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「作戦会議」
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「作戦会議」
朝5時46分の日の出だった舞鶴の秋分の日の日没は17時55分だった。3人を乗せたゴムボートはアンジャ島の秘密の洞穴を竜宮浜に向けて出発した。
「ほんま、秋分の日は昼と夜が半々やねんな。」
と言いながら太陽が落ちる「博奕岬」に向けてオールを漕ぐ比呂が竜宮浜のテントの前のバーベキューコンロの前にいる見慣れない男の姿に気付いた。比呂は一番に尋ねた。
「相棒、あのコンロの前に居る男って、昨日見かけたっていう相棒と月ちゃんの幼馴染か?」
「せやなって、言う前にその「相棒」っていうのやめんかい!照紗輝の前でその呼び方したら海に放り込んだるからな!」
といつもの調子で一番が答えた。
18時17分の満潮でテントに一番近い位置で上陸したボートを大樹と太が迎えた。一番は最初にボートを飛び降りると、照紗輝にむかって走り、会うやいなや拳骨を照紗輝の頭に落とし浜中に聞こえるような大声で叱った。
「あほっ!お前何してるんや!自分のしてることわかってるんやろな!」
あまりの一番の勢いに照紗輝は、固まってしまい、2度目の拳骨が振り上げられた時、月子が2人の間に割って入った。
「お兄ちゃんやめて!照紗輝君もこうして来てくれたんやから、きちんと話をしようよ。」
太が昨晩、照紗輝のスマホをリペアショップが行う「強制起動」(注34)の操作で立ち上げて、「クローンスマホ」(注35)のアプリをインストールした事で、太のスマホで照紗輝の電話履歴やライン、メール等の各種アプリの利用履歴を確認し、昨日は覚せい剤取引での上納金が集められず脅されたことを把握していた。
今朝、「第三火薬廠」に照紗輝が朝8時には探しに来て各所に入れた電話やメッセージも太のスマートフォンで確認することができたので、月子が電話を入れ説得しこの場に呼び出したことが月子から語られた。
「お兄ちゃん、明日の午後3時に照紗輝君はまた「第三火薬廠」でマフィアに呼び出されてるねん。何とか私達で助けてあげられへんかな?」
月子が一番に言うと一番が答える前に比呂が
「もちろん私達で解決するがな。月ちゃんのお友達は自分の罪を認めてきちんと警察に行くんやったら、応援するのが「男気」ってもんやろ!なあ、相棒!」
と声を上げると、それに続いて一番も吠えた。
「あほっ、「相棒」ちゃうわ!それに「男気」って、おまえ「女」やないか。ただ、照紗輝には、昔の素直で優しい照紗輝に戻ってもらいたい。少なくとも「薬物」を扱うような事は絶対にやめさせなあかん。そもそも「覚せい剤」なんか扱う悪者は放っておかれへんからな。ここは俺ら「ヒーロー部」がほんまもんの「ヒーロー」たるために俺は闘うで!」
それまで黙って聞いていたヒーロー部顧問の母須野が口を開いた。
「わかった。青田たちが帰ってくるまでに阿久野君から敵の「情報」は聞いてる。外貨である「円」を稼ぎに来た「北」の工作員のようやな。
阿久野君の話やと分かってるだけで敵は8人。昨日会った4人以外に明日は4人のマフィアが来る可能性がある。人員的には阿久野君も入れれば俺達と同じだが、敵は「拳銃」を持ってる。」
「せやったら、私らも回天に積まれてた300キロの火薬で爆弾でも作ったら?」
比呂の真面目な突っ込みに母須野は冷静に答えた。
「それはあかん。俺達は「ヒーロー」や。「ヒーロー」が法を犯すわけにはいけへん。「合法」の元、闘わなあかん。それにはしっかりとした「作戦」と準備が必要や。
もちろん「降りる」のも一つの考えや。「公権力」に任せてしかるべき裁きを受けさせるのもありや。
危険が伴う作戦になるから、しっかりと話し合うようにせえよ。」
