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第1話 ツンデレ誕生
ツンデレ誕生 4ページ目
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──ピンポーン。
呼出音はいたって普通。そう、普通なのだが──なぜか押したあとすぐに、機械らしき女性の声が、私に話しかけてきた。
『なによ、私に用でもあるのかしら? まったく、たとえ用があっても、私を呼び出さないでよねっ。で、でも、ほんの少しだけなら、相手してあげてもいいわよ。か、勘違いしないで欲しいわ。そうよ、今日は特別な日だからよ、ただそれだけ、なんだから……』
音声が終わると同時に、重厚なトビラがゆっくりと開き始める。
中は暗闇に覆われ外からは何も見えなかった。
「な、何よこれ。意味がわからない、なんでインターフォン押しただけで開くのよ。暗証番号の意味なんて、ないじゃないのっ」
ひとりツッコミをしつつも、私の足は自然とトビラの奥へ歩き出した。
中は真っ暗で一寸先は闇の状態。
入口から漏れる光だけが私を照らしていた。
「暗くて何も見えないよ。もしかして、何かのアトラクションとかで、あとから高額請求される新手の悪徳商法とかなのかな……」
ゆっくり奥へと進む私。
なぜか、戻るという選択肢は浮かんでこなかった。
慎重に光と闇の境目まで歩くと……。
──ブーッ、ブーッ、ブーッ。
室内に警告音のような音が鳴り響き、重厚なトビラが下界との入口を遮断する。室内から光は完全に失われ、私の周囲は暗闇が支配してしまった。
「なんでドアが勝手に閉まるのよ。これじゃ暗くて何も……。そ、そうだ、スマホよ、スマホの光で照らせばいいんだよ」
私は急いでカバンからスマホを取り出そうとする。が、暗闇の中で見つけるのは非常に困難だった。焦る気持ちを抑え、手探りし続けること数秒。突然、奥にスポットライトで照らされた年配女性の姿が目に映る。
人……だよね。人形なんかじゃないよね。ホラー系だったら、私泣いちゃうよ。
「あ、あの……。す、すみませーん、インターフォン押したらドアが開いたので、勝手に入っちゃったんですけど……」
恐怖と戦いながらも、私は勇気を振り絞りその女性に話しかけた。きっと大丈夫、怒られたりはしないと、自分に言い聞かせながら……。
「ソナタを待っておったぞ。ここは選ばれし者しか入れない、特別な場所ぞ。さぁ、今こそワシと契約するのじゃ、さすれば、ソナタの願いは叶えられるであろう」
契約ってどういうことよ、それに選ばれし者だなんて。ひょっとして、危ない宗教とかなのかな。なんで私はいつも、こういうトラブルに巻き込まれるのよ。
こうなったら、適当にあしらって帰してもらおう。
うん、それが一番よね。
WINWINの関係で終われるんだし。
「ご、ごめんなさい。ちょっと、道に迷ったみたいで、今すぐにでも、ここから出たいんですけど……」
「なんと、道に迷ったと。そうか、そうか、だが安心するがよい。ワシと契約すれば新しい道を切り開けるぞ!」
「え、えっと、話を聞いてましたか? 私、ここから出たいだけ、なんです」
「なるほど、ツンデレになりたい、そう、申すのか。ツンデレこそが、世界の頂点に君臨するべき存在。お若いのにそれを知っているとは、ソナタはただ者ではないな!」
私が話してるのって、人間……ですよね?
ゲームに登場するNPCなんかじゃないよね。
こんなにも会話が成立しないだなんて──もしかしたら話が通じない人なのかも。
もぅ、こんな面倒臭い人に絡まれるとか、陰キャ以外にも隠し属性があるのかな。
って、あの人ツンデレって言いましたよね?
そういえば、ここの看板にもツンデレ道場って書いてありましたし──話ぐらいなら、聞いてもいいよね。
呼出音はいたって普通。そう、普通なのだが──なぜか押したあとすぐに、機械らしき女性の声が、私に話しかけてきた。
『なによ、私に用でもあるのかしら? まったく、たとえ用があっても、私を呼び出さないでよねっ。で、でも、ほんの少しだけなら、相手してあげてもいいわよ。か、勘違いしないで欲しいわ。そうよ、今日は特別な日だからよ、ただそれだけ、なんだから……』
音声が終わると同時に、重厚なトビラがゆっくりと開き始める。
中は暗闇に覆われ外からは何も見えなかった。
「な、何よこれ。意味がわからない、なんでインターフォン押しただけで開くのよ。暗証番号の意味なんて、ないじゃないのっ」
ひとりツッコミをしつつも、私の足は自然とトビラの奥へ歩き出した。
中は真っ暗で一寸先は闇の状態。
入口から漏れる光だけが私を照らしていた。
「暗くて何も見えないよ。もしかして、何かのアトラクションとかで、あとから高額請求される新手の悪徳商法とかなのかな……」
ゆっくり奥へと進む私。
なぜか、戻るという選択肢は浮かんでこなかった。
慎重に光と闇の境目まで歩くと……。
──ブーッ、ブーッ、ブーッ。
室内に警告音のような音が鳴り響き、重厚なトビラが下界との入口を遮断する。室内から光は完全に失われ、私の周囲は暗闇が支配してしまった。
「なんでドアが勝手に閉まるのよ。これじゃ暗くて何も……。そ、そうだ、スマホよ、スマホの光で照らせばいいんだよ」
私は急いでカバンからスマホを取り出そうとする。が、暗闇の中で見つけるのは非常に困難だった。焦る気持ちを抑え、手探りし続けること数秒。突然、奥にスポットライトで照らされた年配女性の姿が目に映る。
人……だよね。人形なんかじゃないよね。ホラー系だったら、私泣いちゃうよ。
「あ、あの……。す、すみませーん、インターフォン押したらドアが開いたので、勝手に入っちゃったんですけど……」
恐怖と戦いながらも、私は勇気を振り絞りその女性に話しかけた。きっと大丈夫、怒られたりはしないと、自分に言い聞かせながら……。
「ソナタを待っておったぞ。ここは選ばれし者しか入れない、特別な場所ぞ。さぁ、今こそワシと契約するのじゃ、さすれば、ソナタの願いは叶えられるであろう」
契約ってどういうことよ、それに選ばれし者だなんて。ひょっとして、危ない宗教とかなのかな。なんで私はいつも、こういうトラブルに巻き込まれるのよ。
こうなったら、適当にあしらって帰してもらおう。
うん、それが一番よね。
WINWINの関係で終われるんだし。
「ご、ごめんなさい。ちょっと、道に迷ったみたいで、今すぐにでも、ここから出たいんですけど……」
「なんと、道に迷ったと。そうか、そうか、だが安心するがよい。ワシと契約すれば新しい道を切り開けるぞ!」
「え、えっと、話を聞いてましたか? 私、ここから出たいだけ、なんです」
「なるほど、ツンデレになりたい、そう、申すのか。ツンデレこそが、世界の頂点に君臨するべき存在。お若いのにそれを知っているとは、ソナタはただ者ではないな!」
私が話してるのって、人間……ですよね?
ゲームに登場するNPCなんかじゃないよね。
こんなにも会話が成立しないだなんて──もしかしたら話が通じない人なのかも。
もぅ、こんな面倒臭い人に絡まれるとか、陰キャ以外にも隠し属性があるのかな。
って、あの人ツンデレって言いましたよね?
そういえば、ここの看板にもツンデレ道場って書いてありましたし──話ぐらいなら、聞いてもいいよね。
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