ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

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最終話 フラれた恨みはどこへいく

フラれた恨みはどこへいく 10ページ目

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 決戦の日はどんよりとした曇り空。

 暗雲が立ちこめる中、悪王鷺ノ宮拓馬との熱き戦い始まろうとする。そう、そのはずだったのだが……。

「何よリアコン王子、大切な話って」

 決戦の前に私は管君から屋上に呼び出されていた。

 なぜこのタイミングでなのか、まったく見当もつかなかったけど、管君の顔はいつにも増して真剣だった。

「あの、西園寺会長、こんなときになんですけど……」

 えっ、何を言うつもりなのよ。

 まさか……私への告白とかなの。ううん、それはありえない、だって告白なんてしたら校則違反になっちゃうもの。でも──って、私は何を考えてるのよっ。

 これじゃまるで、管君から告白されるのを期待してるみたいじゃないっ。

「何よ、勿体ぶらずハッキリと言いなさいよ」

「は、はい。手伝っておいて言うのもなんですけど、復讐なんてやめませんか?」

「はっ? そんなこと出来るわけなじゃない。私はこの瞬間のためだけに生徒会長になったのよ!」

 なーんだ、期待して損したよ。待って、私ったら期待とか何考えてるのよ。

 そ、れ、よ、り、も、どうして管君はいっつも私のやることに反対するのっ。だいたい、私の復讐を手伝ってくれたんじゃないのっ。まさか私を理由にして、綾崎さんに近づきたかっただけなんじゃ。

 そうよ、絶対そうに決まってるよ。

 純情な乙女心を弄ぶだなんて、留年高校生はやることがゲスレベルだよ。

「それは知ってます。知ってますけど、僕は西園寺会長にこれ以上復讐をして欲しくないのです。理事長と加地先生は救いようのない存在でしたけど、鷺ノ宮先輩は……」

「それって、拓馬は救えるから復讐するのはおかしいってことなの?」

 あんなゲス男を庇うなんて意味がわからない。

 思わず声を荒らげちゃったじゃないの。

 でも、私を否定しようとしたんだから仕方がないよね。

「そうじゃないんです。何股もするような人は最低だと僕も思ってます」

「それがわかってるなら、なんで復讐を止めようとするのよっ」

「それはですね、理事長たちは害しかないので復讐は仕方のないこと。でもですね、でも──鷺ノ宮先輩に復讐するってことは、同じレベルの人間に成り下がるってことなんですよ!」

「私が拓馬と同じって……」

 わからない、管君が何を言いたいのか私には全然わからないよ。

 だってあの男は、私の努力を踏みにじったのよ? だから報いを受けるのは当たり前のはずじゃない。それなのに、復讐するだけで同レベルになるって意味がわかんないよ。

「だって西園寺会長は、フラれただけじゃないですか。ううん、むしろあんなゲス男と別れられたんだから、喜ぶべきだと思いますよ!」

「だったら、私の努力はどうなるのよっ! やっとここまでたどり着いたのに、それは全部無駄だったってことなのっ?」

「それは違います。西園寺会長が努力したおかげで、僕たちと出会うことが出来たじゃないですかっ。三須先輩や来栖さん、それに神崎さんだって。今いる場所は、もう復讐なんてしなくても十分幸せじゃないんですか?」

 幸せ……? 今の私って本当に幸せなの?

 陰キャだった私が努力してツンデレを手に入れ、拓馬と付き合えたときは幸せだった。ほんのわずかな時間だったけど、私にとっては何者にも代え難い思い出よ。

 それを身勝手な理由で踏みにじった拓馬を許すなんて、出来るはずがない。だから私は、このツンデレを使って復讐すると誓ったんだから。

 でも──本音を言うと、あの時間、リベンジャーズのメンバーと話してる時間は幸せだったのは間違いないよ。それこそ、復讐なんてどうでもよくなるくらい、私は心が満たされていたもの。

 そうか、そうだったんだ。私、復讐という魔物に取り憑かれて、本当に大切なモノが見えてなかったのね。確かに管君の言う通り、私はフラれただけで、そんなことで復讐なんてしてたらキリがないよね。
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