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「完全犯罪」
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「完全犯罪」
蘭の意見に合わせて、3人は金城事務所の軽ワゴンに乗り込んだ。運転席に森、助手席に蘭、後部座席には500ccのストロングチューハイ4本と保冷剤を詰め込んだクーラーバックを持った副島が座ると、車は目的地であるマンションを目指した。
原から聞いていた通り、運送会社、郵便局、宅配業者や第三者も自由に構内に入れる構造の駐車場だった。ゆっくりと、森は駐車場構内を走ると、問題の大型「ベンツ」が見えた。
「森先生、止まることなく徐行してください。行きすぎましたら、ドン付きで、スイッチバックして、逆方向にも徐行で進んでください。その後は、マンション駐車場を出て、4か所程寄ってもらいたい所がありますのでよろしくお願いします。」
蘭が森に頼むと、副島は後部座席から
「さっきの羽藤さんの「候補地」からすると、ビルの屋上や非常階段やなく、関西電力の鉄塔が「狩場」ってことやな?
確かに「完全犯罪」を遂行するには「人の目」が一番の「障害」やからな。まあ、それを可能にするのが門真の街には存在せえへん「50口径」ってことやな。こりゃ、相手のやくざも警察も絶対にわからへん「トリック」やな。カラカラカラ。」
と笑い声が響くと、缶チューハイが開く音が車内に響いた。
駐車場を出ると、車を四方に走らせ、複数の高圧電線の鉄塔の周辺をチェックした。
関西電力の職員しか鉄塔には登れないように、金網のフェンスで囲われて入るものの、簡単な「南京錠」がかけられただけのフェンスの出入り口は、大きめの「ワイヤーカッター」だけで解錠できそうだった。
「羽藤さん、いけそうか?この鉄塔を登れるんか?」
の副島の問いには余裕の返答をした。
「ボルダリングと比べたら楽勝ですよ。幸い、一段目に登るアルミハシゴは置きっぱなしですし、二段目から先はハシゴ常備ですからね。平面足場のある30メートルまで上がるのに7分もあれば十分です。
下りはラペリングで5秒。作戦タイムはトータルで10分かかりませんよ。ましてや、相手はデカいベンツ。それも「動かない」となりゃ、全然、楽勝ですよ。ケラケラケラ。」
何か所かの候補地をまわり、最終的には「安全」を確保して、国道沿いから少し奥に入った鉄塔を候補地として選んだ。
「ここ、候補地の中で2番目に遠いところやけど大丈夫か?2キロ以上あるんとちゃうの?」
の副島の問いに
「はい、直線距離で2300(メートル)です。でも安心して下さい。「Nightforce NX-832×56」持ってますから2300メートルなら夜間でも大丈夫です。動かないベンツなんか楽勝です。」
と返した蘭は次の情報収集に入った。
原を通じて管理会社の株式会社モリカドエステートに確認したところ、土日の夜間は金曜日の夕方からほぼ100%動かされること無く駐車されているという事だった。
あと、週末には周辺の国道や大阪中央環状府道2号線は「旧車会」と呼ばれる「昭和のロードバイク」を「昭和の暴走族」風にカスタマイズしたオートバイが十台から二十台程度の小集団で「プチ暴走」ごっこしていることも分かった。
原から依頼を受けた3日後の週末金曜日を待ち、夜10時半に洋孝には「今日は、女子会行ってきまーす!」とうそをついて週末の「飲み」を断って蘭はゴルフバッグを肩に金城司法書士事務所に来ていた。
