と心亜の5人でリビングでくつろいでいると、茉莉花が切り出した。
「心亜、あんたさっき相当恥ずかしい寝言言うてたけど、一つ大きく勘違いしてることあるから言うておくわな。
あんたは「生きてる」。お母ちゃんが言った「100体目」は「お母ちゃん」のことや。お母ちゃんが死んで約80日。最初は「除霊師」をあんたにさせるのが不安で「この世」を離れられへんって思ってたけどもう安心したわ。
ほんまによう頑張ったな。お母ちゃんは25日の「彼岸明け」で「あの世」に行かせてもらうわな。どん兵衛は残していくから「この仕事」を続けるかどうかはあんたが決めたらええ。
「相談役」として「要代ちゃん」と「則泰君」が手をあげてくれてるからしっかりと話し合うんやで。」
と言い残すと、茉莉花は「じゃあ、私は近所の「地蔵堂」お参りに行ってくるわな。」と言って家を出て行った。
門真総合病院から御祓井家に全員帰ってきた。時刻は午後3時を過ぎていた。心亜は体に強い疲れを感じていたが、「命」をかけて自分を守ってくれた「霊」達をもてなしてあげたかったので「疲れた」とは言えなかった。
コーヒーと紅茶を入れ直し、浦見賀との闘いに協力してくれた「8体」の「霊」に菓子の店のケーキを振舞った。虎吉も冷たいビールは諦め、コーヒーでケーキを味わっている。
病院から家までの帰り道、則泰と手を繋いで、則泰が「成仏」した際に乗ったUFOの中の様子、岩木山神社に纏わる「玉垣狛犬」の言い伝え、「嶽きみ」の味の感想や本村氏の「嶽きみ」開発に関わる秘話などのおしゃべりをしながら帰るのは楽しかった。
岩木山神社での一方的な則泰から心亜への「告白」に対して、その返答を求められることは無かった。もちろん「人」と「霊」である以上、「普通の男女」のような交際はあり得ないのだが、今日の心亜に対する則泰の献身的な態度と優しい言葉は心亜の胸を揺さぶった。
家に帰ってケーキを分け合った後、「実体化」の「お札」を貼った則泰の横の席で、華奢ではあるが「頼りがい」のある肩に、頭を預けているうちに深い眠りに落ちてしまった。
夢の中で、いろんなことが思い出された。7月頭に茉莉花が突然亡くなり、翌日、この奥の部屋で初めて「除霊師」として具体的に活動しだしたことが走馬灯のように流れていった。
最初の「虎吉一生」の除霊に始まり、今日の「浦見賀鋸留」まで、「霊台帳」に記された99体の「霊」の入った「絶つ波亜」の詰まった「霊蔵庫」が今日「空」になった。これで「JK除霊師」もやり終えたと心亜は思ったが、記憶に引っかかりを感じた。
「あれ?最初に見たお母さんのメッセージの入ったDVDはなんて言ってたっけ…?
確かお母さんは
「まだ、高校生の心亜にお母ちゃんの「やり残し」を託すのは辛いんやけど、これも「御払井家」の使命やからなぁ…。心亜には「100の霊魂」をあの世に送ってやって欲しいねや。
いきなり「無理」はきけへんやろうから、しっかりと「どん兵衛」のいう事聞いて頑張るんやで。詳しくはこの後のメッセージに残してるからな。
あとは頼むで…。ぼちぼち頑張ってや。」
って言うてたよな。うん、確かに「「100の霊魂」をあの世に送って」って言うてたやん。
でも「霊台帳」と「霊蔵庫」にあったのは「99」…。残り一個は、もしかして「私」?実は、今日の闘いで私は死んでて、「霊魂」だけがこの世に残ってたりするんやろか?いままで除霊した「霊」の中にも「死んだこと」に気が付かんと「浮遊霊」になった事例も多かったもんな。
実は私も既に死んでるってか…。もしかしたら、虎吉のおっちゃんのタイガースのDVD買うための炎天下のポスティングで家に帰って速攻で倒れた時に死んでたりしてな…。まあ、それは無いか?
いずれにしても私がすでに死んでるんやとしたら、私もあの世に行くんかな?18年っていう短い人生やったけど、結構、充実してたもんな…。この約80日間、「JK除霊師」ってまず普通のJKでは体験できへんことをさせてもらったし、地上での「悔い」はないかな…。
このまま、あの世に行って「則泰君」の「お嫁さん」になるんも悪くないよな…。その時は、きちんとファーストキスせなあかんよな…。女の子からキスをせがむのは節操がないかな?でも、則泰君から「私」より「UFO」が好きって言われたら落ち込むけどな…くすっ。」
「心亜…、心亜…。」
と茉莉花の声がする。
「あっ、お母さんの声がするってことはお母さんからお迎えが来たんかな?お母さんには「49日」をひと月も「オーバーステイ」させてしもたから、しっかりと謝らんとな…。いきなり、「則泰君と一緒になります!」って言うたらどんな顔するかな…?」
「心亜、あんた何寝ぼけて恥ずかしい寝言言い続けてんねん。もう、夕方5時でみんな帰らはるからきちんと挨拶しいや!」
の声で現実に呼び戻された。
照れて真っ赤になっている則泰以外は、みんな「いやらしい」笑みを浮かべて心亜の顔を覗き込んでいた。復活したどん兵衛も笑いをこらえるのに四苦八苦している。
恥ずかしさで顔から火を噴きそうになりながら、「中」、「菓子」、「健逐」、「多世」、「ガイル」の5人の「霊」を見送った。
奥の部屋で再び「タイガース優勝DVD」鑑賞に籠った「虎吉」を除いて、「則泰」と「要代」とどん兵衛と茉莉花と心亜の5人でリビングでくつろいでいると、茉莉花が切り出した。
「心亜、あんたさっき相当恥ずかしい寝言言うてたけど、一つ大きく勘違いしてることあるから言うておくわな。
あんたは「生きてる」。お母ちゃんが言った「100体目」は「お母ちゃん」のことや。お母ちゃんが死んで約80日。最初は「除霊師」をあんたにさせるのが不安で「この世」を離れられへんって思ってたけどもう安心したわ。
ほんまによう頑張ったな。お母ちゃんは25日の「彼岸明け」で「あの世」に行かせてもらうわな。どん兵衛は残していくから「この仕事」を続けるかどうかはあんたが決めたらええ。
「相談役」として「要代ちゃん」と「則泰君」が手をあげてくれてるからしっかりと話し合うんやで。」
と言い残すと、茉莉花は「じゃあ、私は近所の「地蔵堂」お参りに行ってくるわな。」と言って家を出て行った。
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