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「頼りになるオヤジたち」
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「頼りになるオヤジたち」
夕方5時過ぎ、金城司法書士事務所に蘭が到着した。森は今までに見たことが無い暗い表情をした蘭に何か声をかけたそうだったが、何も言わずに応接に案内した。ソファーにはいつもの愛想の良い笑顔でなく、眉間に縦にしわを寄せ「難しい顔」をした副島が座っていた。
森が出したグラスの麦茶を一口飲むと蘭は洋孝の置かれている状況と今時点で蘭が把握している拉致監禁現場の現状と現在考えていることを全て副島と森に説明した。
敵は半グレと思われる男8人。拉致されているのは女子高校生が4人と洋孝の5人。女子高校生たちは、半グレの男たちのひとりが経営する京橋のホストでの飲み代の借金をカタに、無理難題言われ「管理売春」をさせられている様子だと蘭は二人に知りうる情報を話した。
実際に洋孝の身柄引き受けに必要とされる「身代金」と言える「500万円」は「まかせて屋」の口座には無く、いざとなったら蘭の預金から支払うつもりでいることが語られた。
「蘭ちゃん、ありのままを通報して、警察を頼るのも一つの考えとちゃうか?違法に得た情報であったとしても、「緊急避難」の状況やったときちんと説明すれば万丈社長もわかってくれはるでしょ?
なんやったら「現金」で「500万」は言うてくれたら、原先生にお願いすれば、今すぐにでも用意できるし…。まずは万丈社長の身の確保が第一でしょう?」
森がいつになくそわそわした態度で申し出た。
蘭は森の提案と申し出に無言で首を横に振った。
「いや、日本の警察の実力は信用できへん。ましてや、お兄ちゃんの性格やと、女の子達を護るために自分を犠牲にしかねへんから…。ましてや原先生に迷惑はかけられません。
今の状況と条件やったら今晩の闇に乗じて私自身が突入してお兄ちゃんと女子高校生を救出する方が「成功」の可能性が高いと思います。
「半グレ」の8人くらいやったら、閃光弾で目くらましさえしてしまえば、お兄ちゃんに仇なした奴に何の遠慮もありません。実弾を使えば、私、単独のアサルトで数分のうちに一網打尽にすることは難しくはありません…。けど、日本ではそれは明らかに違法やから…。」
蚊の鳴くような小さな声で呟く蘭に副島が声をかけた。
「そんな、ひとりでなんも全部背負い込まんでも…、羽藤さん、ちなみに「銃」は何を使うつもりなんや?また対テロ特殊部隊御用達のPSG-1を使うつもりなんか?」
蘭は少し時間を空けて
「7.62ミリ×51のNATO弾はもう残ってないんです…。今も残ってる「弾」で使える銃で「消音」機能があるのはVSKくらい…。後は「P365」にサイレンサーつけるくらいです…。」
と言葉を詰まらせた
「「VSK―94」か…、それに「P365」な。せやったら、どちらも9ミリ弾やな。今晩はな、おいちゃんは森君と「燻製」をアテにバーボンでも飲もうかと思ってたんや。
もちろん「燻製」はおいちゃんらの手作りやで。豚の三枚肉と鶏ももで「燻製ハム」でも作ろうと思ってたんやわ。バーボンのアテをスモークするんやったら「サクラ」や「ヒッコリー」やなくてこれやろう!」
と「酒樽」を砕いて作られる「ホワイトオーク」のチップの100グラム入りの袋を見せた。
燻製用チップの袋を見て蘭の表情が和らいだ。
「あぁ、これなら…。」
「よっしゃ、じゃあ今から作ろか。木工用ボンドやと固いやろうから冷凍ご飯をお粥にして煮込んで「澱粉糊」を作っておく、羽藤さんは森君に車で送ってもらって「VSK」と9ミリ弾とマガジンを取りに戻っておいで。」
副島がスモークチップを持ってソファーから立ち上がり、事務所のキッチンに向かおうとすると蘭は再びうつむいた。
「おっちゃん、ありがとう…。でも、「銃」を持って助けに行ったんがお兄ちゃんに「私」ってばれたら、やっぱり一緒にはおられへんようになるよね…。」
数秒の沈黙時間が事務所の中に流れた。ふと、森が本棚の横に置かれた3段のカラーボックスの棚の中に手を入れ、奥をかき回した。
「蘭ちゃん、「ばれる」がネックやって言うんやったら、いいものがあるで。うちのクライアントさんで蘭ちゃんと同じくらい「波乱万丈」の人生を送ってきた北新地の「日本一福利厚生御いいラウンジ」のママの話って前に副島さんから聞いてもらってたよね。
その店の「チイママ」から「おっちゃんらもちょっとは「おしゃれ」しいや!」って言われての頂き物なんですけど、私も副島さんも「おしゃれ」は無縁のものなんでこれを機会に使ってもらえたらええかなって…。あと、これは去年忘年会で使ったパーティーグッズやけど役に立つかな?」
と森が一本のボトルとスピーカーのついたマスク状の物を持ち出してきた。
ボトルと玩具のマスクを手渡された蘭は、笑顔に戻り森と副島に丁寧に頭を下げ一言ずつ返した。
「ほんと、お二人は頼りになりますよね!「ウルトラマン」を助けてくれる「ウルトラマンのウルトラマン」ですよね!