森はライダースジャケットに身を包み、125ccのスクーターで出発準備している。
「じゃあ、私は「暴走くん」達の後ろをついて、状況は「グループ通話」の方に随時入れていきますから。まあ、彼らが狭い道に入ることはないと思いますから、おそらく予定のコースになることと思います。
蘭ちゃん、副島さん、あとはお願いしますね。文書の方は、管理会社の防犯カメラの切り替え時間に合わせてワイパーに挟んできてますから安心していてください。まあ、「ウルトラマン」の「完全犯罪」は横溝正史の名探偵も某コミックの少年探偵もわからないと思いますけどね。ケラケラケラ。」
森が先にスクーターで出発し、少し遅れて蘭を助手席に乗せた軽ワゴンで副島が事務所を出た。
仕事は、何のトラブルもなく10分弱で終わった。あまりに淡々とした進行に、副島は気が抜け、助手席に戻ってきた蘭に呟いた。
「やっぱり「プロ」はちゃうな…。」
森から、報告の電話を受けた原は依頼から3日目という想像以上に早い「排除」に驚いていた。
「ほんまかいな。さすがは「ウルトラマン」やなぁ!頼んでからまだ3日やで。どんな手を使ったんか知らんけど、ほんま助かったわ。一度、挨拶とお礼をしたいから今からそっちに行くわな。幸い、今、古川橋で飲んでるねん。」
と電話を切ると、コンビニ袋いっぱいのビールと日本酒を持ってタクシーで金城司法書士事務所を訪ねて来ていた。
森、原に遅れて戻ってきた蘭はキッチンに向かった副島に先んじて、初対面の原に「報告」を上げた。
「初めまして。「まかせて屋」の主任やらせてもらってます「羽藤蘭です。よろしくお願いします。一応、「的」のエンジンに…」
と挨拶と報告をしようとすると、ワンカップの熱燗を持って応接に入ってきた副島と一緒に原に対して改めて説明をし直した。
「的 」のベンツには世界一の性能を誇る対物狙撃銃TAC50で12.7ミリ「.50BMG弾」という日本では自衛隊以外持ちえない対装甲車用50口径対物ライフル弾をエンジンに3発、運転席に2発打ち込みました。間違いなく、廃車になってますので、明日ご確認ください。
事前に森先生が「敵対やくざ」の犯行を思わせる書置きを残してますので、原先生に捜査が向く事はありません。まあ、この話は「原先生」の「腹」の中にとどめてくださいね。そうしていただければ「完全犯罪」の出来上がりですから…。」
とほほ笑むと森の用意してくれたハーゲンダッツ一匙を口に放り込み、缶チューハイを喉に流し込むと
「やっぱり仕事の後のお酒は最高ですね!ケラケラケラ。」
と23歳の女の子の笑顔を見せた。
「おまけ」
蘭の意見に合わせて、3人は金城事務所の軽ワゴンに乗り込んだ。運転席に森、助手席に蘭、後部座席には500ccのストロングチューハイ4本と保冷剤を詰め込んだクーラーバックを持った副島が座ると、車は目的地であるマンションを目指した。
原から聞いていた通り、運送会社、郵便局、宅配業者や第三者も自由に構内に入れる構造の駐車場だった。ゆっくりと、森は駐車場構内を走ると、問題の大型「ベンツ」が見えた。
「森先生、止まることなく徐行してください。行きすぎましたら、ドン付きで、スイッチバックして、逆方向にも徐行で進んでください。その後は、マンション駐車場を出て、4か所程寄ってもらいたい所がありますのでよろしくお願いします。」
蘭が森に頼むと、副島は後部座席から
「さっきの羽藤さんの「候補地」からすると、ビルの屋上や非常階段やなく、関西電力の鉄塔が「狩場」ってことやな?
