【あとがき＆おまけ開始❗】「頑張ろう石川！」応援企画」！『COSMO’ｓ　～石川に墜落した５人のボランティア宇宙人アイドルの６７日の物語～』

M‐赤井翼

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第２章「災害ボランティア編」

「ニコニーコ艦隊出撃」

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「ニコニーコ艦隊出撃」

　地球時間２０２４年１月７日午前６時。地球に来て以来のルーチンでナチュコ以外はライスと一緒に被災者の為の朝食を用意している。珠洲に来てからの仲間のダンサー女子高校生の菊姫きっきとその先輩ダンサーの寿子がチャプローとマリーアの朝食の炊き出しの準備を手伝ってくれている。羽咋から来てくれた誠子と米子が宝立の避難所リーダーの雄電からいろいろとヒヤリングを受けている。特に石川県中の避難所で大変な問題として顕在化している「トイレ」問題とその処理方法で出来上がった「うんこ燃料」に興味を持っていたようである。
　朝食で鍋や食器を使う調理については「うんこ燃料」で十分に賄えていることから残り少ない「七輪炭」の使用を直火で炙るものに限る使用方法に切り替えることを決めた。
　また、夜間の照明には高価な「高澤蝋燭」をやむを得ず使っていたが、米子達が作った「能登牛脂蝋燭」の提供を受け当面の夜間の照明の目鼻がついたことに対し礼を伝えていた。

　ピヨとピナとライスは海辺に出て「蒸留水」づくりで一斗缶ボイラーをガンガン焚きつけている。２０リットルのポリタンクが４つ満タンになる都度、ピヨが両手に２つずつタンクをぶら下げてライスのピックアップトラックに運んでいる。
「ライスさん、私ね、昨日のライブの興奮がまだ残ってるねん。こんな大変な地で「歌」なんか歌ってええのかなって思ってたんやけど、ライブでみんなで歌った「明日は来るで」とラストの「ふるさと」で泣いてしもてん。
　着替えもない。お風呂も入られへん。いつ家に帰られるかもわからへん状況やのに最後はみんな笑顔になってたやんなぁ。もちろんチャプロー兄さんの美味しい料理もあるんやけど、「歌」にはそんな「美味しい料理」と同じようなパワーがあるんかなって思ったんやけどおかしいかな？」
海水を沸かしながらピナがライスに語り掛けた。

　「カラカラカラ。あれだけ素敵な歌とダンスを見せるピナちゃんのセリフとは思われないな。ピナちゃんとナッちゃんのツインセンターの５人の歌は世界最強、いや「宇宙最強」だよ！ナッちゃんにも言ったんだけど「歌」には「世界を変えるパワー」があるんだぜ。そのパワーを君たちは持ってると俺は信じてる。
　君たちの星のお父さんの言い分では「歌手」や「ダンサー」の地位は低いかもしれないけど、「職業に貴賎なし」っていうのかな？「歌手」や「ダンサー」には世界を変える力があると俺は思うよ。俺自身がナッちゃんとピナちゃんの「歌」の大ファンだからな。機会があったら「英語」の歌も聞かせて欲しいな。」
　ライスはピナに笑顔を向けるとピナがライスに逆質問をした。
「例えばどんな歌がええの。ユーチューブで聞ける曲ならみんなで練習するから教えて？輪島もそうやったけど、ここ珠洲も旅行中やったっていう外人さんも居るやん。その人らの対応を全部ライスさんに押し付けてしもてるから…。もし、私達の「歌」で外国からの被災者さんを癒せるならと思うんやけど。ライスさんのお勧めを教えてんか？」
と尋ねた。
「うーん、俺の趣味だけじゃなく世界に受け入れられるのはこの２曲かな？」
とタイトルと歌詞の内容を教えられ、湯沸かしと海水汲みの合間に何度もピナはユーチューブでその２曲を繰り返し聞き込んだ。（ふーん、地球にもこんなに素敵なメッセージを含んだ歌詞とメロディーの歌があるのね…。お父さんが言う「未開の星」の文化も捨てたもんじゃないやん。）とピナは５人で歌うことをイメージして鼻歌を歌い続けた。