ヒーロー部の6人は頭を寄せ合った。誰一人、戦いから降りる者はいなかった。月子と美津恵の作った海鮮料理を食べながら、一番を中心に作戦が組み立てられていく。
6人のスペシャリストにより「合法武器」と「合法防具」の案が次々と挙げられていく。一通りの作戦が組みあがると時刻は21時を回っていた。
「じゃあ、明日に備えてあとは楽しく飲むか!」
の一番の提案で宴会が始まった。その様子を母須野はあるメカをいじりながら、7人を微笑んで見守っていた。
翌朝、日の出とともに各自が各々の役目に合わせた準備に入った。比呂以外はテントの前で作業に入っている。
美津恵は、ワゴン車の中からいろいろと材料を取り出しながら楽しそうに作業をしている。
「相手が拳銃を持ってるってことだからしっかりと防御もしなきゃねー!まな板やパエリア鍋にポリカーボネートフィルムを貼れば簡単防弾プレートの出来上がりやで。本物のキューティーハニーなら「空中元素固定装置」で何でもできちゃうんだろうけどねー。ケラケラケラ。」
太はノートパソコンを開いて、「準天頂衛星システムみちびき」(注36)のホームページにリンクしている。一通りの入力を済ませると皆に声をかけた。
「みんなのスマホ貸してくれませんか。共通リンクアプリを入れて、リアルタイムに皆さんがどういう状況なのか把握できるようにしますので。」
大樹はバイクのセッティングに没頭していた。いざという時、追跡役を担当するための「秘密兵器」も準備しながら、母須野に尋ねた。
「母須野先生、車に積んではる「UDAP」(注37)使わせてもらっていいですか?まあ、使わずに済むのが一番なんですけどね。」
了解を得ると、この夏のアルバイトで購入したばかりの「秘密兵器」に装着して呟いた。
「絶対に悪い奴は逃がさへんで。俺と俺の兄弟ザボーガー号でな!」
一番は月子と一緒にどこかに電話している。
「先生、ご無沙汰してます。3年前の卒業の青田一番と2年前卒業の青田月子です。先生、転勤で舞鶴高専に移られたって伺ってるんですけど、今日の午後「ASTACO」(注38)お借りしたいんです。」
数分の電話の後、「では、お借りさせていただきます。」と一番が電話を切ると月子が尋ねた。
「お兄ちゃん、「アスタコ」ってなになん?」
一番はスマホで検索したユーチューブの動画を月子に見せ、どや顔で言った。
「でや、カッコいいやろ。改めて言うけど、俺は「タキシード仮面」よりマジンガーZの「兜光司」が好きやねん。今日は俺の「ロボ戦」デビューやから、しっかりと動画で記録してくれよ。」
「うーん、「ロボ」というより「カニ」って感じやな…。」
と月子は微妙な顔をしていた。
そこにペットボトルと自然薯を担いだ泥まみれの比呂が戻ってきた。鞄の中からオリジナルのスタンガンやスタンバーを取り出し、美津恵と月子に一つずつ渡すと、電動モデルガンを取り出し、バッテリーに細工を始めた。
興味を持った大樹と太が比呂の元に寄ってきて尋ねた。
「比呂ちゃん、バッテリーに分割分断回路組んだら電圧落ちてパワー無くなるんとちゃうの?敵はほんまもんの銃持ってるんやで。ディチューンしてどないすんねんな。」
「比呂先輩、その弾、普通の「BB弾」じゃないですよね。それにその自然薯とペットボトルの中のドロッとしたものは何ですか?」
比呂は作業しながら二人に説明した。
「バッテリーに分割分断回路を組んだんは、大樹が言うようにパワーを落とすため。それは太君に言ったこの「カスタムペイント弾」を使う為やねん。
昔のサバゲーでは当たったのに自主申告せえへん「ゾンビ行為」を認めへんように当たったら弾が割れて中の塗料がぶちまけられる「カスタムペイント弾」っていうのがあったんよ。
今のパワーのある電動ガンで撃ったら、銃身の中で破裂してしまうからな。中身はこれや。」
と自然薯と謎の液体の入ったペットボトルを二人に見せ、そのプランの内容を説明した。
