「頑張ろう石川!」応援企画」!『COSMO’s ~石川に墜落した5人のボランティア宇宙人アイドルの67日の物語~』

M‐赤井翼

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第3章「ボランティアツアー編」

「復興特使「COSMO's」」

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「復興特使「COSMO’s」」

 コスモアイル羽咋に戻るとピナが真っ先に「マリーア姉さん、どうやった?」と尋ねて来た。
「一応、私らの捜索に出てくれてた母船の情報将校には無事は伝えたし、予定通り2月10日に千里浜に迎えに来てもらう話で落ち着いたで。」
「きゃー、そしたらもう一月ひとつきはこっちに居れるんやね。姉さんたちが無線連絡しに行ってる間に凄い話になってたんやで。それはな…。」
ピナが続きを離そうとしたその瞬間、どや顔のナチュコが割って入った。
「私らのボランティアと「」が評価されて、「COSMO’s」が石川県の「復興特使」に選ばれることになりそうなんやで。ボランティアの方は、ほとんどライスさんのおかげやからライスさんには申し訳ないんやけど、蟹夫のおっちゃんが推してくれたみたいで、いろんな避難所に「歌」の慰問でまわって欲しいってさ!
 きゃー、私もついに「アイドル・・・・」デビューやで!このまま、地球上の35億の男から求婚されたら選び放題やでー!」

 一人暴走するナチュコを無視して、誠子が説明するには今まで「COSMO’s」が訪問した羽咋、輪島、珠洲の各社協がアップした動画がバズって広告料収入があがるレベルになっているらしい。「ニコニコ動画でライブを連日挙げてた珠洲なんかは「投げ銭」が凄いのよ。」と話し、マリーア達が良ければ、明日にでも金沢の県庁に一緒に行って欲しいという事だった。
 「私ら、ただの旅の宇宙人やし、2月の10日には帰る身やからそんなたいそれたもんは受けられへんよ。」
とマリーアが断ろうとすると、再びナチュコが
「そこは2月10日迄のキャンペーンガールってことでええやん。あとひと月もあれば復興も進むやろうし、少しでも金銭的なとこで手伝いになるわけやし、私らに来てほしいっていう避難所もたくさんあるみたいやねん!「義を見て為さざりは勇無きなり」やろ!マリーア姉さんがあかんって言うんやったら私一人ででもやるで!」
としゃしゃり出た。

 そこに展示館見学から戻ってきたライスとアイースが口々に言った。
「今、聞こえたんだけどいいことじゃないか。みんなの歌で被災者を励まし、笑顔にする!これは、俺にはできないことだし、君らにしかできないことだ。君たちの「歌」を待ってくれている人がいるなら、時間が許す限りまわるべきだよ。」
「そうよ、ナッちゃん達の歌は海外でも「癒される」って凄い反響なのよ。歌詞の通じない外国人が言うんだから間違いないわよ。私は輪島に残っちゃって、みんなのライブを聞いてないからきちんと聞きたいし、それを海外の戦争で困ってる難民キャンプや戦場で暮らす市民に動画を送ってあげたいわ。」
 米子も「私も聞いてみたいわ。」と二人の後ろで大きく頷いている。 

 ナチュコを後押しする3人の意見に押されたマリーアはナチュコに確認した。
「「COSMO‘s」やるんやったら、「観光」や「美味しいもん巡り」は無しやで。それでもええんか?」
頷くナチュコ。
「慰問でまわるって言っても「ゲスト」として行くんやないから、「歌」うたう時以外は今まで通り「ボランティア」はするんやで!それでもええんか?」
再度頷くナチュコ。
「イケメンと「温泉卓球」も「カラオケ」も無しになるで。それでもええねんな?」
再々度頷くナチュコを見て、ピヨが「マリーア姉さん、ナッちゃんの気持ちはほんまもんやで!もともと持って生まれた「慈愛」の精神が「正義感」と共にナッちゃんの根底にはあるからな。」と助け船を出し、チャプローがピヨの味方に付いたことで「復興特使」受任が決定した。