　午前６時半、３人が大量の蒸留水を持って避難所に戻ると、すっかり朝食が出来上がっていた。昨日、義勇が持って来てくれた「生乳」と大量に残っていた鮭おむすびに誠子が持って来てくれた鶏モモの燻製を刻んだものを入れ煮込んだ「チキン＆サーモンのクリームリゾット」と同じく余った鮭おにぎりに白身魚の干物をばらして混ぜた「さっぱり焼きめし」が用意されていた。希望者には「鶏スモーク」、「魚の干物」も用意されていた。
　皆に遅れて起きたナチュコは、戻ってきたピナからライスが奨めてくれた歌を聞き「あー、寝坊助ねぼすけな自分を恨むわ。こんな素敵な歌を聞かされたらその場で歌って聞かせてあげたかったわ。私、ライスに「ゴジラ対モスラ」の小人姉妹の歌の話をしたことがあったんよなぁ…。」と悔いた。

　朝食の配膳が始まると避難者の皆から「昨日の歌はよかったよ。今夜も聞かせてもらいたいね。」、「みんなのおかげで「生きていく勇気」が出てきたよ。星に帰れないあんた達と比べたら育った街にいられるだけ私たちの方が１００倍ましだって思うようになったわ。」と声を掛けられた。
　その中で「あなたたちの歌が「ユーチューブ」や「TikTok」でバスってるわよ！あなたたちも「全国区」どころか「ワールドワイド」な有名人だったのね！後でサインもらえる？」と言われたことでピナがスマホで検索をすると輪島朝市組合や輪島市社協のアカウントでいくつものピヨ達の避難所で歌う動画がアップされていた。
　既に１０万再生を越え「広告」が表示されているものもあり、動画説明欄には「広告料収入は全て輪島社会福祉協議会で復興事業に充てさせていただきます。」とコメントがあがっていた。

　アイースの携帯にショートメールを入れると「勝手にアップしてごめんね！あんなに素晴らしい歌を私達だけで聞くのはもったいないと思ってね。輪島朝市の復興予算に充てられるから、許してちょんまげ(笑)！」と返事が来た。
　続いて「母国イスラエルやガザの人たちにもみんなの活動を知って欲しいからＳＮＳで現地のインフルエンサーにリンク張ってるからね！（事後承諾でごめんね！）」とメールが来た。
　その話を雄電たちにすると、バターづくりダンスに昨晩のライブを珠洲市復興委員会を代表して社会福祉協議会で動画をアップすることを希望され、マリーアは「みんなの役に立つんやったらかまへんよ。」と快諾した。
　すぐにアカウントを作成し、昨晩の１時間弱のライブ動画を４本に分割してアップすると見る見るうちに閲覧数がアップした。そのコメント欄に「この５人組って何て言うグループですか？教えてください。」と言うものが複数あった。菊姫が雄電と寿子に言った。
「私達で彼女たちのグループ名を募集してみんなで命名しましょ！」