「デカレッドも2丁拳銃の名手やけど、「ジュークンドー」(注39)は銃で敵を倒すっていうより基本は「格闘技」との融合技やからな。敵の銃を無力化できればそれでええやろ。」
その様子を見ていた母須野がやってきて比呂に一つのダイヤル式のバルブとその先にノズルのついた金属製のボトルと「面体マスク」を差し出した。
「ん?先生、これってチタンボトルですか?容量的には1リットルってところですけど中身は何ですか?」
比呂が尋ねると、母須野が簡単にボトルの構造と機能について説明をした。中身は高圧充填された酸素で、圧延鋼板の溶接ボンベと違い、チタン合金の削り出しで作られているため、従来ボンベの10倍の容量があるという。
「赤井が持ってるのは自然薯と「漆」やろ。何をしようとしてるのかは想像がつく。このボンベは「噴射機」の圧縮空気としても使える。漆を噴霧する際は自分が喰らわんように「面体」は使えよ。
まあ、マックスで噴射すればヘビー級のパンチ並みの「空気砲」にもなるからな。これはやるから、何かあったときに使えばええよ。」
と言うと、ワゴンに戻っていった。
母須野はこの二日間で空いたペットボトルを集めて、砂を5分の1程入れた後、海水を3分の1程入れると、キャップに細工をして電動コンプレッサーで空気を注入している。
十数本のペットボトルに注入し終わるとベルトにかけられるよう針金でフックをつけていった。そして、車のトランクからアメリカ軍特殊部隊も使用している常人の100倍の力が出せるという「外付けパワード関節」を取り出すと短パンとTシャツになりを手首から肘と膝に装着し2サイズ程大きなダボっとした作業ズボンと長袖のブルゾンに着替えた。
(注34)「強制起動」
大きい声では言えないが、スマホやパソコンには起動パスワード無しで起動できる裏技がある。
しかし、ここで書くわけにもいかないので「やり方」については割愛する。
(注35)「クローンスマホ」
元々は、「子供」の使用状況を「親」が確認することを元に作られたアプリなのだが、実際の使い方は「大人同士」で使う事が多い。
遠隔操作で通信、メッセージ履歴等が筒抜けになるどころか、カメラの起動、勝手発信など何でもできてしまう。
「なつ&陽菜犯科帳」の良太郎ご用達のこのアプリは簡単にインストールすることができる。
自分のスマホが覗かれていると心配な人は「覚えのないアプリ」がインストールされていないかチェックすることを薦める。
(注36)「準天頂衛星システムみちびき」
いわゆる先進技術の粋を極めた「日本版GPS」。
位置誤差「6センチ」とも言われる制度と打ち上げコストが世界最低水準のH3ロケットとの組み合わせで、これからの「自動運転」に活かせれば「欧米」自動車メーカーだけで100兆円を生み出す「金の卵」と噂されているが、「大人の事情」で活用が今一つ進んでいないのがこの国の「政治力」の現実である。
(注37)「UDAP」
拙著でやたらと登場する「アメリカ森林警備隊」ご用達の「クマ撃退スプレー」。
「灰色熊」対応のこのスプレーは日本でも簡単に手に入る。
悪用は絶対に厳禁。
(注38)「ASTACO」
日立建機製「災害救助用重機ASTACO」は2本の巨大な爪のついたアームを使い、動かす様は「メカフェチ」にはたまらないマシーンである。
文字では言い表せないので、是非とも「ユーチューブ」等で「ASTACO」の雄姿を見て欲しい!
(注39)「ジュークンドー」
前述の「特捜戦隊デカレンジャー」の「デカレッド」が使う、2丁拳銃と格闘技の総合技。
とにかく「かっこいい」の一言!
「おまけ」
今日もすみません。
先に謝っておきますが「ボツ絵」です。
しかも、ずっと使ってきている「AIイラスト」での「ヒーロー部3人娘」のイラストです。
(。-人-。) ゴメンネ
髪色とか髪型が指定できる「AIイラスト」の方が作画しやすいんだけど、今回は「PixAi]指定だったんで、事前に作っていた女の子のイラストはオール「ボツ」!
ここで「供養」させてください(笑)!
