10 / 38
「最悪の誕生日」
しおりを挟む
「最悪の誕生日」
7年前の7月。サマースクールも終わり、羽蘭がアメリカに渡り2度目の夏休みに入る直前の2年生の終業式後、クラスメイトの日本人女子と暫しの別れと、今のクラスで集まるのは最後と言う事でお昼を過ぎても教室には多数の女子生徒が残りおしゃべりをしていた。
「私達のハイスクールライフも残すところ1年。この夏は「素敵な恋」をして、「LJK」として「リア充」な1年を過ごしたいよねー。みんな、私のタロットカードで、この夏に「恋人」ができるかどうか、占ってあげようか?」
と「占い部」の部長で「良く当たる」と噂の女生徒が皆に声をかけるとその机のまわりに十数人の輪ができた。
タロットの大アルカナの22枚のカードを使った一般的なやり方で、卓上で「混ぜシャッフル」されたカードを指定の場所に置き、そのカードの種類と「正」・「逆」の向きで占う方式で、彼女は「フランス式オカルトタロット」の名手という噂だった。
クラスメイトが次々と彼女の前の席に座り、シャッフルをしてはカードが並べられ
「あなたは、近日中に年上の男性と素敵な出会いがあるからがんばって!」
「出会いはあるけど、それは悪い男。深く付き合うなら注意してね。」
「ごめん、いいこと言ってあげたいけど、この夏の異性との「出会い」はナッシングね。」
「がおっ、あなた近々結婚相手と出会うわよ。それも相手は超資産持ちの子息…。「玉の輿」の予感がするわ!」
占い部の女生徒が占いの「お告げ」を告げるたびに、周りを囲んだ女生徒から歓声があがった。
小一時間かけて、教室に残るほぼ全員の女生徒の占いが終わったときに、羽蘭が忘れ物を取りに教室に戻ってきた。
「羽蘭、あなたもハイスクール最後の夏休みに「出会い」があるか占ってもらいなさいよ!まあ、あんたは「鉄砲」が「恋人」だっていうけど、「リアルな男性」との出会いも大切よ!」
とクラスメイトに囲まれ無理やり占い部部長の前に座らせられると、言われるがままにカードを混ぜた。
「最後に5回、近い未来を想像しながらシャッフルして。」
と言われ、羽蘭はタロットカードを5回繰った。
占い部の部長は、羽蘭の前に十字の形にカードを並べると黙り込み、言葉を発することは無かった。
周りのクラスメイトが「羽蘭の運勢はどうなの?」、「何か悪いことでも出たの?」と口々に問いかけるが、それに答えることなく
「ごめん、羽蘭、もう一回カードを混ぜるところからやり直してくれる?」
とだけ言い、羽蘭はその言葉に従ったがビデオのリプレイのように部長は何も言えず、黙りこくったままだった。
教室に緊張感がたちこめ、我慢できなくなった女生徒が
「もう、いったい何なのよ。あんたが何も言わなかったら、「良い」も「悪い」もわからないじゃない。何とか言いなさいよ!」
と部長の肩をこついた。
部長は羽蘭に「ちょっと右手の掌を見せてくれる?」と囁くと、羽蘭の右手を両手で受けるとまじまじと見た。
「後で電話するから…。」
とだけ、羽蘭の耳元で皆に聞こえないように囁くと
「うーん、この夏に凄いことが起こるとしか言いようがないのよね。まあ、私の「占い」能力なんてそんなもんよ。羽蘭の場合、射撃の世界チャンピオンになるとかあり得るもんね。
あっ、ごめん、もう帰らなくっちゃ。じゃあ、9月のクラス替えで皆一緒になれたらいいね。バイバイ。」
と言い残し、席を立った。
(えっ?いったい私の占いで何が出たっていうの?)不安に思う羽蘭以外の女生徒は、「良い」占い結果の出た者に対しての「冷やかし」と「羨望」の話題で盛り上がり、羽蘭の不完全燃焼な占いの話題は忘れられた。
