ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

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最終話 フラれた恨みはどこへいく

フラれた恨みはどこへいく 9ページ目

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「提案ってなんですー?」

「リアコン王子が言ってた、司法取引というやつですねー。ゲス男の悪事を証明するかわりに、舞星さんを無罪にするのですよ。とは言いましても、その分の時間をゲス男に上乗せはしますけどねー」

「つまり、二十時間ではなく、ボランティア時間が四十時間になるってこと?」

 四十時間もあれば、拓馬を完璧にボランティア地獄へ落とせるよ。ナイスだよ、さすが奈乃ちゃん、悪女を極めてるだけのことはあるよ。

「その通りですー。ただ、ひとつ問題なのは、司法取引を校則に入れてないことなんですよ」

「それなら簡単な解決方法があるよっ。司法取引制度に反対の人は挙手! はいっ、いないね、リアコン王子、ちゃんと議事録に書いておいてねっ」

「西園寺会長、いくらなんでも強引すぎますって」

「へぇー、リアコン王子は反対なの?」

「僕は賛成ですけど──」

「ならいいでしょっ。べ、別に強制的に賛成しろって言ってるわけじゃないんだからっ。ただ、スピーディーに物事を決めたいだけ、なのよ」

「で、でも……」

「リアコン王子は黙ってボクの会長に従うといいよ。それとも、まさかとは思うけど、反対なんてしないよね?」

 葵ちゃんの変なスイッチが入ったみたい。これは誰にも止められないかな、って、止めるつもりもありませんけど。

 あの迫力じゃ、管君の顔が青ざめるのも頷ける。

 冷や汗が体から出てるのが見えそうね。

 でも、どんなに困ってても、止めてあげないんだからっ。だってこれが成立しないと、復讐にならないんだもん。

「やっと納得したみたいね」

「来栖先輩に押し切られた、とも言いますけどー」

「よし、これで準備は万端ね。あとは悪王ゲス男を討伐するだけよ」

「ゲス男には正義の鉄槌を下すのだー」

「討伐したら会長がボクのモノとなるフラグが──」

「そんなフラグは立ちませんからっ」

「だって朱音先輩はすでに──」

「奈乃ちゃんは何を言おうとしてるのよっ。もう、みんなして私をいじめないでぇぇぇぇぇぇ。あっ、舞星さん、ありがとうね、おかげで助かったよ。ついでにリアコン王子もねっ」

「いえいえー、力になれてよかったですわ」

「僕はついでなのぉぉぉぉぉぉ」

 悪王との決戦を前に、賑わいを見せるリベンジャーズルーム。

 この復讐さえ成し遂げれば、生徒会長の座に居座り続ける理由はない。

 だけど──この雰囲気が私は好きで、ここを失いたくない、という気持ちが日増しに強くなっていた。

 すべての復讐を果たしたとき、私はここにいてもいいのかな。

 みんな前と同じように接してくれるのかな。

 何よりも気になるのは、ここを離れてしまったら──。

「葵ちゃんや早紀先輩、奈乃ちゃんは変わらずに話してくれるかなっ。それと、管君も……。べ、別にリアコン王子はどうでもいいんだけど、仲間はずれはよくないから。ただ、それだけよ」


「何をボソッと言ってるですかー?」

「ふぇっ!? な、なんでもない、本当になんでもないから。それよりもさ、暗くなってきたから、早く帰ろうよっ」

 き、聞かれてないよね。

 まさか声に出てただなんて……。

 あんなの聞かれたら、恥ずかしすぎるもんね。

 鼓動が激しくなる中、私は──ううん、私たちは明日の決戦に備え足早に校舎を出ていった。
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