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第1話 ツンデレ誕生
ツンデレ誕生 3ページ目
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「俺にか? あぁ、なんでも聞いてくれ」
あの人、鷺ノ宮って名前なのね。それにしてもあの女子、いったい何を聞くつもりかしら。
はっ、告白なんて──こんな大勢の前でするわけないよね。
あの女子が何を聞き鷺ノ宮君がどう答えるのか。
私はどうしても内容が気になり、柱の影──がなかったので、電話をしてるフリをして、堂々と二人に近づいたんだ。
「あ、あの……。鷺ノ宮君の好きなタイプを教えて欲しいんです。ダメ、ですか?」
顔を赤く染めながら聞く女子に、私のこめかみは怒りマークが浮かぶ。私が聞けないことを聞いてくれたのには感謝する。だけど、まるで脈アリみたいな態度が気に食わなかったの。
──ピシッ。
耳元に聞こえる確かな音。怒りのボルテージが振り切れた──わけではなく、スマホを握る力が強すぎた。
つまり、機種変したばかりの画面は、無惨にも一筋の割れ目が綺麗に刻まれていた。
はぅ、買い換えて、まだ三日しか経ってないのに……。
これも、すべてあの女子のせいよ。
陰キャにだって、人権があるんだからね。
自業自得など私の辞書には存在しない。新品のスマホにヒビが入ったのも、陰キャで鷺ノ宮君に告白できないのも、全部あの女子のせいに決まってるもん。
湧き上がる怒りを必死に抑え、私は二人の会話に耳を傾けた。
「俺の好きなタイプ? 構わないぜ。そうだなー、ツンデレ貧乳って結構いいと思うな。素直じゃないところが可愛いし」
「ツンデレ……。しかも、貧乳……」
ふっ、あの女には無理なようね。
いくら陽キャとはいえ、胸の大きさは変えられまい。
これぞ、天から与えられた私の勝利──って、虚しくなるわね。ううん、違うのよ、そうじゃなくて、貧乳で何が悪いのよ。誰にも迷惑なんてかけてないじゃないの。
自分の中で突如沸いた何かと戦い、私は辛くも勝利を得る。残る問題はあとひとつ、『ツンデレ』という属性をどうやって身につけるかだった。
「今日も何事なく平和に終わったわね。それにしても、鷺ノ宮君の好きなタイプはツンデレかぁ。陰キャの私にそんな属性なんて、難易度高すぎ君だよ。それなら、音ゲーで目隠しクリアする方が簡単なのに」
音ゲーは私が愛してやまない心の癒し。推し活のためならオールなんて朝飯前よ。当然、そのゲームにもツンデレキャラはいる。
だけど──あんなセリフをマネするなど、陰キャな私にとっては難しすぎる話。
どこかに、ツンデレ属性とか落ちてないかしら。なんかこう、秘伝書みたいのが空から降ってきたりとか。って、あの看板は……。
見慣れているはずの街並み。だけど、私はあんなお店を見たことがなかった。
看板に刻まれた文字は──。
「ツンデレ道場……? こんなモノ、いつの間にできたんだろ。しかも、なんだか少しボロいし……」
私が目にしたツンデレ道場の姿は、とても新装開店したとは思えないほど。
頭上の木製看板は傾き、よく見れば前に書いてあったと思われる文字が薄ら見える。見た目は場違いなレトロ感が漂い、暗証番号つきの重厚なドアが来る者を拒んでいる。インターフォンらしきモノはあるものの、私が一度も見たことのない形だった。
インターフォンに呼び寄せられるように、私は無意識にボタンを押してしまった。
あの人、鷺ノ宮って名前なのね。それにしてもあの女子、いったい何を聞くつもりかしら。
はっ、告白なんて──こんな大勢の前でするわけないよね。
あの女子が何を聞き鷺ノ宮君がどう答えるのか。
私はどうしても内容が気になり、柱の影──がなかったので、電話をしてるフリをして、堂々と二人に近づいたんだ。
「あ、あの……。鷺ノ宮君の好きなタイプを教えて欲しいんです。ダメ、ですか?」
顔を赤く染めながら聞く女子に、私のこめかみは怒りマークが浮かぶ。私が聞けないことを聞いてくれたのには感謝する。だけど、まるで脈アリみたいな態度が気に食わなかったの。
──ピシッ。
耳元に聞こえる確かな音。怒りのボルテージが振り切れた──わけではなく、スマホを握る力が強すぎた。
つまり、機種変したばかりの画面は、無惨にも一筋の割れ目が綺麗に刻まれていた。
はぅ、買い換えて、まだ三日しか経ってないのに……。
これも、すべてあの女子のせいよ。
陰キャにだって、人権があるんだからね。
自業自得など私の辞書には存在しない。新品のスマホにヒビが入ったのも、陰キャで鷺ノ宮君に告白できないのも、全部あの女子のせいに決まってるもん。
湧き上がる怒りを必死に抑え、私は二人の会話に耳を傾けた。
「俺の好きなタイプ? 構わないぜ。そうだなー、ツンデレ貧乳って結構いいと思うな。素直じゃないところが可愛いし」
「ツンデレ……。しかも、貧乳……」
ふっ、あの女には無理なようね。
いくら陽キャとはいえ、胸の大きさは変えられまい。
これぞ、天から与えられた私の勝利──って、虚しくなるわね。ううん、違うのよ、そうじゃなくて、貧乳で何が悪いのよ。誰にも迷惑なんてかけてないじゃないの。
自分の中で突如沸いた何かと戦い、私は辛くも勝利を得る。残る問題はあとひとつ、『ツンデレ』という属性をどうやって身につけるかだった。
「今日も何事なく平和に終わったわね。それにしても、鷺ノ宮君の好きなタイプはツンデレかぁ。陰キャの私にそんな属性なんて、難易度高すぎ君だよ。それなら、音ゲーで目隠しクリアする方が簡単なのに」
音ゲーは私が愛してやまない心の癒し。推し活のためならオールなんて朝飯前よ。当然、そのゲームにもツンデレキャラはいる。
だけど──あんなセリフをマネするなど、陰キャな私にとっては難しすぎる話。
どこかに、ツンデレ属性とか落ちてないかしら。なんかこう、秘伝書みたいのが空から降ってきたりとか。って、あの看板は……。
見慣れているはずの街並み。だけど、私はあんなお店を見たことがなかった。
看板に刻まれた文字は──。
「ツンデレ道場……? こんなモノ、いつの間にできたんだろ。しかも、なんだか少しボロいし……」
私が目にしたツンデレ道場の姿は、とても新装開店したとは思えないほど。
頭上の木製看板は傾き、よく見れば前に書いてあったと思われる文字が薄ら見える。見た目は場違いなレトロ感が漂い、暗証番号つきの重厚なドアが来る者を拒んでいる。インターフォンらしきモノはあるものの、私が一度も見たことのない形だった。
インターフォンに呼び寄せられるように、私は無意識にボタンを押してしまった。
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