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⑥「カルテ② 飼い犬の散歩中に交通事故に遭った中学生の女の子「犬養中《いぬかい・あたる》の場合①」
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⑥「カルテ② 飼い犬の散歩中に交通事故に遭った中学生の女の子「犬養中《いぬかい・あたる》の場合①」
浮遊霊「虎吉一生」を見送った後、長い数珠が「霊」を「成仏」させるための道具の一つであることを心亜は理解した。
「どん兵衛、茶色い数珠を身に着けるとどん兵衛がぬいぐるみから「妖狐」に戻って話せるようになるってことと、長い数珠が「霊」を昇天させるってことはわかったわ。もう一つある「赤い数珠」は何に使うん?」
尋ねる心亜に、「論より証拠やからそれ着けてちょっと散歩にでも行こうか。」とどん兵衛は「よっこらしょ!」とぬいぐるみの姿に変身した。
(さすがに狐がペットっておかしいもんな。まあ、18歳にもなってぬいぐるみを抱っこして街を歩くのもちょっと恥ずかしいけど…。)と思った心亜の思念を読み取ったどん兵衛は小さくなり
「キーホルダーサイズやったらおかしくないやろ。バッグにぶら下げるか、スマホに付けてたらどこぞの「お稲荷さん」のマスコットに見えるやろ。」
と気を遣ってくれた。
「うん、ありがとう。ぬいぐるみになっても茶色い数珠をつけてる限りは話はできるんやな。」
どん兵衛は「せやで。「魔女には黒猫」、「除霊師には狐」ってな。いつも一緒に居るからそこは安心してや。ところで赤い数珠の効果はやな…。」と話しながら、家を出た。
玄関を出るなり、心亜は「ギョッ」とした。道の端々に「霊」が見えたのだった。交差点の角に座り込んで動かないもの。中空を浮き、ふらふらと風に流されるように移動するものなど人間に限らず、犬や猫などの小動物の「霊」も見える。
「心亜ちゃん、そこらの「霊」と目を合わせたり話しかけたらあかんで。「霊」の中には「かまってちゃん」的な奴もようさん居んねん。誰からも声をかけられず、寂しんぼうの「霊」はついてきてしまうことがあるから気をつけるんやで。」
どん兵衛が心亜に注意すると、震える声で答えた。
「うん、マンガの「見える子ちゃん」みたいに「無視」するのがええねんな。」
家の周りを10分程歩いただけで、数十の「霊」と出くわせた。どん兵衛が言うには、現世の人間の99.9%は「霊」は見えないし感じないが千人にひとりは波長が合う「霊」が見えてしまうとのことだった。
「霊」自体は、プラズマ因子を含む素粒子体であるがゆえに、明るい昼間は見えにくいが、夜間はうっすらと発光し、路上を彷徨う「霊」を見た車のドライバーが慌ててハンドルを切り、事故を起こすことがあるという。「魔のカーブ」や「心霊トンネル」など事故が多発するところには、波長の強い「地縛霊」が多く、そういった案件を茉莉花は「国土交通省」内の秘密部局の「心霊事故防止課」等からの依頼を受けて「除霊」してきたと説明があった。
家から1キロほど離れた中規模公園に差しかかると、どん兵衛が口を開いた。
「2年前、ここで犬の散歩中に亡くなった中学生の事故って覚えてるか?その後、夜間の単独事故が増えて、そのドライバーの証言で「夜中に女の子の幽霊が彷徨ってる。」って噂になったやろ。」
心亜は少し立ち止まって交差点に目を向けた。交差点の手前に膝を抱えてしゃがみこみ散歩中の犬に視線を向けている地縛霊がいたので目を合わせないように事故を思い起こした。
「あぁ、私のおった中学の一つ下の学年の女の子の話やな。私が中学卒業した後の話やから詳しくは知らんけど…。」
「せや、その女の子の「霊」も「霊蔵庫」の中に居るねん。茉莉花ちゃんも、「除霊」しようとしたんやけど、ちょっとこの世に対する「念」が強かったみたいで残ってるねんな。「悪霊」の類やあれへんから、次の「除霊」はその子にしよか?」
