ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

文字の大きさ
上 下
32 / 83
第3話 生徒会選挙はツンデレで

生徒会選挙はツンデレで 10ページ目

しおりを挟む
「みなさま、おはようございます。私が生徒会長へ立候補した西園寺朱音です」

 翌日も遅刻することなく、私は正門で演説していた。

 昨日いた舞星さんの姿が見えないけど、きっと寝坊したのよね。余裕があるからなのかな、ううん、それはどうでもいい。私は私のなすべきことをするだけ。

 そう、私がなすべきことはふたつよ。


 ひとつは、昨日忘れてた奈乃さんお手製の演説内容。

 もうひとつは──魔性の居ぬ間に洗濯作戦。


 洗濯といっても本当にするわけじゃなの。『鬼の居ぬ間に洗濯』を魔性風にしただけ、なんだから。この作戦は、舞星さんの評判を落とすシンプルなもの。

 べ、別に嘘を言うわけじゃないの。ただ、ほんの少し脚色するだけ、なんだから……。

「私は生徒会長にまったく興味がないの」

 えっと、ここで照れる仕草よね。

 はうっ、いきなり照れるって難しいよ。

 落ち着きなさい朱音、まずは顔を赤く染めるの。

 それには、過去の黒歴史を思い出せばいいのよ。

 そう、私の黒歴史──。


 その中で一番重いのを思い浮かべ──甚大な心へのダメージと引き換えに、私は顔を赤く染めることに成功した。


「で、でも、勘違いしないでよねっ。みんなの役に立ちたいって、ほんの少し思ったの。本当にそれだけ、なんだから……」

 うっ、思ったより黒歴史のダメージが大きいよ。あれは忘れたくても、絶対に忘れられないもん。

 コンクールで金賞を取った中学時代。

 もちろん嬉しくてクラスメイトに自慢したのよ。

 でも……受賞したのは同姓同名の別人で、私は学校一のピエロにクラスチェンジしちゃったの。そうよ、たまたま職員室で受賞の話を聞いたけど、実は『ウチの学校にも同じ名前の生徒がいる』というオチだったのよ。


 当時を思い出すと、私の心が闇色に染まっていく。それこそ、ここがデレポイントなのにデレ方を忘れ、歪な表情のデレ顔を披露してしまった。


「で、でも、私が当選したら、ツンデレブームを巻き起こしたいって思っているの。だから、私に投票して欲しいかなっ」

 デレ顔は失敗しちゃったから、ここの涙目は成功させないと。まずは空を見上げて次に目薬を──って、この目薬は色が赤いよ。

 これじゃ血の涙になっちゃうじゃない。確かに心の中では血の涙を流してるけどさ。

 でも違うの、ここで欲しいのは普通の涙目なんだからぁぁぁぁぁぁ。


 心の中で叫び声を上げるも、赤い目薬をさすしかなかった。きっと周りには、赤い涙が光り輝いているように見えてるはず。

 だから、周囲の視線は違和感しか感じられない。

 だって赤い目薬はホラーを演出しているもの。これは大きなマイナスポイントにしかならない。せっかくツンデレで好感度がアップさせたのに、赤い目薬がそれを急降下させたからよ。


 こうなったら、舞星さんを使って再び支持率を上げるしかないね。魔性の力を逆手にとって、舞星さんから支持率を奪うのよ。

 この使命は非常に難易度が高い、エベレストよりも遥かに高いよ。

 でも、ツンデレに不可能の文字は存在しないんだからねっ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Color4

dupi94
青春
高校一年生の岡本行雄は、自分のすべてから目を背けるほどの事故から始まった悲惨な中学時代を経て、新たなスタートを心待ちにしていた。すべてが順調に始まったと思ったそのとき、彼は教室に懐かしい顔ぶれを見つけました。全員が異なる挨拶をしており、何が起こったのかについての記憶がまだ残っています。ユキオは、前に進みたいなら、まず自分の過去と向き合わなければならないことを知っていました。新しい友達の助けを借りて、彼は幼なじみとの間の壊れた絆を修復するプロセスを開始しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

家路

tsu
青春
主人公が青春時代に偶然出会った三人の女の子との思い出話。

僕とやっちゃん

山中聡士
青春
高校2年生の浅野タケシは、クラスで浮いた存在。彼がひそかに思いを寄せるのは、クラスの誰もが憧れるキョウちゃんこと、坂本京香だ。 ある日、タケシは同じくクラスで浮いた存在の内田靖子、通称やっちゃんに「キョウちゃんのこと、好きなんでしょ?」と声をかけられる。 読書好きのタケシとやっちゃんは、たちまち意気投合。 やっちゃんとの出会いをきっかけに、タケシの日常は変わり始める。 これは、ちょっと変わった高校生たちの、ちょっと変わった青春物語。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!

佐々木雄太
青春
四月—— 新たに高校生になった有村敦也。 二つ隣町の高校に通う事になったのだが、 そこでは、予想外の出来事が起こった。 本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。 長女・唯【ゆい】 次女・里菜【りな】 三女・咲弥【さや】 この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、 高校デビューするはずだった、初日。 敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。 カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

坊主の誓い

S.H.L
青春
新任教師・高橋真由子は、生徒たちと共に挑む野球部設立の道で、かけがえのない絆と覚悟を手に入れていく。試合に勝てば坊主になるという約束を交わした真由子は、生徒たちの成長を見守りながら、自らも変わり始める。試合で勝利を掴んだその先に待つのは、髪を失うことで得る新たな自分。坊主という覚悟が、教師と生徒の絆をさらに深め、彼らの未来への新たな一歩を導く。青春の汗と涙、そして覚悟を描く感動の物語。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

処理中です...