翌週、羽蘭は17歳の誕生日を迎えた。雄拓も愛娘の誕生日という事で、定時退社しローストビーフと誕生日ケーキを買って帰ってきてくれた。
「17歳の誕生日おめでとう。いよいよ高校生活も残り1年。お父さんの仕事は今しばらくこちらになりそうなんで、羽蘭はこっちの大学に行くのか、日本の大学に進むのかしっかりと考えるんだよ。
大学進学は一つの「人生の岐路」だ。お父さんは羽蘭の意思を尊重するから、遠慮することなく自分で自分の人生を決めなさい。」
雄拓が優しくお祝いの言葉をかけると、羽蘭は少し考えてから言葉を発した。
「お父さんは、占いって信じる?終業式の日にね、クラスメイトの「占い部」の友達から「近日中に人生が大きく変わる事件がある。」って言われたんよ。良く当たるって噂の子なんでちょっと気になっちゃってね…。
今、お父さんの言った「人生の岐路」って「運命」や「宿命」の転換点ってことよね。大学進学はまだ1年先の話だけど、その子の占いでは「近日中」ってことなのよね…。
私の名前の読みで漢字を置き換えた「波乱万丈」の相っていうのがタロット占いで出て、同じ占いが「手相」でも出てるんだって。
「波乱万丈」って「劇的な変化がある」っていう意味なんやろ?いったい何があるんやろなってここんところ考えることがあるねん。」
と羽蘭が呟き、ローストビーフに手を伸ばした瞬間、ダイニングのドアが何者かによって乱暴に開かれた。
驚いた羽蘭が視線をダイニングの入り口に向けると、高級スーツの二人のいかつい体型の男が立っていた。ひとりはサングラスをかけた白人の初老の男性で、もうひとりは兄の洋孝に似た東洋人の若い男だった。
「あなた達、誰ですか?呼び鈴も鳴らさず、いきなり入ってきて!警察呼びますよ!」
と羽蘭が叫んだが、雄拓がそれを制した。
「万丈さん、賢明な判断だな。警察が来たら「逮捕」されるのはあんただからな。」
サングラスの男が低い声で呟いた。
「えっ、お父さん、どういうこと?何か捕まるようなことやらかしたん?この人たち何者なん?ちょっと説明してよ。」
羽蘭は状況がわからず父親に質問を連続した。何も答えない雄拓に代わり、東洋人の男が話に割って入った。
「万丈さん、このお嬢さんが「アメリカ国籍」が欲しいって言ってたオリンピック選手を目指してるっていう娘さんですね。もっとバリバリのアスリートを想像してたんですけど、意外と華奢なんですね。
まあ、国籍を「買う」為の資金を「カリフォルニア」では禁止されてる「スポーツ賭博」で稼ごうとしたのは、いただけませんでしたねぇ。「10万ドル」作るどころか「借金」が「30万ドル」になっちゃいましたから…。
本来の支払期日は先週でした。「払えない」っていうんであんたの会社の「新製品」の設計図を「担保」にするって決めた期日は昨日…。さて、我々は「慈善事業」じゃないんで、きっちりとけじめ獲らせてもらいますよ。」
(えっ、私の為にお父さん、「賭博」で大きな借金作ったっていうこと?それで、この人たちは「取り立て」ってことなの?)羽蘭は視線を斜め下に外したままの雄拓の表情とこれから起こるであろうことに不安を感じざるを得なかった。
雄拓は、東洋人の男から状況説明を求められた。先月、羽蘭から「スポーツ国籍」を取得すればオリンピックに出られるという話から、雄拓自身、いろいろと調べて国籍取得の相談を持ち掛けた先が「ダグラス人材商会」というスポーツ国籍取得などで「特別養子縁組」を仲介する会社であった。
自由になる預金が見積額に届かなかった雄拓に東洋人の男「羽哲生」が「スポーツ博打」を持ち掛けた事でこの男達との付き合いが始まったらしかった。初老の白人は「マーチン・ダグラス」というロサンゼルスに拠点を置く、新興マフィア「ダグラス・ファミリー」のボスであり、「羽哲生」はその右腕の華僑系アメリカ人であることが分かった。