朝5時46分の日の出だった舞鶴の秋分の日の日没は17時55分だった。3人を乗せたゴムボートはアンジャ島の秘密の洞穴を竜宮浜に向けて出発した。
「ほんま、秋分の日は昼と夜が半々やねんな。」
と言いながら太陽が落ちる「博奕岬」に向けてオールを漕ぐ比呂が竜宮浜のテントの前のバーベキューコンロの前にいる見慣れない男の姿に気付いた。比呂は一番に尋ねた。
「相棒、あのコンロの前に居る男って、昨日見かけたっていう相棒と月ちゃんの幼馴染か?」
「せやなって、言う前にその「相棒」っていうのやめんかい!照紗輝の前でその呼び方したら海に放り込んだるからな!」
といつもの調子で一番が答えた。
18時17分の満潮でテントに一番近い位置で上陸したボートを大樹と太が迎えた。一番は最初にボートを飛び降りると、照紗輝にむかって走り、会うやいなや拳骨を照紗輝の頭に落とし浜中に聞こえるような大声で叱った。
「あほっ!お前何してるんや!自分のしてることわかってるんやろな!」
あまりの一番の勢いに照紗輝は、固まってしまい、2度目の拳骨が振り上げられた時、月子が2人の間に割って入った。
「お兄ちゃんやめて!照紗輝君もこうして来てくれたんやから、きちんと話をしようよ。」
太が昨晩、照紗輝のスマホをリペアショップが行う「強制起動」(注34)の操作で立ち上げて、「クローンスマホ」(注35)のアプリをインストールした事で、太のスマホで照紗輝の電話履歴やライン、メール等の各種アプリの利用履歴を確認し、昨日は覚せい剤取引での上納金が集められず脅されたことを把握していた。
今朝、「第三火薬廠」に照紗輝が朝8時には探しに来て各所に入れた電話やメッセージも太のスマートフォンで確認することができたので、月子が電話を入れ説得しこの場に呼び出したことが月子から語られた。
「お兄ちゃん、明日の午後3時に照紗輝君はまた「第三火薬廠」でマフィアに呼び出されてるねん。何とか私達で助けてあげられへんかな?」
月子が一番に言うと一番が答える前に比呂が
「もちろん私達で解決するがな。月ちゃんのお友達は自分の罪を認めてきちんと警察に行くんやったら、応援するのが「男気」ってもんやろ!なあ、相棒!」
と声を上げると、それに続いて一番も吠えた。
「あほっ、「相棒」ちゃうわ!それに「男気」って、おまえ「女」やないか。ただ、照紗輝には、昔の素直で優しい照紗輝に戻ってもらいたい。少なくとも「薬物」を扱うような事は絶対にやめさせなあかん。そもそも「覚せい剤」なんか扱う悪者は放っておかれへんからな。ここは俺ら「ヒーロー部」がほんまもんの「ヒーロー」たるために俺は闘うで!」
それまで黙って聞いていたヒーロー部顧問の母須野が口を開いた。
「わかった。青田たちが帰ってくるまでに阿久野君から敵の「情報」は聞いてる。外貨である「円」を稼ぎに来た「北」の工作員のようやな。
阿久野君の話やと分かってるだけで敵は8人。昨日会った4人以外に明日は4人のマフィアが来る可能性がある。人員的には阿久野君も入れれば俺達と同じだが、敵は「拳銃」を持ってる。」
「せやったら、私らも回天に積まれてた300キロの火薬で爆弾でも作ったら?」
比呂の真面目な突っ込みに母須野は冷静に答えた。
「それはあかん。俺達は「ヒーロー」や。「ヒーロー」が法を犯すわけにはいけへん。「合法」の元、闘わなあかん。それにはしっかりとした「作戦」と準備が必要や。
もちろん「降りる」のも一つの考えや。「公権力」に任せてしかるべき裁きを受けさせるのもありや。
危険が伴う作戦になるから、しっかりと話し合うようにせえよ。」
ヒーロー部の6人は頭を寄せ合った。誰一人、戦いから降りる者はいなかった。月子と美津恵の作った海鮮料理を食べながら、一番を中心に作戦が組み立てられていく。
6人のスペシャリストにより「合法武器」と「合法防具」の案が次々と挙げられていく。一通りの作戦が組みあがると時刻は21時を回っていた。
「じゃあ、明日に備えてあとは楽しく飲むか!」
の一番の提案で宴会が始まった。その様子を母須野はあるメカをいじりながら、7人を微笑んで見守っていた。
翌朝、日の出とともに各自が各々の役目に合わせた準備に入った。比呂以外はテントの前で作業に入っている。
美津恵は、ワゴン車の中からいろいろと材料を取り出しながら楽しそうに作業をしている。