確かに「完全犯罪」を遂行するには「人の目」が一番の「障害」やからな。まあ、それを可能にするのが門真の街には存在せえへん「50口径」ってことやな。こりゃ、相手のやくざも警察も絶対にわからへん「トリック」やな。カラカラカラ。」
と笑い声が響くと、缶チューハイが開く音が車内に響いた。
駐車場を出ると、車を四方に走らせ、複数の高圧電線の鉄塔の周辺をチェックした。
関西電力の職員しか鉄塔には登れないように、金網のフェンスで囲われて入るものの、簡単な「南京錠」がかけられただけのフェンスの出入り口は、大きめの「ワイヤーカッター」だけで解錠できそうだった。
「羽藤さん、いけそうか?この鉄塔を登れるんか?」
の副島の問いには余裕の返答をした。
「ボルダリングと比べたら楽勝ですよ。幸い、一段目に登るアルミハシゴは置きっぱなしですし、二段目から先はハシゴ常備ですからね。平面足場のある30メートルまで上がるのに7分もあれば十分です。
下りはラペリングで5秒。作戦タイムはトータルで10分かかりませんよ。ましてや、相手はデカいベンツ。それも「動かない」となりゃ、全然、楽勝ですよ。ケラケラケラ。」
何か所かの候補地をまわり、最終的には「安全」を確保して、国道沿いから少し奥に入った鉄塔を候補地として選んだ。
「ここ、候補地の中で2番目に遠いところやけど大丈夫か?2キロ以上あるんとちゃうの?」
の副島の問いに
「はい、直線距離で2300(メートル)です。でも安心して下さい。「Nightforce NX-832×56」持ってますから2300メートルなら夜間でも大丈夫です。動かないベンツなんか楽勝です。」
と返した蘭は次の情報収集に入った。
原を通じて管理会社の株式会社モリカドエステートに確認したところ、土日の夜間は金曜日の夕方からほぼ100%動かされること無く駐車されているという事だった。
あと、週末には周辺の国道や大阪中央環状府道2号線は「旧車会」と呼ばれる「昭和のロードバイク」を「昭和の暴走族」風にカスタマイズしたオートバイが十台から二十台程度の小集団で「プチ暴走」ごっこしていることも分かった。
原から依頼を受けた3日後の週末金曜日を待ち、夜10時半に洋孝には「今日は、女子会行ってきまーす!」とうそをついて週末の「飲み」を断って蘭はゴルフバッグを肩に金城司法書士事務所に来ていた。
森はライダースジャケットに身を包み、125ccのスクーターで出発準備している。
「じゃあ、私は「暴走くん」達の後ろをついて、状況は「グループ通話」の方に随時入れていきますから。まあ、彼らが狭い道に入ることはないと思いますから、おそらく予定のコースになることと思います。
蘭ちゃん、副島さん、あとはお願いしますね。文書の方は、管理会社の防犯カメラの切り替え時間に合わせてワイパーに挟んできてますから安心していてください。まあ、「ウルトラマン」の「完全犯罪」は横溝正史の名探偵も某コミックの少年探偵もわからないと思いますけどね。ケラケラケラ。」
森が先にスクーターで出発し、少し遅れて蘭を助手席に乗せた軽ワゴンで副島が事務所を出た。
仕事は、何のトラブルもなく10分弱で終わった。あまりに淡々とした進行に、副島は気が抜け、助手席に戻ってきた蘭に呟いた。
「やっぱり「プロ」はちゃうな…。」
森から、報告の電話を受けた原は依頼から3日目という想像以上に早い「排除」に驚いていた。
「ほんまかいな。さすがは「ウルトラマン」やなぁ!頼んでからまだ3日やで。どんな手を使ったんか知らんけど、ほんま助かったわ。一度、挨拶とお礼をしたいから今からそっちに行くわな。幸い、今、古川橋で飲んでるねん。」
と電話を切ると、コンビニ袋いっぱいのビールと日本酒を持ってタクシーで金城司法書士事務所を訪ねて来ていた。
森、原に遅れて戻ってきた蘭はキッチンに向かった副島に先んじて、初対面の原に「報告」を上げた。
「初めまして。「まかせて屋」の主任やらせてもらってます「羽藤蘭です。よろしくお願いします。一応、「的」のエンジンに…」
と挨拶と報告をしようとすると、ワンカップの熱燗を持って応接に入ってきた副島と一緒に原に対して改めて説明をし直した。
「的 」のベンツには世界一の性能を誇る対物狙撃銃TAC50で12.7ミリ「.50BMG弾」という日本では自衛隊以外持ちえない対装甲車用50口径対物ライフル弾をエンジンに3発、運転席に2発打ち込みました。間違いなく、廃車になってますので、明日ご確認ください。
事前に森先生が「敵対やくざ」の犯行を思わせる書置きを残してますので、原先生に捜査が向く事はありません。まあ、この話は「原先生」の「腹」の中にとどめてくださいね。そうしていただければ「完全犯罪」の出来上がりですから…。」
とほほ笑むと森の用意してくれたハーゲンダッツ一匙を口に放り込み、缶チューハイを喉に流し込むと
「やっぱり仕事の後のお酒は最高ですね!ケラケラケラ。」
と23歳の女の子の笑顔を見せた。
「おまけ」
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