ダグラスは柔軟な思考で新しいビジネスを開拓していく頭脳派マフィアで、「闇スポーツ賭博」の「裏ブックメーカー」の経営者でもある。
「娘さんの為に「アメリカ国籍」を取得してやろうという、お父さんの優しさに感動しました。実は、確実に儲けられる「賭博」があるんですけど、私は「インサイダー」の人間なので「賭ける」ことができません。
私も「小遣い」にちょっと困ってる身なので、「勝てるネタ」を教えますので「3割バック」でどうですか?あなたは娘さんの国籍が買えて、私は会社にばれずに「小遣い」をゲットするウィンウィンですね。」
と言葉巧みに雄拓に誘いをかけた哲生は、最初の5ゲームを「全勝すると怪しいですから…」と賭けさせ予定通りの4勝1敗の結果で、雄拓の手持ちの1000ドルを1時間で3500ドルに増やして見せた。その後も30%の情報料は取るものの、元本の1000ドルは1万ドルを超え、雄拓は哲生を信用するようになり「ベット」する金額は増えていった。
しかし、調子が良かったのは最初の1週間程で、そこから転落するには日にちはかからなかった。哲生の狙いは面接時に知った雄拓の職務であった。同じロサンゼルスにある中国系家電メーカーの技術者を「顧客」に持つ「ダグラス・ファミリー」として、最先端技術を持つ日本メーカーの「新技術」は商売のネタになると踏み、雄拓を罠にはめたのだった。
「借金返済代わりの「機密データ」は持ち出せたのか?」
の哲生の質問に雄拓は苦しそうに返答した。
「会社に借金があることがばれて、セキュリティークリアランスの観点から「アクセス権」がはく奪されてしまい、持ち出すのは不可能になった…。」
「それじゃあ、仕方ないな。死んで「保険」で払いな。強盗扱いなら「傷害割増」もつくだろ!」
と哲生がナイフを取り出したのを見て、雄拓はテーブルを哲生に向けてひっくり返すと食器棚に隠した護身用の拳銃を取り出し反撃を試みるも、あっさりと蹴り倒され拳銃は床に転がった。
まず、雄拓に馬乗りになりナイフを振り上げた哲生に、そして間髪をあけずダグラスにむけて瞬時に拾い上げた雄拓の銃で羽蘭は4発ずつ心臓に向け9ミリ弾を全弾撃ち込んだ。
後ろにのけ反ったものの、普通の顔をして哲生とダグラスは紫煙が立ち昇る胸を押さえてシャツの胸に開いた銃痕を確認した。
「凄いな、きっちり心臓に4発ずつ。3秒の間に俺とお前にこんな短銃身の拳銃で正確に打ち込みやがった。」
とダグラスがシャツをめくりその下の防弾チョッキに食い込んだ銃弾を指でほじりだした。
「ボス、これ見てくださいよ。この部屋に飾ってあるトロフィーと賞状はこの子が射撃大会で得たものですね。この子は使い道がありそうなんでこの場で「始末」せず連れていきましょう。」
哲生はダグラスに声をかけると、羽蘭の首筋に手刀を叩き込んだ。薄れ行く意識の中で、(これが占いが示してたものなの…。)と思ったが、すぐに思考は真っ暗な闇の中に落ちていった。
「おまけ」
※父「雄拓」との最後の晩餐。
7年前の7月。サマースクールも終わり、羽蘭がアメリカに渡り2度目の夏休みに入る直前の2年生の終業式後、クラスメイトの日本人女子と暫しの別れと、今のクラスで集まるのは最後と言う事でお昼を過ぎても教室には多数の女子生徒が残りおしゃべりをしていた。
「私達のハイスクールライフも残すところ1年。この夏は「素敵な恋」をして、「LJK」として「リア充」な1年を過ごしたいよねー。みんな、私のタロットカードで、この夏に「恋人」ができるかどうか、占ってあげようか?」
