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⑮「カルテ⑥ つちのこ捕獲を夢見た女。崖から転落死した浮遊霊「槌鋸要代《つちのこ・いるよ》」の場合①」
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⑮「カルテ⑥ つちのこ捕獲を夢見た女。崖から転落死した浮遊霊「槌鋸要代《つちのこ・いるよ》」の場合①」
夏休みに入った初日の夜、心亜は地上波テレビの「ミステリー番組」を見ていた。UFO、UMA、超常現象などの動画が2時間枠の番組で延々と流されている。その中の「心霊現象」コーナーで、生霊が彷徨う廃マンションにお笑いタレントが一晩カメラを持って館内を散策するというロケが映し出されていた。
「今のシーン、皆さんはお気づきでしょうか…?」というおどろおどろしいナレーションのあと、「恐怖の地縛霊の映像は60秒後!」とテロップが出てCMに入った。
「お母さん、こんなテレビに映る「心霊」ってほんまもんなん?素人のタレントがこんなことして呪われたりせえへんの?」
と麦茶を飲みながら心亜は茉莉花に尋ねた。
「カラカラカラ、除霊師の心亜の言葉とは思われへんなぁ。こんなテレビに映ってるのは「仕込み」や。まぁ、オーブくらいは写っててもおかしくないけど、「霊」は基本的に「プラズマ体」やからビデオの「赤外線ライト」をあてたら消えてしまうわな。
まあ、「三茶ポ」の少年霊「てっちゃん」みたいに「実体化」に近い現れ方する「ガチ」な奴も稀にいるけどな。まあ、そんな「ガチ」な奴は、私らに仕事が回ってくるわな。
月刊「メー」の四上編集長がユーチューブで「テレビで「ガチ」なものは放送できへん!」って暴露してたで。視聴者から「番組を見て体調崩した。」ってクレームがあった時、「あれは「作りもの」ですからそれはあり得ません。」って言い訳をする為やねんて。まあ、UFO、UMAはほんまもんがあるかもしれへんけどな。」
笑いながら、「心霊界」の裏話を話してくれるうちにCMは終わり、廃館の中で男の顔がうっすらと映り込んだシーンが繰り返し流された。
「まあ、これはタレントの単独取材ってことになってるけど、局のカメラと音声担当みたいな技術スタッフとマネージャーは必ず一緒に居るから、誰かが偶然鏡に写り込んだっていうオチやろな。」
と言う茉莉花の解説は、スタジオで「ワーワー」、「キャーキャー」言っているMCの言葉より信用性が高く思えた。
次のコーナーは「UMA」特集で、「つちのこ」のミイラが兵庫県の宍粟の街にあるという噂を元にタレントがロケに行くという話だった。「神戸新聞」の記事を元につちのこの木材アートが飾られている道の駅「ちくさ」を起点に「つちのこの赤ちゃんを捕まえた人」や「つちのこのミイラを持つ人」を探すという企画だった。
先に企画がスタートした「つちのこの赤ちゃんを捕まえた人」が見せた写真はまさに「つちのこ」だったが、専門家に調べてもらったところ、「ビロードスズメ」という「蛾」の幼虫であったという「オチ」だった。
続いて「つちのこのミイラを持つ人」探しに移ったところ、タレントの撮影時間切れで「また次回!」という次回放送に「オチ」を「引っ張る」煮え切らないエンディングを迎えた。
ふと心亜は「霊台帳」の中に「つちのこ捕獲」活動中に崖から落ちて死んだ女がいたことを思い出した。茉莉花に尋ねると、その浮遊霊を除霊しようとしたのだが「つちのこを捕まえるまでは「あの世」には行けない!」との念が強すぎて、除霊できなかったエピソードが語られた後、冗談で終わらされてしまった。
「さすがに頑張り屋の心亜でも、「つちのこ」をこの浮遊霊に捕まえさせることはできへんわな。なんせ70年以上「幻の生物」なんやからな。月刊メーグッズの「もちぷにつちのこぬいぐるみ」でも抱っこさせてやって「成仏」させるか?ケラケラ。
それにしてもあんた、昨日も友達と朝までカラオケに行ってたんやからアホな番組ばっかり見てんと今日は早よ寝るんやで!18(歳)でも2日続けて夜更かししたら「しわ」が出るぞ。ケラケラケラ。」
と言い残すと部屋を出て行った。