「相手が拳銃を持ってるってことだからしっかりと防御もしなきゃねー!まな板やパエリア鍋にポリカーボネートフィルムを貼れば簡単防弾プレートの出来上がりやで。本物のキューティーハニーなら「空中元素固定装置」で何でもできちゃうんだろうけどねー。ケラケラケラ。」
太はノートパソコンを開いて、「準天頂衛星システムみちびき」(注36)のホームページにリンクしている。一通りの入力を済ませると皆に声をかけた。
「みんなのスマホ貸してくれませんか。共通リンクアプリを入れて、リアルタイムに皆さんがどういう状況なのか把握できるようにしますので。」
大樹はバイクのセッティングに没頭していた。いざという時、追跡役を担当するための「秘密兵器」も準備しながら、母須野に尋ねた。
「母須野先生、車に積んではる「UDAP」(注37)使わせてもらっていいですか?まあ、使わずに済むのが一番なんですけどね。」
了解を得ると、この夏のアルバイトで購入したばかりの「秘密兵器」に装着して呟いた。
「絶対に悪い奴は逃がさへんで。俺と俺の兄弟ザボーガー号でな!」
一番は月子と一緒にどこかに電話している。
「先生、ご無沙汰してます。3年前の卒業の青田一番と2年前卒業の青田月子です。先生、転勤で舞鶴高専に移られたって伺ってるんですけど、今日の午後「ASTACO」(注38)お借りしたいんです。」
数分の電話の後、「では、お借りさせていただきます。」と一番が電話を切ると月子が尋ねた。
「お兄ちゃん、「アスタコ」ってなになん?」
一番はスマホで検索したユーチューブの動画を月子に見せ、どや顔で言った。
「でや、カッコいいやろ。改めて言うけど、俺は「タキシード仮面」よりマジンガーZの「兜光司」が好きやねん。今日は俺の「ロボ戦」デビューやから、しっかりと動画で記録してくれよ。」
「うーん、「ロボ」というより「カニ」って感じやな…。」
と月子は微妙な顔をしていた。
そこにペットボトルと自然薯を担いだ泥まみれの比呂が戻ってきた。鞄の中からオリジナルのスタンガンやスタンバーを取り出し、美津恵と月子に一つずつ渡すと、電動モデルガンを取り出し、バッテリーに細工を始めた。
興味を持った大樹と太が比呂の元に寄ってきて尋ねた。
「比呂ちゃん、バッテリーに分割分断回路組んだら電圧落ちてパワー無くなるんとちゃうの?敵はほんまもんの銃持ってるんやで。ディチューンしてどないすんねんな。」
「比呂先輩、その弾、普通の「BB弾」じゃないですよね。それにその自然薯とペットボトルの中のドロッとしたものは何ですか?」
比呂は作業しながら二人に説明した。
「バッテリーに分割分断回路を組んだんは、大樹が言うようにパワーを落とすため。それは太君に言ったこの「カスタムペイント弾」を使う為やねん。
昔のサバゲーでは当たったのに自主申告せえへん「ゾンビ行為」を認めへんように当たったら弾が割れて中の塗料がぶちまけられる「カスタムペイント弾」っていうのがあったんよ。
今のパワーのある電動ガンで撃ったら、銃身の中で破裂してしまうからな。中身はこれや。」
と自然薯と謎の液体の入ったペットボトルを二人に見せ、そのプランの内容を説明した。
「デカレッドも2丁拳銃の名手やけど、「ジュークンドー」(注39)は銃で敵を倒すっていうより基本は「格闘技」との融合技やからな。敵の銃を無力化できればそれでええやろ。」
その様子を見ていた母須野がやってきて比呂に一つのダイヤル式のバルブとその先にノズルのついた金属製のボトルと「面体マスク」を差し出した。
「ん?先生、これってチタンボトルですか?容量的には1リットルってところですけど中身は何ですか?」
比呂が尋ねると、母須野が簡単にボトルの構造と機能について説明をした。中身は高圧充填された酸素で、圧延鋼板の溶接ボンベと違い、チタン合金の削り出しで作られているため、従来ボンベの10倍の容量があるという。
「赤井が持ってるのは自然薯と「漆」やろ。何をしようとしてるのかは想像がつく。このボンベは「噴射機」の圧縮空気としても使える。漆を噴霧する際は自分が喰らわんように「面体」は使えよ。
まあ、マックスで噴射すればヘビー級のパンチ並みの「空気砲」にもなるからな。これはやるから、何かあったときに使えばええよ。」
と言うと、ワゴンに戻っていった。
母須野はこの二日間で空いたペットボトルを集めて、砂を5分の1程入れた後、海水を3分の1程入れると、キャップに細工をして電動コンプレッサーで空気を注入している。
