ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

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第6話 復讐は密のように甘かった

復讐は蜂蜜のように甘かった 4ページ目

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「ホント助かるよ奈乃ちゃん。それでね、みんなに相談、があるんだけど」

「はにゃ? 朱音会長、真剣な顔でどうしたのー?」

「私、その……追放したい先生が二人ほどいるんだけど」

「それは誰、かな。ボクの会長を傷つける先生なんて、生きる価値がないよ。だから、今すぐに追放すべきだと思う」

「朱音会長が嫌うほど、ひどい教師がいるのー? そんな不届き者を追放するなら、サキも協力するのだー」

「ありがとう、みんな……」

 この優しさに感動して涙が出そうだよ。

 一年前の私はずっと孤独だった。誰かに話しかけるのは、高難易度クエストに挑戦するのと同じ。ツンデレを学び始めてもそれが変わることはなかった。

 それなのに──。

 今、目の前には少ないけど仲間がいる。正直な気持ち、毎日が楽しくて仕方がないの。心の奥底では、復讐を諦めてもいいと思ったこともある。

 でも──私が復讐を捨てることはなかった。だって、この居場所がどんなに心地よくても、あの人たちがのうのうと生活してるなんて、私には耐え難い屈辱なの。

 理想は両方を手に入れることだけど、私はそこまで器用な性格じゃない。

 だから私は──復讐の道を選ぶしかなかったのよ。

「西園寺会長……? どうして泣いてるんですか?」

「な、泣いてなんかないわよっ。このリアコン王子っ!」

「──ぐはっ」

 クセで管君をビンタしちゃったけど、デリカシーないこと言うからよっ。私は──全然悪くないんだからっ。

 だいたい、私が泣いてるですって。

 そんなわけない、涙なんて私には存在しないのよ。

 復讐のためだけに生徒会長になったんだから。

 目的さえ果たせば、こんな居場所なんて──。

「ボクは会長がどこへ向かおうとしても、ずっとそばにいるよ」

「サキだって、あおいちゃんと同じ気持ちだよ。だから、ひとりで抱え込まないでよー」

「朱音先輩、お願いだから泣かないで。私がついてるから。だって私は──朱音先輩が本当の姉みたいだって、思ってるんですよ。だから、困ったときは妹の私を頼ってください」

 ずるい……よ、そんな風に言われたら、私、何も言えなくなっちゃうじゃないの。

 それに、今までずっとひとりぼっちだったから、こういうとき、どう反応していいか、わからないよ……。


 えっ、奈乃ちゃんからハグしてくるだなんて。

 温かい……これが人の温もりなのね。

 初めてかもしれないこの感触。


 奈乃ちゃんの優しさが心に染み渡って、推しを愛でてるような気持ちになるよ。拓馬とは手しか繋いだことがなかったけど、そのときよりも温かくて優しい感じがするかな。
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