と「占い部」の部長で「良く当たる」と噂の女生徒が皆に声をかけるとその机のまわりに十数人の輪ができた。
タロットの大アルカナの22枚のカードを使った一般的なやり方で、卓上で「混ぜシャッフル」されたカードを指定の場所に置き、そのカードの種類と「正」・「逆」の向きで占う方式で、彼女は「フランス式オカルトタロット」の名手という噂だった。
クラスメイトが次々と彼女の前の席に座り、シャッフルをしてはカードが並べられ
「あなたは、近日中に年上の男性と素敵な出会いがあるからがんばって!」
「出会いはあるけど、それは悪い男。深く付き合うなら注意してね。」
「ごめん、いいこと言ってあげたいけど、この夏の異性との「出会い」はナッシングね。」
「がおっ、あなた近々結婚相手と出会うわよ。それも相手は超資産持ちの子息…。「玉の輿」の予感がするわ!」
占い部の女生徒が占いの「お告げ」を告げるたびに、周りを囲んだ女生徒から歓声があがった。
小一時間かけて、教室に残るほぼ全員の女生徒の占いが終わったときに、羽蘭が忘れ物を取りに教室に戻ってきた。
「羽蘭、あなたもハイスクール最後の夏休みに「出会い」があるか占ってもらいなさいよ!まあ、あんたは「鉄砲」が「恋人」だっていうけど、「リアルな男性」との出会いも大切よ!」
とクラスメイトに囲まれ無理やり占い部部長の前に座らせられると、言われるがままにカードを混ぜた。
「最後に5回、近い未来を想像しながらシャッフルして。」
と言われ、羽蘭はタロットカードを5回繰った。
占い部の部長は、羽蘭の前に十字の形にカードを並べると黙り込み、言葉を発することは無かった。
周りのクラスメイトが「羽蘭の運勢はどうなの?」、「何か悪いことでも出たの?」と口々に問いかけるが、それに答えることなく
「ごめん、羽蘭、もう一回カードを混ぜるところからやり直してくれる?」
とだけ言い、羽蘭はその言葉に従ったがビデオのリプレイのように部長は何も言えず、黙りこくったままだった。
教室に緊張感がたちこめ、我慢できなくなった女生徒が
「もう、いったい何なのよ。あんたが何も言わなかったら、「良い」も「悪い」もわからないじゃない。何とか言いなさいよ!」
と部長の肩をこついた。
部長は羽蘭に「ちょっと右手の掌を見せてくれる?」と囁くと、羽蘭の右手を両手で受けるとまじまじと見た。
「後で電話するから…。」
とだけ、羽蘭の耳元で皆に聞こえないように囁くと
「うーん、この夏に凄いことが起こるとしか言いようがないのよね。まあ、私の「占い」能力なんてそんなもんよ。羽蘭の場合、射撃の世界チャンピオンになるとかあり得るもんね。
あっ、ごめん、もう帰らなくっちゃ。じゃあ、9月のクラス替えで皆一緒になれたらいいね。バイバイ。」
と言い残し、席を立った。
(えっ?いったい私の占いで何が出たっていうの?)不安に思う羽蘭以外の女生徒は、「良い」占い結果の出た者に対しての「冷やかし」と「羨望」の話題で盛り上がり、羽蘭の不完全燃焼な占いの話題は忘れられた。
翌週、羽蘭は17歳の誕生日を迎えた。雄拓も愛娘の誕生日という事で、定時退社しローストビーフと誕生日ケーキを買って帰ってきてくれた。
「17歳の誕生日おめでとう。いよいよ高校生活も残り1年。お父さんの仕事は今しばらくこちらになりそうなんで、羽蘭はこっちの大学に行くのか、日本の大学に進むのかしっかりと考えるんだよ。
大学進学は一つの「人生の岐路」だ。お父さんは羽蘭の意思を尊重するから、遠慮することなく自分で自分の人生を決めなさい。」
雄拓が優しくお祝いの言葉をかけると、羽蘭は少し考えてから言葉を発した。
