ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

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最終話 フラれた恨みはどこへいく

フラれた恨みはどこへいく 11ページ目

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「あのー、西園寺会長……?」

「そうね、リアコン王子の言う通りかもしれないよ」

「それじゃ──」

「ねぇ、リアコン王子、ううん、管君ってさイケメンだよね。留年して三十路だけど」

 雲の隙間から光が降り注ぐ中、私はずっと抱えていた自分の想いを管君に伝えようとする。

 激しいリズムを刻む胸の鼓動。

 緊張で頭の中が真っ白になっていく。

 それでも──それでも私は、消え去りそうになる言葉を必死にかき集め、管君へ送る言葉を組み立てたんだ。

「ぐはっ、だから、それは違いますぅぅぅぅぅぅ」

「ふふふ、でも、イケメンだからといって、綾崎さんにデレデレするのは違うと思うなー。もしかして、拓馬と双子だったりして」

「だーかーらー、あれは綾崎先輩からデレデレして来たんですって」

「そうなの? 私には満更でもないように見えたけど?」

 小悪魔の笑みを浮かべ、私は誰にも見せたことのない表情を管君にだけ見せる。

 自分でも、なんでそんな顔が出来たのかわからない。

 ツンデレではないもうひとつの顔。

 これはもしかして、私が生まれ持っていた本当の顔なのかもしれない。だけど、今まで出来なかった顔が自然と出てきたのはなんでだろう。

 ううん、答えはわかってる。

 頭では否定してても、私は管君が心の底から好きだからよ。

 本当に好きな人にしか見せない特別な顔なのよ。

「それは誤解ですって、だって僕は──」

「ダメよ、管君。その先は言ってはいけないこと。それに、禁断の恋って悪くないかな」

「えっ、西園寺会長、それって……」

「か、勘違いしないでね、これはただの例え話なんだからねっ。でも、その人が管君だったらいいなって、ほんの少し思っただけなんだから。さっ、話はおしまいよ、私、拓馬への復讐はやめるね。生徒会長も続けるつもりだから、管君は安心していいのよっ」

 そのあとは一度も振り返ることなく、私は屋上から去っていった。

 だから、管君がどんな顔をしていたなんて知らない。

 ううん、もし知ってしまったら、きっと歯止めが効かなくなるもの。

 少なくとも今は気持ちを伝えられただけで十分。

 答えなんて求めてないんだからねっ。


「本当にこれでいいんですかー?」

 屋上から建物に入ると、奈乃ちゃんが心配そうな顔で待っていた。悪女の面影はまったくなく、姉を見守る妹のような姿が私の瞳に映り込んだ。

「うんっ、これでいいんだよっ。だって私は、クイーン・オブ・ツンデレだからねっ」

「もう朱音先輩から、陰キャの面影はなくなりましたね。それに前から思ってましたけど、中二病という新たな病を発症したようで」

「な、そ、そんなことないもんっ。私は断じて中二病なんかじゃ──」

「それとー、こういう結末になるかと思いまして、実はリアコン王子に朱音先輩の動画を渡してあるですよ。ほら、あのとき、みんなの前でニヤニヤしたときのやつです」

「し、写真は消したって言ったじゃないっ」

「はい、だから動画を葵さんからもらいましたのでー」

 ふ、不覚……。そんな、あんなのを管君が持ってるだなんて。これからどんな顔で会えばいいのよっ。まったく、奈乃ちゃんは悪女なんだから。って、動画、そうよ、私は写真はダメって言っただけよね。

 ということは──。

「まさかですけど、巫女装束とかメイド服を動画にはしてないよねっ?」

「ふふふ、ご想像にお任せしますよー」

「消せとか言わないから、せめて誰に渡したのか教えてよぉぉぉぉぉぉ」

「そんなことより、朱音先輩、次の目標はどうするんですかー?」

「えっ、あっ、それはね──」

 ツンデレでこの学園をさらに良くするの。

 だってツンデレは──世界最強属性なんだからねっ!


 拓馬への復讐こそ果たせなかったが、私の心はどこか晴れやかな気分だった。当初の目的は半分しか達成できなかったけど、次なる目標に向け新たな一歩を踏み出そうとする。

 当然その先には困難が待ち受けてるだろう。でも、リベンジャーズのメンバーとなら、どんな困難も乗り越えられると信じていた。
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