心亜が頷くと自宅に戻った。
「霊蔵庫」にぶら下がる「霊台帳」を開くと、故人名は「犬養中」、享年15歳の女子中学生だった。愛犬の黒い子犬を散歩中に交通事故に遭い、即死だったと記されていた。
どん兵衛が台帳番号と照らし合わせ「絶つ波亜」を取り出し、ふたを開けた。女の子の「霊」が心亜とどん兵衛の前に現れた。
「初めまして。私は、御祓井心亜。あなたの中学の1年先輩の「除霊師」なの。今日は、あなたを成仏させるのが仕事なの。あなたがこの世に残ろうとする「念」を浄化させてあげたいの。良かったら、少しお話しできないかな?」
心亜が優しく話しかけると、女の子は泣きながら話し始めた。
「クロは大丈夫だったの?私、トラックにはねられてすぐに死んじゃったからその時いっしょにいた愛犬のクロがどうなったのかそれが心配で…。私の最後の記憶では、クロも足をはねられてるはずだから…。
私、地縛霊になっちゃったから、探しに行くこともできなくて…。クロが無事だったらそれでいいんだけど、もしクロも死んじゃってたらきちんと天国に「送って」もらえたのか心配だし、酷いけがをしていないかも心配で…。」
心亜は「中」の言うことをメモに取ると、「まずは、交番に聞きに行ってみようか。」と言い、立ち上がった。「中」を引き連れて、心亜とどん兵衛は近所の交番を訪れたが、「ここでは、細かいことはわからへんから門真署の方に行って聞いてみてくれるか。」と軽く門前払いをくってしまった。
浮遊霊「虎吉一生」を見送った後、長い数珠が「霊」を「成仏」させるための道具の一つであることを心亜は理解した。
「どん兵衛、茶色い数珠を身に着けるとどん兵衛がぬいぐるみから「妖狐」に戻って話せるようになるってことと、長い数珠が「霊」を昇天させるってことはわかったわ。もう一つある「赤い数珠」は何に使うん?」
尋ねる心亜に、「論より証拠やからそれ着けてちょっと散歩にでも行こうか。」とどん兵衛は「よっこらしょ!」とぬいぐるみの姿に変身した。
(さすがに狐がペットっておかしいもんな。まあ、18歳にもなってぬいぐるみを抱っこして街を歩くのもちょっと恥ずかしいけど…。)と思った心亜の思念を読み取ったどん兵衛は小さくなり
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と気を遣ってくれた。
「うん、ありがとう。ぬいぐるみになっても茶色い数珠をつけてる限りは話はできるんやな。」
どん兵衛は「せやで。「魔女には黒猫」、「除霊師には狐」ってな。いつも一緒に居るからそこは安心してや。ところで赤い数珠の効果はやな…。」と話しながら、家を出た。
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どん兵衛が心亜に注意すると、震える声で答えた。
「うん、マンガの「見える子ちゃん」みたいに「無視」するのがええねんな。」
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「2年前、ここで犬の散歩中に亡くなった中学生の事故って覚えてるか?その後、夜間の単独事故が増えて、そのドライバーの証言で「夜中に女の子の幽霊が彷徨ってる。」って噂になったやろ。」
心亜は少し立ち止まって交差点に目を向けた。交差点の手前に膝を抱えてしゃがみこみ散歩中の犬に視線を向けている地縛霊がいたので目を合わせないように事故を思い起こした。
「あぁ、私のおった中学の一つ下の学年の女の子の話やな。私が中学卒業した後の話やから詳しくは知らんけど…。」
「せや、その女の子の「霊」も「霊蔵庫」の中に居るねん。茉莉花ちゃんも、「除霊」しようとしたんやけど、ちょっとこの世に対する「念」が強かったみたいで残ってるねんな。「悪霊」の類やあれへんから、次の「除霊」はその子にしよか?」
心亜が頷くと自宅に戻った。
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