「お父さんは、占いって信じる?終業式の日にね、クラスメイトの「占い部」の友達から「近日中に人生が大きく変わる事件がある。」って言われたんよ。良く当たるって噂の子なんでちょっと気になっちゃってね…。
今、お父さんの言った「人生の岐路」って「運命」や「宿命」の転換点ってことよね。大学進学はまだ1年先の話だけど、その子の占いでは「近日中」ってことなのよね…。
私の名前の読みで漢字を置き換えた「波乱万丈」の相っていうのがタロット占いで出て、同じ占いが「手相」でも出てるんだって。
「波乱万丈」って「劇的な変化がある」っていう意味なんやろ?いったい何があるんやろなってここんところ考えることがあるねん。」
と羽蘭が呟き、ローストビーフに手を伸ばした瞬間、ダイニングのドアが何者かによって乱暴に開かれた。
驚いた羽蘭が視線をダイニングの入り口に向けると、高級スーツの二人のいかつい体型の男が立っていた。ひとりはサングラスをかけた白人の初老の男性で、もうひとりは兄の洋孝に似た東洋人の若い男だった。
「あなた達、誰ですか?呼び鈴も鳴らさず、いきなり入ってきて!警察呼びますよ!」
と羽蘭が叫んだが、雄拓がそれを制した。
「万丈さん、賢明な判断だな。警察が来たら「逮捕」されるのはあんただからな。」
サングラスの男が低い声で呟いた。
「えっ、お父さん、どういうこと?何か捕まるようなことやらかしたん?この人たち何者なん?ちょっと説明してよ。」
羽蘭は状況がわからず父親に質問を連続した。何も答えない雄拓に代わり、東洋人の男が話に割って入った。
「万丈さん、このお嬢さんが「アメリカ国籍」が欲しいって言ってたオリンピック選手を目指してるっていう娘さんですね。もっとバリバリのアスリートを想像してたんですけど、意外と華奢なんですね。
まあ、国籍を「買う」為の資金を「カリフォルニア」では禁止されてる「スポーツ賭博」で稼ごうとしたのは、いただけませんでしたねぇ。「10万ドル」作るどころか「借金」が「30万ドル」になっちゃいましたから…。
本来の支払期日は先週でした。「払えない」っていうんであんたの会社の「新製品」の設計図を「担保」にするって決めた期日は昨日…。さて、我々は「慈善事業」じゃないんで、きっちりとけじめ獲らせてもらいますよ。」
(えっ、私の為にお父さん、「賭博」で大きな借金作ったっていうこと?それで、この人たちは「取り立て」ってことなの?)羽蘭は視線を斜め下に外したままの雄拓の表情とこれから起こるであろうことに不安を感じざるを得なかった。
雄拓は、東洋人の男から状況説明を求められた。先月、羽蘭から「スポーツ国籍」を取得すればオリンピックに出られるという話から、雄拓自身、いろいろと調べて国籍取得の相談を持ち掛けた先が「ダグラス人材商会」というスポーツ国籍取得などで「特別養子縁組」を仲介する会社であった。
自由になる預金が見積額に届かなかった雄拓に東洋人の男「羽哲生」が「スポーツ博打」を持ち掛けた事でこの男達との付き合いが始まったらしかった。初老の白人は「マーチン・ダグラス」というロサンゼルスに拠点を置く、新興マフィア「ダグラス・ファミリー」のボスであり、「羽哲生」はその右腕の華僑系アメリカ人であることが分かった。
ダグラスは柔軟な思考で新しいビジネスを開拓していく頭脳派マフィアで、「闇スポーツ賭博」の「裏ブックメーカー」の経営者でもある。
「娘さんの為に「アメリカ国籍」を取得してやろうという、お父さんの優しさに感動しました。実は、確実に儲けられる「賭博」があるんですけど、私は「インサイダー」の人間なので「賭ける」ことができません。