笑う茉莉花を無視して、心亜は先ほどまで放送していた番組で取り上げられていた「つちのこのミイラ」についてスマホでググった。2018年6月の神戸新聞NEXTに取り上げられていた「つちのこのミイラ」記事を元に番組は制作されていたようで、両手に載せられた鮮明な「つちのこ」の写真が掲載されていた。
更に2021年1月の「WEBメー」のサイトでは、その「つちのこのミイラ」の写真だけでなく、生存時の写真も掲載されていた。
(うーん、これで満足してもらえるかどうかわかんないけど、一度本人に見せてみるか…。)と霊蔵庫の中から享年30歳の「槌鋸要代」の霊を呼び出して心亜は思い切りひいた。
緑色の髪に陸上自衛隊の戦闘服のような迷彩色の服に、各種装備を腰ベルトに付け、大きな「たも網」を持った「ミリオタ」のような女の姿に心亜は言葉が出なかった。そんな心亜に愛想よく「浮遊霊」は話しかけてきた。
「ごめん。驚かせちゃった?私は「槌鋸要代」。3歳からつちのこを探し求めて27年。人生の9割をつちのこ探しに費やしたんだけど、8年前に捜索中に崖から落ちて死んじゃったのよね。
つちのこに遭うまで、あの世には行けないって思ってたからすっかり「浮遊霊」になっちゃったまま「つちのこ探し」に勤しんでたんだけど、「見える」ハイカーに「通報」されちゃってね…。人に迷惑かけるつもりは無かったんだけど、怖がられちゃったみたいで、2年前に「ここ」の霊能者さんに「移霊」されて「ここ」にいるって訳なのよ。ケラケラケラ。」
元気に笑う要代に邪悪なものは何も感じることは無かった。
「私は、新米除霊師の「御祓井心亜」と言います。これから、あなたを「あの世」に導かせてもらおうと思ってますのでよろしくお願いします。この世に残した「悔い」や「名残り」が有れば何でも言ってくださいね。可能な限り、「希望」を叶えられるよう頑張りますから。ちなみにさっきまで「つちのこ」の番組をやってたんですよ。」
と心亜は仕切り直した。
心亜は番組録画とスマホで調べた宍粟の「つちのこ情報」を要代に見せた。
「ふーん、私が死んだ2016年にはこんなはっきりと映った「つちのこ」の写真はなかったなー。この写真を見ると改めて「つちのこ」は実在するって確信しちゃうわよね。ところであなたは「つちのこ」の存在は信じてる?」
と嬉しそうに話しながら心亜と一緒にスマホの中の「つちのこ」の写真に見入った。
夏休みに入った初日の夜、心亜は地上波テレビの「ミステリー番組」を見ていた。UFO、UMA、超常現象などの動画が2時間枠の番組で延々と流されている。その中の「心霊現象」コーナーで、生霊が彷徨う廃マンションにお笑いタレントが一晩カメラを持って館内を散策するというロケが映し出されていた。
「今のシーン、皆さんはお気づきでしょうか…?」というおどろおどろしいナレーションのあと、「恐怖の地縛霊の映像は60秒後!」とテロップが出てCMに入った。
「お母さん、こんなテレビに映る「心霊」ってほんまもんなん?素人のタレントがこんなことして呪われたりせえへんの?」
と麦茶を飲みながら心亜は茉莉花に尋ねた。
「カラカラカラ、除霊師の心亜の言葉とは思われへんなぁ。こんなテレビに映ってるのは「仕込み」や。まぁ、オーブくらいは写っててもおかしくないけど、「霊」は基本的に「プラズマ体」やからビデオの「赤外線ライト」をあてたら消えてしまうわな。
まあ、「三茶ポ」の少年霊「てっちゃん」みたいに「実体化」に近い現れ方する「ガチ」な奴も稀にいるけどな。まあ、そんな「ガチ」な奴は、私らに仕事が回ってくるわな。
月刊「メー」の四上編集長がユーチューブで「テレビで「ガチ」なものは放送できへん!」って暴露してたで。視聴者から「番組を見て体調崩した。」ってクレームがあった時、「あれは「作りもの」ですからそれはあり得ません。」って言い訳をする為やねんて。まあ、UFO、UMAはほんまもんがあるかもしれへんけどな。」
笑いながら、「心霊界」の裏話を話してくれるうちにCMは終わり、廃館の中で男の顔がうっすらと映り込んだシーンが繰り返し流された。
「まあ、これはタレントの単独取材ってことになってるけど、局のカメラと音声担当みたいな技術スタッフとマネージャーは必ず一緒に居るから、誰かが偶然鏡に写り込んだっていうオチやろな。」
