『まごころ除霊師JK心亜ちゃんと大きな霊蔵庫』

⑳「カルテ⑧ 宇宙人を信じていたがゆえに「バカ扱い」されて死んでいった男「｜遊穂則泰《ゆうほ・のりたい》」の場合①」

⑳「カルテ⑧　宇宙人を信じていたがゆえに「バカ扱い」されて死んでいった男「遊穂則泰ゆうほ・のりたい」の場合①」

　あっという間に２０２４年の７月は過ぎ、霊たちが家に帰る「お盆」も過ぎた。「成仏」をなし得た元「霊蔵庫」の住人たちの「霊」達から、御祓井家は感謝の訪問を受けお盆の３日間は大変だった。夏休みの間、心亜の「除霊」は毎日続き、「霊蔵庫」の中はかなり空いてきた。「霊台帳」の未処理案件もそれに伴い、減ってきている。
　心亜の考えた「寂しがりな霊」同士をマッチングするという「画期的」な成仏方法により、男女ペア、または同じ趣味を持つ者同士の霊の「同時除霊」が複数回行われ、９９の残されていた案件は３分の１を残すところまで除霊の「進捗」は進んでいた。

　相変わらずの「霊能力無し」の「体当たり」の「まごころ除霊」の為、心亜は毎日へとへとになるのだが、嬉しそうに昇天する霊の笑顔が心亜を支えていた。
「あー、もう夏休みも残すところ１週間やな。「ＬＪＫラスト女子高校生１８」の最後の夏休みが「大阪府」から一歩も出ていってへんどころか、「ひらパー」も「ＵＳＪ」も「通天閣」も行かれへんまま夏が終わってしまうやんか…。
　新たな「素敵な男の子」との出会いも無く、ただ、どん兵衛とお母さんとたくさんの「霊」を過ごした夏やったなぁ。はぁ…。こうして私の夏は過ぎ去っていくんや…。」
と愚痴を吐きながらも、妙な満足感を感じている心亜に茉莉花がサプライズを用意してくれていた。
　奥の部屋のタンスに茉莉花が隠していた「へそくり」をプレゼントしてくれたのだった。

　「きゃー、お母さん１０万円も入ってるやん！これって、本当に私が自由に使ってええの？どうしようかな！美味しいもの食べるのもええけど、１８歳の夏の思い出作りにどこか旅行でも行こうかな？」
とはしゃぎまわる心亜に茉莉花は優しく言った。
「せやな、この５０日間、ほんまによう頑張ったご褒美や。自由にしてええで。」
　心亜はスマホをググり、「どうしよう、やっぱり夏の北海道は行きたいよな！」、「いやいや西表島と石垣島もええよな。」、「それとも石川県復興応援で「コスモアイル羽咋」＆「モーゼの墓」のある石川で温泉三昧もいいよねー。」と楽しそうにしている。
　石川県羽咋市にある、「展示物の宇宙船はすべて本物！」が売りの宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」について呟いているＳＮＳを読んでいて、一つの「ツイート」に心亜の眼が止まった。
「羽咋市を旅行中にＵＦＯの宇宙人に「まじ」アブダクションされそうになった(笑)。＃宇宙人、＃ＵＦＯ、＃羽咋、＃グレイ、＃サンダーくん」というツイートにブルーのブルゾン姿で緑の顔に大きな真っ黒の瞳のグレイ系宇宙人と男性のツーショットの写真がアップされていた。