森先生、ありがとうございます。これならお兄ちゃんに「ばれる」ことなく救出することも可能やと思います。是非とも使わせてください!
副島のおっちゃんもほんまにありがとう。そんなこと考えつくのはこの日本ではおっちゃんだけやと思うわ。私も戻り次第一緒に「お粥」焚きますね。」
「せやせや、羽藤さんは「笑顔」の方が似合うでな。しょぼくれた「ウルトラマン」では「怪獣退治」できへんからな!カラカラカラ。
ウルトラマンと比べると頼りにはならへんけど森君はウルトラマンダイナに変身前の「つるの剛士」さんでおいちゃんは地球防衛軍の「縁の下」で頑張る「毒蝮三太夫(※石井伊吉)」さんや!チーム「ウルトラマン」で頑張るで!」
副島がよくわからない「例え」を交えて話しながら笑うと蘭は不思議そうな顔をして副島に尋ねた。
「「つるの」さんは分かりますけど「毒蝮三太夫」さんって誰ですか?歌舞伎役者かプロレスラーですか?」
蘭の横でそれを聞いた森が馬鹿笑いしていた。
「おまけ」
今回のイラストは「オヤジ好き」な「なっち」さんの為だけにアップしまーす(笑)!
お見苦しいものを失礼しました!(@ ̄□ ̄@;)!!
夕方5時過ぎ、金城司法書士事務所に蘭が到着した。森は今までに見たことが無い暗い表情をした蘭に何か声をかけたそうだったが、何も言わずに応接に案内した。ソファーにはいつもの愛想の良い笑顔でなく、眉間に縦にしわを寄せ「難しい顔」をした副島が座っていた。
森が出したグラスの麦茶を一口飲むと蘭は洋孝の置かれている状況と今時点で蘭が把握している拉致監禁現場の現状と現在考えていることを全て副島と森に説明した。
敵は半グレと思われる男8人。拉致されているのは女子高校生が4人と洋孝の5人。女子高校生たちは、半グレの男たちのひとりが経営する京橋のホストでの飲み代の借金をカタに、無理難題言われ「管理売春」をさせられている様子だと蘭は二人に知りうる情報を話した。
実際に洋孝の身柄引き受けに必要とされる「身代金」と言える「500万円」は「まかせて屋」の口座には無く、いざとなったら蘭の預金から支払うつもりでいることが語られた。
「蘭ちゃん、ありのままを通報して、警察を頼るのも一つの考えとちゃうか?違法に得た情報であったとしても、「緊急避難」の状況やったときちんと説明すれば万丈社長もわかってくれはるでしょ?