 誠子が蟹夫に連絡を入れると速攻で県庁に連絡をして明日の昼に「能登半島地震復旧・復興推進部」を訪問することになった。外国人旅行者であるにもかかわらず11日間の献身的なボランティア活動が評価されライスとアイースも招待され、表彰されることとなった。
 その日の夕方に蟹夫も羽咋で合流した。1日フライングであるが、「復興特使」就任の報を聞いた菊姫と寿子が色紙に「COSMO‘s復興特使就任おめでとう!これからもみんなに笑顔を届けてね!」と中央に書き、その周りに珠洲中の避難者の寄せ書きをしたものを預かってきていた。COSMO’sの5人で色紙を持って「ありがとう」の動画メッセージを送ると、被災者からの励ましの応援メッセージ動画が送り返されてきた。
 「じゃあ、今日は「サンダーくん」お勧めの営業再開した「牛もつ屋」でも行ってお疲れさん会でもしましょうか!」
と誠子が誘ってくれたが、
「スーパーが再開してるんやったら、ここにいる人達と一緒に食べたいですから、みんなにごちそうさせてくださいな!」
とチャプローとピヨの意見が通った。その事をアイースがSNSにアップしたのでますますCOSMO‘sの評価と人気はあがった。

 翌朝の配食を済ませると、千里浜のはまなす温泉で12日ぶりに全身の汗を流した。ナチュコとピナは初めての温泉を非常に喜んだ。ゆっくりと熱めの湯に浸かり、2度繰り返し髪を洗った。湯上りの冷たい瓶「能登ミルク」を「正式な飲み方」の腰に手を当て、瓶を持つ小指を能登半島に見立てて立て、第一関節を少し曲げる「能登スタイル」でのどを潤し、誠子の用意してくれた新しい作業着に着替えた。蟹夫の運転する県のワゴンに5人の宇宙人とライスとアイースと誠子が乗り込み、車は復旧中の千里浜なぎさドライブウェイを特別に走らせてもらい、金沢市内に向かう自動車専用道に入った。

 金沢市内は、震災などなかったように普段通りの営みを過ごしていた。「これが普段の街やねんな。」、「次回来たときは、「金沢おでん」や「ハントンライス」と「ゴールデンソフト」食べよな!」、「日本の若い子の行く洋服屋さんも行ってみたいな。」、「あとは、カラオケやな。ケラケラケラ。」とナチュコとピナのガールズトークに花が咲いた。
 県庁に着くと、地元テレビ局が取材に来ていた。ちょっとしたスター気取りでなれないモデル歩きにチャレンジしたナチュコがかっこ悪く転ぶシーンが生中継で放映された。
 
 知事は不在だったため、担当課長から「復興特使」就任依頼があり、ライスとアイースと合わせて7人が表彰を受けるシーンが石川のケーブルテレビとローカル地上波テレビのニュースで流された。
 昼食は蟹夫が気を利かせて、近江町市場での高級「寿司店」を勧めてくれたが、全員の意見で庶民向けの「回転ずし」に連れて行ってもらうことを希望した。
「それくらいの予算はありますから大丈夫ですよ。」
と言う蟹夫に「いやいや、訳は後で分かりますから。」とチャプローの言葉の意味が店を出る段になって蟹夫は理解した。
 「毎度ありがとうございました。きっとお姉ちゃん二人が過去最高記録ですね。今まで最高だった、お相撲さんと男性プロレスラーの2倍は食べられましたね。」
と途中で魚の追加を買いに行く羽目になった店長がピヨとマリーアの前に1メートル以上積まれた皿を見て驚いていた。
 
 羽咋に戻る車の中で、蟹夫から今後の避難所慰問のスケジュールが渡された。今まで行ったことの無い七尾市で始まり、中能登町、「能登島」、穴水町、そして義勇の住む能登町、最大震度7を記録した志水町の名前に輪島、珠洲の孤立集落の名前が並んでいる。食材は既に電気が復旧した羽咋市を基地として県が用意してくれることになっているのでチャプローはメニューのイメージ作りに入っている。
 ライブは1ステージ60分。演目リストはアイースが作った石川社協ホームページ内の「COSMO‘s」特設ページで募集できるようになっている。また未だ混乱している被災地もあるので他エリアからの参加を規制する意味もあり、全てのライブの生配信予定が掲載されている。
「じゃあ、今日は思い切り贅沢させてもろたんやから明日からは気合入れて頑張るで!」と自称リーダーに就任したナチュコがときの声を上げた。



今日のおまけはリクエストもらってた「ネコ耳」(笑)。









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