と言う茉莉花の解説は、スタジオで「ワーワー」、「キャーキャー」言っているMCの言葉より信用性が高く思えた。
次のコーナーは「UMA」特集で、「つちのこ」のミイラが兵庫県の宍粟の街にあるという噂を元にタレントがロケに行くという話だった。「神戸新聞」の記事を元につちのこの木材アートが飾られている道の駅「ちくさ」を起点に「つちのこの赤ちゃんを捕まえた人」や「つちのこのミイラを持つ人」を探すという企画だった。
先に企画がスタートした「つちのこの赤ちゃんを捕まえた人」が見せた写真はまさに「つちのこ」だったが、専門家に調べてもらったところ、「ビロードスズメ」という「蛾」の幼虫であったという「オチ」だった。
続いて「つちのこのミイラを持つ人」探しに移ったところ、タレントの撮影時間切れで「また次回!」という次回放送に「オチ」を「引っ張る」煮え切らないエンディングを迎えた。
ふと心亜は「霊台帳」の中に「つちのこ捕獲」活動中に崖から落ちて死んだ女がいたことを思い出した。茉莉花に尋ねると、その浮遊霊を除霊しようとしたのだが「つちのこを捕まえるまでは「あの世」には行けない!」との念が強すぎて、除霊できなかったエピソードが語られた後、冗談で終わらされてしまった。
「さすがに頑張り屋の心亜でも、「つちのこ」をこの浮遊霊に捕まえさせることはできへんわな。なんせ70年以上「幻の生物」なんやからな。月刊メーグッズの「もちぷにつちのこぬいぐるみ」でも抱っこさせてやって「成仏」させるか?ケラケラ。
それにしてもあんた、昨日も友達と朝までカラオケに行ってたんやからアホな番組ばっかり見てんと今日は早よ寝るんやで!18(歳)でも2日続けて夜更かししたら「しわ」が出るぞ。ケラケラケラ。」
と言い残すと部屋を出て行った。
笑う茉莉花を無視して、心亜は先ほどまで放送していた番組で取り上げられていた「つちのこのミイラ」についてスマホでググった。2018年6月の神戸新聞NEXTに取り上げられていた「つちのこのミイラ」記事を元に番組は制作されていたようで、両手に載せられた鮮明な「つちのこ」の写真が掲載されていた。
更に2021年1月の「WEBメー」のサイトでは、その「つちのこのミイラ」の写真だけでなく、生存時の写真も掲載されていた。
(うーん、これで満足してもらえるかどうかわかんないけど、一度本人に見せてみるか…。)と霊蔵庫の中から享年30歳の「槌鋸要代」の霊を呼び出して心亜は思い切りひいた。
緑色の髪に陸上自衛隊の戦闘服のような迷彩色の服に、各種装備を腰ベルトに付け、大きな「たも網」を持った「ミリオタ」のような女の姿に心亜は言葉が出なかった。そんな心亜に愛想よく「浮遊霊」は話しかけてきた。
「ごめん。驚かせちゃった?私は「槌鋸要代」。3歳からつちのこを探し求めて27年。人生の9割をつちのこ探しに費やしたんだけど、8年前に捜索中に崖から落ちて死んじゃったのよね。
つちのこに遭うまで、あの世には行けないって思ってたからすっかり「浮遊霊」になっちゃったまま「つちのこ探し」に勤しんでたんだけど、「見える」ハイカーに「通報」されちゃってね…。人に迷惑かけるつもりは無かったんだけど、怖がられちゃったみたいで、2年前に「ここ」の霊能者さんに「移霊」されて「ここ」にいるって訳なのよ。ケラケラケラ。」
元気に笑う要代に邪悪なものは何も感じることは無かった。
「私は、新米除霊師の「御祓井心亜」と言います。これから、あなたを「あの世」に導かせてもらおうと思ってますのでよろしくお願いします。この世に残した「悔い」や「名残り」が有れば何でも言ってくださいね。可能な限り、「希望」を叶えられるよう頑張りますから。ちなみにさっきまで「つちのこ」の番組をやってたんですよ。」
と心亜は仕切り直した。
心亜は番組録画とスマホで調べた宍粟の「つちのこ情報」を要代に見せた。
「ふーん、私が死んだ2016年にはこんなはっきりと映った「つちのこ」の写真はなかったなー。この写真を見ると改めて「つちのこ」は実在するって確信しちゃうわよね。ところであなたは「つちのこ」の存在は信じてる?」
と嬉しそうに話しながら心亜と一緒にスマホの中の「つちのこ」の写真に見入った。
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