ツンデレヒロインの逆襲

朽木昴

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第3話 生徒会選挙はツンデレで

生徒会選挙はツンデレで 7ページ目

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「だいたい、学校は勉強するところよ。だから──」

 ──キーンコーンカーンコーン……。

 まさか、予鈴がこの戦いを邪魔するだなんて。

 ここから私のターンでしたけど、大いなる力に阻まれては引くしかないですね。

「今日のところは引いてあげます。か、勘違いしないでよねっ。勝負は始まったばかり、なんだから」

「それは、こっちのセリフですわ。わたくし、絶対に負けませんわよ」

 お互い同時に動き出し、そのまますれ違い逆方向へと歩いていく。私は一度も振り返らず、学校の外へと向かった──って、これから学校なのに、家に帰っちゃダメじゃない。

 しかも、荷物は教室にあるんだし……。

 危うく魔性の罠にハマるところでした。

 ダッシュよ、教室まで全力疾走よ、でないと、遅刻になっちゃうからぁぁぁぁぁぁ。


 持てる力をすべて出し、私は教室まで走り出した。途中で見えた舞星さんには目もくれず、遅刻という言葉だけが頭の中を占有していた。


「今日はちゃんと演説してたみたいですねー。二日連続で遅刻するかと思ってたので、少し残念ですよ」

 お昼休みの屋上で奈乃さんと過ごすのが、私の日課になりつつある。拓馬と付き合ってた一ヶ月を除き、お昼はぼっちなのが私の高校生活だった。

 寂しい青春時代を送る予定──ではないですけど、二人で一緒に食べるお弁当は格別なもの。

 たとえ、腹黒系悪女であっても、こうして話せる相手がいることに、私は涙が出るほど嬉しかった。

「期待に沿えなくてごめんなさい。じゃなくて、酷いよ、奈乃さん。そんなこと言うと、いくらツンデレをマスターした私でも、泣いちゃうんだからねっ。ぐすん……」

「朱音先輩……。本当に泣いているんですね。でも、ここで目薬は必要ありませんよ?」

「ちがーーーーう。目薬じゃなくて、ワサビを塊で食べちゃったんだよっ!」

「いつの間にドジっ娘属性まで手に入れたのですかー」

「私はドジっ娘じゃないもんっ。ぐすん、ちゃんとしたツンデレなんだからっ。ぐすん」

 ぐすん、涙が止まらないよ。

 お母さん……ワサビは程々にして欲しかったかな。

「ところで、あの演説内容の影響を受けて、朱音先輩の支持率が上がりましたねー。三時間かけて考えた甲斐があったというものですよ」

 ──ギクッ。

 そ、そういえば、演説なんてしてないよね。舞星さんと戦ってた記憶しかないんですけどっ。

 しかも、三時間って──実は使う余裕がなかったなんて、この笑顔の前で言えるわけないよ。

 どうしよ……。はっ、そうか、明日使えばいいんだよ。今日は上手く誤魔化してやり過ごそう。それがお互い平和だよね。

「えへへ、ホント助かったよ。ところで、どれくらい上がったんだろ。確かサイトで簡単に見えたよねっ」

 よし、これならバレないでしょ。

 べ、別に嘘をついてるわけじゃないもん。ただ、未来の出来事を前倒しにしただけだから。

 さてと、支持率はどれくらい──って、上がるには上がってるけど、この上昇率は喜んでいいものやら……。
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