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「旧友再会」

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「旧友再会」

 大樹は自ら打った拳銃の銃身バレルに手を添え、さっきよりも熱を持っていることを確認した。
「これって本物?いったいさっきの奴らは何もんや!さっきの灯りの先で誰か撃たれてるんとちゃうか?これは急がなあかんやろ!」
 大樹が先頭を切って先程灯りが見えた建屋に向けて駆け出した。その後を6人が続いた。

 先程、灯りが見えた建物は派手なスプレーアートが壁に施され、割れたウイスキーのボトルやビールや缶チューハイの空き缶にたばこの吸い殻や雑に捨てられたコンビニ袋と弁当や丼等のごみが散乱した、「いわゆる廃墟スポット」だった。人影はないが床にわずかな血痕が確認された。
 比呂が指でなぞると血痕が筋を引いて伸びたことから、「今の今」落ちた血液によってできた血痕であることは明白だった。その背後の壁には銃痕が確認され、一番がビクトリノックスの十得ナイフで壁をほじるとへしゃげた拳銃弾がコロリと床に落ちた。
「おーい、誰か居るんかー?私らは「東大阪産業大学ヒーロー部」!「正義の味方」やから安心して出ておいでやー!」
 比呂が殺伐とした廃墟の中で声をかけた。

 構内に1分の沈黙が流れた。
「響いた銃声は1発。この流血量やったらかすり傷やろ。撃たれた奴ももうどこか行ったんとちゃうか?」
の一番が呟くと、「ガサッ」と物音がしたガラスの無い窓枠の外を月子がLEDのハンディーライトを向けた瞬間、頬から血を流す若い男の顔が照らし出された。
「えっ、照紗輝てさき君!?」
と月子が叫ぶと同時に一番もその男の顔を確認して
「あ、阿久野照紗輝あくの・てさきか?」
と声をかけた。
 
 頬から血を流した男の影は慌てて建物の裏の藪こぎの中に走って逃げだした。一番と月子が追いかけたが月が陰り出し、暗闇の中「男の影」を追いかけることは不可能だった。
 一番と月子が建屋に戻ると比呂が心配そうに二人に声をかけた。
「さっきの血を流してた人って知り合いなん?もしかして拳銃を持ってた4人組に撃たれた被害者ってこと?でも、なんで逃げんの?」

矢継ぎ早の質問に答えられないでいる二人と比呂の間に大樹が言葉を挟んだ。
「さっき拾った拳銃は、母須野先生の見立てによるとロシア製「トカレフTT-33」じゃなく、北朝鮮が独自に改良生産した「68式拳銃」らしいですわ。
 一番先輩が壁から掘り出した弾も弾倉に残ってた弾丸見ても一般的な西側諸国で使われる9ミリ弾と違って7.62ミリ弾やろうってことと、美津恵ちゃんが聞いた「ハングル」、そして「細い注射器」と白い粉の入った「パケット」…。
 噂に聞く「北」の覚せい剤取引の現場に居合わせたんとちゃいますか?先生は舞鶴警察に連絡することを提案されてますけど、さっきの…」
と言いかけた瞬間に比呂が割って入った。
「月子ちゃん、「テサキ君」って逃げた奴に声掛けてたし、「相棒」も同じ名前言ってまたやんな?二人の知り合いって言うんやったら、警察に言う前にとりあえず「ヒーロー部」で探りましょや。」

 比呂の割り込みで話は止まった。なぜ「照紗輝てさき」がこの場から逃げたのかに議論はむいた。「悪人に銃で撃たれた被害者であれば逃げる必要はない。逃げたからには、奴らの「一味」とちゃうか?」という意見と「突然の知り合いに見られて逃げただけって考えもあるんとちゃう?もしかして私らを「悪もん」の手先って思ったかもしれへんし…。」と議論がまとまらない間に、太が建物の外でスマホを拾ってきた。
 電源スイッチを押すと電池の残り残量は86%を示しているから、長期間放置されているスマホではないことが確認された。電源は入るが「PINコード」入力の画面は「6桁」設定されており、適当に押してロックがかかることを避けてそのままにしておいた。
 
 母須野の意見で月子が言う「照紗輝」の携帯電話にかけたところそのスマホが鳴ったので持ち主は月子の同級生であり、一番の幼馴染の後輩でもある「阿久野照紗輝あくの・てさき」であることが確定したので、舞鶴警察への通報はひとまず保留することにして山を下りることにした。

 キャンプ場に戻ると、月子は実家に電話して個人情報保護法施行のあと無くなったクラス名簿や卒業アルバムの住所録から照紗輝の実家の電話番号を追跡することは諦め、昔ながらの「地域連絡網」で「阿久野家」の電話番号を確認して電話を入れた。
 月子からの数年ぶりの電話に照紗輝の両親は、照紗輝は今年の3月に通っていた専門学校を落第し勝手に退学して、それ以来、愚連ぐれてしまって最近はほとんど家に帰っていないことが分かった。

 「一緒に居ったときは「ええ子」やってんで…。そんな悪い事する性格やなかったんやけど…。なんでこんなことになってしもてるんやろか…。うるうる。」
と泣き出した月子に、比呂は肩を抱き慰めの言葉をかけた。
「ここで再会したのも何かの縁やろ。幸い、明後日までは私らもここに居るんやから最善を尽くそうや。「テサキ君」もスマホを無くしたことに気づいたら明日にでも探しに来るやろうから、明るくなってからもう一回「第三火薬廠」に行って待ち伏せしたったら捕まえられるやろ!
 変な事に巻き込まれてるんやったら助けたったらええし、もし、悪いことをしてるんやったらやめさすんが私らに出来る「最善」やろ。」

 その間、太は一番と大樹と母須野と一緒に拾った照紗輝のスマホを前にいろいろと話し合っていた。
「木居呂、そんなことができるんか?」
「はい。先生が考えられてることはこのスマホを使えば可能です。」
「ほんま、太の技術と知識は凄いな。情報工学科ってそんなことまで教えてるんか?」
「一番先輩、それは無いですよ。僕は皆さんみたいに「格闘」とかできませんので、情報収集やハッキングで僕なりの「正義」を貫きたいんです。ですから独自の技術と考えてください。」
「へー、太の技術があれば、「奴ら」の組織をデジタルで炙りだすことができそうやな。」
「はい、大樹先輩の言うようにこのスマホから追跡を始めます。どこまでできるかわかりませんが頑張ってみます。」
 太は拾った照紗輝のものであろうスマホを操作しだした。


「おまけ」
昨日の「ひいちゃん」さんのイラストにすごい反響がありました(笑)。
某「チーム」に人がほとんどでしたが(笑)。

今日は「ボツ絵」シリーズです。
文字数の都合でボツった「青田兄妹」のイラストです。
PixAiで男の子出すの大変なんですよねー。
固定しないし、「作業着」が出ない(笑)。
まあ、制作初期のイメージイラストです!

初期は「美津恵ちゃん」いなかったので「月子ちゃん」は「ちびうさ」イメージでピンクの髪でした(笑)。
あと、何度も「白タキシード&シルクハット」にチャレンジしたんですけど出ませんでした(泣)。












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