私も「小遣い」にちょっと困ってる身なので、「勝てるネタ」を教えますので「3割バック」でどうですか?あなたは娘さんの国籍が買えて、私は会社にばれずに「小遣い」をゲットするウィンウィンですね。」
と言葉巧みに雄拓に誘いをかけた哲生は、最初の5ゲームを「全勝すると怪しいですから…」と賭けさせ予定通りの4勝1敗の結果で、雄拓の手持ちの1000ドルを1時間で3500ドルに増やして見せた。その後も30%の情報料は取るものの、元本の1000ドルは1万ドルを超え、雄拓は哲生を信用するようになり「ベット」する金額は増えていった。
しかし、調子が良かったのは最初の1週間程で、そこから転落するには日にちはかからなかった。哲生の狙いは面接時に知った雄拓の職務であった。同じロサンゼルスにある中国系家電メーカーの技術者を「顧客」に持つ「ダグラス・ファミリー」として、最先端技術を持つ日本メーカーの「新技術」は商売のネタになると踏み、雄拓を罠にはめたのだった。
「借金返済代わりの「機密データ」は持ち出せたのか?」
の哲生の質問に雄拓は苦しそうに返答した。
「会社に借金があることがばれて、セキュリティークリアランスの観点から「アクセス権」がはく奪されてしまい、持ち出すのは不可能になった…。」
「それじゃあ、仕方ないな。死んで「保険」で払いな。強盗扱いなら「傷害割増」もつくだろ!」
と哲生がナイフを取り出したのを見て、雄拓はテーブルを哲生に向けてひっくり返すと食器棚に隠した護身用の拳銃を取り出し反撃を試みるも、あっさりと蹴り倒され拳銃は床に転がった。
まず、雄拓に馬乗りになりナイフを振り上げた哲生に、そして間髪をあけずダグラスにむけて瞬時に拾い上げた雄拓の銃で羽蘭は4発ずつ心臓に向け9ミリ弾を全弾撃ち込んだ。
後ろにのけ反ったものの、普通の顔をして哲生とダグラスは紫煙が立ち昇る胸を押さえてシャツの胸に開いた銃痕を確認した。
「凄いな、きっちり心臓に4発ずつ。3秒の間に俺とお前にこんな短銃身の拳銃で正確に打ち込みやがった。」
とダグラスがシャツをめくりその下の防弾チョッキに食い込んだ銃弾を指でほじりだした。
「ボス、これ見てくださいよ。この部屋に飾ってあるトロフィーと賞状はこの子が射撃大会で得たものですね。この子は使い道がありそうなんでこの場で「始末」せず連れていきましょう。」
哲生はダグラスに声をかけると、羽蘭の首筋に手刀を叩き込んだ。薄れ行く意識の中で、(これが占いが示してたものなの…。)と思ったが、すぐに思考は真っ暗な闇の中に落ちていった。
「おまけ」
※父「雄拓」との最後の晩餐。
10
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
【完結】『ながらスマホで56歳のおっさん霊を憑依させざるを得なくなった23歳の女劇団員「音玄万沙《ねくろ・まんさ》」の物語』
M‐赤井翼
現代文学
赤井です。
突然ですが、いきなり書き下ろしの新連載です。
7月13日に「赤井先生、「JK心亜ちゃん」の興行が好評だったんで、既に発注してる「OL心亜ちゃん」の前にもう一本「霊もの」書いてほしいねんけど!別の脚本家の「本」がボツ喰らっちゃったみたいで監督さんから急に8月興行ネタを頼まれてしもたんよ。今回も製本配布するんで公開スタートは19日、稿了は8月9日で200ページね!連載はお盆前後で完結でよろひこー!」ってな感じで、突如、制作スタート!
毎度のことながらゴーストライターに「拒否権」はナッシング(笑)。
今作は、納品先の新エースの「OL心亜ちゃん」役の女の子に合わせての設定で23歳の新人脚本家の「音玄万沙《ねくろ・まんさ》」ちゃん!