なんやったら「現金」で「500万」は言うてくれたら、原先生にお願いすれば、今すぐにでも用意できるし…。まずは万丈社長の身の確保が第一でしょう?」
森がいつになくそわそわした態度で申し出た。
蘭は森の提案と申し出に無言で首を横に振った。
「いや、日本の警察の実力は信用できへん。ましてや、お兄ちゃんの性格やと、女の子達を護るために自分を犠牲にしかねへんから…。ましてや原先生に迷惑はかけられません。
今の状況と条件やったら今晩の闇に乗じて私自身が突入してお兄ちゃんと女子高校生を救出する方が「成功」の可能性が高いと思います。
「半グレ」の8人くらいやったら、閃光弾で目くらましさえしてしまえば、お兄ちゃんに仇なした奴に何の遠慮もありません。実弾を使えば、私、単独のアサルトで数分のうちに一網打尽にすることは難しくはありません…。けど、日本ではそれは明らかに違法やから…。」
蚊の鳴くような小さな声で呟く蘭に副島が声をかけた。
「そんな、ひとりでなんも全部背負い込まんでも…、羽藤さん、ちなみに「銃」は何を使うつもりなんや?また対テロ特殊部隊御用達のPSG-1を使うつもりなんか?」
蘭は少し時間を空けて
「7.62ミリ×51のNATO弾はもう残ってないんです…。今も残ってる「弾」で使える銃で「消音」機能があるのはVSKくらい…。後は「P365」にサイレンサーつけるくらいです…。」
と言葉を詰まらせた
「「VSK―94」か…、それに「P365」な。せやったら、どちらも9ミリ弾やな。今晩はな、おいちゃんは森君と「燻製」をアテにバーボンでも飲もうかと思ってたんや。
もちろん「燻製」はおいちゃんらの手作りやで。豚の三枚肉と鶏ももで「燻製ハム」でも作ろうと思ってたんやわ。バーボンのアテをスモークするんやったら「サクラ」や「ヒッコリー」やなくてこれやろう!」
と「酒樽」を砕いて作られる「ホワイトオーク」のチップの100グラム入りの袋を見せた。
燻製用チップの袋を見て蘭の表情が和らいだ。
「あぁ、これなら…。」
「よっしゃ、じゃあ今から作ろか。木工用ボンドやと固いやろうから冷凍ご飯をお粥にして煮込んで「澱粉糊」を作っておく、羽藤さんは森君に車で送ってもらって「VSK」と9ミリ弾とマガジンを取りに戻っておいで。」
副島がスモークチップを持ってソファーから立ち上がり、事務所のキッチンに向かおうとすると蘭は再びうつむいた。
「おっちゃん、ありがとう…。でも、「銃」を持って助けに行ったんがお兄ちゃんに「私」ってばれたら、やっぱり一緒にはおられへんようになるよね…。」
数秒の沈黙時間が事務所の中に流れた。ふと、森が本棚の横に置かれた3段のカラーボックスの棚の中に手を入れ、奥をかき回した。
「蘭ちゃん、「ばれる」がネックやって言うんやったら、いいものがあるで。うちのクライアントさんで蘭ちゃんと同じくらい「波乱万丈」の人生を送ってきた北新地の「日本一福利厚生御いいラウンジ」のママの話って前に副島さんから聞いてもらってたよね。
その店の「チイママ」から「おっちゃんらもちょっとは「おしゃれ」しいや!」って言われての頂き物なんですけど、私も副島さんも「おしゃれ」は無縁のものなんでこれを機会に使ってもらえたらええかなって…。あと、これは去年忘年会で使ったパーティーグッズやけど役に立つかな?」
と森が一本のボトルとスピーカーのついたマスク状の物を持ち出してきた。
ボトルと玩具のマスクを手渡された蘭は、笑顔に戻り森と副島に丁寧に頭を下げ一言ずつ返した。
「ほんと、お二人は頼りになりますよね!「ウルトラマン」を助けてくれる「ウルトラマンのウルトラマン」ですよね!
森先生、ありがとうございます。これならお兄ちゃんに「ばれる」ことなく救出することも可能やと思います。是非とも使わせてください!
副島のおっちゃんもほんまにありがとう。そんなこと考えつくのはこの日本ではおっちゃんだけやと思うわ。私も戻り次第一緒に「お粥」焚きますね。」
「せやせや、羽藤さんは「笑顔」の方が似合うでな。しょぼくれた「ウルトラマン」では「怪獣退治」できへんからな!カラカラカラ。
ウルトラマンと比べると頼りにはならへんけど森君はウルトラマンダイナに変身前の「つるの剛士」さんでおいちゃんは地球防衛軍の「縁の下」で頑張る「毒蝮三太夫(※石井伊吉)」さんや!チーム「ウルトラマン」で頑張るで!」
副島がよくわからない「例え」を交えて話しながら笑うと蘭は不思議そうな顔をして副島に尋ねた。
「「つるの」さんは分かりますけど「毒蝮三太夫」さんって誰ですか?歌舞伎役者かプロレスラーですか?」
蘭の横でそれを聞いた森が馬鹿笑いしていた。
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今回のイラストは「オヤジ好き」な「なっち」さんの為だけにアップしまーす(笑)!
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