【完結！】『まごころ除霊師JK心亜ちゃんと大きな霊蔵庫』

㉔「カルテ⑨ 妊娠中の妻を殺されて報復に行った先で事故死したやくざの地縛霊「浦見賀鋸留《うらみが・のこる》」の場合①」

㉔「カルテ⑨　妊娠中の妻を殺されて報復に行った先で事故死したやくざの地縛霊「浦見賀鋸留《うらみが・のこる》」の場合①」

　９月２２日秋分の日、今年の御祓井家の秋の彼岸中日は例年になく賑わっている。この７月から心亜に除霊された９８体の「霊」達が、「おかげさまで「あの世」で調子よくやってます。」、「その節はお世話になりました。」、「心亜ちゃんはその後どう？彼氏できた？」とあいさつに顔を出しに来ている。
「私は元気ですよ。みなさんも元気そうでよかったです。霊蔵庫の「霊」もあと「ひとつ」を残すだけなんで、もう少しで「普通のＪＫ」に戻れそうです。」
と挨拶を繰り返している。
　
　挨拶を済ませると、「実家」や「思い出の地」に出かける「霊」が多い中、９月１９日の「彼岸の入り」から御祓井家にずっと居ついている「霊」も居る。
「心亜ちゃん、９月２５日の「彼岸明け」までゆっくり「２０２３年タイガース優勝記念ＤＶＤ見ながら、プロ野球年鑑読ませてもらうでな。」
と１９日に日付が変わった瞬間に心亜の寝室にやってきて驚かせた「虎吉一生とらよし・かずお」はひたすら２０２３年の阪神優勝の軌跡のＤＶＤを繰り返し飽きもせず見続けている。
　心亜もＤＶＤの再生が終了する都度、起こされてリモコンを操作させられるのに困っていると、どん兵衛が「霊」が「この世」のモノに触れることができるように「世超織布」でできた手袋を出してくれたので虎吉も一人でプロ野球年鑑のページをめくれるようになり嬉しそうに勝ち試合の結果を楽しんでいる。

　１９日の朝には、「遊穂則泰ゆうほ・のりたい」が約３週間ぶりに心亜の顔を見に戻ってきた。岩木山神社で「成仏」した際、「昇天」中に現れた「ＵＦＯ」に乗ることができたのだという。
「心亜ちゃん、会いたかったよー！あの日、「岡村総司令官」が「霊体」でも乗ることができる「プラズマ生命体」宇宙人のＵＦ０をわざわざ弘前まで派遣してくれたんですよ。心亜ちゃんをハグして、更に本物のＵＦＯまで乗れちゃうなんて「最高」の１日でした！今日は、そのお礼と報告を兼ねてお邪魔しに来ました。」

　則泰が嬉しそうに心亜との再会を喜んでいると、「おっ、なんか二人で「あやしい」雰囲気だしてるじゃない！もしかして「ラブ」の匂いか？」と「｜槌鋸要代」が顔を出して心亜を冷やかした。心亜は要代の顔を見て申し訳なさそうに最初に詫びを入れた。
「要代さん、私…、思い込みが強いもんだから、ＳＮＳのツイートで「本物」だと勘違いしてたんだけど…。あの時の「ぺーちゃん」と「とんちゃん」は「本物のつちのこ」じゃなくて…。ごめんなさい。だますつもりは無かったんです…。」
　要代はあっけらかんと心亜に言った。
「何をもって、「本物」でないって言えるの？心亜ちゃん、「本物のつちのこ」見たの？私にとっては「ぺーちゃん」と「とんちゃん」は「本物のつちのこ」なんだからいいのよ！あれから「つちのこの母」ともすっかり仲良くなれたしね。私の方はまったくもってノープロよ！私はそういう心亜ちゃんの真面目なところが好きよ！」
　その後、「迷惑でなかったら２２日までいさせてね。」と要代は、同じく長期滞在を望む則泰と「月刊メー」ネタをきっかけに「ＵＦＯ」、「ＵＭＡ」の「オカルト談議」に入り、リビングのテレビで「オカルトミステリー特番」の録画を一緒に見ながら盛り上がっている。

９月２２日の昼前、「大好菓子おおずき・かこ」が友人のパティシエを連れて菓子オリジナルデザインのショートケーキの詰め合わせを届けに来てくれた。
「わー、さすが「お彼岸」ね。たくさんの「霊」が集まってるんや。この「霊」たちってみんな心亜ちゃんが「成仏」させた「霊」なん？友達がたくさんのケーキをプレゼントしてくれたから、みんなで食べてな。」
と菓子は友人を店に戻すと、他の「霊」と挨拶を繰り返した。

「犬養中いぬかい・あたる」が「クロ」を連れて来たと思えば、続いて日に焼けた顔の「高井健逐たかい・けんちく」もやってきた。
すっかりやさしい顔つきになったスーツ姿の「富良礼多世ふられ・たよ」と娘と孫に会ってきたという「蒸芽ガイルむすめ・がいる」が一緒に心亜とどん兵衛にお礼を言いに訪れた。

お昼には、８体の「霊」と心亜とどん兵衛が奥の間で、菓子の持ってきた「ケーキ」で「彼岸会ひがんえ」を開くことにした。特別に実体化のお札が茉莉花の分も含めて９枚用意された。
「実体化のお札の効果は「３分」やからまだ貼ったらあかんで。菓子ちゃんのケーキをゆっくり味わってもらうために、美味しいコーヒーといい香りの紅茶を用意してるからちょっと待っててね。」
皆に断りを入れて心亜が奥の部屋を出て行った。
「わしは「コーヒー」、「紅茶」より冷たいビールの方がええな！」
と虎吉が立ち上がり、霊蔵庫に手をかけた。

　「きゃーっ！何すんのー！」、「それ、心亜ちゃんのもんやから持っていったらあかん！」、「こら、逃げるな！」
リビングキッチンでコーヒーと紅茶の準備をしていた心亜とどん兵衛と茉莉花の耳に「女性霊」達の悲鳴と叫びが聞こえた。
慌てて、心亜とどん兵衛が奥の間に戻ると、「虎吉」、「健逐」、「則泰」の男性組は床に倒れ女性陣は壁際で震えていた。道路に面した窓は結界のお札が無残にはがされ、大きく開け放されていた。霊蔵庫の前には、かつて除霊しようとした茉莉花の霊能力を弱体化させるほどの強い後遺症をもたらし、どう処理するかを思いつかず唯一残されていた「極道」の「悪霊」の「浦見賀鋸留うらみが・のこる」の蓋の空いた「絶つ波亜タッパー」が残されていた。

　部屋の惨状に心亜は「いったい何があったん？」と８体の「霊」に問いかけた。
「あいたたた、心亜ちゃん、すまん。わしが「ビールでもないかな？」って「霊蔵庫」の中をさらった際に、残ってた「絶つ波亜」を落っことしてしもたんや。
　そしたらいかついサングラスの男の「霊」が現れて、わしが使わせてもろてた「世超織布」の手袋を奪って「実体化」のお札をパクッて逃げようとしたんや。」
と虎吉が真っ赤に腫れた頬を押さえながら状況の説明に入った。
　健逐と則泰も浦見賀の「霊」を止めようとしたが「一蹴」にされ、逃げられてしまったという事だった。
「あの霊、確か「妊娠中の奥さん」と「お腹の中の赤ちゃん」を敵対する「反社」に殺された「やくざ」の「浦見賀鋸留」よね。実体化の「お札」を持って出て行ったってことは…。」
と元探偵の「富良礼多世」が呟いた。