十数本のペットボトルに注入し終わるとベルトにかけられるよう針金でフックをつけていった。そして、車のトランクからアメリカ軍特殊部隊も使用している常人の100倍の力が出せるという「外付けパワード関節」を取り出すと短パンとTシャツになりを手首から肘と膝に装着し2サイズ程大きなダボっとした作業ズボンと長袖のブルゾンに着替えた。
(注34)「強制起動」
大きい声では言えないが、スマホやパソコンには起動パスワード無しで起動できる裏技がある。
しかし、ここで書くわけにもいかないので「やり方」については割愛する。
(注35)「クローンスマホ」
元々は、「子供」の使用状況を「親」が確認することを元に作られたアプリなのだが、実際の使い方は「大人同士」で使う事が多い。
遠隔操作で通信、メッセージ履歴等が筒抜けになるどころか、カメラの起動、勝手発信など何でもできてしまう。
「なつ&陽菜犯科帳」の良太郎ご用達のこのアプリは簡単にインストールすることができる。
自分のスマホが覗かれていると心配な人は「覚えのないアプリ」がインストールされていないかチェックすることを薦める。
(注36)「準天頂衛星システムみちびき」
いわゆる先進技術の粋を極めた「日本版GPS」。
位置誤差「6センチ」とも言われる制度と打ち上げコストが世界最低水準のH3ロケットとの組み合わせで、これからの「自動運転」に活かせれば「欧米」自動車メーカーだけで100兆円を生み出す「金の卵」と噂されているが、「大人の事情」で活用が今一つ進んでいないのがこの国の「政治力」の現実である。
(注37)「UDAP」
拙著でやたらと登場する「アメリカ森林警備隊」ご用達の「クマ撃退スプレー」。
「灰色熊」対応のこのスプレーは日本でも簡単に手に入る。
悪用は絶対に厳禁。
(注38)「ASTACO」
日立建機製「災害救助用重機ASTACO」は2本の巨大な爪のついたアームを使い、動かす様は「メカフェチ」にはたまらないマシーンである。
文字では言い表せないので、是非とも「ユーチューブ」等で「ASTACO」の雄姿を見て欲しい!
(注39)「ジュークンドー」
前述の「特捜戦隊デカレンジャー」の「デカレッド」が使う、2丁拳銃と格闘技の総合技。
とにかく「かっこいい」の一言!
「おまけ」
今日もすみません。
先に謝っておきますが「ボツ絵」です。
しかも、ずっと使ってきている「AIイラスト」での「ヒーロー部3人娘」のイラストです。
(。-人-。) ゴメンネ
髪色とか髪型が指定できる「AIイラスト」の方が作画しやすいんだけど、今回は「PixAi]指定だったんで、事前に作っていた女の子のイラストはオール「ボツ」!
ここで「供養」させてください(笑)!
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初めての投稿です!
この度、RBFCの「あーくん」さんの協力を得て「音玄万沙ちゃんファンクラブを立ち上げました!
私が小説を書くわけじゃないんですけど、赤井翼先生と現在、連載中の『ながらスマホで56歳のおっさん霊を憑依させざるを得なくなった23歳の女劇団員「音玄万沙《ねくろ・まんさ》」の物語』を全力で応援する会として、「感想欄に書ききれない作品に対する思い」を書き連ねていこうと思いまーす!
「音玄万沙ちゃん」の読者の皆さんに読んでもらえたら嬉しいです(笑)。
では、よーろーひーこー!
【完結】『夏子と陽菜の犯科帳4 THE FINAL~カルト新興宗教「魂の解放」から洗脳娘を救い出せ!~』
M‐赤井翼
現代文学
第3話から1年開いての「なつ陽菜犯科帳」の最終話です。
過去のお約束通り、最後はなっちゃんも陽菜ちゃんの「花嫁姿」で終わります!
今度の「敵」は、門真に転居してきた「武装カルト宗教組織」です。
偶然出会った、教団に妹を奪われたイケメン日南田大樹(ひなた・ひろき)の為になっちゃん&陽菜ちゃんと「やろうぜ会」メンバーが頑張ります。
武装化された宗教団体になっちゃん、ひなちゃん、そして「やろうぜ会」がどう戦いを挑むのか!
良太郎の新作メカも出てきます!
最終回という事で、ゲストとして「余命半年~」シリーズの稀世ちゃんと直さんも緊急参戦!
もう、何でもござれの最終回!
12月29日までの短期連載です!
応援お願いしまーす!
(⋈◍>◡<◍)。✧♡
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