ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

文字の大きさ
上 下
72 / 83
第6話 復讐は密のように甘かった

復讐は蜂蜜のように甘かった 12ページ目

しおりを挟む
「よく気づいたのぉ、その通りじゃよ。とは言っても、騙したわけではない、夢を売っただけじゃから、問題があるわけないじゃろ」

「はっ、理事長、待ってくださいっ。おい、神崎、その手に持ってるのはなんだっ! はっ、まさか……。り、理事長、外を、外を見てください」

「なんじゃ騒々しい。外など見ても──」

 やっと気づいたようね。

 あの放送を聞いて、理事長室に視線を向ける生徒たちが大勢いるのよ。

 とはいっても、私も奈乃ちゃんのアイコンタクトでわかったんだけど。

 だってここの会話は、すべて放送室を通じて学園内に伝えられていたのだから。こんな方法を思いつくなんて、さすが悪女の極みね。

「どうやら、年貢の納め時ね。もはや、言い逃れは出来ないよ。大人しくこの学園を去ってください」

「ぐぬぬぬぬ……」

「理事長、名案があります、これは演劇の練習だと言い切れば──」

「加地先生、ばか、ですか?」

「西園寺、教師に向かってなんだその口の利き方は」

「いえ、もう教師ではないでしょう。ここの会話は筒抜けなのをお忘れでしょうか?」

「はっ、そ、それなら、校内に残ってる生徒にワイロを──」

 人って追い詰められると、意味不明なことを口走るのね。

 これはこれで勉強になりましたよ。

 それに、往生際が悪い人ってかっこ悪すぎね。

「加地先生っ、ワイロというのは、生徒だけなんですかー?」

「当たり前だろっ、ここにいる者たちの口止めさえすれば──」

「で、も、SNSで拡散されたら意味がないですよねっ。か、勘違いしないでよねっ。これは別に、加地先生のために助言したわけじゃないの。ただ、現実を教えてあげただけ、なんだから」

「そ、そんなぁ……」

 これでやっと終わりましたね。

 内心ヒヤヒヤしたけど、奈乃ちゃんのおかげで助かったよ。

「理事長、最後にひと言いいですかー?」

「な、なんじゃ」

「高い勉強代になりましたねっ。それと、卒業おめでとうございまーすっ」

「くっ……。ワシの人生がこんな小娘に潰されようとは……」

「では、校則に従いまして、理事長、ならびに加地先生のクビを通達しますね。以上、リベンジャーズからの報告は終わりですっ」

 これで残りの復讐対象は拓馬だけ。

 待ってなさい、この恨みは必ず晴らしてみせるんだからっ。

 その場に倒れ込む二人を無視し、私たちはリベンジャーズルームへと足早に戻り出す。

 その道中、私の心は最高の前菜を食べ終わった満足感で満たされていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何故か超絶美少女に嫌われる日常

やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。 しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。

善意一〇〇%の金髪ギャル~彼女を交通事故から救ったら感謝とか同情とか罪悪感を抱えられ俺にかまってくるようになりました~

みずがめ
青春
高校入学前、俺は車に撥ねられそうになっている女性を助けた。そこまではよかったけど、代わりに俺が交通事故に遭ってしまい入院するはめになった。 入学式当日。未だに入院中の俺は高校生活のスタートダッシュに失敗したと落ち込む。 そこへ現れたのは縁もゆかりもないと思っていた金髪ギャルであった。しかし彼女こそ俺が事故から助けた少女だったのだ。 「助けてくれた、お礼……したいし」 苦手な金髪ギャルだろうが、恥じらう乙女の前に健全な男子が逆らえるわけがなかった。 こうして始まった俺と金髪ギャルの関係は、なんやかんやあって(本編にて)ハッピーエンドへと向かっていくのであった。 表紙絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。 無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

深海の星空

柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」  ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。  少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。 やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。 世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。

処理中です...