　心亜はふと、「霊台帳」のある処理残しのページが頭に浮かんだ。急いで「霊台帳」を持って来て、どん兵衛と茉莉花に「この人って「浮遊霊」やんなぁ。私、この人と一緒に石川に行ってくるわ。」と「遊穂則泰ゆうほ・のりたい　」のページを開いた。
　茉莉花が台帳を覗き込んで、「遊穂則泰」の「霊」を思い出した。。
「あぁ、「ＵＦＯ」の実在を主張して、会社で「バカ扱い」されて夏のビアガーデンで「ＵＦＯが存在するんやったら呼んで見せろや。」ってムチャ言われて、屋上で「ベントラ」して偶然の落雷で死んでしもた「ＵＦＯヲタ」の男の子やな。
　あほなこと言わんかったら、イケメンで真面目でええ子やったのになぁ…。ビアガーデンの店長に「しょっちゅう、屋上に現れては「見える・・・客」の前で「ベントラ」されて困るから「除霊して」って言われたんやけど、「ＵＦＯに乗るまでは絶対「この世」に残る！」って強情言われて、仕方なく連れて帰ってきたんやったな。まあ、心亜が連れて行くっていうんやったらええんとちゃうか？「万に一つ」でも羽咋でＵＦＯに乗れるチャンスがあるんやったらな。ケラケラケラ。」

　まともに取り合わない茉莉花に少しむっとして心亜は言った。
「可能性はゼロやないやろ。こうして、宇宙人と一緒に撮った写真をアップしてる人も居るんやからな！」
と霊蔵庫から５年前に３１歳で死亡し、「浮遊霊生活」を送りつつＵＦＯを探し続け、１年前に茉莉花に「移霊」された「遊穂則泰ゆうほ・のりたい　」の「絶つ波亜タッパー」を取りだしてきた。
　ふたを開けると、３１歳にしては愛くるしい童顔のアイドル顔でオカルトファンの「メー民」ご用達の「メーＴシャツ」の則泰のりたいが立ち上がってきた。心亜は、則泰のかわいい笑顔に少し「どきっ」とした。
　一つ深呼吸をしていつも通りの挨拶をした。
「私は、新米除霊師の「御祓井心亜おはらい・ここあ」と言います。これから、あなたを「あの世」に導かせてもらおうと思ってますのでよろしくお願いします。この世に残した「悔い」や「名残り」があれば何でも言ってくださいね。可能な限り、「希望」を叶えられるよう頑張りますから。」

　則泰は、笑顔で「へー、本当にＪＫ除霊師っているんだ。ところで心亜ちゃんは「ＵＦＯ」って信じてる？「宇宙人」はいると思う？」と尋ねた。心亜は先月見たミステリー番組を思い出しながら、則泰に優しく囁いた。
「もちろん私も「その・・存在」を信じてますよ。則泰さんがうちに「移霊」された後、
２０２３年８月３１日にアメリカ国防省が「ＵＡＰ（注※ここでの「ＵＡＰ」は「ｕｎｉｄｅｎｔｉｆｉｅｄ　ａｎｏｍａｌｏｕｓ　ｐｈｅｎｏｍｅｎａ：未確認異常現象」であり、２０２１年６月２５日にアメリカ国家情報長官室の報告書で「ＵＦＯ」に変わる表現として使用され始めた「ｕｎｉｄｅｎｔｉｆｉｅｄ　ａｅｒｉａｌ　ｐｈｅｎｏｍｅｎｏｎ：未確認航空現象」とは少し違う。）」に関する情報を機密解除しホームページで公開するようになりましたし、２０２３年９月１３日にはメキシコ議会での公聴会で１０００年前のものとされるペルーで採掘された３本指の「クララ」と「ジョセフィーヌ」と名付けられた「地球外生命体」とされるミイラ（注※こちらは相当「怪しい」。）が公開されてますからねぇ！
　他にも今年に入ってロシア軍やブラジル軍が捕獲した昆虫系「エイリアン」らしき「未確認生物」もリークされてますよ。
　更に２０２３年１２月２５日には日本の航空自衛隊までも２０２７年までに「航空宇宙自衛隊」に名称変更してＪＡＸＡと連携するっていうんですからこりゃもう「ガチ」でしょ！」

　心亜がスマホを使って関連記事を則泰に見せると
「凄い！僕が死んだ後にＵＦＯやエイリアンに関する情報発表がこんなにも進んでるなんて！あー、早死にして損しちゃったなぁ！カラカラカラ。」
と則泰は大いに喜んだ。
　（これなら、楽に「成仏」してもらえそうやな！）と思った心亜に、５秒後に非常に高いハードルが投げつけられるとは微塵にも思っていなかった。