　避難所の掲示板に「宇宙からのスーパーガールズ＆ウルトラコックさんのグループ名募集します！避難所入り口に投票箱を置いてますのでかっこいい名前を考えてくださいね！」と寿子が書き込んだ。
　昼食は残ったコッペパンをミキサーで粉砕し、わずかに残った強力粉とイースト菌を混ぜ、昨日みんなで作ったバターでチャプローが「簡易クロワッサン」を焼いた。焼いたパンを粉砕した粉を混ぜたことで「ざらざら感」が出ることを心配したが、大量の手作りバターでコシの出たパン生地をこん棒で伸ばす係のピヨの怪力のおかげで通常たっぷりとバターを練り込んだパン生地を三つ折りにすることを３回繰り返すことで２７層になるクロワッサンが４回の折り返しの８１層のクロワッサンの「パン元」ができた。
　羽咋からの差し入れの卵を溶きパン元の表面に塗ると一斗缶で作ったオーブンでチャプローは焼き始めた。１８０度で２０分、焼き立てパンのいい香りが避難所に漂い始めた。ふわふわサクサク食感のクロワッサンが一斗缶から出てくると被災者の皆から大きな拍手が起こった。
　
　皆、思い思いのバターやチーズを載せてお腹いっぱいになるまで濾過なしの濃い「生乳」と併せての昼食を楽しんだ。みんなが笑顔になる中、「ナッちゃん、歌ってよ！」、「ピナちゃん、夜まで待たれないよ！」という声にこたえて５曲だけ歌った。夜に向けては避難所入り口に「リクエストボックス」が設置され皆から聞きたい曲が集められた。
　５人の宇宙人が来て２０時間で避難所の雰囲気は１８０度変わったことに皆が感謝していた。
　

　ところを移して「ニコニーコ星」の宇宙軍星間移動艦隊司令部CICコンバット・インフォメーション・センター。地球に墜落したプリンセス達の初報が入って１週間が経っていた。地球時間２月１日、ニコニーコ星本星ではすっかり「地球侵攻」の準備が進んでいた。
　一日おきに、母星に入ってくる情報により、母星の軍情報部には地球時間１月７日朝までの画像データが届いていた。プリンセス達は「飯炊き」、「配膳」、「水造り」、「水の運搬」、「瓦礫処理等の肉体労働」の実情が把握できてきた。音声の無い上空からの望遠カメラの映像による情報であるが朝５時から夜半未明にかけて２０時間以上の地球人に対する奉仕活動がほぼ休憩時間無く、強要され続けていることが分かった。
　地球時間１月５日の輪島２日目のピヨとマリーアの「糞尿処理」の動画がカズーシ大統領の前で流された時は
「うちの大事な娘プリンセスに「糞尿処理」をさせるとは何たる屈辱！たかが太陽系のちっぽけな未開な星のくせして何ちゅうことしてくれてけつかんねん！
　即刻、「宣戦布告」や！我が娘達《プリンセス》を奪回したら「惑星破壊爆弾」でもええし、５０００年前みたいに再度星全体を「水没」させるように「水彗星」を重力軌道上に送り込んでやるのもええやろ！せいぜい「なんちゃらの箱舟」でも作って水没した星で４０日間自分たちの取った愚かな行為を反省させたるわ！」
と即開戦モードに入った。
　さらに１月６日の珠洲でのピヨのミルク缶振りでバターを作るシーンでは
「地球人は３５０CCから２リットルなのになぜピヨだけ４０リットルの容器を振らされてるんや！これは明らかに「いじめ」を通り越して「虐待」やろ！」
と大騒ぎし、夕食の後、皆の希望を断り切れずに無理やりマイク代わりのトイレットペーパーの芯を持たされ５人で歌わされるライブシーンを見て叫んだ。何度も起こるアンコールで舞台を下がっても下がっても繰り返される「歌の奉仕」の強要についに大統領がキレた。
「なんじゃこりゃ！娘たちを地球人の囚人たちのさらし者にしてるんかい！それともこりゃ「囚人」となった娘達への「パワハラ」かい！何度も何度も「さらし者」にする行為を繰り返しやがって！
　この「ニコニーコ星人」に対して下等な地球人は最後の一線を越えやがったな！これはアブグレイブ刑務所での虐待どころとちゃうぞ！参謀長、今すぐ出撃や！愚かな地球人に「後悔」と言う言葉の意味を教えたれ！いや、地球人は「皆殺し」や！」
　残念な事にＣＩＣには日本の文化やボランティアに対する知識を持つ将校は居らず、大統領の「無慈悲」な命令は実行されることとなった。

いよいよ、明日は折り返し点です。

今日は、一部にファンがついてる「ニコニーコ・ウトー・カズーシ」大統領です！
怒ってます！