変な名前でしょ?「ネクロマンサー」っていうのは「死者や霊をを用いた術(ネクロマンシー)を使う人」で「屍術師」なんて言われ方もしますね。
赤井の大好きな名作アニメ「ゾンビランドサガ」1stシーズンの主題歌「徒花ネクロマンシー」の「ネクロマンシー」ですね。
まあ、万沙ちゃんはゾンビを蘇らせて「佐賀を救う」わけでもないし、降霊術を使って「世直し」するようなキャラじゃない(笑)。
そんな仰々しい物じゃなく、普通の23歳の女の子です。
自らのながらスマホの自転車事故で死ぬ予定だったんだけど、ひょんなことで巻き込まれた無関係の56歳のおっちゃんが代わりに死んじゃいます。その場で万沙ちゃんは「死神」から「現世」での「懲役務」として、死んだおっちゃんと1年半の「肉体一時使用貸借契約」することになっちゃうんですねー!
元「よろずコンサルタント」の「副島大《そえじま・ひろし》」の霊を憑依させての生活が始まります。
まあ、クライアントさんの納品先が「社会派」の監督さんなんで、「ながらスマホ」、「ホストにはまる女子高生」、「ブラック企業の新卒」、「連帯保証人債務」、「賃貸住宅物件の原状回復」、「いろんな金融業者」等々、社会問題について書けるとこまで書いてみたいと思いますので「ゆるーく」お付き合いください。
今回も書き上げ前の連載になりますので「目次」無しでスタートです(笑)。
では、7月19日からよろひこー!(⋈◍>◡<◍)。✧💓
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『偽りのチャンピオン~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.3』
M‐赤井翼
現代文学
元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌の3作目になります。
今回のお題は「闇スポーツ賭博」!
この春、メジャーリーグのスーパースターの通訳が起こした「闇スポーツ賭博」事件を覚えていますか?
日本にも海外「ブックメーカー」が多数参入してきています。
その中で「反社」や「海外マフィア」の「闇スポーツ賭博」がネットを中心にはびこっています。
今作は「闇スポーツ賭博」、「デジタルカジノ」を稀世ちゃん達が暴きます。
毎回書いていますが、基本的に「ハッピーエンド」の「明るい小説」にしようと思ってますので、安心して「ゆるーく」お読みください。
今作も、読者さんから希望が多かった、「直さん」、「なつ&陽菜コンビ」も再登場します。
もちろん主役は「稀世ちゃん」です。
このネタは3月から寝かしてきましたがアメリカでの元通訳の裁判は司法取引もあり「はっきりしない」も判決で終わりましたので、小説の中でくらいすっきりしてもらおうと思います!
もちろん、話の流れ上、「稀世ちゃん」が「レスラー復帰」しリングの上で暴れます!
リング外では「稀世ちゃん」たち「ニコニコ商店街メンバー」も大暴れしますよー!
皆さんからのご意見、感想のメールも募集しまーす!
では、10月9日本編スタートです!
よーろーひーこー!
(⋈◍>◡<◍)。✧♡
【完結】『突撃!東大阪産業大学ヒーロー部!』
M‐赤井翼
ライト文芸
今回の新作は「ヒーローもの」!
いつもの「赤井作品」なので、「非科学的」な「超能力」や「武器」を持ったヒーローは出てきません。
先に謝っておきます。
「特撮ヒーローもの」や「アメリカンヒーロー」を求められていた皆さん!
「ごめんなさい」!
