【完結】『突撃！東大阪産業大学ヒーロー部！』

「回天十型」

「回天十型」

　アンジャ島沖に出た３人は、竿を投げてはリールを巻く作業を繰り返した。最初にヒットしたのは一番の竿だった。小型の「アジ」だった。
　初釣果に比呂と大樹も喜んだ。続いて、大樹の竿にもアタリが来た。
「おっ！俺も「アジ」ゲットー！このサイズやったら、５、６匹まとめて「なめろう」（注２３）にするかな？個人的には「キス」が好きやねんけどな。」
と釣り上げたアジをボートに繋いだ魚籠びくに放り込んだ。

　波は穏やかで一番と大樹の竿には次々とヒットする中、比呂は何度も「餌」だけ取られた針に「餌虫」をつけ直す作業が続いた。沖に出て約一時間、真夏と比べればやや威力は落ちたもののいまだに３０度を超える晩夏の太陽の日差しが３人に降り注いだ。
「比呂、脱水症状にならんように水分しっかりとれよ。これで倒れでもしたら洒落になれへんから気をつけろよ。」
「比呂ちゃん、竿先に集中して、ピクンと下がった瞬間に併せて引き上げるようにしてみて。「ぱにゃにゃんだー」（注２４）！」
と休憩も入れず、愚痴も溢さず一生懸命に竿を振り続ける比呂に二人は優しい言葉をかけ、励ました。

　小物ばかりだが次々とアジを引き上げる二人の横で天を仰ぎ比呂は呟いた。
「あー、私が「サイボーグ００８」（注２５）やったら潜って、鯛でもヒラメでも捕まえてくるのになぁ。あー「釣りの神様」…、私にどうか大物を与えてください。」
　その願いは叶わず、約１時間、餌だけが取られ続けた後に大樹の竿に最初のキスがかかり、その直後ついに比呂の竿が大きく下に反った。時刻は１３時４３分だった。

　「でりゃぁぁぁ！」
比呂が思い切り引き上げた糸の先についた５０センチオーバーのアオリイカが宙を舞った。
　７キロを超える大物に一番は比呂に笑顔を向け
「みんなで腹いっぱい「イカソーメン」食べれるぞ。これで「忘れもん」」の件はチャラにしたるわ。」
と言った瞬間に３人のスマホから「緊急地震速報」のアラーム音が鳴り響いた。
　突如、大きく揺れたボートの上で一番と大樹はアオリイカを抱きしめる比呂をしっかりと支えた。南のアンジャ島の北壁面が大きく崩れ、その奥に洞穴らしきものが見えた。

　津波を心配する一番を差し置いて、比呂と大樹は「洞穴」に興味を引かれ、南の崖に向けオールを漕ぎだした。
　到着した洞穴の中で見つけたものは巨大な円柱型の鉄の塊で、スマホで写真を撮り、竜宮浜で待つ顧問の母須野に確認してもらったところ、その謎の金属体は旧日本海軍の「必中必殺」の特攻兵器「人間魚雷回天」ではないかとの返事が来た。
「ひとまず戻れ。」の指示に従い、３人は崩れた洞窟面の中にあった巨大なカーキ色の敷布で擬装しゴムボートで引き潮の中、アンジャ島から一番近い小橋漁港に向かった。

　迎えに来てくれていた母須野のワゴンにボートを積み込むと、皆の待つ竜宮浜に向かった。美津恵と月子は待ちきれなかったとばかりに魚籠を持ち出すと、月子は慣れた手つきでアジやキスを捌き、塩を振った。アオリイカはゲソと身体に分け、体は背骨を抜き細く切りイカソーメンにして氷水にさらした。美津恵はキス、アジ、アオリイカのゲソを氷水で溶いた小麦粉と卵にまぶすと、バーベキューコンロ上の油の入った鍋でてんぷらとフライを揚げ始め、良い香りが浜に漂った。

　男３人と比呂はスマホを母須野に見せた。比呂、一番、大樹の話と写真画像から
「この物体の直系が７０センチほどという事であれば、「９３式酸素魚雷」の直系は６１センチよりは太く、「回天一型」の直系１メートルよりかなり細いわな。となると、直径１．３５メートルの「回天二型」は対象外やし…。もしかしたらデータの少ない「回天四型」（注２６）かもしれへん。しかし、そうなると長さが１６．５メートルないと話が合わへんなぁ…。」
と解説をしていくと、太がスマホ検索をしながら発言した。
「比呂先輩のコメントで約１０メートルってあったんですけど、それを元に考えるとこれじゃないですか？」

　太のスマホにはカラー写真とスペック表に全長９メートルの表示のある「１人乗りの人間魚雷」が映し出される「大和ミュージアム」（注２７）のホームページが表示され、その中に「回天十型」（注２８）の文字があった。
　母須野を中心にタブレットで内容を確認している間に太は「湯豆腐嵯峨野」という京都市右京区にある料亭の庭に置かれた回天十型の写真とより詳しい解説が表示されているページも発見した。

　「うーん、大和ミュージアムの「回天十型」の説明の最後にある「もともとは京都の料亭の庭に展示されてた」っていうのがこの「湯豆腐嵯峨野」のページの写真ってことやな。」
と母須野は両方のページを確認すると、４人にページのテキストを読み上げた。
　
　「回天十型」は、本土決戦用として開発途中で終戦を迎え実戦参戦歴は無く、推進装置は９３式酸素魚雷の駆動メカでなく、電動推進式の９２式魚雷の駆動系を使っているがゆえに停止、後進が可能であったことが分かった。
　沿岸用防御兵器として設計されているため最大深度は２０メートルに留まり、推進速度も遅いため停泊艦攻撃に使われる予定だったということも説明された。
　不確定な情報だが沿岸防御用に６隻が試作され、実際に試験されており、その一艦が舞鶴に隠匿されていた可能性もあるとのことだった。

　「はーい、みんな、アジとキスのてんぷらとフライとアオリイカのイカソーメンができたでー！」
の美津恵と月子の声で男性チームの意識はバーベキューコーナーに引き戻された。釣りたての半透明さを維持したアオリイカのイカソーメンを冷やした麺つゆに漬けてシソの葉の刻みを薬味にみんなで頬ばった。
「こりゃ「呼子のイカ」（注２９）の生き造り並みの旨さやな。さすが７キロ級の大物や！がっつりした歯ごたえがたまらんなあ！こりゃ、リーダーの「忘れ物」に感謝せなあかんな。リーダー、ご馳走になるわな！」
　一番が最初に言うと他のメンバーも「比呂ちゃんごっちゃん！」、「リーダー、いただきまーす！」と美味しそうに食べ「あっ」という間にイカそうめんは空になった。
　
　続いてアジとアオリイカのゲソの天ぷらとフライが皆に振舞われた。ビールとチューハイがガンガン進んだ。皆がビールや缶チューハイ、ソフトドリンクを飲みながら笑顔で会食を楽しんでいる間、比呂一人が難しい顔をしていた。
１匹だけのキスは軽く塩をふり、大樹が１人大人しく食べている比呂に気を遣って持ってきた。
「比呂ちゃん、キスは比呂ちゃん食べや。今日は一匹しか釣られへんかったからな。これ食べて元気出してや。一応俺の「ファーストキス」やからな。カラカラカラ。」
と冗談めかして言うと、比呂はいきなり「ガバッ」と立ち上がった。ジョークを「セクハラ」と取られたと勘違いした大樹は青くなったが比呂の口から出た言葉は予想外のものだった。
「私達でこの「回天十型」を動かしてみいへんか？ヒーローにはやっぱりすごいメカや武器が必要やろ！」
　余りの勢いに、皆、目が点になった。


（注２３）「なめろう」
ドラマ「孤独のグルメ」ファンの拙者は「「なめろう」って全国共通語と思っていたけど誰も知らんの？」とスタッフとの認識がずれていたため「注記」に追加。
本来、千葉県房総半島発祥の郷土料理で「鮮魚」と「味噌」、「薬味」をまな板の上で包丁でたたきミンチ（※ペースト）状にした「叩き膾なます料理」である。
取れたての新鮮な魚で作る「なめろう」は日本酒が進み過ぎて困る弱点があるのは「酒盗」と同様。

（注２４）「ぱにゃにゃんだー」
ラオス語で「頑張れ」の意味。
ちなみに「頑張る」は「ぱにゃにゃん」と言うと、かわいい女の子を描かせると「日本の漫画家トップ５に入ると拙者がひょうかする巨匠「ふなつかずき」氏の「モンスガ　妖怪少女」の主人公のろくろ首「綾辻轤花ろっか」ちゃんがコミック内で解説してくれている。
「キッチン戦隊クックルン」でも使われていることの方が有名かも…。

（注２５）「サーボーグ００８」
「永井豪」大先生と並ぶ昭和のヒーローマンガの大巨匠「石ノ森章太郎」氏の大ヒット作品「サイボーグ００９」に登場する８人目のサイボーグ「ピュンマ」のことを示す。
深海での推進装置や人工エラを持つサイボーグで海の中を自由に動き回れる能力を持つ。

（注２６）「回天四型」
試作で終わったとされる「人間魚雷回天」の「三代目」。
大型化された二型の駆動機関を一型と同じ「酸素」と「灯油」に戻し、「射程」、「策薬量」を増加したモデルであるが記録が少なく、船体構成の詳細の多くが「謎」である。
以下は推測されるスペック。
全長は１６．５メートル。直径は１．３５メートル。
射程２７キロ。
搭載炸薬量は１．８トン。

（注２７）「大和ミュージアム」
広島県呉市にある正式名称「呉市海軍歴史科学館」の愛称。
全長２６．３メートルの１０分の１スケールの戦艦大和の模型が有名。
ハワイから持ち帰ったとされる「回天十型」も展示されている。

（注２８）「回天十型」
当作品で「キー」となる「四代目人間魚雷」。
戦後、アメリカ軍に引き上げられたものが、ハワイで発見され京都の料亭オーナーが引き取り、その後、大和ミュージアムに寄贈された奇異な経緯を持つ。
「一型」、「二型」、「四型」と違いバッテリー駆動式なので唯一「後進が可能なモデルであると同時に最も小柄なモデルでもある。」
「６基」が試作されたという（※諸説あり）。

（注２９）「呼子のイカ」
拙者が愛する「佐賀県」の２大郷土飯の一つ。
過去喰った全国の「イカ」料理の中で「呼子のイカ」の活け造りが最高の旨さ。
お勧めのもう一つの「佐賀飯」は伊万里市の「ドライブイン鳥」の「とり飯」。
コミック版「ゾンビランドサガ」では出てきたが、アニメでの登場機会が無かったのが残念。



「おまけ」
すみません。
毎日「おまけ」があると思われてた読者さんから「今日はイラストつけ忘れですか？」と昨日メールをいただきました。
いやー、今回は毎日つける余裕がないんですよ。
(｡-人-｡) ｺﾞﾒﾝﾈ

どこかで書きましたが、今作からイラストに使い始めた「PixAi」が使いこなせていません。
課金せずに作画してるので、チャンスは１日５回で合計２０枚！


思うような「絵」が出ないと「公開」できないですよね～。
手足の数が違う「心霊写真」レベルのものや、腕や足が良からぬ方向をむく「重症骨折」レベルのものが出てしまいますと、もうアウト！
以前のアプリの方が「言う事」を聞いてくれてました。

まあ、今日は「おふざけ」で「失敗作」を晒させていただきますね。
「怒らず」に「笑って」やってください！

まずは、「比呂ちゃん」！
「ミニスカートと黒いブルマで格闘する黒髪ショートカットの笑顔の女の子」的なプロンプト（※毎回多少言葉は加減する。）で作成しています。


作品①「何故か「手」に靴を履いている比呂ちゃん(笑)！」
（※ブルマからちょっとパンチラ(笑)AI君忖度？）

作品②「突然現れた「ちょんまげ」！」
（※いったいどこに「ちょんまげ」要素がΣ(￣□￣|||)！）

続いては「美津恵ちゃん」！
「ピンクのショートカットのキューティーハニーコスプレの女の子」的なプロンプトで生成しています。

作品③「セクシーヒロインのキューティーハニーが「魔法少女」に(笑)(* ´艸｀)ｸｽｸｽ！」
（※AI君錯乱(笑)！(´-∀-｀；)）

作品④「さらに猫耳(笑)！」
（※もう説明不可能！Σ(ﾟДﾟ；≡；ﾟдﾟ)）

ラストは、「月子ちゃん」です！
もちろんプロンプトには「セーラームーンコスプレ」と入れてます。
このイラストは「水着回」の時に
「セーラームーンコスプレのビキニの女の子」くらいの短いプロンプトで作ったと思います。


作品⑤「なぜか「ロリコン」風に①(￣▽￣;)！」
（※絶対に「変な言葉」は入れてないです！信じてください！）

作品⑥「なぜか「ロリコン風」に②Σ(ﾟДﾟ；≡；ﾟдﾟ)！」
（※本当に「他意」はございません(笑)！）

まあ、こんな感じで「苦戦」しています！
ボチボチ作画していきますので、ゆるーくお待ちくださいね！
(⋈◍＞◡＜◍)。✧♡