「霊能力「を持たない「除霊師」に続いて、「普通の大学生」が主人公です。
でも、「心」は「ヒーロー」そのものです。
「東大阪産業大学ヒーロー部」は門真のローカルヒーローとしてトップを走る2大グループ「ニコニコ商店街の門真の女神」、「やろうぜ会」の陰に隠れた「地味地元ヒーロー」でリーダーの「赤井比呂」は
「いつか大事件を解決して「地元一番のヒーロー」になりたいと夢を持っている。
「ミニスカートでのアクションで「招き猫のブルマ」丸見えでも気にしない「デカレッド」と「白鳥雛子」に憧れる主人公「赤井比呂」」を筆頭に、女兄妹唯一の男でいやいや「タキシード仮面役」に甘んじてきた「兜光司」好きで「メカマニア」の「青田一番」、元いじめられっ子の引きこもりで「東映版スパイダーマン」が好きな「情報系」技術者の「木居呂太」、「電人ザボーガー」と「大門豊」を理想とするバイクマニアの「緑崎大樹」、科学者の父を持ち、素材加工の匠でリアル「キューティーハニー」のも「桃池美津恵」、理想のヒーローは「セーラームーン」という青田一番の妹の「青田月子」の6人が9月の海合宿で音連れた「舞鶴」の「通称 ロシア病院」を舞台に「マフィア」相手に大暴れ!
もちろん「通称 ロシア病院」舞台なんで「アレ」も登場しますよー!
ミリオタの皆さんもお楽しみに!
心は「ヒーロー」!
身体は「常人」の6人組が頑張りますので、応援してやってくださーい!
では、ゆるーく「ローカルヒーロー」の頑張りをお楽しみください!
よーろーひーこー!
(⋈◍>◡<◍)。✧♡
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
【完結】『夏子と陽菜の犯科帳4 THE FINAL~カルト新興宗教「魂の解放」から洗脳娘を救い出せ!~』
M‐赤井翼
現代文学
第3話から1年開いての「なつ陽菜犯科帳」の最終話です。
過去のお約束通り、最後はなっちゃんも陽菜ちゃんの「花嫁姿」で終わります!
今度の「敵」は、門真に転居してきた「武装カルト宗教組織」です。
偶然出会った、教団に妹を奪われたイケメン日南田大樹(ひなた・ひろき)の為になっちゃん&陽菜ちゃんと「やろうぜ会」メンバーが頑張ります。
武装化された宗教団体になっちゃん、ひなちゃん、そして「やろうぜ会」がどう戦いを挑むのか!
良太郎の新作メカも出てきます!
最終回という事で、ゲストとして「余命半年~」シリーズの稀世ちゃんと直さんも緊急参戦!
もう、何でもござれの最終回!
12月29日までの短期連載です!
応援お願いしまーす!
(⋈◍>◡<◍)。✧♡
【完結】『俺のマンガの原作者はかわいい浮遊霊小説家《ゴーストライター》』
M‐赤井翼
現代文学
赤井です。今回は、シリーズ物で無く書き下ろしの完全新作です。脚本家のクライアントさんから「今回ははっちゃけていいですよ~!」って言われたので「はっちゃけ」させていただきました。
今回のヒロインは「浮遊霊」です!「おばけ」ですよー!(*´▽`*)
「浮遊霊」の女の子が主人公なんで「ホラー・ミステリー大賞」にエントリーしようかとも思いましたが、ここは「現代文学カテゴリーで(笑)!
30歳までにデビューできなければ実家に戻らないといけない「崖っぷち漫画家志望のアシスタント」の「崖淵羅須斗《がけふち・らすと》」君とその部屋で不慮の死を遂げた浮遊霊の「浦方礼《うらかた・れい》」ちゃんの漫画出版までの「ゆるーい話」です。(ちょっとラブコメ(笑)!)
礼ちゃんは、私と同じ「ゴーストライター」です(笑)。「幽霊のゴーストライター」って書いてみたかったんですよね(笑)。
作中で「余命半年~」来た後でノベル化の依頼が無かった「稀世ちゃんスピンオフ」にちょっと触れます。昔からの読者さんに忖度です(笑)。
今回は、「難しい話」も「複雑なギミック」もありませんので「ほのぼの」読んでいただけましたら幸いです。ただ、フラグはいっぱい立ててるので「フラグ探し」を楽しんでください。
それでは3月31日完結予定ですので、月末まで「俺のマンガの原作者はかわいい浮遊霊小説家《ゴーストライター》」を「よーろーひーこー」!(⋈◍>◡<◍)。✧
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる